目次
定住者ビザとは何か
定住者ビザは、人道上の特別な理由がある場合に認められる身分系在留資格です。定住者ビザ取得のためには、申請者は、日本で生活基盤を築く意思と能力があり、法律や規則を守り、経済的に自立していることを証明する必要があります。定住者ビザは、就労に関する制限がなく、幅広い職種での就労が可能です。そのため、日本において長期間の居住を考える外国人にとって、非常に意味のあるビザとなっています。
在留期間は、6ヶ月、1年、3年、5年のいずれかに設定されています。また、法務大臣が個々のケースに応じて、5年を超えない範囲で特定の期間を指定することもあります。
申請方法
申請人が現在海外にいるか、すでに日本に在留しているかで異なります。日本に新たに「定住者」ビザで入国を希望する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」が必要です。一方、すでに他の在留資格で日本に滞在している場合は、「在留資格変更許可申請」を行います。
定住者ビザの類型
日本の法令で定められた「告示」に該当する場合と、それ以外の「告示外」の場合に区別されます。「告示」は第1号から第8号までが定められており、日系人や、中国残留邦人とその家族などが該当します。また、「告示外」のケースでは、日本人配偶者との離婚や死別後の外国人、難民認定者などが該当します。
「告示外」は、申請人が海外にいる申請「在留資格認定証明書交付申請」は受け付けられません。この場合は一旦短期滞在ビザで日本に入国し、その後にビザの変更手続きをする流れとなります。
第1号: ミャンマー難民 |
第2号: 削除 |
第3号: 日本人の子として出生した者の実子(日系2世など) |
第4号: 以前に日本国籍を持っていた者の実子の実子(日系3世など) |
第5号: 配偶者 イ 「日本人の配偶者等」ビザを持つ者の配偶者 ロ 3号、4号(日系2世、3世)以外の「定住者」ビザを持つ者の配偶者 ハ 3号、4号(日系2世、3世)の「定住者」ビザを持つ者の配偶者 |
第6号: 未成年で未婚の実子 イ 日本人または永住者の実子 ロ 定住者ビザを持っている者の扶養を受けて生活する実子 ハ 日系三世やその配偶者で定住者ビザを持っている者の扶養を受けて生活する実子 ニ 日本人や永住者の配偶者で「日本人の配偶者等」ビザまたは「永住者の配偶者等」ビザを持っている者の扶養を受けて生活する実子(日本人や永住者と結婚した外国人配偶者の連れ子) |
第7号: 日本人、永住者、定住者、特別永住者の六歳未満の養子 |
第8号: 中国残留邦人等 |
定住者ビザの代表的なケースの概要
定住者ビザの代表的なケースをいくつか紹介します。
日系人(定住者告示3号・4号)
日系人とは、日本国籍を持つ祖父母や親を持つ外国人を指します。このような背景を持つ日系人にとって、このビザは日本で安定した生活を築き、家族との絆を深めるための手段となります。特に、日系3世や4世がこのビザの対象となることが一般的です。就労制限がないため、日本国内でのキャリア構築や職業選択の自由度が高まります。
申請には、日系であることを証明する書類(例 家族の戸籍謄本や出生証明書)が必要です。また、申請者が日本で生活基盤を築いていることを示す書類、例えば住居に関する契約書や収入証明書などが求められます。日系人としての背景をしっかりと示すことで、ビザの審査をスムーズに進めることができます。
外国人配偶者の子供(定住者告示6号)
「日本人の配偶者等」のビザを持つ外国人が、日本人と結婚する前に本国で結婚していた場合、その前の配偶者との間に子供がいるケースがあります。その子供が未成年で未婚であれば、ビザを取得して日本に呼び寄せることが可能です。親が、日本人の配偶者であり、日本人の配偶者等の資格で日本に在留していること。さらに、子供が親の実子であることが条件です。
申請には、子供が親の実子であることを証明するための書類や、親の扶養能力を示す資料などが必要です。日本人の新しい配偶者がどのように養育に関わるか(例えば養子縁組をするかどうか)、そして今後の具体的な生活計画を入国管理局に提示できれば、ビザが許可される可能性が高まります。
海外にいる申請人の定住ビザの認定審査の期間は、ケースバイケースで異なりますが、通常は数ヶ月から半年程度が目安とされています。審査の迅速さは、申請に必要な書類の整備状況や、入国管理局の審査負荷によって変わることがあります。進学のタイミングに間に合わせて呼び寄せたいなどの計画がある場合は、学校の入学時期にまでに在留資格が取得できるようにスケジュールを調整するべきでしょう。
日本人配偶者との離婚や死別後の外国人(告示外定住)
日本人と結婚し、日本で生活していた外国人が離婚または死別した場合、その後も日本に居住し続けたいと考える事が多いでしょう。離婚後も在留期間が残っている人は多いですが、6ヶ月以内に別のビザに変更する必要があります。入国管理局では、日本人と離婚した場合、①速やかに帰国するか、②迅速に他の在留資格に変更するよう指導しています。このような場合、配偶者ビザを保持していた外国人は、新たな在留資格を取得する必要があります。
離婚や死別によって配偶者ビザが失効し、変更可能なビザ(就労系ビザ、留学ビザなど)がない場合ても、日本での生活基盤が確立されている場合や、日本に住み続ける強い理由がある場合には、婚姻期間が3年以上であった場合には、定住者ビザへの変更という選択肢があります。このビザに変更することで、日本での生活を続けることが可能になり、経済的な安定や社会的な関係を維持することができます。なお、日本人と離婚した場合は2週間以内に入国管理局へ行き、離婚した旨の届け出をします。この届出を怠ると届出義務違反となり、今後の在留資格変更申請での審査で不利に扱われます。
日本人の実子を監護・養育している場合(告示外定住)
日本人と離婚や死別した場合、たとえ婚姻期間が3年に満たなくても、日本人との間に生まれた実子を監護・養育している状況であれば、定住者としての在留資格を得られる可能性があります。このようなケースでは、親としての責任や子どもの生活の安定が重視されるため、告示外定住として特別に在留資格が認められることがあります。
再入国許可期限を超過した永住者(告示外定住)
永住者が出国後に再入国許可の期限を過ぎてしまった場合、原則として日本に再入国することができなくなります。しかし、このようなケースでも、告示外定住者として在留資格認定証明書交付申請を行うことで、再び日本に滞在するためのビザを申請できる可能性があります。特に、日本国内に強い生活基盤がある場合や、日本での生活が継続的に必要とされる状況が認められれば、在留資格の取得が検討されることがあります。
定住者ビザ取得のメリット・デメリット
定住者ビザの取得には、さまざまなメリットとデメリットがあります。以下では、その両面を詳しく見ていきます。
就労制限がない
定住者ビザの最大のメリットは、就労制限がないことです。他の就労ビザでは特定の職業や業種に限られますが、定住者ビザを取得することで、申請者は日本国内で幅広い職種で働くことが可能となります。この柔軟性は、日本でのキャリア構築において大きな強みとなります。
幅広い職業に就くことができるため、定住者ビザを持つ外国人は、経済的に自立しやすくなります。多様な仕事に挑戦できるため、収入の増加やキャリアの発展が期待できます。これにより、日本での生活をより安定的に続けることができるでしょう。
在留期間の長期化
定住者ビザは通常、長期の在留期間が設定されます。初回の在留期間は1年または3年、その後の更新ではさらに長い期間が許可されることがあります。これにより、申請者は日本での長期的な生活計画を立てやすくなり、将来的な展望も広がります。
長期の在留期間が許可されることで、ビザの更新手続きも簡素化されます。申請者は煩雑な手続きを繰り返す必要がなくなり、安心して日本での生活を続けることができるでしょう。ビザ更新の頻度が低いことで、手続きにかかるコストや時間を節約できます。
審査基準が厳しい
定住者ビザの審査は、非常に厳しい審査基準が適用されます。申請者は、定住者の対象であることだけではなく、法令を遵守し、経済的に自立していることを証明しなければなりません。また、社会的な信用や日本での生活基盤が安定していることも審査の重要なポイントです。
定住者ビザの申請プロセスは他のビザに比べて複雑で、必要書類も多岐にわたります。申請者は、自身の状況を詳細に説明する書類を準備し、厳しい審査に対応する必要があります。申請プロセスを円滑に進めるために、専門家のサポートを受けることが一般的です。
定住者ビザの申請手続きと必要な書類について
定住者ビザを申請する際には、詳細かつ多岐にわたる書類が必要です。ここでは、申請の流れと必要書類について概要をご案内します。
定住者ビザ申請の流れ
①書類の準備と提出 |
定住者ビザを申請するためには、まず必要な書類をすべて準備し、管轄の入国管理局に提出します。必要な書類には、パスポートや在留カード、住民票、収入証明書などが含まれます。申請者の状況によっては、追加の書類が必要となる場合もあります。 |
②審査と結果通知 |
書類提出後、入国管理局による審査が行われます。この審査には数週間から数ヶ月の時間がかかることがあります。審査が完了すると、結果が通知され、ビザが発行されるかどうかが決まります。 |
③在留カードの受け取り |
審査通過の通知が来た段階では、まだ定住者ビザは有効ではありません。在留カードの発行をもって、定住者ビザへと在留資格が切り替わります。申請者は、在留カードの交付を受けることで、日本での生活が可能となります。 |
定住者ビザ申請の必要書類
定住者ビザの申請には、共通の書類と、申請者の状況に応じた異なる書類が必要です。書類の不備や不足があると、審査が遅れるだけでなく、申請が拒否される可能性もあります。事前に必要な書類を十分に確認し、準備することが重要です。
ここでは、共通書類と、定住者ビザの種類ごとに異なる書類について紹介します。
①基本的な書類
定住者ビザを申請する際に、すべての申請者が提出する必要がある書類は以下のとおりです。
申請書 | 申請者の基本情報、在留歴、滞在目的などを記載します。 |
写真 | 縦4cm×横3cmのサイズ、6か月以内に撮影されたもの。 |
パスポートの写し | 顔写真ページ、入国スタンプページを含めたコピーを提出します。 |
住民票 | 家族全員が記載されたものを提出します。 |
在留カードの写し | 両面のコピーを提出します。 |
収入証明書類 | 給与明細や所得証明書、納税証明書など。 |
納税証明書 | 市区町村から発行された納税証明書を提出します。 |
理由書 | 定住者ビザを希望する理由を説明する文書です。家族構成や日本での生活計画などを詳細に記載します。 |
②追加の書類
定住者ビザの申請者の状況や背景に応じて、追加で必要となる書類が異なります。ここでは、代表的な定住者ビザの必要な書類を紹介します。
・日本人配偶者との離婚や死別後の外国人の場合
離婚届受理証明書または死亡証明書 | 離婚や死別の事実を証明するための書類です。 |
元配偶者の戸籍謄本 | 離婚や死別の事実を証明するための書類です。 |
生計の独立を証明する資料 | 雇用契約書、労働条件通知書、給与支払証明書、課税・納税証明書など |
子供の出生証明書(必要な場合) | 子供がいる場合、その子供との関係を証明するための書類が必要です。 |
・日系人の場合
戸籍謄本(祖父母及び両親) | 日本の役所で発行される書類です。 |
結婚証明書(祖父母及び両親) | 日本の役所もしくは本国(外国)の機関から発行される書類です。 |
出生証明書(申請者) | 申請者と日本人の祖先との血縁関係を証明するための書類です。 |
死亡証明書(祖父母及び両親) | 日本の役所もしくは本国(外国)の機関から発行される書類です。 |
永住者ビザへの変更
定住者ビザを持つ外国人が日本での生活を安定させ、より永続的な滞在を希望する場合、永住者ビザへの変更を検討することができます。
永住者ビザとは
永住者ビザは、長期間日本に滞在し、日本での生活基盤を確立した外国人に対して付与される在留資格です。永住者ビザの最大の利点は、在留期間の制限がないことであり、ビザの更新手続きも不要です。永住ビザの有無に関わらず、外国人が住宅ローンを組むことは可能ですが、永住者ビザを取得することにより、日本国内での社会的信用が向上、日本人と同様の条件で住宅ローンを組むことができるカースが多くなります。
永住ビザ取得のための条件
永住者ビザを申請するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。主な条件として以下が挙げられます。
①素行が善良であること これは、「法律や規則を遵守しているかどうか」ということを指します。法を守り、平穏に生活しているかが審査されます。軽微な違反、たとえばスピード違反や駐車違反などの場合、必ずしも素行不良とは見なされませんが、繰り返し行われると、不許可になる可能性が高まります。 |
②独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること 日本で自立した生活を送るための収入やスキルがあるかどうかが審査されます。自活できない人には永住権は許可されません。ただし、収入については世帯全体で考慮されます。たとえ申請者本人の収入が少なくても、扶養者の収入が十分であれば「独立の生計を営むに足りる資産または技能がある」と見なされ、子供もこの条件を満たすことができます。 |
③永住が日本国の利益になると認められること 申請者の永住が日本にとって利益となるかどうかが審査されます。 ア 定住者の場合、5年以上引き続き日本に在留していることが必要です。 イ 罰金刑や懲役刑を受けていないこと。また、公的義務(納税、公的年金や医療保険の保険料の納付、出入国管理および難民認定法に定める届出など)を適切に履行していること。 ウ 定住者の場合、5年の在留期間をもって在留していること。 エ 公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと。 |
定住者ビザに関するQ&A
Q1 定住者ビザを持っていると、どんな仕事ができますか?
A1 定住者ビザは、特定の職種に限定されることなく、幅広い仕事をすることができます。これは、定住者ビザなどの身分系の在留資格は、就労系の在留資格と異なり就労制限がないため、自分の希望する職業に従事することが可能です。
Q2 定住者ビザの申請にはどのくらいの時間がかかりますか?
A2 定住者ビザの申請処理には、通常3か月から6か月程度かかります。審査の内容や入管の繁忙期(毎年2月から5月にかけて)によっては、さらに時間がかかることもありますので、余裕をもって申請することをお勧めします。
Q3 定住者ビザの更新はどうすれば良いですか?
A3 定住者ビザの更新手続きは、在留期間が満了する3か月前から行うことができます。更新には、再度必要書類を提出し、入管局での審査を受ける必要があります。
Q4 20歳以上の連れ子を日本に呼ぶことはできますか?
A4 「定住者」ビザは、未成年で未婚の子供が対象となっています。その為、20歳以上の子供を日本に呼びたい場合は、「短期滞在(家族訪問)」ビザ、日本語学校や大学への「留学」ビザ、日本で会社を設立し「経営管理」ビザを取得する方法が考えられます。「短期滞在」で来日し日本語学校を選び、「留学」ビザに切り替える方法が増えています。
まとめ
以上のように、定住者ビザは、日本で長期間生活するために非常に重要な在留資格です。定住者ビザを取得することで、日本での生活を安定させ、将来的な計画を立てやすくなるでしょう。申請には、法令遵守、経済的自立、安定した住居など、多くの要件を満たす必要があります。また、必要書類の判断が申請人の状況ごとに異なり複雑であるため、専門家のサポートを受けることも検討すべきでしょう。
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※本稿の内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。
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執筆者:弁護士小野智博
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