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外国人の就労ビザを取得する方法|ビザ申請に強い法律事務所が解説

by 弁護士 小野智博


目次

外国人雇用に必要な就労ビザと取得方法

外国人が日本に滞在し活動するためには、その活動内容に合わせた在留資格が必要です。日本で働くことができる在留資格は一般的に就労ビザと呼ばれ、現在19種類あります。就労ビザの概要や必要書類一覧、申請方法は法務省(出入国在留管理庁)のホームページに記載されていますが、特有の言い回しが多く、一般になじみのある文章ではありません。この記事では、就労ビザの概要や許可申請の方法について分かりやすくご紹介します。

就労ビザ取得に必須の要件

現在19種類ある就労ビザ全てに共通する必要不可欠な要件があります。

外国人に就労予定の業務に関連のある学歴や職務経歴があること

一定の知識と技術、および学歴・職歴が必要です。原則として一定以上の学歴や実務経験が求められます。職種によっては、学歴要件を満たせない場合に一定以上の実務経験で代替できます。申請時には、これらを証明する資料を添付しなければなりません。学歴を証明する場合は教育機関発行の卒業証明書、成績証明を疎明資料として提出します。
職務経験の場合は、提出書類をもとに審査官が実務経験として認めるかどうか判断するため、どの資料で実務経験を証明するかが鍵となります。客観的な資料が必要なので、履歴書のみでは不十分です。給与所得者の場合は、勤務先からの在職証明書や退職証明書が適切な資料です。経営者の場合は、事業に関する確定申告書、営業許可証、法人の場合は、法人登記簿、決算報告書などが証明に適切な資料となります。

外国人が就労予定の業務内容とビザの種類が適合すること

就労予定の業務内容に適合する就労ビザがなければ、外国人を雇用することができません。分野・職種によっては日本人と同じように採用することができないということです。
入管法により、原則的に日本は外国人の単純労働を原則禁止とされています。単純労働とは比較的短期間の訓練で習得することができ、ある程度決まった作業をくり返す労働を意味します。
ただ、2019年から深刻な人手不足解消を目的とし在留資格の特定技能が設けられ14種類の業種においてのみ単純労働を外国人が請け負うことが可能となりました。特定技能という就労ビザで単純作業寄りの業務を任せることが可能にはなりましたが、正社員で雇用しなければならず、アルバイトでの雇用は禁止されています。

日本人と同等以上の報酬を受け取れること

外国人を雇用する際は、雇用条件を日本人と同等かそれ以上とする必要があります。
報酬や労働時間をはじめ、各種手当等の待遇に関して差別的な扱いが禁じられています。同等の業務に従事する日本人の報酬額と同等以上であることが求められます。就労ビザの申請時は労働条件も審査対象となります。適切な雇用契約を締結するよう注意が必要です。

就労ビザは19種類ある

就労ビザは日本に滞在し勤務することが認められている就労系の在留資格のことで、全部で19種類あります。おもな就労ビザの職種・業務内容を紹介します。

専門的な知識や技術を活かす「技術・人文知識・国際業務」

技人国(ギジンコク)と呼ばれ、外国人が保有している高度で専門的な知識や技術を日本へ還元することが目的の在留資格です。就労ビザの中の代表格ですが、他の就労ビザとの境が分かりづらい部分があります。 外国人が大学や大学院で専攻した分野と、受け入れ企業での業務内容の関連性が必要です。正社員、アルバイトなど雇用形態は問われません。在留期限は、5年、3年、1年又は3月です。
該当例 機械工学等の技術者、システムエンジニア、貿易、法務、マーケティング、通訳、翻訳、私企業の語学教師等

熟練した技能を活かす「技能」

日本人で熟練した技能を持つ方が少ない特殊な分野おいて、優秀な外国人を企業に招くことができます。その分野において10年(例外あり)の実務経験がある事が必要で、この実務経験は海外で積んだものに限られます。在留期限は、5年、3年、1年又は3月です。
該当例 各国料理人、スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属等の加工職人等

外国の事業所から日本の関連事業所へ転勤「企業内転勤」

海外にある本店・支店の職員を日本国内にある事業所に期間を定めて呼びよせ、当該事業所において技術・人文知識・国際業務ビザに該当する業務をしてもらう場合のビザです。技・人・国ビザに必要な学歴や実務経験要件が大幅に緩和されており、企業内の人事異動を円滑に進めることが可能です。関連会社への移動も対象となっています。在留期限は、5年、3年、1年又は3月です。

企業等を経営又は管理する「経営・管理」

個人事業主を含む自営業者から株式会社の代表取締役など、事業を「経営」する外国人、また、部長・工場長・支店長など事業の「管理」をする外国人のためのビザです。肩書だけではなく、実際に会社の業務執行権や経営権を持っていることがポイントです。在留期限は5年、3年、1年、6月、4月又は3月です。

一定の専門性・技能を有する人材「特定技能」

特定技能制度は、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野(特定産業分野)において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とし創設されました。
特定産業分野の12分野(14業種)は、①介護 ②ビルクリーニング ③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 ④建設 ⑤造船・舶用工業 ⑥自動車整備 ⑦航空 ⑧宿泊 ⑨農業 ⑩漁業 ⑪飲食料品製造業 ⑫外食業です。
特定技能1号の在留期限は、法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲)で、通算で5年以内です。一部の分野においては特定技能2号への移行が可能で、特定技能2号の在留期限は3年、1年又は6月です。

日本で技能を学びたい「技能実習」

働きながら技能を学ぶことがでる技能実習制度は最長5年間の滞在ができ、1年目が「技能実習第1号」、2~3年目が「技能実習第2号」、4~5年目が「技能実習第3号」です。技能実習2号または3号を良好に修了することを条件に、技能実習から特定技能1号へ技能検定の取得不要で移行することができます。近年、実習生が厳しい労働環境に置かれるなど人権侵害の問題が指摘されており、2024年2月9日、政府は技能実習制度を廃止して、新たに「育成就労制度」を設けるとした方針を決定しました。技能実習制度の目的は、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」への協力でしたが、新たな育成就労制度の目的は人材育成と人材確保です。労働環境をはじめとした現行制度の問題点を解決し、外国人労働者を適切に育成して、就労支援を図ることが望まれています。

就労ビザ不要で働ける在留資格がある

身分・地位に基づく在留資格には就労制限がありません。また、資格外活動許可を得て、アルバイトをすることができます。それらの在留資格を持つ外国人は、上記就労関係のビザを取得せずに日本国内で報酬を得る活動ができます。

就労制限のない在留資格

身分・地位に基づく4つの在留資格については、活動に制限がありません。該当する就労ビザの存在しない分野や職種でも働くことができます。日本人と同様にどの業種・職種でも働くことができます。
・永住者(永住許可を受けた者)
・日本人の配偶者等(日本人の配偶者・実子・特別養子)
・永住者の配偶者等(永住者・特別永住者の配偶者、わが国で出生し引き続き在留している実子)
・定住者(日系3世、外国人配偶者の連れ子等)。

「資格外活動許可」でアルバイトが可能

留学ビザ・家族滞在ビザの場合、「資格外活動許可」を申請・取得すると週28時間以内であればアルバイトとして就労が可能です。コンビニやレストラン等での仕事、工場作業や引っ越し作業などの単純労働と呼ばれる仕事に就くことができます。また、就労ビザを取得している外国人も、「資格外活動許可」を取得することで、その就労ビザとは職種・業種が異なるアルバイト・副業をすることが可能です。風俗営業やパチンコ店、ゲームセンターなどでは働くことはできません。

就労ビザの取得方法を解説

就労ビザの申請先、申請を行なえる人、ビザ取得にかかる期間をご説明します。

出入国在留管理局に申請をする

札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡に8つの地方出入国在留管理局があり、その下に支局・出張所があります。申請人が海外にいる場合の申請書類の提出先は、申請人の居住予定の住所地、もしくは勤務予定先の会社の所在地を管轄する地方出入国在留管理局・支局・出張所です。申請人が国内にいる場合は、申請人の住所地を管轄している地方出入国在留管理庁・支局・出張所が提出先です。
①札幌出入国在留管理局:北海道  
② 仙台出入国在留管理局:宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県 
③ 東京出入国在留管理局:東京都、神奈川県(横浜支局が管轄)、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、新潟県
・神奈川支局
・成田空港支局
・羽田空港支局
④ 名古屋出入国在留管理局:愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県
・中部空港支局
⑤ 大阪出入国在留管理局:大阪府、京都府、兵庫県(神戸支局が管轄)、奈良県、滋賀県、和歌山県
・神戸支局
・関西空港支局
⑥ 広島出入国在留管理局:広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県⑦ 小松出入国在留管理局:香川県、愛媛県、徳島県、高知県
⑧ 福岡出入国在留管理局:福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県(那覇支局が管轄) 
※出張所など更に詳しい情報はホームページで確認できます
https://www.moj.go.jp/isa/about/region/index.html

海外人材は企業担当者が本人に代わり申請可能

就労ビザは、国内人材の場合は原則として本人が申請を窓口に提出します。海外人材の場合は、申請代理人として企業の担当者が申請書を作成し署名も行い窓口に提出します。
書類作成を本人に任せると、日本語能力不足・勘違い等で誤った内容の申請行ってしまう可能性があります。事実と異なる内容を申請すると「虚偽申請」になり、「在留資格等不正取得罪(入管法70条1項)」「営利目的在留資格等不正取得助長罪(入管法第74条の6)」に該当し、3年以下の懲役・禁固若しくは3百万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
企業の担当者が申請準備を行う場合でも、申請書類の準備には専門知識や実務上の経験がないと難しい部分があります。これらのことから、一般的に外国人雇用に関する相談やビザ申請を弁護士や行政書士に依頼するケースがほとんどです。

就業予定日に間に合うように就労ビザの申請をする

申請書類の収集・作成には一か月程かかります。就労ビザ申請のおもな提出書類は、企業の事業概要や従事予定の職務内容を証明する書類と、外国人の学歴・実務経験を証明する書類です。また、提出が必須なわけではありませんが、申請人を採用することに決めた理由を説明する採用理由書を補足資料とするのが一般的です。

審査期間の目安

申請から許可までの審査期間は、申請者によって異なります。これは、本人・所属機関(就労予定企業)・申請種類(認定・変更・更新)の事情が異なるためです。出入国在留管理局(入管)が在留審査処理期間を四半期ごとに公表しています。ビザによって1~3か月の期間が記載されていますが、これらは平均値であるため実際にはより多くの日数を要することがあります。また、例年12月~5月頃は申請件数が増え審査期間が長くなる傾向にあります。

海外の人材を雇用する場合

海外人材には「在留資格認定証明書」が交付され、企業担当者は「在留資格認定証明書」を海外にいる外国人本人に送り、本人が入国手続きを進めます。コロナ終息後、海外からの人材呼び寄せが増加傾向にあることから、在留資格認定証明書(COE)申請件数が増え、審査完了までの期間がかなり長くなっています。とはいえ、在留資格認定証明書の有効期限は、発行日から3ヶ月です。取得後3ヶ月以内に日本に入国しない場合は失効してしまいます。
在留資格申請の最適な時期を見極めるのが難しい場合は、入管申請業務を取り扱う弁護士や行政書士に相談することをお勧めいたします。

国内の人材を雇用する3つのケース

留学ビザから就労ビザへ「変更」する場合

就労可能なビザを持っていない場合は、変更申請が必要です。就労ビザが交付されるまでは勤務を開始することはできません。3月に卒業予定の留学生を採用した場合、留学ビザから就労ビザへの変更申請は、例年12月1日から受付が始まります。勤務開始予定日に間に合わせるために、余裕をもって準備をしましょう。

同じ就労ビザを「更新」する場合

在留期限が6か月以上の場合は、在留期間の満了する概ね3か月前から申請することができます。更新申請の際には、住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書の提出を求められます。納税証明書は「直近一年分(前年)」の証明書を提出します。納税義務を履行していない場合には審査で消極的な要素として評価されます。滞納がないか確認し、あった場合は速やかに支払い未払い状態を解消した証明書を取得したのち申請を行ないましょう。

転職する場合にビザの「変更」手続きが必要か

企業内転勤ビザ・特定技能ビザ・技能実習ビザは、特定の企業(所属機関)で働くことを前提とした在留資格です。勤務先を変える場合は在留資格変更の手続きが必要です。
その他の就労ビザは、申請する際に就職先として申請書に記載した企業にて従事する職務内容を前提に許可されています。転職先での職務内容が現在の就労ビザの範囲内のものであれば、その就労ビザのまま就労を続けることができます。会社を変わったことを入管に届け出れば手続きは完了します。
転職先での職務内容が、今のビザに合致している場合には「就労資格証明書」を取得してからの転職をお勧めします。「就労資格証明書」は、新たに勤務する会社での活動内容が、現在の在留資格の活動に当たるかどうかを法務大臣が証明するものです。この証明があることで、次のビザの更新申請で新しい会社での活動内容が今のビザでは認められないと判断され、更新不許可となることがなくなります。

外国人を採用する際に確認すべき事

採用する際には、外国人の学歴や専攻内容を確認し、取得可能性のある在留資格と従事させたい業務が一致する事を確認する必要があります。就労ビザの取得の見込みがあるか調査の上、採用を決定しましょう。その際、特に確認すべき点をご紹介します。

在留資格・在留期間を確認する

不法滞在でないか、現在の在留資格で自社で就労予定の業務をすることができるか在留カードの確認を徹底しましょう。在留カードは、日本で3ヶ月以上の滞在を許可されている外国人に交付され、常時携帯が義務付けられています。
不法滞在者を雇用すると、企業は『不法就労助長罪』に問われます。外国人が不法滞在の事実を隠しており、企業が認知していなくとも免れることはできません。在留資格の変更・更新手続きのため、残りの在留期限も重要です。

日本語能力を確認する

優秀な技術や貴重な専門性を持った人材も、日本語能力が十分でない場合があります。特定技能ビザ以外は、申請において日本語能力を証する書面の提出は求められていません。しかし「日本語能力試験」は日本語能力の判断に有用です。N1~N5に分かれており、数字が小さい方が能力が高くなります。

N1 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
N2 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、
より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N3 日常会話をある程度のレベルで理解できる
N4 身近な話題の文章を読んで理解できる
N5 基本的な日本語をある程度理解できる

ビジネスの場では、N1かN2レベルの日本語能力があることが好ましいです。日常会話や身近な話題の日本語しか理解できない場合、コミュニケーションが円滑に進まない問題が起こりえます。

採用後は不法就労にならないよう注意する

在留資格や就労資格のない外国人を雇用する場合だけでなく、在留期限の更新手続きを失念した場合、許可された業務活動以外を行わせた場合も不法就労となります。不法就労していた本人だけでなく、不法就労助長罪(入管法73条の2)として企業も処罰の対象です。
また、企業側が外国人が不法就労であることを認識していなくても、在留カードの情報の確認不足等の過失(注意不足)が認められた場合には、不法就労助長罪が成立し「3年以下の懲役 もしくは 300万円以下の罰金。場合によってはその両方」が科されます。そのため、過失がないといえる程度に不法就労になっていない事の確認を徹底することが重要です。

専門家に申請代行を依頼するメリット

入管ホームページに許可の要件・必要書類一覧等が公開されているので専門家に依頼せずに申請を行うことも可能です。しかし、公表されている必要書類は必要最低限のものであり、一般的にはより多くの書類や説明文を準備・作成し添付します。専門家には豊富な実務経験があり、提出すべき書面を把握しています。
入管が申請内容についてより詳しく知りたいと判断した場合は「資料提出通知書」が郵送され、そこに記載された質問への回答や追加書類の提出が求められます。その場合、対応するために時間を要しその分審査期間も長引いてしまいます。専門家に相談・申請代行を依頼することで、就労ビザの取得が就労開始予定日に間に合わないというリスクを避けることが可能となります。

まとめ

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、「就労ビザの取得」についての無料相談を受け付けています。
「外国人を雇用したいが該当する『就労ビザ』はあるか」「どのような追加書類を準備するのが適当か」など、「就労ビザ」の申請では、的確な要件判断や実務上の豊富な経験に基づく必要書類の準備が重要であり、審査結果に大きく影響します。
当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。ご安心してご相談ください。

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