目次
資格外活動とは?
資格外活動の概要
留学生がアルバイトをしたい、または就労ビザを持つ方が副業を始めたいといった場合が資格外活動に該当します。保持しているビザで許可されていない活動を行うため、事前に「資格外活動許可」を取得する必要があります。この許可申請は、在留外国人が自身の主たる活動を妨げることなく、適法に追加の収入を得る機会を得るものです。申請することで、日本での滞在をより充実させつつ、法令を遵守しながら経済的な選択肢を広げることができます。
資格外活動許可申請の対象となるビザのうち代表的なもの
・留学
・家族滞在
・技術・人文知識・国際業務
・一部の「特定活動」
・技能
・教育
などが代表的です。(一定の条件のもと申請可能となるビザも含んでいます。)
特別な事情等があれば、資格外活動許可が申請可能となるビザがこれらの他にも多数あり、またビザの種類自体の変更をしたほうが良い場合もあるため、専門家への相談をお勧めします。
資格外活動許可の種類(包括許可/個別許可)
資格外活動の許可は、包括許可と個別許可の2種類に大別され、違いは概ね次の通りです。
▼包括許可(一定の条件下で広範囲の資格外活動を一括して許可)
・対象者:主に「留学」や「家族滞在」などのビザを持つ人
・許可内容:一般的なアルバイトなど、幅広い種類の仕事を許可
・時間制限:通常、1週間に28時間以内(夏休みなどの長期休暇中は1日8時間まで)
・申請方法:入国時に空港で申請、または入国後に出入国在留管理局で申請
・有効期間:在留期間と同じ
▼個別許可(特定の活動を個別に審査して許可)
・対象者:包括許可の対象外の人や、包括許可の範囲を超える活動を希望する人
・許可内容:特定の職種や勤務先、活動内容について個別に審査
・時間制限:活動内容に応じて個別に決定される
・申請方法:出入国在留管理局で申請し、詳細な審査を受ける
・有効期間:許可された特定の活動期間
主な違いは
・許可の範囲:包括許可は広範囲、個別許可は特定の活動に限定
・申請の手軽さ:包括許可は比較的簡単、個別許可はより詳細な審査が必要
・柔軟性:包括許可は様々な仕事に従事可能、個別許可は特定の活動のみ
・適用対象:包括許可は主に留学生や家族滞在者向け、個別許可はそれ以外の人も対象
資格外活動が認められるための要件
資格外活動が認められるための要件(一般原則)
1本来の在留目的の活動の遂行を妨げない範囲内である
2保持しているビザの活動を実際におこなっている
(おこなっていない例:「留学」ビザの留学生が学校に行っていないなど)
3申請する資格外活動が就労ビザの範囲内である(「特定技能」と「技能実習」は除く)
4法令違反となる活動(刑事・民事問わず)や
風俗営業や性風俗関連業(電話異性紹介営業等も含む)での活動に該当しない
5退去強制手続きの対象となっていない、収容令書や意見聴取通知を受けていない
6素行が不良ではない
7所属機関(勤務先等)が資格外活動に同意している
3から6は、入管庁長官が「相当性がある」と認めるとき、と言えます。
「相当性がある」とはどのようなことかを見ていきます。
資格外活動を認めるには、資格外活動の内容、入国目的及び在留の状況、国内外の経済社会情勢、日本の出入国在留管理政策との整合性等を総合的に考慮して判断します。
もともとの在留資格(ビザ)ごとに外国人受入れの趣旨が異なるので、どのような場合に資格外活動を許可すべき相当性が認められるかは、在留資格(ビザ)ごとに異なっています。
1、2、7は、本来の在留目的の活動の遂行を妨げない範囲内、と言えます。
資格外活動が認められない場合
資格外活動許可申請の内容が単純労働あるいは現業的労働(一定程度以上の専門的な技術、技能又は知識を要しない就労活動)の場合、本来の在留目的の活動の遂行を妨げない範囲内の活動でも、原則として、相当性が認められず、許可されません。
日本は一定程度以上の技術・技能・知識を要しない単純労働の活動に従事しようとする外国人を受け入れない入国在留管理政策をとっているためです。
しかし、留学ビザで在留する留学生のアルバイト活動は、留学生の母国と日本との所得格差の存在等の事情や、日本人学生が学業に支障を来さない範囲でアルバイトを行うことがほぼ社会通念上認められている社会的背景から、単純労働あるいは現業的労働であっても、一定の条件の下で相当性が認められ、しかも、包括的に(法19II後段、規19V①)許可される扱いとなっています。(「包括的に」というのは、雇用先や業務内容が変わってもその度ごとに資格外活動許可申請をし直す必要がないということです。)
資格外活動許可申請が不要な場合とは?
「永住者」ビザや「定住者」ビザなどを保持する外国人の場合
次のビザを保持する外国人は、資格外活動許可を得ることなく無制限就労が可能です。
特別な立場や状況に基づいて日本での在留が認められているビザのため(地位等類型資格)、日本国内でさまざまな活動に自由に従事することができます。就労、学業、その他の活動など、幅広い選択肢が開かれており、特別な許可を得ることなく多様な分野で活動することが可能で、日本での生活や社会参加を大きく促進します。
・永住者
・定住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
・特別永住者
※特別永住者は厳密にはビザではありませんが、無制限就労が可能という観点から記載しております。
「留学」ビザを保持する外国人が、在籍する大学又は高等専門学校(第4学年、第5学年及び専攻科に限る。)との契約に基づいて報酬を受けて行う教育又は研究を補助する活動の場合(平成22年7月から)
・教育の補助の例:ティーチングアシスタント
・研究の補助の例:リサーチアシスタント
留学生が所属する教育機関で、教育や研究を手伝う仕事をする際は、資格外活動の許可なく活動が可能です。
これは留学生が自身の専門分野に関連した経験を積み、同時に収入を得る機会を提供するものですが、この活動は学業の妨げにならない範囲で行い、主たる活動は勉学であることを忘れないようにしましょう。
資格外活動の許可申請の流れと必要書類
申請の流れ
資格外活動の許可申請は、大まかに次の流れで行われます。
・必要書類の準備
・申請書類の提出
・審査(2週間~2か月)
・許可されたら、通知が届く
・資格外活動許可証の交付
申請のための必要書類
次の出入国在留管理庁のサイトの(申請書・必要書類・部数)の段落をご覧ください。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-8.html
この中でも特記すべき必要書類として、次の書類が挙げられます。
・申請書 1通
すでに日本に在留している場合の資格外活動許可申請書と、新規で日本に入国する場合の資格外活動許可申請書は、様式が異なっています。
・当該申請に係る活動の内容を明らかにする書類(申請書と一緒に添付する書類) 1通
保持しているビザの種類によって、申請書と一緒に添付する書類が異なり、大変複雑です。
かつ審査の過程において、上記以外の資料を求める場合もある、という注意書きがあり、資料の不足や不備があると、審査が長引いてしまいますので、資格外活動の許可を受け、適法かつスムーズに働く機会と追加の収入を得るために、専門家へ相談することをお勧めします。
資格外活動のポイント(よくあるご質問・Q&A)
Q:資格外活動の許可なく報酬の出る単発の活動はできますか?
A:資格外活動の規制対象外となる活動があり、その範囲内ならば報酬を受け取ることが可能です。
例えば、業として行う活動(一般的に継続的かつ反復的に行われる、収益を目的とした行為や仕事のことを指し、ある程度の規模や頻度で行われる経済活動)ではない講演や、小説、論文、絵画、写真、プログラムその他の著作物の制作などの活動に対する報酬等が挙げられます。
他にも細かく定められておりますので、資格外活動の規制対象外か否かの確認は、専門家への相談をお勧めします。
Q:資格外活動の許可なくボランティア活動はできますか?
A:ボランティアには、報酬などがない無償ボランティアと、実費以外に報酬を支払われる有償ボランティアがありますが、前者の無償ボランティア活動ならば可能です。
Q:資格外活動の許可なく就労ビザを保持する外国人は学校へ通えますか?
A:可能です。例えば「技術・人文知識・国際業務」ビザを保持する外国人が、昼間は就労し夜間は学校に通って勉強することは、収入や報酬を得る活動ではないことから資格外活動許可を得ずに通うことができます。
資格外活動の具体例(よくあるケース)
「技術・人文知識・国際業務」ビザを持った外国人の場合
▼許可となるケース
「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得した勤務先で就労する傍ら、週l日、大学で非常勤講師の仕事をすることは、資格外活動許可を受ければ認められます。大学での非常勤講師の仕事は単純労働ではないため個別的な資格外活動許可(規19V②)を受けえます。
▼不許可となるケース
「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得した勤務先で就労する傍ら、喫茶店でウェイトレスのアルバイトをすることは認められません。喫茶店でのウェイトレスの仕事は単純労働であるためです。
「家族滞在」や「留学」のビザを持った外国人の場合
▼許可となるケース
ファーストフード店でアルバイトすることは、週28時間以内であれば、包括的資格外活動許可を受けることができます。
(どの曜日から起算しても、常に週28時間以内の必要があります。
留学生の夏休みなどの長期休暇中は1日8時間まで可能です。)
▼不許可となるケース
性風俗店でのマッサージの仕事は、週28時間以内であっても資格外活動許可を受けられません。たとえ事前に包括的に資格外活動許可を受けていても、包括的許可の範囲外です。(規19V①括弧書)
資格外活動許可に違反した場合のリスク
資格外活動許可に違反した場合の企業側と外国人本人の主なリスクについて触れていきます。
▼企業側のリスク
・不法就労者を雇用したことになり、不法就労助長罪や資格外活動幣助罪が成立する。
(不法就労だと知らなかった場合でも、過失がない場合を除き処罰を免れない)
・企業に対する監視や立入検査の対象となり、事業活動に支障をきたすリスクがある
・社会的信用やイメージの低下につながる
▼外国人本人のリスク
・資格外活動罪が成立する
・ビザの取消しや退去強制処分の可能性がある
・今後の入国やビザ変更申請やビザ更新申請の際に、不利な扱いを受ける可能性がある
このように、資格外活動許可に違反すると企業と外国人双方に重大なリスクが伴うため、適切な手続きを踏む必要があります。不明な点がある場合は、専門家に相談されることをお勧めします。
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、資格外活動許可申請をはじめ、ビザ全般についての無料相談を受け付けています。いつでもご相談ください。
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※本稿の内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。
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執筆者:弁護士小野智博
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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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