ビザ申請

配偶者ビザの不許可率は? 申請前に知っておくべき審査基準などの知識と対策を解説

by 弁護士 小野智博

配偶者ビザの審査基準と不許可率と対策

配偶者ビザの不許可の確率について

ビザの許可率については、実際には公表されていないため、配偶者ビザに関しても、許可率・不許可率は、正確には分からないのが現状です。

しかし、実務上は、配偶者ビザの審査基準を知り、よくある不許可のケースとその理由を分析して、不許可を回避するための対策を適切に行うことで、不許可率をゼロに近づけることができます。

重要なのは、審査官の視点を理解し、疑問を持たれる要素を事前に解消することと言えます。

▶︎参考情報:日本人の配偶者ビザを取得できる条件については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
日本人の配偶者ビザを取得できる条件とは?ビザ申請に強い法律事務所が解説
▶︎参考情報:配偶者ビザの更新については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
・配偶者ビザの更新に必要な書類やポイントについて|国際業務に詳しい法律事務所が解説
▶参考情報:出入国在留管理庁ホームページ – 法務省
在留資格「日本人の配偶者等」

配偶者ビザの審査基準

婚姻の信憑性

婚姻の信憑性は、配偶者ビザの審査において最も重要な要素の一つです。

出入国在留管理庁(入管)では、二人が真剣な恋愛感情に基づき、共同生活を送る意思を持って結婚しているかを厳格に審査します。

具体的には、コミュニケーションの頻度や内容、お互いの家族や友人への紹介実績、共通の趣味や価値観、将来の生活設計についてしっかりと具体的な話し合いがなされているか、などが重視されます。

また、外国人配偶者が日本語能力を身に付ける努力をしているかどうかも、日本での生活への真剣な取り組みを示す重要な指標として評価されます。

日本語学習の証明は必須ではありませんが、日本語検定の受験履歴や語学学校への通学実績、独学での学習記録などが有効です。

たとえ初級レベルであっても、継続的な学習努力により、積極的に日本の生活に馴染もうとする姿勢や、夫婦間のコミュニケーションをより円滑にするための努力の姿勢を示すことができると、審査に有利と言えます。

婚姻の安定性

婚姻の安定性の審査では、夫婦が日本で安定した生活を送ることができる経済力があるかが重点的に審査されます。

これは、日本の社会・経済的な基盤を維持するために、生活保護などの日本の公的扶助制度への安易な依存を防ぐことが、理由の一つとして挙げられます。

他にも、経済的な問題によって夫婦関係が早期に破綻するリスクが低いか、つまり、日本で長期にわたり健全な夫婦生活を継続できる経済的基盤があるかどうかも見られます。

夫婦間に子供がいる場合には、養育環境を確保するという観点からも、さらに重要視されます。

また、具体的な生活設計や居住計画があるかも重要な審査ポイントです。

単に「一緒に住む」という漠然とした計画ではなく、住居の確保方法、生活費の分担、子育て計画など、安定した具体的で現実的な生活設計が求められます。

この具体的な生活設計や居住計画は、偽装結婚ではないことのアピールにもつながります。

過去の経歴(申請歴や犯罪歴)

過去にビザ申請で問題があった場合、不法滞在歴がある場合、日本国内に限らず海外でも犯罪歴がある場合などは、審査が厳しめに行われます。

これは、法令遵守の姿勢や日本社会への適応能力を判断する重要な要素だからです。

ただし、過去に問題があったからといって必ず不許可になるわけではないので、諦める必要はありません。

その後の行動や改善努力、現在の状況などを総合して審査してもらえます。

重要なのは、過去の問題を隠すのではなく、正直に申告し、改善への取り組みを明確に示すことです。

改善への取り組みを「明確に」示すには、専門家への依頼が推奨されます。

専門家は、感情的な弁解ではなく、事実に基づいた説得力のある理由書・反省文を作成することで、誠実な姿勢を効果的に伝えることができます。

また、改善努力を証明するために提出すべき証拠書類についても的確なアドバイスが可能です。

どのような資料が有利に働くかはケースバイケースであるため、専門家は個々の状況を分析し、許可の可能性を最大限に高めるための最適な立証計画を立て、説得力のある申請を構築するサポートができます。

デリケートな事情ですので、自己流は避けたほうが良いでしょう。

ビザ申請に強い法律事務所に今すぐ相談
ビザ申請に強い法律事務所に今すぐ相談

よくある不許可のケースとその理由

偽装結婚が疑われ、不許可になるケースが多いと言えます。

偽装結婚の主な目的としては、先進国である日本で快適な生活がしたい、母国よりも日本で働く方が稼げる、などが挙げられます。

配偶者ビザは、学歴や職歴に関わらず、原則としてどのような職業にも就くことができます。

風俗営業や単純労働など、通常の就労ビザでは許可されない仕事も可能となります。

永住者ビザへ変更する申請要件も緩和されるため、非常に有利なビザと言え、ビザの取得のみを目的とした偽装結婚が多いのです。

以下に、具体的な不許可のケースとその理由をまとめました。

夫婦間での年齢差が大きいケース

⇒形式的婚姻(偽装結婚)が疑われるため

特に発展途上国から日本への移住目的での婚姻が過去に多くあった背景から、ビザ取得のみを目的とした形式的な婚姻である可能性を入管は警戒しています。

また、外国人配偶者が若く、高齢日本人配偶者が裕福な場合、経済的利益が目的ではないかという疑いが生じます。

交際期間が短く写真等の思い出が少ないケース

⇒形式的婚姻(偽装結婚)が疑われるため

一般的に、結婚に至るまでには一定期間の交際を経て相互理解や信頼関係を構築するものと考えられています。

思い出の写真や、共同体験の記録は、二人が実際に時間を共有し関係を構築してきた証拠となりますが、これらが少ないと、関係の継続性や深さを示す材料が乏しくなります。

よって、短期間での結婚、写真等が少ない場合は、十分な相互理解がないまま結婚に至った可能性を示唆し、関係発展の不自然さを感じさせます。

SNS・出会い系サイト・マッチングアプリで知り合ったケース

⇒形式的婚姻(偽装結婚)が疑われるため

近年、オンライン(SNS・出会い系サイト・マッチングアプリなど)での出会いは一般的になっていますが、この場合、事前の意図的な接触(愛情ではなくビザ取得を意図した事前の接触)の疑いが持たれることがあります。

これは、「日本のビザを求める外国人」と「外国人との結婚を望む日本人」が、互いの利害(愛情ではなく、ビザや金銭など)のために結びつくことを、入管は警戒しているからです。

日本人側に外国人との離婚歴、また外国人側に日本人との離婚歴があるケース

⇒形式的婚姻(偽装結婚)が疑われるため

このケースでは、ビザ目的の偽装結婚(単なるビザ取得のための便宜的な結婚)を繰り返すのではないかという疑いを持たれやすくなります。

特に、短期間で結婚と離婚を繰り返している場合、この傾向が強くなります。

日本人の配偶者側の収入が安定していないケース

⇒日本の国益を損なう恐れと不法就労のリスクがあるため

日本人配偶者の収入が安定していない場合、経済的に困窮した場合に日本の社会保障に頼る可能性が高くなり、結果的に日本の国益を損なうおそれがあると判断されることがあります。

また、外国人配偶者が不法就労に走るリスクが高まるという懸念も持たれます。

▶︎参考情報:上記のケースに当てはまる方、国際結婚の際の配偶者ビザの申請を専門家に任せたい方は、下記のページもご参照ください。
国際結婚・配偶者ビザ取得サポート

不許可を回避するための対策

夫婦間での年齢差が大きい場合の対策

年齢差が大きい夫婦の場合、真摯な愛情関係であることを具体的に証明する必要があります。

特に20歳以上の年齢差があると、より婚姻の信憑性を厳格に審査されます。

まず、お互いの家族や友人への紹介実績を整理し、周囲からの理解と支援を得ていることを示します。

交際経緯、生活状況、共通の趣味や価値観、将来の生活設計などについて詳細な文書を作成し、年齢差を超えた深い愛情、相互理解、信頼関係などがあることを証明します。

夫婦自身が年齢差についてどのように捉えているかを記載することも有効です。

経済的動機の疑いを払拭するため、外国人配偶者の本国での経済状況や職歴、日本での就労意欲と計画を示すことも効果的です。

交際期間が短く写真等の思い出が少ない場合の対策

交際期間が短い場合でも、密度の濃い交流があったことを証明する必要があります。

手紙の写し、電話のよる通話記録の明細、EメールやSNS等でのメッセージ交換の履歴、ビデオ通話の記録など、継続的なコミュニケーションの証拠を整理します。

また、お互いの将来の計画や価値観について深く話し合った内容を記録し、短期間でも深い理解に基づいた関係であることを証明し、急速な関係発展にも合理的な理由があることを説明します。

申請が受理されても、審査結果が出るまでの間は、任意で追加書類を提出することができます。

そのため、継続的なコミュニケーションを続け、新たな証拠となる記録を審査中にも蓄積することが重要です。

どのような内容のコミュニケーションを続けるのがより良いのか、また追加でどんな書類を準備すべきかについては、専門家に相談することをお勧めします。

SNS・出会い系サイト・マッチングアプリで知り合った場合の対策

オンラインでの交流の詳細な記録を整理することが重要です。

初めてのメッセージから現在までの流れを時系列で示し、ビデオ通話の頻度や長さの記録も保存しておきます。

実際に会った時の写真や旅行の証拠があれば、オンラインだけでなく現実でも交流があったことを証明できます。

さらに、お互いの家族や友人とのオンライン・オフライン両方での交流証明もあると、より関係の真剣さを示すことができます。

これらの証拠とともに、関係の発展過程を具体的に説明できるよう準備しておくことが大切です。

オンラインによる出会いであっても、実際は真摯な愛情に基づく関係性であれば、それを証明するための十分な証拠と説明を用意することで、婚姻の信憑性を示すことができ、時代の変化とともに入管もオンラインでの出会いに対する理解を深めつつあります。

日本人側に外国人との離婚歴、また外国人側に日本人との離婚歴がある場合の対策

過去の離婚の経緯と、現在の結婚との違いを明確に説明する必要が出てきます。

審査官は、過去の結婚が真摯なものであったか、そして現在の結婚も同様に真摯なものであるかを厳格に判断します。

まず、過去の離婚理由を詳しく正直に申告し、それが偽装結婚ではなかったことを証明します。

離婚届の提出時期、離婚調停の有無、財産分与の実態など、真実の結婚生活があったことを示す客観的証拠を提出することも効果的です。

そして現在の結婚に至る経緯と、過去の経験を踏まえた真摯な関係であることを強調します。

過去の結婚での失敗や学びを具体的に説明し、それが現在の関係にどのように活かされているかを明確に示します。

安定した生活基盤の構築など、今回の結婚が持続可能なものであることも証明します。

経済面での安定性はもちろん、お互いの価値観の一致、将来設計の共有、問題解決能力の向上など、過去の経験を踏まえた成熟した関係であることを証明します。

過去の経験から学んだことや、現在の配偶者との関係の特別さを具体的にアピールしましょう。

例えば、コミュニケーションの改善、文化的理解の深化、家族との関係構築など、過去の反省を活かした具体的な取り組みを示します。

周囲の理解と支援があるとなお良いです。

家族、友人、職場の同僚など、身近な人々が現在の関係を支持し、応援していることを証明できれば、関係の真正性をより強くアピールできます。

推薦状や証言書の提出も効果的です。

日本人の配偶者側の収入・年収が安定していない場合の対策

まず現在の収入状況を正確に把握し、改善計画を立てます。

転職や副業、資格取得などによる収入向上の具体的な計画を示します。

外国人配偶者の就労可能性や資格、過去の職歴を活用し、世帯全体での経済基盤強化を図ります。

夫婦共働きによる安定した生活設計を具体的に示します。

また、家族や親族からの支援が期待できる場合はそれを証明し、経済的困難に対する備えがあることを示します。

貯蓄計画や保険加入など、将来の経済的安定に向けた取り組みも重要です。

現在の収入が不安定でも、預貯金がある・預貯金以外の資産がある場合には、それらを証明することも効果的です。

必須ではないが、どのケースにおいても、しておくと良い共通の対策

しておくと良い共通の対策の一つとして、「日本の生活に積極的に馴染もうとする外国人配偶者の姿勢」を示すことが挙げられます。

日本語学習への取り組みや、日本文化への理解を示す証拠があれば、偽装結婚ではないことへのアピールにつながります。

まとめ

専門家への依頼が推奨される理由

配偶者ビザの不許可を回避するための対策は、専門家でない者が行うには難易度が高いと言えます。

周囲からの理解と支援を得ていることを示すための上申書の作成や、交際経緯、生活状況、共通の趣味や価値観、将来の生活設計などについて詳細な文書の作成には、専門的な知識と経験が必要となります。

特に、過去の離婚の経緯と現在の結婚との違いを明確にする説明書の文書作成や、収入が不安定な場合の改善計画案の策定などは、法的な観点からの専門的なアプローチが不可欠です。

また、二人の関係を裏付ける添付資料一覧の提案とアドバイス、より良いコミュニケーションの継続の仕方についても、個々の状況に応じた適切な指導が求められます。

配偶者ビザの申請は、夫婦自身や、夫婦間の未来の子供の人生に大きな影響を与える重要な手続きですので、専門家への相談を強くお勧めします。

専門家と二人三脚で手続きを進めることで、安心感と確実性が大きく向上するでしょう。

是非日本での幸せな生活を実現してください。

ビザ申請サービスのご案内

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、外国人のビザに関する無料相談を受け付けています。申請書類の適切な準備から法的アドバイス、そして最適な申請戦略の立案まで、幅広くサポートいたします。

当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。お気軽にご安心してご相談ください。

「弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所」に問い合わせる方法

当事務所では、問題解決に向けてスピード感を重視する皆さまにご対応させていただきたく、「メールでスピード相談」をご提供しています。

初回の相談は無料です。24時間、全国対応で受付しています。

問題解決の第一歩としてお問い合わせ下さい。

ビザ申請に強い法律事務所に今すぐ相談
ビザ申請に強い法律事務所に今すぐ相談

※本稿の内容は、2025年7月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

ご相談のご予約はこちら

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 ロゴ

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
 03-4405-4611
*受付時間 9:00~18:00

同じカテゴリの関連記事を見る