ビザ申請

海外進出・海外展開:米国でビジネスを行う際のビザの種類と取得方法|ビジネスビザに精通した弁護士が解説

by 弁護士 小野智博


はじめに: 米国でビジネスを行う際のビザの重要性

言うまでもなく、米国でビジネスを行う際、適切なビザの取得は不可欠です。ビザの取得は、法的要件を満たし、ビジネス活動を円滑に進めるための基本条件ともいえます。正しいビザを持っていることで、米国での就業、ビジネス目的の旅行、投資などを可能にし、国際ビジネスにおける信頼性と専門性を高めます。したがって、米国でビジネスを成功させるためには、まず第一に適切なビザを選択し、その取得プロセスを理解することが重要となります。

この記事では、米国でのビジネス活動に関連する主要なビザの種類、申請プロセス、およびその他の関連情報を詳細に解説します。

ビザの基本: 米国でのビジネスに関連するビザの種類

米国でビジネス活動をするためのビザには、目的や期間に応じてさまざまな種類があります。これらのビザは、ビジネス訪問、投資、社員の転勤、特定の専門職に従事するためのものなど、用途に応じて設計されています。以下では、主要なビジネス関連ビザの種類とその特徴を解説します。

B-1短期商用ビザ

B-1 Temporary Business Visitor(短期商用)ビザは、短期のビジネス訪問に用いられます。このビザは、商談、会議、業務協議、専門的な会議への参加などの目的で使用されます。B-1ビザは就労ビザではないため、米国での給与を受け取る活動には使用できません。通常、1回の渡米で滞在できる期間は最大6か月ですが、正当な理由がある場合にはさらに6か月まで延長することが可能です。

E-1貿易駐在員ビザ

E-1 Treaty Trader(貿易駐在員)ビザは、米国と通商条約を結んでいる国の国民が、相当量の国際貿易を行う目的で使用されます。このビザは、主に商品、サービス、技術等の貿易に関与する企業に属する社員等や、自営業の個人に適用されます。E-1ビザの保持者は、米国での商取引の管理や運営を行うことができます。このビザで滞在できるのは最長2年間となっています。またビザ自体の有効期限は通常5年間で、条件を満たせば無期限に更新可能です。

E-2条約投資家ビザ

E-2 Treaty Investors(条約投資家)ビザは、E-1ビザ同様米国との通商条約を基に発行され、米国での事業への投資を推進することを目的として設計されています。このビザは、投資が実質的で(投機的な投資は不可)、投資家が米国の実態のある企業を管理・運営することを要求します。E-2ビザは投資家本人だけでなく、投資先企業に勤務する管理職やスペシャリストも申請できます。このビザの有効期限や滞在可能期間はE-1ビザと同様です。

 L-1企業内転勤ビザ

L-1 Intracompany Transferee(企業内転勤)ビザは、自国の企業から米国内の親会社、子会社、関連会社、または支社へ従業員を派遣する(転勤させる)際に使用されます。このビザは、転勤する従業員が過去3年間に少なくとも1年間その自国企業で働いていた必要があり、管理職または専門知識を持つポジションであることが条件です。このビザで滞在できる期間は、管理職向けのL-1Aビザでは最長で7年まで延長可能、専門職向けのL-1Bビザでは最長5年まで延長可能です。

H-1B特殊技能職ビザ

H-1BSpecialty (Professional) Workers(特殊技能職)ビザは、米国の企業が米国人でない者を雇用するために用いられるビザです。このビザは、通常、高度な教育や特殊なスキルを必要とする職種に対して発行されます。申請者は、関連する分野における米国での学士号またはそれに相当する経歴が必要です。H-1Bビザで米国に滞在できる期間は最長60ヵ月とされており、この期間を超える場合、再申請のためには最低1年間は米国外に居住しなくてはなりません。また、このビザは毎年発給数に限りがあり、激しい競争が伴います。

ビザ取得のプロセス: 申請から承認までのステップ

米国ビザの取得プロセスは、目的とするビザの種類によって異なりますが、一般的な手順は以下の通りです。

ステップ1: 必要なビザの種類を特定する
上述のように、ビザには渡米の目的によって様々な種類があり、それぞれ特定の条件や要件を持っています。まずは、ビジネス活動の性質に基づいて、どのビザが適切かを特定しましょう。

ステップ2: ビザ申請書(DS-160)をオンラインで提出する
適切なビザを特定したら、オンラインでビザ申請書(DS-160)を提出します。このフォームには氏名や生年月日、連絡先、就業歴、旅行の詳細、ビザの種類によっては学歴や経歴の記載などが含まれます。提出後、確認ページを印刷し、面接時に持参する必要があります。

ステップ3: 申請料の支払い
ビザ申請料を支払います。この料金はビザの種類によって異なり、申請が却下されたときでも返金されることはありません。

ステップ4: 面接のスケジュールを設定する
多くのビザカテゴリーでは、領事館または大使館での面接が必要です。オンラインで面接の日時を予約します。

ステップ5: 必要書類の準備
面接には、パスポート、申請料の領収書、DS-160の確認ページ、面接予約の確認、証明写真、およびビザに必要なその他の書類を持参します。特定のビザでは、雇用契約書、会社の財務書類、教育証明書など、追加の書類が必要になることがあります。

ステップ6: 面接を受ける
ビザ面接では、旅行の目的、ビジネスの詳細、滞在期間、資金源などに関する質問に答えます。面接官は申請者の意図と資格を評価します。

ステップ7: ビザの承認と受け取り
面接後、ビザが承認されると、パスポートにビザが貼付されます。一般的には面接終了後数日でビザを受け取ることができますが、不足書類がある場合や、なんらかの追加手続きが必要となる場合など、審査に時間がかかるケースもありますので、ビザ申請は期間に余裕を持って行うことをお勧めします。

このプロセスは複雑であり、申請者がビザ要件を満たしていることを明確に示す必要があります。特に面接において、面接官は、申請者が米国の法律を遵守し、許可された活動のみを行う意向があるかを確認することに重点を置きます。また、申請者が滞在期間後に自国に戻る意思があることも重要な判断基準となります。最終的に、ビザの承認は、申請者がビザの条件を満たし、米国での滞在が法律に適合していると領事官が判断した場合にのみ行われます。ビザの承認を受けた後、パスポートにビザが貼付され、申請者は米国への旅行を計画できるようになります。しかし、ビザが承認されたとしても、入国時に米国税関・国境警備局(CBP)の職員が最終的な入国許可を行うため、すべての書類と情報を携帯することが推奨されています。

法的要件と資格基準: 各ビザの要件と資格を満たすためのヒント

米国でのビジネス関連ビザの取得には、特定の法的要件と資格基準が存在します。これらを理解し、適切に準備することが、申請の成功に不可欠です。

B-1短期商用ビザの要件

B-1ビザの申請者は、短期のビジネス訪問の目的を明確に示す必要があります。これには、会議、商談、または業務協議への参加などが含まれます。米国での就労や給与受領の意図がないことを証明する必要があります。また、訪問の終了後に自国に戻る意思があることを示す証拠が求められます。

E-1貿易駐在員ビザの要件

E-1ビザ申請者は、米国との間で「実質的」な貿易を行っていることを証明する必要があります。これには、貿易量や取引の頻度、必要性、継続性が考慮されます。申請者は、米国と申請者の母国との間で主要な貿易関係を持っていることを示すべきです。

E-2条約投資家ビザの要件

E-2ビザ申請者は、「実質的」な投資を行っていることを示さなければなりません。投資額は、事業の性質に応じて十分で、事業の成功に不可欠であることが求められます。また、事業が単なる自己雇用を超えるものであること、および米国経済への実質的な貢献が期待されることが重要です。

L-1企業内転勤ビザの要件

L-1ビザ申請者は、過去3年間のうち少なくとも1年間、申請者の企業で管理職または専門職として働いていたことを証明する必要があります。また、米国での職務が管理職または専門職であること、および雇用主は米国法人の親会社、子会社、支社、関連会社であることが必要です。

H-1B特殊技能職ビザの要件

H-1Bビザは、特定の専門職に従事するためのもので、申請者は関連分野における米国での学士号またはそれに相当する経歴を持っている必要があります。提供される職務は専門知識を必要とするものでなければならず、雇用主は適切な給与を支払うことが義務付けられています。また、労働条件申請(LCA)が承認されている必要があります。

ビザ申請の落とし穴: よくある間違いとその回避方法

前提として、申請プロセスにおいて適切なビザカテゴリーを選択することが不可欠となります。ビザの種類が活動内容と一致していない場合、申請は拒否される可能性があります。従って、自分の目的や職務に最も適したビザを慎重に選択し、その要件を十分に理解することが重要となります。

米国ビザ申請においてよくある間違いは、不完全な書類の提出や誤った情報の記入です。これを避けるためには、申請書類を丁寧に確認し、必要なすべての情報が正確に記入されていることを確認することが重要となります。また、申請書類に必要なすべての追加書類が添付されているかを再確認しましょう。

別のよくあるトラブルは、ビザ申請の際に不十分な証明や説明を提供することといえます。米国での活動計画、資金の源泉、自国への帰国意思などに関する明確かつ具体的な証拠を提供することで、この問題を回避できます。

最後に、ビザ面接では、誠実かつ自信を持って回答することが求められます。面接官に対して不確かまたは矛盾する答えを避け、準備を整えて臨むことで、成功の可能性を高めることができます。これらの注意点を守ることで、ビザ申請のプロセスはよりスムーズに進みます。

ビザ更新プロセス: ビザの有効期限と滞在許可期間

ビザの有効期限とは、米国に入国を求めるためにそのビザを使うことができる期限のことです。これは、滞在許可期間とは異なりますので混同しないようにしましょう。

ただし例えばH-1Bビザは、入国審査の際に発行される滞在許可はビザの残りの有効期間と一致します。またビザ更新や滞在許可の延長など、それぞれのビザにより年数、可能回数、プロセスなどが異なり複雑となっています。

米国滞在期間を延長するためにビザを更新する場合、そのプロセスは、通常、現在のビザの有効期限が切れる前に開始する必要があります。更新申請には、新たな申請書の提出、関連する書類の更新、そして必要に応じて追加の面接が含まれることがあります。例えば、H-1Bビザの場合、雇用主は新たな労働条件申請(LCA)を提出し、申請者の就労条件が変更されていないことを証明する必要があります。

ビザの更新申請は、元のビザの申請時と同様の厳密さで審査されます。したがって、更新申請においても、正確な情報提供と完全な書類の提出が求められます。また、ビザの種類によっては、更新の過程で追加の要件や制限が生じることがありますので、最新の情報に基づいて適切に準備してください。

ビザの有効期限が切れる前に更新手続きを完了することは、米国でのビジネス活動を継続する上で重要です。適切な計画と準備により、ビザの更新プロセスはスムーズに進行する可能性が高まります。

まとめ:海外進出の際の法務管理は弁護士への相談をご検討ください

海外進出、特に米国でのビジネス展開を考える際には、法的な側面を十分に理解し管理することが極めて重要となります。ビザの取得から更新までのプロセスは、法律や規制の複雑な網の中で進行します。誤った手続きや不完全な書類提出は、計画の遅延や事業の失敗につながるリスクを持っています。したがって、リスクを最小限に抑え、成功の可能性を高めるために、必要に応じて専門的な法的アドバイスを受けるようにしましょう。

ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、お客様が海外展開・海外進出の目標を達成できるようなガイダンスとサポートを提供します。国際的な拡張計画に対して、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしていますので、いつでもお問合せください。

※本稿の内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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