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外国人が日本に在留し国内で就労するための制度として、一定の職種・技能に対応する「技能ビザ」があります。
本記事では技能ビザについての基本知識と、さらに詳しい解説記事へのリンクなどをまとめて掲載しています。
技能ビザの要件や対象職種など概要を把握しておこう
外国人を受け入れて自社で技能を活かしてもらいたいと考えている日本企業の法務ご担当者や人事ご担当者、そして日本で活躍したいと考えている外国人の方へ向けて、本記事では技能ビザについての様々な基本概要をご紹介します。
あわせて、更に詳しい記事へのリンクも掲載していますので、必要な情報を得るためにぜひご活用ください。
「技能ビザ」とは
外国料理の料理人、スポーツ指導者やパイロットといった、外国人の母国文化に基盤をもつ職種や、日本において特殊な経験や熟練技能を要すると考えられている職種について、外国人の方へ在留資格を交付し、日本の企業で就労できるようにする仕組み・制度が「技能ビザ」です。
技能ビザを申請し、出入国在留管理庁による審査の結果認定がでれば、たとえ定住者や帰化者でなく、日本国籍を持たない方であっても当該職種にかぎって日本で就労できるようになるというものです。
【ビザと在留資格の違いとは?】
「ビザ」は本来、上陸審査の際の査証を指す言葉です。日本においては、海外から訪れた外国人が日本への入国許可を求め、それに対して外務省が入国許可証として査証を発行する、というものであり、入国審査が済んだら査証は無効となります。
本記事でご紹介する「技能ビザ」をはじめとする各種の就労ビザは、正式には「在留資格」と呼ばれる制度・仕組みであり、外国人に対して一定期間の日本在留、および一定の就労活動を認める資格のことを指しています。
技能ビザの正式な制度名としては『在留資格「技能」』となりますが、本記事では一般的となっている呼称として、「技能ビザ」と表記しています。
技能ビザは「就労ビザ」の一種
「就労ビザ」は、外国人が制度に該当する職業や目的において日本の企業や機関で働く場合に、その就労や日本在留についての許可を与える制度です。
就労ビザは、就労する際の職種やビザ取得の目的によって、以下に挙げる19種類に分類されています。
▼就労ビザ(在留資格)の19の分類
外交……外国政府の大使や公使など、外交活動をおこなう職務の方に外交期間中継続して発行される
公用……外国政府の大使館や領事館の職員、そのほか公の用務で派遣される方へ発行される
教授……教授、准教授、講師など大学の教員をつとめる方へ発行される
芸術……作曲家、画家、彫刻家など芸術家の方へ発行される
宗教……僧侶、司教、宣教師など外国の宗教団体から派遣される宗教家の方へ発行される
報道……新聞記者、編集者、報道カメラマンなど外国の報道機関から派遣される特派員の方へ発行される
高度専門職……「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」に該当すると判断された活動をおこなう方へ発行される
経営・管理……海外の企業の経営者や管理者が日本で経営や管理をおこなう際に発行される
法律・会計業務……弁護士、行政書士、司法書士、税理士など法律や会計業務の有資格者の方へ発行される
医療……医師、薬剤師、看護師など医療関係業務に従事する専門家の方へ発行される
研究……政府関係機関や企業などで、研究を主とする業務を担当する方へ発行される
教育……小・中・高等学校や中等教育学校、特別支援学校などで語学などを教育する教師の方へ発行される
技術・人文知識・国際業務……自然科学分野や人文科学分野の専門技術者、専門職従事者や、外国人の考え方や感受性を活かした国際業務をおこなう方へ発行される
企業内転勤……外国の親会社や子会社、関連会社などから一定期間派遣される転勤者の方へ発行される
介護……介護福祉士の資格を有した、介護をおこなう方へ発行される
興行……芸能人、プロスポーツ選手、演出家など興行目的の活動をおこなう方へ発行される
技能(本記事で解説)……外国料理の料理人、外国特有の建築士など、産業上の特殊な分野の業務をおこなう方へ発行される
特定技能……日本国内の人材不足が深刻化している特定の分野について、技能を持つ方へ発行される
技能実習……開発途上国向けの技能実習計画に基づき、技能実習生として日本に滞在する方へ発行される
技能ビザの対象となる職種は9分野
在留資格の19の分類のうちのひとつである「技能ビザ」では、“本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動”と定義された、以下の9分野の職種が対象となっています。
▼技能ビザ(在留資格「技能」)の対象9分野
料理 / 建築・土木 / 製品の製造・修理 / 宝石・貴金属・毛皮の加工 / 動物の調教 / 石油探査・地熱調査・海底地質調査 / 航空機の操縦 / スポーツの指導 / ワインの鑑定・評価等
尚、このうちの「料理」「建築・土木」「製品の製造・修理」の3分野については、それぞれ「申請する外国人が、その母国に基盤を持つ当該ジャンルの技能を有していて、その技能で就労する場合」に在留資格が得られます。
例えば料理人の場合、中国料理について一定の技能を持つ中国籍の方、イタリア料理について一定の技能を持つイタリア国籍の方、が対象となります。
建築技術者の例であれば、韓国式建築について一定の技能を持つ韓国籍の方、ロマネスク建築について一定の技能を持つヨーロッパ各国の国籍の方、という考え方です。
また、技能ビザの審査においては外国人本人と職種との関係性だけでなく、就労先企業の業種や規模との関係性も重視されます。
例えば中国料理について一定以上の技能を有する中国の調理師の方が、日本のいわゆる「町中華」のような、日本の地域に根ざした大衆料理寄りの店舗で就労することは、「特有の技能が必要な就労場所ではない」という判断となり、技能ビザでは原則認められません。
▼技能ビザの対象となる職種についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
https://pm-lawyer.com/240902-4/
▼料理人(コックやシェフ、パティシエなど)の技能ビザについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
https://pm-lawyer.com/240830-2/
技能ビザが申請できる条件
技能ビザにおいては、申請に係る職種ごとにそれぞれ要件が定められています。
例えば料理人として技能ビザで就労するためには、基本的に当該料理についての10年以上の実務経験が求められます。ただし、タイ料理にかぎっては5年以上の実務経験、および必要書類の提出で就労が可能となります。
パイロットとして技能ビザで就労するためには250時間以上の飛行経歴を有することが求められ、スポーツの指導者であれば3年以上の実務経験あるいはオリンピックなどの国際的な大会に選手として出場した経験を求められるといったように、各分野ごとに要件が定められているため、申請前にあらかじめチェックしておきましょう。
尚、技能ビザの審査における「実務経験期間」には、母国でその技能に係る科目を専攻していた場合の教育機関での学習期間も含む場合があります(分類によって可否が異なります)。
技能ビザ申請時には職歴や学歴に関する厳正な書類審査で「実務経験の証明」が必要!
いずれの分野で技能ビザを申請する場合でも、実務経験やその他の経歴要件・資格要件について、自己申告のみでなく公的な文書などで具体的に立証する必要があります。
手続き上、立証として有効となる文書は状況ごとに様々となりますが、例えば在籍証明書や退職証明書、学歴を証明する場合の卒業証明書や成績証明書といったものが挙げられます。
そのほか、すべての分野で共通ではないものの特定の技能および状況下で必要となる文書としては、ソムリエの場合の協議会での成績を証明する文書や、タイ料理人の場合のタイ労働省が公的に発行する証明書や直近1年間でタイ料理人として報酬を得ていたことを証明する書類、スポーツ指導者の場合の国際的な競技会への出場経験を証明する書類などがあります。
▼技能ビザの申請要件についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
https://pm-lawyer.com/240902-3/
技能ビザで認可される日本在留期間は5年 / 3年 / 1年 / 3か月
技能ビザで認可される日本での在留期間には、5年 ・3年・1年・3か月の4パターンがあります。どの在留期間で認可されるかについては、申請時に外国人から申告された予定期間や希望期間を受け、出入国在留管理庁の厳密な審査によって決定されます。
認められた在留期間が満了する際には、所定の手続きを踏むことによって審査のうえ在留期間の更新をおこなうことが可能です。
▼技能ビザの認可期間満了後、更新する際の必要書類や手続きについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
https://pm-lawyer.com/240902-2/
永住者・帰化者・定住者や日本人の配偶者は技能ビザ不要
外国人の方であっても、身分や地位などに応じて「定住者」「永住者」「日本人の配偶者」といった、技能ビザとはまた別の在留資格を得ている方々がいます。
こういった在留資格をすでに取得している方については、その在留資格のみで日本で就労することが可能です。
技能ビザの複雑な手続きは法律事務所で解決
技能ビザは、海外に特有の技能を有した外国人の方々を受け入れるための在留資格として提供されている制度です。
特有の技能をもつ優秀な外国人を雇用したいと考えている企業のご担当者や、日本で働きたいと考えている外国人の方は、技能ビザについて要件や手続き内容を詳しくチェックしておきましょう。
技能ビザの申請にあたっては、要件の理解や必要書類の把握などについて困難と感じられる場合があるかもしれません。弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、技能ビザについての無料相談を受け付けています。技能ビザの申請では、的確な要件判断や実務上の豊富な経験に基づく必要書類の準備が重要であり、審査結果に大きく影響します。当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。ご安心してご相談ください。
※本稿の内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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