ビザ申請

興行ビザの申請は厳しい?外国人アーティストを日本へ!ビザ申請に強い法律事務所が解説

by 弁護士 小野智博

興行

興行ビザとは?

興行ビザの概要

興行ビザとは、エンターテイナービザとも呼ばれ、興行や芸能を活動の内容とし、外国の俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手などの方々が日本で活動するための就労ビザの一つです。
1970年代後半から1980年代にかけて、興行ビザを利用した外国人女性の不法就労や人身売買的な問題が社会問題化し、興行ビザの審査基準が厳格化されたという背景があります。
しかし、近年アフターコロナを見据え、インバウンド需要の回復や文化交流の促進のため、興行ビザの運用に2023年8月1日から一定の柔軟性が見られるようになってきました。

対象となる職種と活動内容

興行や芸能の活動内容としては、
歌謡、舞踊、演奏、演劇、演芸、スポーツ、商品等の宣伝、放送番組や映画の製作、商業用写真の撮影、商業用レコード等の録音等などが挙げられます。
これらの活動を日本で行う外国の歌手、ダンサー、演奏者、指揮者、俳優、音楽家、舞台芸術家、プロスポーツ選手などの職種の方々が、興行ビザの対象となります。

在留期間と更新手続きについて

興行ビザの在留期間は、審査の結果、「3年」、「1年」、「6ヶ月」、「3ヶ月」または「30日」のいずれかで許可され、在留期間満了前に更新手続きを行うことで、引き続き日本で興行ビザにて就労できます。
6ヶ月以上の在留期間を有する者は、在留期間満了の概ね3ヶ月前から更新手続きが可能です。
ただし、更新の際には、引き続きビザの要件を満たしていることなどを証明する必要があります。

興行ビザが認められるための要件

興行ビザの種類

興行ビザは、大きく3種類(基準〇号)に分けられ、要約すると次のようになります。
▼基準1号
 ・歌謡、舞踊、演奏、演劇または演芸の興行に係る活動を行おうとする場合。
   基準1号は
    基準1号(イ)
    基準1号(ロ)
    基準1号(ハ)に分類されています。

▼基準2号
 ・プロのスポーツ選手などが大会等に係る活動を行おうとする場合。
  (サッカー、野球、バスケットボールなど)

▼基準3号
 ・商品又は事業の宣伝に係る活動
 ・放送番組(有線放送番組を含む。)又は映画の製作に係る活動
 ・商業用写真の撮影に係る活動
 ・商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音又は録画を行う活動
  のいずれかに該当する芸能活動を行おうとする場合。

興行ビザが認められるための種類ごとの要件

基準2号と基準3号は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」
のみが要件となっています。
後述する基準1号(イ)(ロ)(ハ)のように、招へい機関(興行活動を行う外国人を日本に受け入れ、その活動を管理・支援する日本側の組織や団体。招聘機関とも書き、しょうへいきかんと読みます。)、実施施設、実施の場所、興行ビザ申請人に関する要件等は特に規定されておりません。
では、基準1号(イ)(ロ)(ハ)の要件を見ていきます。

▼基準1号(イ)
適正に実施している実績がある日本の招へい機関が受け入れる場合に該当します。
具体的には、興行ビザ申請人と契約する日本の招へい機関が、次の要件に全て該当する場合です。

・外国人の興行に係る業務に通算して3年以上の経験を有する経営者又は管理者がいる。
・当該機関の経営者又は常勤の職員が、人身取引を行っていない、売春防止法等の罪により刑に処せられていない、暴力団員でない等。
・過去3年間に締結した申請人と日本の機関との契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払い義務を負う報酬の全額を支払っている。(未払いの報酬が無い。)
・外国人の興行に係る業務を適正に遂行する能力を有している。

招へい機関の他、公演施設に関する要件もあり、風営法 第2条 第1項 第1号~第3号に規定する営業を営む施設以外の施設であることが求められ、風営法で言う施設は端的に次のような施設を指します。
(第1号)キャバレー等の設備を設けて客の接待を営む施設
(第2号)10ルクス以下の低照度で喫茶店、バー等の設備を設けて客に飲食を提供する施設
(第3号)他から見通すことが困難かつ広さが5平方メートル以下である客席を設けた施設で、喫茶店、バー等の設備を設けて客に飲食を提供する施設
これらの施設での興行活動は、基準1号(イ)の場合にはNGとなります。

▼基準1号(ロ)
適正実施の実績が無く新たに受け入れようとする場合でも、問題の生じるおそれが少なく、興行ビザ申請人の従事しようとする活動が、次の要件の中のどれかに当てはまる場合に該当します。

・国・地方公共団体等が主催するもの又は学校教育法に規定する学校等で行われる。
・国、地方公共団体等の資金援助を受けて設立された日本の公私の機関が主催する。
・外国を題材にしたテーマパークで敷地面積10万㎡以上の施設で行われる。
・客席で飲食物の有償提供がなく、客の接待を行わず、客席部分の収容人員が100人以上又は非営利の施設で行われる。
・報酬1日50万円以上で、30日を超えず日本に在留して行われる。

▼基準1号(ハ)
こちらは、(イ)にも(ロ)にも当てはまらない場合に該当します。
興行ビザ申請人、日本の招へい機関、公演施設に厳格な要件が課され、主なものは次の通りです。

興行ビザ申請人の要件
・外国の教育機関で当該活動に係る科目を二年以上専攻している。
・外国で2年以上の当該活動に係る経験を有している。
この要件のどちらかに当てはまる必要があります。

日本の招へい機関の要件
・外国人の興行に係る業務に通算して3年以上の経験を有する経営者又は管理者がいる。
・5名以上の職員を常勤で雇用している。
・当該機関の経営者又は常勤の職員が、人身取引を行っていない、売春防止法等の罪により刑に処せられていない、暴力団員でない等。
・過去3年間に締結した申請人と日本の機関との契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払い義務を負う報酬の全額を支払っている。(未払いの報酬が無い。)
この要件の全てに当てはまる必要があります。

※ただし、「技能」ビザを保持するコックがいる外国の民族料理を提供する飲食店との契約で、月額20万円以上の報酬で、当該飲食店にて当該外国の民族音楽に関する歌謡、舞踊又は演奏などの活動に従事する場合は、これらの要件を満たさなくても許可になる可能性があります。

公演施設の要件
・不特定多数の客を対象に外国人の興行を行う施設である。
・風営法 第2条 第1項 第1号に規定する営業を営む施設である場合は、専ら客の接待に従事する従業員が5名以上いて、興行ビザ申請人が客の接待に従事するおそれがない。
・13平方メートル以上の舞台がある。
・9平方メートル(出演者が5名を超える場合は、9平方メートルに5名を超える人数の1名につき1.6平方メートルを加えた面積)以上の出演者用の控室がある。
・施設の従業員が5人以上いる。
・施設の経営者や常勤職員にも犯罪歴や暴力団関係がない。
この要件の全てに当てはまる必要があります。

興行ビザの申請の流れと必要書類

申請の流れ

ビザの申請は、大まかに次の流れで行われます。

・必要書類の準備
・申請書類の提出
・審査
・ビザの交付

既に興行ビザを持って日本に滞在されている方が、興行活動を継続して行う場合である更新の申請手続き(在留期間更新許可申請と言います。)は、ここまでの流れで完了となります。

一方、外国から新たに呼び寄せる場合(在留資格認定証明書交付申請と言います。)は、次の手続きが追加されます。

・外国にいる申請人へ、交付されたビザを郵送
・申請人は郵送されたビザを持って、自国にある日本大使館等へ行き査証を取得
・日本へ入国

申請のための必要書類

申請の種類に応じて、提出書類チェックシートを活用し、必要書類を把握することができます。

▼基準1号(イ)の必要書類
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/10_00165.html

提出書類チェックシート(呼び寄せる場合)
「興行」に係る提出書類一覧 (在留資格認定証明書交付申請用)基準1号イ 〈表1〉
https://www.moj.go.jp/isa/content/001406735.pdf

基準1号(イ)で呼び寄せる場合は、契約機関(日本の招へい機関)が、カテゴリー1とカテゴリー2に区分されていることにご注意ください。

・カテゴリー1:過去に基準1号イに適合するとして在留資格認定証明書の交付を受けたことがある機関。
・カテゴリー2:カテゴリー1に該当しない機関。

▼基準1号(ロ)の必要書類
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/entertainer02.html

提出書類チェックシート(呼び寄せる場合)
「興行」に係る提出書類一覧 (在留資格認定証明書交付申請用)基準1号ロ 〈表2〉
https://www.moj.go.jp/isa/content/001404145.pdf

▼基準1号(ハ)の必要書類
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/entertainer01.html

提出書類チェックシート(呼び寄せる場合)
「興行」に係る提出書類一覧 (在留資格認定証明書交付申請用)基準1号ハ 〈表3〉
https://www.moj.go.jp/isa/content/001404146.pdf

▼基準2号の必要書類
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/entertainer03.html

提出書類チェックシート(呼び寄せる場合)
「興行」に係る提出書類一覧 (在留資格認定証明書交付申請用)基準2号 〈表4〉
https://www.moj.go.jp/isa/content/001404147.pdf

▼基準3号の必要書類
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/entertainer04.html

提出書類チェックシート(呼び寄せる場合)
「興行」に係る提出書類一覧 (在留資格認定証明書交付申請用)基準3号 〈表5〉
https://www.moj.go.jp/isa/content/001404148.pdf

▼更新の必要書類
更新の場合は、基準1号(イ)(ロ)(ハ)、基準2号、基準3号の全てにおいて共通です。
「興行」に係る提出書類一覧 (在留期間更新許可申請用)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001399945.pdf

興行ビザのポイント(よくあるご質問・Q&A)

Q:興行ビザ申請人が大物アーティストだったら、薬物関係の犯罪歴があっても来日できますか?

A:残念ですが、ほぼ不可能と言えます。入管法 第5条 上陸の拒否 に該当し、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤等の取締りに関する法令に違反して刑に処せられた者は、日本に上陸することができません。

Q:実績の無い新人アーティストでも海外から呼べますか?

A:基準1号(イ)の適正に実施している実績がある日本の招へい機関が受け入れる場合に該当すれば、新人アーティストを呼べる可能性があります。
2023年8月1日の法改正以前は、興行ビザ申請人に2年以上の興行関連の学歴や活動実績を求めていましたが、法改正後はその要件が無くなったため、呼びやすくなりました。

Q:客席部分の収容人員が100人以上とは具体的にはどういう施設ですか?

A:基準1号(ロ)に規定されている客席部分の収容人員が100人以上の施設についてですが、これは立ち見でも収容できる施設ならばOKと言えます。従って、少し大きめなら、かなりの施設が該当すると考えられ、施設選びの選択の幅が広がりました。

Q:最短で15日だった従来の在留期間が30日に拡大されたメリットは何ですか?

A:約2週間の在留期間では企画が難しかった全国ツアーなどのイベントが開催しやすくなったことです。

Q:適正に実施している実績がまだ無い招へい機関ですが、海外からアーティストを呼べますか?

A:客席で飲食物の有償提供がなく、客の接待を行わず、客席部分の収容人員が100人以上又は非営利の施設で行われることを規定した基準1号(ロ)で申請すれば呼べる可能性があります。
具体的には、収容人員が100人以上無くても、非営利の施設で実施する、または
営利目的施設でも100人以上収容できて、飲食物はカウンターから客が自分の席に持っていくセルフサービス方式を採用することで、基準を満たす可能性があります。

興行ビザの申請を弁護士・行政書士に依頼するメリット

法改正によって、興行ビザの審査基準が緩和されましたが、自身の状況がどの基準に該当するのか、あるいは他のビザのほうがより適切ではないかという疑問や不安を抱えることもあるかと思います。
興行の特性上、公演や大会のスケジュールは事前に決定していることが多く、開催日までに確実に興行ビザを取得する必要があります。申請書類の不備や不足があれば、追加資料の提出を求められ、審査期間が長引く厳しい状況にもなりかねません。

そのような時は、是非専門家による個別のアドバイスを受けることを検討してみてください。
専門家に依頼することで、時間と労力を節約でき、専門知識を活かした高品質な書類作成を行うため、許可の可能性が高まります。
また、潜在的な問題点を事前に把握し、対策を講じることができるため、スムーズな申請手続きが期待できます。
さらに、在留期間の更新時にも継続的なサポートが受けられ、長期的な在留計画(例えば永住など)に基づいたアドバイスも得ることができます。
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、外国人のビザ全般に関する無料相談を受け付けています。申請書類の適切な準備から法的アドバイス、そして最適な申請戦略の立案まで、包括的なサポートの対応、提供をいたします。
当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を保持していることを所属の条件とし、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。お気軽にご安心してご相談ください。


※本稿の内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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