ビザ申請

家族滞在ビザの申請|必要書類や就労制限など、在留資格のポイントを法律事務所が解説

by 弁護士 小野智博

家族滞在

家族滞在ビザ(Dependent visa)とは?(正確には在留資格「家族滞在」)

家族滞在ビザの概要

家族滞在ビザは、日本に中長期滞在する外国人の配偶者や子供に付与されるビザです。
主に留学ビザや就労ビザを持つ外国人の家族(配偶者や子供に限る)を対象とし、家族の絆を保ちながら日本での生活を可能にします。
家族滞在ビザは原則として就労を認めていませんが、資格外活動許可を取得すれば週28時間以内の就労が可能となります。
付与される在留期間は通常、扶養者(本体者)のビザと同じ期間で、最長で5年までが決定されます。家族滞在ビザは、外国人材の受け入れを促進し、日本社会の多様化に貢献する重要な役割を果たしています。

家族滞在ビザの対象者

・家族滞在ビザの場合の配偶者とは、現に婚姻が日本の法律上有効に存続しており、同居し、互いに協力し、扶助しあって社会通念上の夫婦の共同生活を営むという婚姻の目的の実体を伴っている配偶者を指します。
単に、婚姻届を届出して受理されたという手続が完了したのみでは足りず、婚姻の実体も伴っていると証することが必要です。

・家族滞在ビザの場合の子とは、嫡出子・普通養子・特別養子・認知された非嫡出子・成人に達した子を指します。

※なお、配偶者が死去した者、離婚した者、内縁の配偶者、外国で有効に成立した同性婚による者は、配偶者に含まれないとされています。

家族滞在ビザが認められるための要件

家族の帯同が可能又は不可能な、扶養者(本体者)のビザ等の種類

家族を呼ぶことができる扶養者(本体者)の各種ビザの一覧を見ていきましょう。
なお、家族とは配偶者と子を指します。

帯同可能な扶養者のビザ 帯同不可能な扶養者のビザ等
技術・人文知識・国際業務 技能実習
経営・管理 短期滞在
高度専門職 特定技能1号
企業内転勤 外交
介護 公用
技能 研修
特定技能2号 特定活動
留学 家族滞在
興行 ▼永住者
法律・会計業務 ▼定住者
研究 ▼特別永住者(ビザではない法的地位)
教育 ▼日本人の配偶者等
医療 ▼永住者の配偶者等
報道
宗教
芸術
文化活動 ※「特別永住者」は「入管特例法」に、
他のビザは「入管法」に基づく
教授

・扶養者が永住者の場合、その家族は「永住者の配偶者等」又は「定住者」のビザとなります。
・扶養者が日本人の場合、その家族は「日本人の配偶者等」のビザとなります。
・扶養者が定住者の場合、その家族は「定住者」のビザとなります。
・扶養者が特別永住者の場合、その家族は「特別永住者」又は「定住者」等のビザとなります。
※実子の場合や養子の場合、子の年齢などの細かい規定により、上記以外の別のビザになる可能性のものもあるため、詳細は専門家に相談することをお勧めします。

表の中で▼が付されているビザ等は、身分や地位に応じたもので、無制限就労が可能です。
▼以外のビザは、日本で行う活動内容に応じたビザであり、業務限定で就労が可能か、就労
自体が不能なビザとなっています。
今回の記事で紹介する「家族滞在ビザ」は、就労不能ビザに該当します。
ですが「資格外活動許可申請」という手続きをとることで、一定程度は働くことが可能になります。

※資格外活動についてより詳しく知りたい場合は、関連する次の記事を参考にされて下さい。

▶参考情報:「資格外活動許可」については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
資格外活動許可申請が必要な場合、不要な場合とは?就労ビザ申請に強い法律事務所が解説

「扶養を受ける者」である

・家族滞在ビザを取得したい外国人配偶者は、扶養者(本体者)の経済的サポートを受けて日本で同居生活を送る被扶養者となることが要件となります。

・子にあっては、親(扶養者・本体者)の監護養育を受けていることも要件です。
子が20歳以上でも、学生であって親の扶養を受けていれば、家族滞在ビザの対象です。

※経済的に独立した外国人配偶者や子は、家族滞在ビザではなく、就労ビザ等での入国を検討することとなります。

扶養者(本体者)に経済的な扶養能力がある

扶養者(本体者)に、扶養をする意思があり、扶養可能な資金的裏付けを証する資料があることが要件です。
在職証明書や課税・納税証明書などを提出して立証します。

扶養者(本体者)と申請人(被扶養者)の家族関係が公的書類で証明できる

結婚証明書(写し)、出生証明書(写し)、戸籍謄本などを提出して証明できることが要件です。
外国語で作成された証明書や文書の場合には、訳文(日本語)を添付します。

家族滞在ビザの必要書類と申請の流れ

申請のための必要書類

申請前の留意事項
・日本で発行される証明書は全て、発行日から3か月以内のものを提出します。
・提出書類が外国語の場合には、訳文(日本語)を添付します。
・申請して審査中に、追加で資料を求められる場合があります。
・法務省の外局である出入国在留管理庁のWEBサイトが案内する必要書類以外に、専門家の視点から提出が望ましい書類もあります。

申請の種類に応じて、入管のWEBサイト掲載の提出書類のチェックシートを活用し、必要書類を把握することができます。
・(在留資格認定証明書交付申請用)……外国から呼び寄せる場合(略称:認定)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001404137.pdf

・(在留資格変更許可申請用)……他のビザから家族滞在ビザに変更する場合(略称:変更)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001367761.pdf

・(在留期間更新許可申請用)……引き続き家族滞在ビザで滞在する場合(略称:更新)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001395563.pdf

・(在留資格取得許可申請用)……出生者や日本の国籍を離脱した者が家族滞在ビザを取得する場合
提出書類チェックシートが無いため、以下のリンクより必要書類の確認が可能です。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/dependent.html
(認定・変更・更新の必要書類も確認可能です。)

申請の流れ

ビザの申請は、大まかに次の流れで行われます。

・必要書類の準備
・申請書類の提出
・審査
・ビザの交付

ビザの変更や更新は、ここまでの流れで完了です。
一方、外国から新たに呼び寄せる認定では、次の手続き事項が追加されます。

・交付されたビザを、外国にいる申請人本人へ郵送
・申請人は郵送されたビザを持って、自国にある日本大使館等へ行き査証を取得
・日本へ入国

家族滞在ビザのよくあるご質問・Q&A

Q:家族滞在ビザの外国人の雇用形態はどんなものがありますか?

A:アルバイト、パートタイム、契約社員、派遣社員、業務委託(フリーランス)等が挙げられます。
資格外活動の許可を得た上で、原則1週間に28時間以内の労働時間という制限がありますが、雇用形態や収入額・報酬額に制限は設けられておりません。

Q:家族滞在ビザの外国人を雇用する時のポイントはありますか?

会社の側が不法就労助長罪や資格外活動幇助罪などに問われないようにするポイントを、いくつか説明していきます。
A:
・パスポートと在留カードを提示させ、身分の確認と働ける許可があるかの確認をしましょう。
有効なパスポートと在留カードであることに加え、在留カード裏面の資格外活動許可欄に、「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と記載があるか確かめ、資格外活動許可を得ていることを確認します。
なお、留学生を採用する際は、卒業や退学をしていないかの確認も必要です。
留学ビザの在留カードが有効期間内であっても、卒業や退学により「留学」ではなくなってしまうためです。

・週28時間以内の時間計算に注意しましょう。
雇用しようとしている外国人がアルバイト等を掛け持ちしていないか確認します。
全ての就労先での就労時間を合計し、かつ、どの曜日から起算しても常に週28時間以内にしなければならないためです。

・扶養者(本体者)の収入・報酬額を超えないようにしましょう。
週28時間以内の稼働でも、扶養者の収入等を超えてしまうと「扶養を受ける者」であることから外れてしまうためです。

・就労場所に注意しましょう。
風俗営業が営まれている営業所での稼働は、資格外活動許可の対象外です。
例え、業務内容が掃除や皿洗いといった風営法上の接待等に当たらなくても、風俗営業が営まれている営業所という場所自体が違反となるためです。
ただし、風俗営業を営んでいる法人で、風俗営業の管理を含めた事業の管理に、風俗営業を行っていない事務所等にて就労することは問題ありません。

・誓約書を徴求することを検討しましょう。
義務ではありませんが、誓約書を徴求し、誓約内容を確実に履行させることは労務管理上、必要不可欠です。
誓約書の内容は、是非専門家にご相談下さい。

・業務委託契約(例えば翻訳やデザイン業務の委託など)を締結する場合は、労働時間の把握に注意しましょう。
業務委託契約により標準的に従事することとなる労働時間を契約上で明らかにし、週28時間以内という条件を確実に遵守してもらうことがとても重要です。
しかし実務的には、業務委託契約の性質上、実際の労働時間を客観的かつ正確に把握することは非常に難しいため、対応に工夫が必要です。

Q:家族滞在ビザで本国(母国)にいる親や兄弟を日本(本邦)に呼べますか?

A:残念ながら呼べません。配偶者と子に限られます。
親を呼び寄せる方法が無いわけではありませんが、複雑ですので専門家への相談をお勧めします。
兄弟を呼びたい場合は、短期滞在ビザ(いわゆる観光ビザ)になります。
最大でも90日の短期の滞在となり、中長期で滞在できるビザは現行の制度では無いと言えます。

Q:扶養者(本体者)が留学ビザや文化活動ビザのため就労できないのですが、家族滞在ビザを取得できるのですか?

A:一定の条件のもと、取得できます。
第三者から安定的・継続的に受けられる援助がある、何らかの資産を持っている、奨学金が給付されている、扶養者及び被扶養者が資格外活動許可を得てその範囲内で適法に行った就労による預金や貯金に一定の残高がある、などの状況が立証できれば可能です。

企業にもたらす家族滞在ビザのメリット

家族滞在ビザは、企業にとって多面的な価値を創出する重要な要素となります。
外国人人材が、来日した家族と共に日本で安定した生活を送ることで、仕事への集中力と生産性が向上し、優秀な人材の長期的な雇用が可能となります。
この安定性は、いずれ企業の長期的な事業計画や戦略の実現を支える基盤となり、同時に海外からの優秀な人材をより広く募集できることにつながります。
さらに、多様な文化背景を持つ外国人人材とその家族の存在は、企業にグローバルな視点とイノベーションをもたらし、組織全体の国際化を促進します。
この多様性への取り組みは、企業イメージの向上にも寄与し、社会的評価を高める効果があります。
加えて、家族滞在ビザ保持者の一定条件下での就労可能性は、企業の運営にとって将来の人材確保の観点からも有益です。
これらの多角的なメリットを戦略的に活用することで、企業は国際競争力を強化し、持続可能な成長を実現する可能性を大きく広げることができます。
家族滞在ビザは、単なる在留資格の一つにとどまらず、上記の様に企業の成長と発展に向け重要な戦略的ツールとして位置付けることができます。

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※本稿の内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
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