目次
日本人の配偶者ビザとは?
日本人の配偶者ビザの概要
日本人の配偶者ビザは、正確には「日本人の配偶者等」と呼ばれる在留資格です。
「等」とされているのは、日本人の配偶者の他、日本人の子供もこのビザになるためです。
在留期間は、5年、3年、1年又は6か月のいずれかが付与されます。
このビザは、日本人の配偶者、日本人の特別養子又は日本人の子として出生した者という身分又は地位を有する者としての活動に該当するため、日本在留中に行うことができる活動の範囲に制限が無く、自由に就労や転職をしたり、無職になったりも可能です。
なお「配偶者」には、相手方の配偶者が死去した者又は離婚した者は含まれません。
特別養子とは、特別養子縁組という手続きにより、法的に実子と同じ扱いを受ける子供のことを言います。
日本人の配偶者ビザの対象者
対象者の該当例としては、次の通りです。
・日本人男性と結婚した外国人妻、または日本人女性と結婚した外国人夫
・日本人を親に持つ実子
・日本人に特別養子縁組された子供 など。
日本人の配偶者ビザが認められるための要件
外国人(申請人)の方が日本人の配偶者(夫又は妻)である場合
日本人と結婚した外国人がこのビザを取得するためには、次の条件を満たす必要があります。
・日本の法律でも母国の法律でも認められる法律婚をしている(事実婚ではない)
・実態を伴う婚姻関係である
・安定した生活基盤がある
・素行が良好である など
詳しくは、後述する「よくある不許可のパターン」で見ていきます。
外国人(申請人)の方が日本人の実子・特別養子である場合
日本人を親に持つ実子や、特別養子縁組によって日本人の子となった方の場合、次の条件を満たす必要があります。
・出生証明書や戸籍謄本などの公的書類で日本人との親子関係が証明できる
・素行が良好である など
日本人の配偶者ビザの申請の流れと必要書類
申請の流れ
ビザの申請は、大まかに次の流れで行われます。
・必要書類の準備
・申請書類の提出
・審査
・ビザの交付
日本に滞在し、すでにビザを持つ申請人が行うビザの変更や更新の申請手続きは、ここまでの流れで完了となります。
(変更の手続きは在留資格変更許可申請、更新の手続きは在留期間更新許可申請と言います。)
一方、外国から新たに呼び寄せる場合は、次の手続きが追加されます。
(呼び寄せる手続きは在留資格認定証明書交付申請と言います。)
・外国にいる申請人へ、交付されたビザを郵送
・申請人は郵送されたビザを持って、自国にある日本大使館等へ行き査証を取得
・日本へ入国
申請のための必要書類
申請前の留意事項
日本で発行される証明書は全て、発行日から3か月以内のものを提出します。
提出書類が外国語の場合には、訳文(日本語)を添付します。
申請して審査中に、追加で資料を求められる場合があります。
出入国在留管理庁のWEBサイトが案内する必要書類以外に、専門家の視点から提出が望ましい書類もあります。
申請の種類は主に次の3つです。
認定:在留資格認定証明書交付申請(外国から呼び寄せる場合)
変更:在留資格変更許可申請(他のビザから日本人の配偶者等ビザに変更する場合)
更新:在留期間更新許可申請(引き続き日本人の配偶者等ビザで滞在する場合)
日本人の配偶者と、日本人の子供の2パターンに分けて、必要書類を見ていきます。
在留資格「日本人の配偶者等」(外国人(申請人)の方が日本人の配偶者(夫又は妻)である場合)の申請のための必要書類は、概ね次の通りです。
申請の種類によって多少の違いがあるため、正確には出入国在留管理庁のWEBサイトにてご確認ください。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/spouseorchildofjapanese01.html
認定 | 変更 | 更新 | |
---|---|---|---|
申請書1通(認定、変更、更新それぞれ違う様式のため要注意) | 〇 | 〇 | 〇 |
写真 1葉 | 〇 | 〇 | 〇 |
配偶者(日本人)の方の戸籍謄本(全部事項証明書) 1通 ※ 申請人との婚姻事実の記載があるもの。婚姻事実の記載がない場合には、戸籍謄本に加え婚姻届出受理証明書を提出。 |
〇 | 〇 | |
申請人の国籍国(外国)の機関から発行された結婚証明書 1通 ※お二方の婚姻が記載された外国機関発行の戸籍謄本の提出でも可。 |
〇 | 〇 | |
配偶者(日本人)の方の戸籍謄本(全部事項証明書) 1通 ※ 申請人との婚姻事実の記載があるもの。 |
〇 | ||
日本での滞在費用を証明する資料 (1) 申請人の滞在費用を支弁する方の直近1年分の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの) 各1通 ※ 1月1日現在お住まいの市区町村の区役所・市役所・役場で発行。 ※ 1年間の総所得及び納税状況(税金を納めているかどうか)の両方が記載されている証明書であれば、いずれか一方でかまいません。 (2) その他 ※ 入国後間もない場合や転居等により、(1)の資料で滞在費用を証明できない場合は、以下の資料などを提出して下さい。 a 預貯金通帳の写し 適宜 ※ Web通帳の画面の写し等(取引履歴が分かるもの)でも可。 ただし、加工等できない状態で印刷されたものに限ります。 (Excelファイル等は不可)。 b 雇用予定証明書又は採用内定通知書(日本の会社発行のもの) 適宜 c 上記に準ずるもの 適宜 |
〇 | 〇 | 〇 |
日本に居住する配偶者(日本人)による身元保証書 1通 | 〇 | 〇 | 〇 |
配偶者(日本人)の世帯全員の記載のある住民票の写し 1通 ※個人番号(マイナンバー)は省略し、他の事項は省略しない。 |
〇 | 〇 | 〇 |
質問書 1通 | 〇 | 〇 | |
夫婦間の交流が確認できる資料 a スナップ写真 (お二人で写っており、容姿がはっきりと確認できるもの。アプリ加工したものは不可。) 2~3葉 b その他(以下で提出できるもの) ・SNS記録 ・通話記録 |
〇 | 〇 | |
返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、必要な額の郵便切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通 | 〇 | ||
パスポートと在留カードの提示 | 〇 | 〇 |
在留資格「日本人の配偶者等」(外国人(申請人)の方が日本人の実子・特別養子である場合)の申請のための必要書類は、概ね次の通りです。
申請の種類によって多少の違いがあるため、正確には出入国在留管理庁のWEBサイトにてご確認ください。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/spouseorchildofjapanese02.html
認定 | 変更 | 更新 | |
---|---|---|---|
申請書1通(認定、変更、更新それぞれ違う様式のため要注意) | 〇 | 〇 | 〇 |
写真 1葉 | 〇 | 〇 | 〇 |
申請人の親の戸籍謄本又は除籍謄本(全部事項証明書) 1通 | 〇 | ||
日本人(申請人の親又は養親)の戸籍謄本又は除籍謄本(全部事項証明書) 1通 ※お二方の婚姻が記載された外国機関発行の戸籍謄本の提出でも可。 |
〇 | ||
日本で出生した場合は次のいずれかの文書 1通 (1) 出生届受理証明書 (2) 認知届受理証明書 |
〇 | 〇 | |
海外で出生した場合は次のいずれかの文書 1通 (1) 出生国の機関から発行された出生証明書 (2) 出生国の機関から発行された申請人の認知に係る証明書(認知に係る証明書がある方のみ) |
〇 | 〇 | |
特別養子の場合は次のいずれかの文書 1通 (1) 特別養子縁組届出受理証明書 (2) 日本の家庭裁判所発行の養子縁組に係る審判書謄本及び確定証明書 |
〇 | 〇 | |
日本での滞在費用を証明する資料 (1) 申請人の滞在費用を支弁する方(複数の方が扶養する場合は収入の多い方)の直近1年分の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの) 各1通 ※ 1月1日現在お住まいの市区町村の区役所・市役所・役場で発行。 ※ 1年間の総所得及び納税状況(税金を納めているかどうか)の両方が記載されている証明書であれば、いずれか一方でかまいません。 (2) その他 ※ 入国後間もない場合や転居等により、(1)の資料で滞在費用を証明できない場合は、以下の資料などを提出して下さい。 a 預貯金通帳の写し 適宜 ※ Web通帳の画面の写し等(取引履歴が分かるもの)でも可。 ただし、加工等できない状態で印刷されたものに限ります。 (Excelファイル等は不可)。 b 雇用予定証明書又は採用内定通知書(日本の会社発行のもの) 適宜 c 上記に準ずるもの 適宜 |
〇 | 〇 | 〇 |
返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、必要な額の郵便切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通 | 〇 | ||
日本に居住する日本人(申請人の親又は養親)等による身元保証書 1通 | 〇 | 〇 | 〇 |
日本人(申請人の親又は養親)の住民票(世帯全員の記載があるもの) 1通 ※個人番号(マイナンバー)は省略し、他の事項は省略しない。 | 〇 | 〇 | |
パスポートと在留カードの提示 | 〇 | 〇 |
・変更と更新の場合では、16歳未満は写真不要となっています。
・日本での滞在費用を証明する資料について、「申請人が自ら滞在費用を支弁する場合は、申請人の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)を提出して下さい。」の旨が更新の場合のみ追記されています。
日本人の配偶者ビザのポイント(よくあるご質問・Q&A)
Q:提出資料のうち、「質問書」にはどう答えればいいですか?
A:質問書の2ページ目にある、結婚に至った経緯(いきさつ)が特に重要です。
知り合った経緯、交際することになったきっかけ、交際の態様、結婚することになった経緯・理由、現在の生活状況、将来の家族計画などについて、当事者にしか語り得ない具体的なエピソードを満載にして詳細に答えます。
質問書の雛形を見ると、1ページ分にも満たない記入スペースですが、実際には別紙にて数ページにわたり詳細に説明することで申請の成功率が大幅に向上します。
具体的なエピソードや経緯を効果的に記載するため、一貫性のあるストーリーを構築し説得力のある形で提示する以外にも、実務上の様々なコツやノウハウが存在します。
そのため、経験豊富な専門家に相談することを強くお勧めします。
Q:提出資料のうち、「SNS記録」はどんなものを提出すればいいですか?
A:LINEやMessenger、メール等でのメッセージによる頻繁なやりとりを、A4用紙に数枚から数十枚ほどプリントアウトし提出します。
ビデオ通話中のお互いの顔が写った画面キャプチャなども有効です。
代わりに、手書きの手紙のコピーや通話記録の明細などでもOKです。
なお、スナップ写真の提出も求められ、これらは関係の実在性を証明する重要な資料となります。
頻繁なメッセージのやりとりや様々なスナップ写真の中から、申請にとって最も効果的で適切な部分を選び出し、それを適切に提示することは、想像以上に繊細で戦略的な作業です。
選んだ内容を効果的に補足説明し、申請人の状況を最も有利に表現するスキルも必要なことから専門家への相談をお勧めします。
日本人の配偶者ビザで、よくある不許可のパターン
偽装結婚を疑われる場合
・夫婦の年齢差が大きい
・交際のきっかけが恋人紹介所や結婚紹介所又はマッチングアプリ等による
・交際期間が短い、対面で会った回数が少ない
・結婚の事実を家族や友人に知らせていない
・申請人と日本人配偶者が相互に意思疎通できる言語能力を有していない
・日本人配偶者側に外国人との離婚歴あるいは外国人申請者側に日本人との離婚歴がある
など、これらの場合は、結婚の信憑性・安定性に対して疑念を招きやすい要因となります。
しかし、真摯な愛情に基づく本物の結婚であれば、決して諦める必要はありません。
専門家のアドバイスを受けながら真面目に誠実に対応することで、どのパターンに該当しようとも疑念の払拭が可能です。
収入が少ない場合
直近の1年間の収入額が、本人に被扶養者を加えた人数に78万円を乗じた金額(国民年金の基礎年金の年間受給額が参考とされています。)以上であるか否かが、一応の目安とされています。
収入が少ない場合は専門家とともに別の方法を様々な方面から検討し、金銭面での結婚生活の安定性や継続性が問題ないことを立証していくと良いでしょう。
素行が良くない場合
犯罪歴、在留期間の超過(オーバーステイ)、不法入国、不法就労、資格外活動違反、難民申請をしたなどの経歴は、ビザ審査において不利に作用する可能性が高く、慎重に審査されます。
そのため、このような経歴がある場合は、専門家のアドバイスを受けながら、状況を適切に説明し、現在の誠実な姿勢を示すことがとても重要となります。
日本人の配偶者ビザをより確実に取得するために
日本人の配偶者ビザを申請するに当たり、必須ではないけれども場合によっては是非とも提出したい書類として、上申書などがあります。
ここで言う上申書とは、申請人とその日本人配偶者が日本で幸せに暮らせることを願いその実現をお願いする、申請人の親族等による文書のことです。
一見すると単純な文書に思えるかもしれませんが、実際には審査官の心を動かす力を持つ、極めて重要な文書です。
単なる形式的な内容ではなく、申請人の状況を適切に反映し、説得力のある内容を適切にバランスよく盛り込み、審査官の共感を得られるような効果的な上申書を作成するには、豊富な経験と専門的な知識が求められます。
専門家のアドバイスを受けることにより、申請人の親族等は申請人の状況に最適な上申書を作成でき、申請全体の説得力と成功率を高めることができるでしょう。
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、日本人の配偶者ビザを含む外国人のビザ全般に関する無料相談を受け付けています。いつでもご相談ください。
当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。ご安心してご相談ください。
※本稿の内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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