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特定活動46号(N1特定活動)ビザとは?|従事できる業務内容とビザ申請における要件を解説

by 弁護士 小野智博

特定活動46号

特定活動46号(N1特定活動)ビザとは?

特定活動46号ビザの概要

「特定活動」とは、法務大臣が個々の外国人について「特」に指「定」する「活動」、とされています。
人の行う活動は多種多様であるため、ビザの決定の判断基準となる活動として類型化されていない活動、又は類型化するには馴染まない活動があります。
そのような活動を行おうとする外国人に、与えられるビザが「特定活動」ビザとなります。
2024年の時点で、許可されている特定活動の活動内容は50種類前後あると思われます。
その中の一つである「特定活動46号」ビザは、2019年5月に新設、2024年2月には一部が改正され施行された比較的新しいビザと言えます。
特定活動46号ビザは、日本の大学等を卒業した外国人留学生が日本で働くための特別なビザです。
この制度は、外国人留学生が日本の大学等で学んだ幅広い知識や能力、そして留学中に身につけた高い日本語能力を活かして、日本で働ける仕事の幅を広げ、彼らの能力をより柔軟に活用し様々な仕事に就けるようにすることを目的としています。
在留期間は、5年、3年、1年、6か月、3か月又は5年を超えない範囲で法務大臣が個々に指定する期間のどれかとなっており、本人の希望よりかは、受入機関の規模や安定性を優先に審査され、在留期間が決定する傾向にあります。
原則として、留学ビザから特定活動46号ビザへの変更の時と、引き続き特定活動46号ビザで滞在するための初回の更新の時に決定される在留期間は、「1年」となっています。

以下の記事もあわせてご活用ください。

▶参考情報:特定活動ビザについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
特定活動ビザとは?就労制限や在留資格のポイントを法律事務所が解説

通称「N1特定活動ビザ」の「N1」とは?

日本語能力試験(JLPT)というものがあり、試験の難易度がレベルN5、N4、N3、N2、N1に区分され、N5(最も易しい)からN1(最も難しい)となっております。
N1特定活動ビザという通称は、主要な要件である日本語能力試験N1合格に由来しています。
なお、特定活動46号ビザは、正式には在留資格「特定活動(本邦大学等卒業者)」と呼ばれます。

特定活動46号ビザが認められるための要件

学歴要件

日本の専修学校、日本の高等専門学校、日本の短期大学、日本の四年制大学、日本の大学院を卒業等し、高度専門士、学士、修士、博士を有している。
※外国の大学等は対象外であることに注意が必要です。

上記の学歴要件は抜粋して端的に記載しております。
実際の学歴要件は以下の通りかなり複雑なため、判断に迷う場合は是非専門家にご相談ください。
●次のいずれかに該当していること。

日本語能力要件

または、

※ただし、大学等で(日本国内外問わず)、日本語学・日本語教育学等の学問を専門的に履修し卒業等している場合は、上記の日本語の試験等は免除されます。
日本語の試験等が免除されるだけで、前述の学歴要件である「日本の」大学等を卒業している必要はあります。

報酬要件

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬である必要があります。
具体的には、一定の報酬額を基準として一律に判断するのではなく、地域や企業ごとの報酬体系を考慮し、同じ仕事をする日本人と同等以上の報酬であるかが判断されます。
また、他社の同種業務の報酬も参考にされます。
昇給面を含めて、日本人大卒者・院卒者の報酬も参考にされます。
さらに、留学生が母国で就業経験がある場合、その経験に見合った報酬であるかも確認されます。高い語学力を評価されて採用された場合は、その能力が報酬に反映されているかも審査の対象となります。
このように、特定活動46号ビザの報酬基準は、個々の状況に応じて総合的に判断される仕組みになっています。

日本の大学等で修得した学修の成果等を活用するものと認められること

従事する業務に、日本の大学等で修得した専攻科目や一般教養科目に関連して、広い知識や応用能力を活用するものが含まれていることや、今後その業務に従事する見込みがあることが必要です。
そしてそれが主たる活動である必要はありません。

常勤であること

フルタイムの職員としての稼働に限られ、短時間のパートタイムやアルバイトは認められません。

派遣就労でないこと

例えフルタイムであっても、派遣社員として派遣先での就労活動は認められません。

受入機関が適切な雇用管理を行っていること

受入機関の適法性も求められます。
従って、報酬要件だけでなく社会保険の加入状況等についても、必要に応じ確認されます。

特定活動46号ビザで従事できる業務内容

認められ得る具体的な業務内容

(留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン)より。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00038.html

従事できない業務内容

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特定活動46号ビザの申請の流れと提出書類

申請の流れ

申請の種類は次の4つです。
認定:在留資格認定証明書交付申請(外国から特定活動46号ビザで呼び寄せる場合)
変更:在留資格変更許可申請(他のビザから特定活動46号ビザに変更する場合)
更新:在留期間更新許可申請(引き続き特定活動46号ビザで滞在する場合)
取得:在留資格取得許可申請(既に日本に滞在している外国人が特定活動46号ビザ取得を希望する場合)

ビザの申請は、大まかに次の流れで行われます。

▼必要書類の準備
▼申請書類の提出
▼審査
▼ビザの交付

既に日本に滞在している外国人が行うビザの変更、更新、取得の申請手続きは、ここまでの流れで完了となります。

一方、外国から新たに呼び寄せる認定の申請手続きは、次の流れが追加されます。
▼外国にいる申請人へ、交付されたビザを郵送
▼申請人は郵送されたビザを持って、自国にある日本大使館等へ行き査証を取得
▼ビザと査証を持って日本へ入国

申請のための提出書類

申請前の留意事項
・日本で発行される証明書は全て、発行日から3か月以内のものを提出します。
・提出書類が外国語の場合には、訳文(日本語)を添付します。
・申請して審査中に、追加で資料を求められる場合があります。

提出書類に関する詳細や補足説明は、以下のサイトに記載されているので必ずご確認下さい。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities11.html

提出書類は概ね以下の通りです。

認定 変更 更新 取得
申請書 1通
(認定、変更、更新、取得それぞれ違う様式のため要注意)
写真 1葉
返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、必要な額の郵便切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通
労働条件を明示する文書(写し) 1通
※雇用理由書
(日本語を活用した業務及び大学等において修得した知識を活用した業務等について、所属機関が説明・作成する文書で、所属機関名と代表者の記名が必要。様式自由。)
申請人の学歴等を証明する文書
申請人の日本語能力を証明する文書
事業内容を明らかにする次のいずれかの資料

  • 勤務先の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が記載された案内書
  • その他の勤務先等の作成した上記(1)に準ずる文書
  • 勤務先のホームページの写し(トップページのみで可)
  • 登記事項証明書
パスポートのコピー(可能な場合)
パスポート及び在留カード 提示
申請人の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの) 各1通
以下の区分により、それぞれ定める書類 1通

  • 日本の国籍を離脱した者 : 国籍を証する書類
  • 日本国籍離脱者以外の者で特定活動46号ビザ取得を必要とする者 : その事由を証する書類

※雇用理由書は、労働条件を明示する文書(労働条件明示書)のコピーの内容から、日本語を用いた業務等、特定活動46号ビザに該当する業務に従事することが明らかな場合は提出不要とされていますが、是非とも提出したい書類です。
この雇用理由書の内容の充実さによって許可率が大きく変わると言えます。
申請後、情報不足の場合は、入管から追加で資料の提出を求められることがあります。
内容のしっかりした雇用理由書を初めから提出していた場合、追加資料提出要請を受ける可能性が下がり、不必要に審査が長引くことや追加の手続きの手間も回避できます。
雇用理由書の内容としては、雇用側が伝えたいことより、「入管側が知りたいこと」をメインに記載すると良いでしょう。
しかし、専門知識のない場合、入管側の視点を正確に理解し、それに沿った文書を作成することは、難しい課題かもしれません。
そのため、雇用理由書の作成等は専門家のサポートを受けることを強くお勧めします。
専門家の助言を得ることで、入管の要求に合致した、説得力のある雇用理由書を作成することができます。

5 特定活動46号ビザのよくあるご質問・Q&A

Q:技術・人文知識・国際業務ビザとの違いは何ですか?

A:大きな違いは、現業業務に主として従事できること、と言えます。
技術・人文知識・国際業務ビザの場合、大学等で学んだ専攻科目に関連する専門性がある仕事に主として従事する必要があります。
一方、特定活動46号ビザでは、より柔軟な働き方が認められています。
具体的には、日本の大学や大学院で学んだ専攻科目や一般教養科目に関連する業務、または高度な日本語コミュニケーションを必要とする業務が仕事の一部に含まれていれば十分です。
そのため、製造ラインでの作業や接客など、いわゆる現業業務を主な業務としても問題ありませんが、現業業務のみに従事はできないことに注意が必要です。

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▶参考情報:技術・人文知識・国際業務ビザについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
技術・人文知識・国際業務ビザとは?申請の要件やポイントを法律事務所が解説

Q:特定活動46号ビザの更新は何回まで可能ですか?永住権は?

A:特に、更新回数の上限を定める規定はありませんので、何回でも更新は可能です。
順調に更新を重ねれば、永住者ビザへの道も拓けます。
永住者ビザの申請は複雑ですので、専門家へご相談することをお勧めします。

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▶参考情報:就労ビザの更新については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
外国人の就労ビザの更新手続|ビザ申請に強い法律事務所が解説
▶参考情報:永住ビザについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
永住者ビザを申請するには|必要書類やサポートなど、永住許可に強い法律事務所が解説

Q:転職(勤務先、受入機関等を変えること)はできますか?

A:できます。
注意点は、特定活動46号ビザから特定活動46号ビザへの転職は、同一ビザ内の転職ですが在留資格変更許可申請が必要になることです。
特定活動ビザは、法務大臣が個々の外国人について「特」に指「定」する「活動」であるとされています。
パスポートに指定書が貼られますが、その指定書によって受入機関や活動内容が具体的に指定されているため、例え活動内容が同じでも受入機関等が変わる場合は、在留資格変更許可申請が必要になります。

Q:家族は帯同できますか?

A:「配偶者」または「子」に限られますが、家族として帯同できます。
家族は、「特定活動47号ビザ」に該当します。
内容等は、家族滞在ビザと似ていますが、特定活動ビザは制度設計上、他のビザと少し異なる性質を持つため、本体のビザが特定活動である場合、家族も特定活動として管理されます。
ちなみに、特定活動47号ビザの正式名称は、在留資格「特定活動(本邦大学等卒業者の配偶者)」と言います。
入管のサイトでは、ひとくくりで「本邦大学等卒業者及びその配偶者等」と表現されています。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities.html

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▶参考情報:家族滞在ビザについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
家族滞在ビザの申請|必要書類や就労制限など、在留資格のポイントを法律事務所が解説

特定活動46号ビザがもたらすメリット

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※本稿の内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
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