ビザ申請

特定活動ビザとは?就労制限や在留資格のポイントを法律事務所が解説

by 弁護士 小野智博


特定活動ビザとは

特定活動ビザは、日本の入管法に基づき、特定の活動を行うために個々に与えられる在留資格です。このビザは、他の一般的な在留資格に該当しない特定の目的や活動を行う場合に発行さます。以下の3つに分類されます。

入管法に定められた特定活動ビザ

このビザは、法務大臣が指定する特定の分野で活動する外国人に対して付与されます。高度な知識や技術を必要とする「特定研究活動」や「特定情報処理活動」などが含まれます。これらのビザは、専門的な業務に従事するために必要なものです。

法務大臣の告示する特定活動ビザ

法務大臣が告示する特定活動は、法務省が発表する告示によってその内容が明示されます。現在、46種類の特定活動が告示されており、その内容はワーキングホリデーやインターンシップ、一部の医療目的での滞在など、多岐にわたります。告示は定期的に更新されるため、最新の情報を確認することが重要です。
出入国在留管理庁HPホームページ 在留資格「特定活動」告示一覧
https://www.moj.go.jp/isa/content/001389019.pdf

告示に含まれない特定活動

告示に含まれていない特定活動もあります。これらは個別に審査されるケースで、特定の理由や目的が認められた場合に限り、ビザが発行されます。親の扶養を目的とするビザや、卒業後に引き続き就職活動を行う場合などが該当します。このようなケースでは、申請時に詳細な説明と証拠書類の提出が必要です。

代表的な特定活動ビザとは

代表的な特定活動ビザをご紹介します。

就職活動の継続
日本の大学や専門学校を卒業した留学生が、卒業後も就職活動を続けるために発行されます。通常、6か月間の滞在が許可され、さらに1回の更新が可能です。申請時には、就職活動を継続していることを証明する書類が必要です。
特定活動46号
日本の大学や大学院を卒業し、高い日本語能力を持つ外国人留学生を対象としています。このビザで、飲食業や販売業、工場勤務など、幅広い業種での就労が可能です。ただし、派遣社員やアルバイトではなく、正社員や契約社員としての雇用が求められます。
ワーキングホリデー
ワーキングホリデービザは、若い外国人が異なった文化の中で休暇を楽しみながら、短い期間で働くことができるものです。日本は多くの国とこの制度を結んでおり、一定の条件を満たせばこのビザを取得できます。ただし、働ける時間や仕事の種類に制限があるため、事前に確認が必要です。
医療滞在
特定の医療目的で日本に滞在するために発行されます。長期的な治療やリハビリが必要な場合に利用され、滞在期間は治療計画に基づいて決まります。申請には、医療機関からの診断書や治療計画書が必要です。
インターンシップ
外国人学生が日本の企業で研修を受けたり、実務経験を積むために発行されます。これは学業の一環として認められるインターンシップに限られ、一般的に就労は許可されませんが、特定の条件下では例外があります。
老親扶養
日本に住む外国人が自国から高齢の親を呼び寄せて扶養するために発行されます。このビザは、親と子が一緒に生活することを目的としており、通常1年間の滞在が認められ、更新が可能です。申請時には、母国で親を支える親族がいないことや、親が独立して生活できないことを証明する書類が必要です。
特定技能1号移行準備
特定技能1号への変更申請の準備をするために与えられるものです。就労先が指定書に記載されています。
出国準備
在留資格の変更や更新が不許可となった外国人が日本を離れる準備をするために与えられるものです。

就労可能か確認する方法

特定活動ビザを持つ外国人を受け入れる際には、そのビザが就労を許可しているかどうかを必ず確認しましょう。誤って不法就労させてしまうと、雇用者にも法的な責任が生じる可能性があります。以下に、就労の可否を確認するための方法を説明します。

在留カードの確認

①在留資格の確認
在留カードは、日本に中長期間在留する外国人に対して交付される公的な身分証明書です。在留カードには、その外国人の「在留資格」や「在留期間」が記載されています。特定活動ビザの場合この資格が「特定活動」と表示されていますが、特定活動ビザには多くの種類があり、それぞれ異なる条件が適用されるため、在留資格だけでなく就労可能かどうかの確認がポイントとなります。

②就労可否の確認
在留カードには、「就労制限の有無」が明記されています。以下のように記載内容が異なります。

「就労制限なし」
就労に制限がないことを意味し、どのような職種でも働くことができ、フルタイムでの就労も可能です。※身分系ビザ(日本人の配偶者等ビザなど)
「在留資格に基づく就労活動のみ可」
在留資格に関連する業務のみ就労が認められます。※就労系ビザ(技術・人文知識・国際業務など)
「指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可」
技能実習生です。技能実習を実施する機関以外での就労はできません。
「指定書により指定された就労活動のみ可」
法務大臣が指定した活動等が記載された指定書の確認が必要です。※特定活動ビザ
「就労不可」
原則として就労は認められません。ただし、資格外活動許可を取得することで、一定の条件下でアルバイトなどが可能になることがあります。在留カードの裏面には「資格外活動許可欄」があり、ここに「許可」と記載されている場合は、指定された範囲内での就労が認められます。※留学ビザなど

③有効期限の確認
在留カードには有効期限が記載されており、この期限を過ぎてしまうと日本での滞在は不法になります。就労を開始する前に、有効期限が切れていないか確認することが大切です。

指定書の確認

指定書は、特定活動ビザの発行時に添付される文書で、ここに記載された条件に従って活動を行う必要があります。指定書には、就労が許可されているかどうか、就労の範囲、時間制限などが明記されており、これを確認することがポイントです。

①指定書の内容確認
指定書には、その外国人がどのような活動を行うためにビザを取得したのかが記載されています。具体的な就労条件や許可された業務内容が示されているため、雇用者はこれを確認して、その活動が、希望する仕事に合致しているかを把握する必要があります。

②指定書と在留カードの整合性
在留カードと指定書に記載された内容が一致しているかどうか確認します。不一致がある場合や不明点がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。

③指定書の有効性の確認
指定書にも有効期限や条件が設定されていることがあります。ビザの更新や変更が行われた場合には、新しい指定書が発行されることがあるため、最新の指定書に基づいて確認しなければなりません。

特定活動ビザで働く場合の労働条件

特定活動ビザを持つ外国人が日本で働く際には、ビザの種類や条件に応じて労働に関する制約が異なります。以下に、特定活動ビザで働く際の主な労働条件について説明します。

就労の可否

就労が許可されているかどうかは、在留カードに記載されている情報や、ビザ発行時に交付された指定書を確認することで判断できます。例えば、特定活動ビザの一つである「医療滞在」ビザは、治療目的で日本に滞在する外国人に与えられるものであり、基本的に就労は認められていません。一方で、「特定研究活動」や「特定情報処理活動」など、法務大臣が指定する特定の分野での活動を行うビザでは、専門的な業務に従事することが許されています。雇用主は、事前にビザの種類や条件を確認し、適法な雇用を行う必要があります。

労働時間の制限

特定活動ビザで働く場合の労働時間についても、そのビザの種類や条件によって異なります。例えば、「就職活動継続」のビザを持つ外国人が就労を希望する場合は、アルバイトとしての就労が許可されることが多く、その場合には1週間に28時間までの労働が認められています。ただし、特定の条件を満たす場合には、フルタイムでの就労が認められることもあります。

賃金と労働条件

日本の労働基準法は、外国人労働者にも適用されます。したがって、特定活動ビザを持つ外国人人材も、日本人労働者と同様に最低賃金法や労働時間法などの法律の適用を受けます。特に、賃金の支払い方法や労働条件については、日本の法律に従う必要があります。

社会保険への加入

日本では、労働者として就労する場合、健康保険や年金保険などの社会保険への加入が義務付けられています。特定活動ビザを持つ外国人人材も、この義務を負う場合があります。雇用主は、社会保険の手続きを適切に行うことが求められます。

労働契約の締結

特定活動ビザで働く際には、労働契約を締結することが一般的です。この契約には、就労の内容、労働時間、賃金、休暇などの条件を明記しなければなりません。雇用主と労働者の双方が合意の上で契約を結び、適切な労働環境を提供しましょう。

就業先が指定されている場合

特定活動ビザの中には、就業先が法務大臣により指定されている場合があります。この場合、指定された就業先でのみ働くことが許され、他の場所での就労は原則として認められません。例えば、特定の企業や研究機関での業務に従事するためのビザを持つ場合、その企業や機関でのみ就労が許可されており、他の職場での労働は資格外活動に該当します。しかし、特定活動ビザが発行された理由や活動内容によっては、こうした追加の就労が認められない場合もあるため、事前に入国管理局や専門家に相談することが重要です。

資格外活動許可の申請方法

資格外活動許可は、特定活動ビザを持つ外国人が、ビザの本来の目的とは異なる活動を行う際に必要な許可です。以下に、資格外活動許可の申請方法について説明します。

資格外活動許可が不要な活動

以下のようなケースでは、資格外活動許可は不要です。

ボランティア活動
報酬を受け取らない形でのボランティア活動
単発の講演や通訳
謝金として一時的に報酬を受け取る非営利の講演や通訳活動など
日常生活に伴う臨時の報酬
友人や知人の手助けに対するお礼金など

申請手続きの流れ

資格外活動許可の申請手続きは、以下の流れです。

申請書類の準備

①申請書の記入
資格外活動許可を申請するためには、所定の申請書に必要事項を記入します。申請書は法務省のウェブサイトからダウンロードできます。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-8.html
②在留カードのコピー
在留カードの表裏のコピーを用意します。
③パスポートのコピー
パスポートの顔写真ページと在留資格が記載されているページのコピーを用意します。
④就労先からの証明書
アルバイトなどの就労先が決まっている場合、その就労先からの雇用証明書や契約書のコピーが必要です。
⑤学生証のコピー
留学生の場合、現在通っている学校の学生証のコピーを用意します。

申請の流れ

①入管窓口での申請
必要書類を準備し、最寄りの入国管理局の窓口で申請を行います。郵送による申請も可能ですが、窓口での申請が一般的です。
②審査と結果通知
申請が受理された後、入国管理局での審査が行われます。審査には通常2週間から1か月程度かかります。審査結果は、郵送または入管窓口での通知により確認できます。
③許可証の受け取り
資格外活動許可が下りた場合、在留カードにその旨が記載されます。許可証は、入管窓口で受け取るか、郵送で受け取ることができます。

資格外活動許可の注意点

資格外活動許可を申請する際には、いくつかの注意点があります。
まず、申請内容が事実と異なる場合や、虚偽の申請を行った場合、許可が下りないだけでなく、ビザ自体が取り消され帰国を余儀なくされるる可能性があります。また、許可された活動の範囲や時間制限を守ることが求められ、違反した場合にはビザの取り消しや罰金が科されることがあります。さらに、資格外活動許可は一度取得すれば永久に有効というわけではなく、在留期間の更新ごとに対応が必要になる場合があります。

特定活動ビザの人を採用する場合

雇用契約を結ぶ際には、賃金や労働時間、業務内容などを明確に記載した契約書を交わすことが求められます。さらに、雇用者は雇用開始後に「外国人雇用状況届出」をハローワークに提出する必要があります。

アルバイト採用

現在、特定活動で在留している多くの方は、元学生です。これらの元学生は、「就職活動のための特定活動」や「出国準備」などの理由で在留しているケースが多いです。アルバイトの面接に来る方の中には、特定活動ビザを持ち、在留カードに「就労不可」と記載されている方が少なくありません。このような場合、まず在留カードの裏面にある資格外活動許可の欄を確認しましょう。資格外活動許可がスタンプされている場合は、週28時間以内であればアルバイトを行うことができます。

フルタイム採用

フルタイムで雇用する場合、多くの場合は就労ビザへの変更が必要です。「就労不可」と記載された在留カードを持つ方や、指定書に「企業」や「就労時間の制限(週28時間まで)」といった制約がある場合は、就業開始前に就労可能な在留資格に変更する必要があります。
このような場合、ビザの種類変更(在留資格変更許可申請)を行うことで、適切な就労系ビザへの変更をすることができます。例えば、「技術・人文知識・国際業務ビザ」や「技能ビザ」など、特定の業務内容に適したビザへの変更が考えられます。これらのビザは、職種や業務内容に基づいて付与されるため、会社の概要やパンフレット、業務内容の説明書など、申請者が従事する業務内容が変更後の在留資格に適合することを証明する資料を提出する必要があります。不備や不適切な書類提出があった場合、申請が不許可となるリスクがあります。そのため、入管法に詳しい専門家に相談することが推奨されます。

不法就労助長罪

不法就労助長罪とは、外国人が適法な在留資格を持たないまま就労することを助けたり、それを黙認したりする行為に対して科される罪です。雇用者が知らないうちに不法就労を助長してしまうケースもありますが、これは法律違反に当たり、重い罰則が科される可能性があります。
不法就労助長罪を回避するためには、雇用前に外国人の在留資格を厳密に確認し、必要な許可を得た上で雇用を進めることが不可欠です。また、定期的に在留資格の有効期限や就労許可の状況をチェックすることも重要です。

まとめ

以上、本記事では、特定活動ビザの就労制限について解説しました。もし在留資格や資格外活動許可に関して不明な点や疑問がある場合、または外国人を雇用する際に不安を感じている場合は、法務専門家や行政書士に相談することを強くお勧めします。
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、特定活動ビザを含む在留資格に関する無料相談を受け付けており、資格外活動許可の申請や在留資格の変更に関する支援も行っています。
当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。ご安心してご相談ください。

※本稿の内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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