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技術・人文知識・国際業務ビザについて
就労ビザの代表格と言われている「技術・人文知識・国際業務」ビザについて
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は就労ビザの代表格と言われています。
(便宜上、こちらの記事では在留資格のことをビザと表記いたします。)
ビザ別の在留外国人数TOP3
1「永住者」
880,178人
2「技能実習」
358,159人
3「技術・人文知識・国際業務」
346,116人
「永住者」は就労ビザに当たらず、「技能実習」は就労ビザに当たりますが、日本で学んだことを母国で生かす技能移転が主な目的です。
対して「技術・人文知識・国際業務」は就労そのものが目的で、就労ビザにおいて実質第1位となっていることから、就労ビザの代表格であると言えます。
実は、「技術・人文知識・国際業務」ビザは、「技術」と「人文知識」と「国際業務」でそれぞれ認められる要件が異なっています。
なぜ、一本化されているのでしょうか?
もし、技術と人文知識と国際業務でそれぞれ別のビザが必要だとすると、同じ会社内で文系から理系の仕事に変わる場合に、再度新たな申請が必要になります。
また、翻訳ソフトの開発など、文系・理系どちらの業務か不明確な場合に、判断に迷ったり、確認したりすることが必要になってしまいます。
一本化することで、それらの過程が不要になり、外国人材の受け入れをより円滑にすることが出来るためと言えます。
また「技術・人文知識・国際業務」は高度人材のビザの一つです。
高度人材とは、専門的な知識や技術を持つ外国人材を広く指す言葉です。
その中でも特に優れた能力を持つ人に「高度専門職」ビザが与えられますが、広義の高度人材には、「技術・人文知識・国際業務」などのビザ保持者も含まれます。
技術・人文知識・国際業務ビザの取得要件一覧表と特筆すべき要件のポイント
・技術・人文知識・国際業務ビザとは?申請の要件やポイントを法律事務所が解説
・資格外活動許可申請が必要な場合、不要な場合とは?就労ビザ申請に強い法律事務所が解説
「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得要件は、概ね次の表のようにまとめることが出来ます。
「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得要件一覧表
技術 | 人文知識 | 国際業務 | |
---|---|---|---|
学歴要件 | 大卒 or日本の専門卒 (技術は理系卒) |
||
実務要件 |
または
(※1) 10年 |
(※2) 3年 | |
業務内容要件 |
かつ
翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発等 |
||
特典 (学歴や実務の要件が不要となる) |
(※3)特定の試験等に合格していたら、学歴も実務要件も不要 | 大卒&翻訳、通訳、語学指導の業務なら実務3年は不要 |
特筆すべき要件のポイント
(※1)
10年以上の実務経験には、実際に企業で働いた期間だけではありません。
大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後 期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含むことが出来ます。
ただし、この場合の実務経験の算定は非常に専門的であるため、専門家に相談することをお勧めします。
(※2)
国際業務の実務要件が10年以上ではなく3年以上で良いとされている理由は、国際業務の活動は外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務に従事するものなので、出身国等において、このような業務に従事する機会は少ないと考慮されているからです。
(入管関係法大全第2巻〔第2版〕115ページ)
(※3)
学歴や職歴の要件を満たしていなくても、特定の試験等を合格している場合は、「技術」の取得要件を満たすこととなります。
該当する試験等の有無は、下記リンクよりご確認いただけます。
技術・人文知識・国際業務ビザの業務内容
「技術・人文知識・国際業務」の活動とは
「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当する活動の説明として、
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動
とされています。
簡略に述べると、「技術・人文知識・国際業務」の活動は、日本の会社と外国人が雇用契約を結んで理系か文系か外国人ならではの業務に従事する活動、と言えます。
「技術」「人文知識」「国際業務」の職種・業務の例
類型・カテゴリー | 職種・業務の例 |
技術 | ・ システムエンジニア
・ プログラマー ・ 航空機の整備 ・ 機械等の設計・開発 ※1 営業職 |
人文知識 | ・ 経理
・ 金融 ・ 総合職 ・ 会計 ・ コンサルタント ※1 営業職 ※2 コンピュータソフトウェア開発 (人文科学の知識を要するもの) |
国際業務 | ・ 翻訳・通訳
・ 語学の指導 ・ 海外取引業務 ・ 外国文化をベースとした広報、宣伝、デザイン、商品開発など ※1 営業職 ※3 ホテルマン |
※1~※3の、就職希望者の多い営業職、コンピュータソフトウェア開発、ホテルマンについて特筆します。
※1 営業職の業務について
理系の専門技術に関する営業であれば「技術」に、
文系の専門知識を用いた営業であれば「人文知識」に、
語学力を生かした海外顧客向けの営業であれば「国際業務」に該当し得ます。
※2 コンピュータソフトウェア開発の業務について
一見、「技術」にしか該当しないと思われるコンピュータソフトウェア開発も、人文科学の知識を要する場合は「人文知識」に該当し得ます。
文系の大学を卒業した者でも、コンピュータソフトウェア開発業務に就ける可能性があります。
※3 ホテルマンの業務について
外国人客が多い高級なリゾートホテルや観光ホテルにて通訳業務や海外客の新規市場開拓、営業戦略立案担当業務等に従事するホテルマンは許可の可能性があります。
ホテルのフロントにおけるホテルマンとしての業務は単純就労とみなされやすいため、フロント業務の重要性を具体的に立証する必要があります。
外国人客が多くないビジネスホテルでの許可は難しい傾向があります。
「別紙 職種一覧」について
なお、申請書を見ていただくと、「別紙 職種一覧」というものがあります。
「技術・人文知識・国際業務」ビザを申請する場合は、この一覧の2~18、24~31、51~54、999から選択することになっています。
「別紙 職種一覧2~18」
2 管理業務(経営者を除く)
3 調査研究
4 技術開発(農林水産分野)
5 技術開発(食品分野)
6 技術開発(機械器具分野)
7 技術開発(その他製造分野)
8 生産管理(食品分野)
9 生産管理(機械器具分野)
10 生産管理(その他製造分野)
11 建築・土木・測量技術
12 情報処理・通信技術
13 法律関係業務
14 金融・保険
15 コピーライティング
16 報道
17 編集
18 デザイン
「別紙 職種一覧24~31」
24 教育(教育機関を除く)
25 翻訳・通訳
26 海外取引業務
27 企画事務(マーケティング,リサーチ)
28 企画事務(広報・宣伝)
29 会計事務
30 法人営業
31 CADオペレーション
「別紙 職種一覧51~54」
51 接客(販売店)
52 接客(飲食店)
53 接客(その他)
54 製品製造
「別紙 職種一覧999」
999 その他
どの職種が「技術」なのか「人文知識」なのか「国際業務」なのかまでは分類されておりません。
実際の申請でも、999の「その他」を選択し、職種一覧には載っていない職種で申請する場合が多いです。
職種一覧の中でどの職種に該当するのか、または申請しようと考えている職種が一覧に無く「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当するのかなど疑問がある場合には、是非専門家へ相談することをお勧めします。
技術・人文知識・国際業務ビザの許可率がぐんと上がる申請書類4選
採用理由書
なぜ当該外国人を採用したのか、その理由や経緯を詳しく具体的に記載します。
記載内容として、
・受入企業の事業内容
・応募・面接等の採用経緯
・当該外国人の人格の良好性・協調性
などが挙げられます。
業務内容説明書
当該外国人の業務内容を詳しく具体的に説明します。
記載内容として、
・業務は一定の専門性を要するものであることの説明
・安定して継続的に十分な業務量が発生することの説明
・業務内容と当該外国人の能力・知識・学歴・職歴に関連性があることの説明
・当該外国人が担う役割が重要であることの説明
などが挙げられます。
業務内容説明書を裏付ける書類
前述した業務内容説明書を裏付ける書類がある場合は、積極的に提出します。
例として、
・海外取引業務の場合 :インボイスやLCなど
・通訳・翻訳業務の場合:当該言語を必要とする取引の範囲や量を具体的に示すもの
などが挙げられ、業務が実際に存在することや、採用の必要性が高いことへのアピールに繋がります。
申請人の能力、知識、実績等を裏付ける書類
当該外国人が業務内容と関連する能力や知識を修得している場合は、こちらも積極的に提出します。
例として、
・語学力が分かる検定試験の結果
・成績証明書
・作品実績
などが挙げられます。
ケース別:技術・人文知識・国際業務ビザの申請方法
外国にいる外国人を採用し、日本で働いてもらう場合
・雇用契約の締結
⇒企業と外国人が雇用契約を結びます。(報酬の額は日本人と同等かそれ以上)
・在留資格認定証明書の交付申請
⇒入国管理局へ企業が申請をします。
・在留資格認定証明書の送付
⇒企業宛てに送られて来た在留資格認定証明書を外国人本人に送付します。
・外国人による査証の申請
⇒自国の日本大使館へ在留資格認定証明書を持参し、査証を申請します。
・入国と業務開始
⇒査証が発給されたら来日し、就労を開始できます。
(補足)
在留資格認定証明書は査証の発給を保証するものではありません。
同証明書は、入国審査手続きの簡易迅速化と効率化を図ることを目的として、外国人が上陸審査の際に日本で行おうとする活動が適法で、入国条件に合致していることを法務大臣が証明するものです。
査証は在外公館が発給します。
発給元が違うため、査証の発給基準を満たさなければ、同証明書が発給されていても査証は発給されない可能性があります。
日本にいる留学生を採用する場合
・雇用契約の締結
⇒企業と外国人が雇用契約を結びます。(報酬の額は日本人と同等かそれ以上)
・在留資格変更の許可申請
⇒入国管理局へ外国人が申請をします。
・業務開始
⇒許可が下りたら、指定された日から就労を開始できます。
他社に勤務中の外国人を転職で採用する場合
・雇用契約の締結
⇒企業と外国人が雇用契約を結びます。(報酬の額は日本人と同等かそれ以上)
・就労資格証明書の交付申請(任意) or 在留資格変更の許可申請
⇒転職先での業務内容が、
現在のビザの活動範囲内:入国管理局へ外国人が就労資格証明書の交付申請をします。(任意)
現在のビザの活動範囲外:入国管理局へ外国人が在留資格変更の許可申請をします。
・業務開始
⇒就労資格証明書の交付が不可と判断されなければ、引き続き就労できます。
在留資格変更の許可が下りたら、指定された日から就労を開始できます。
勤務先に変更がない状態で技術・人文知識・国際業務ビザを更新する場合
・在留期間更新の許可申請
⇒入国管理局へ外国人が申請をします。
・業務開始
⇒許可が下りたら、引き続き就労できます。
転職後に技術・人文知識・国際業務ビザを更新する場合
・「所属機関等に関する届出」を提出(必須)
⇒転職後14日以内に入国管理局へ外国人が届出をします。
・在留期間更新の許可申請
⇒入国管理局へ外国人が申請をします。
・業務開始
⇒許可が下りたら、引き続き就労できます。
技術・人文知識・国際業務ビザの申請手続き
窓口での申請とオンラインによる申請
ビザの申請方法には2種類あります。
・窓口申請 :入管へ出向いて申請する従来からの方法
・オンライン申請:自宅やオフィスからオンラインで申請する方法
オンライン申請は比較的新しいサービスで、全てのビザ申請にオンライン対応しているわけではないため、下記のリンクより確認が必要となります。
申請が出来る者
申請が出来る者は、概ね次のとおりです。
・外国人本人・法定代理人・親族(配偶者・子・父又は母)
・申請人から依頼を受けた申請取次弁護士・申請取次行政書士
・入管長から申請等取次者と承認され、申請人から依頼を受けた所属機関、公益法人又は登録支援機関の職員の方
申請先
申請先は、申請人のいる国によって変わってきます。
・申請人が日本国内にいる場合:申請人の居住地を管轄する地方出入国在留管理局
・申請人が海外にいる場合 :申請人が就労予定の事業所の所在地を管轄する地方出入国在留管理局
オンライン申請の場合でも、システムを通し依然として管轄の入国管理局が割り当てられます。
まとめ
専門家への依頼が推奨される理由
「技術・人文知識・国際業務ビザの許可率がぐんと上がる申請書類4選」でご紹介した、採用理由書や業務内容説明書は、提出の義務は無いものの、審査において実務上では許否の判断に直結する非常に重要な書類です。
これらの書類は単なる事実の羅列ではなく、入国管理局が「何を知りたいか」という視点に立って作成する必要があります。
この視点を理解し、的確な書類を作成するには、入管実務に詳しい専門家のサポートを受けることが強く推奨されます。
専門家は過去の許可・不許可事例を踏まえ、審査官の視点に沿った説得力のある書類を作成することが出来ます。
また、業務内容説明や申請人の能力等を裏付ける書類についても、申請人の個別状況に応じて、最適な資料を提案することが重要です。
例えば、同じ通訳業務でも、業界や取引先の特性によって必要となる裏付け資料は異なります。
専門家は経験に基づいて、申請人の状況を多角的に分析し、審査官を納得させるための適切な裏付け資料を包括的に提案することができます。
自己申請で不許可となった場合、不許可の理由を分析し書類を改めて作り直すこととなり、再申請のための時間と労力、そして事業計画の遅延など、企業にとっても申請人にとっても大きな負担となります。
この間、予定していた業務開始が遅れるだけでなく、優秀な人材を失うリスクも生じます。
さらに不許可歴は今後の申請にも影響を与える可能性があるため、初回から慎重な対応が求められます。
このような複雑なプロセスや潜在的なリスクを考慮すると、ビザ申請の専門家へ最初から依頼することで、効率的かつ効果的に申請を進めることができるからです。
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※本稿の内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。
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執筆者:弁護士小野智博
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