目次
はじめに:
▼技能ビザについての総合的な解説はこちらの記事でもおこなっています。
https://pm-lawyer.com/240830/
料理人(シェフやコック、パティシエや調理師など)の在留資格は「技能ビザ」で取得
外国人の方が日本において、シェフやコックといった料理人としての職業で就労するためには「技能ビザ」が必要となります。
この技能ビザについて、基本的なところから概要を把握しておきましょう。
「技能ビザ」は就労ビザの一種
技能ビザは数ある「就労ビザ」のなかの一種です。まずはこの就労ビザについて解説します。
就労ビザとは日本国内において、外国人(外国籍の方)がなにかしらの職業で就労する際に必要となるビザです。尚、永住者や帰化者・定住者、あるいは日本人の配偶者といった、もともと日本国内で就労することができる在留資格を有している状況の方もいます。それら以外の外国人に必要となるのが就労ビザということになります。
※そのほか、「資格外活動許可」を取得することで、週28時間以内のアルバイトといったように短時間の国内就労が認められるケースもあります
就労ビザは、職業の種類やビザ取得の目的などによって、大きく19種類に分けられます。
▼就労ビザの19の分類(2024年6月現在)
外交ビザ / 公用ビザ / 教授ビザ / 芸術ビザ / 宗教ビザ / 報道ビザ / 高度専門職ビザ / 経営・管理ビザ / 法律・会計業務ビザ / 医療ビザ / 研究ビザ / 教育ビザ / 技術・人文知識・国際業務ビザ / 企業内転勤ビザ / 介護ビザ / 興行ビザ / 技能ビザ / 特定技能ビザ / 技能実習ビザ
上記のうち、本記事で詳しくご紹介するのが「技能ビザ」です。
技能ビザは、料理人のほかパイロットや貴金属加工職人、外国製品の修理技能士や外国特有の技術や知識が必要な建築士・土木技師といった職業の方々を、日本国内での就労者として受け入れるためのビザとなっています。
料理人の在留資格を得られる技能ビザ
シェフやコック、パティシエや調理師といった料理人に分類される職につく外国人が日本で就労する際には、在留する権利を得るために技能ビザを取得します。
技能ビザで認可される日本での在留期間は5年・3年・1年・3か月というように違いがあり、申請者の申請理由や予定期間を踏まえつつ、出入国管理局による審査によって決定されます。
※参考:出入国在留管理庁『在留資格「技能」』
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/skilledlabor.html
日本料理店や居酒屋、大衆店などでの勤務は対象外(技能ビザの取得不可)なので注意!
料理店で働く料理人であればどのような場合でも技能ビザを取得できるかといえば、そういうわけではありませんので注意が必要です。
外国人の料理人が技能ビザを取得する場合、あくまで「専門的な外国料理の調理師が、その料理の専門店で勤務する場合」が対象となります。外国料理の専門店とは例えば中華料理専門店、タイ料理専門店、ベトナム料理専門店などがあたります。
これらの専門店で、その料理種類の由来となる国の国籍を持ち、当該料理に関する技術や資格をもつ料理人が在留する場合に取得可能なビザということになります。
この点は、入管法令において「料理の調理または食品の製造に係る技能で外国において考案された我が国において特殊なものを要する業務に従事するもの」というように定義されています。そのため、日本料理店が対象外なのはもちろんのこと、例えば中華料理であっても日本の地域に根ざした大衆的な料理を提供するいわゆる「町中華」やラーメン屋さんなどで勤務する予定の場合には、認可が下りない可能性が大変高くなります。
ホール係や調理補助は「料理人」にあたらない
たとえ外国文化に根ざした外国料理の専門店であっても、そのお店で料理人としてではなく調理補助程度の業務を行う場合であったり、ホールでの案内を担当する係であったりする場合には、技能ビザは原則取得できません。
こういった場合には当該店舗での就労資格を得られる可能性があるほかの方法として、「資格外活動許可」という選択肢があります。
「資格外活動許可」は、ほかの何かしらの在留資格をすでに得ている外国人の方が、週に28時間以内という制限つきで資格外の活動を行ってもよいという許可を得るための手続きです。
こちらについては詳しくは下記、出入国在留管理庁のサイトをご覧ください。
※参考:出入国在留管理庁『資格外活動許可について』
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00045.html
料理人が技能ビザを取得するための条件
職業と就労場所について前項でご紹介したような諸状況を満たしている場合、技能ビザの申請について検討をすすめましょう。
料理人として技能ビザを取得するためには、以下のような具体的な条件を満たす必要があります。
基本的に当該専門料理店での「10年以上」の実務経験が必要
中華料理の調理師であれば中華料理店での、フランス料理のシェフであればフランス料理店での、というように実際に当該料理の専門店において10年以上の実務経験を積んでいることを求められます。
ただし、当該料理について教育機関(専門学校など)で調理や食品の製造といった科目を専攻していた場合、その学んでいた期間も実務経験期間として含めることができます。
また、特殊な例外として「タイ料理」の調理人の場合には、他の料理と異なり実務経験が「5年以上」でよいということになっています(ただし申請の直近までタイ料理人として務めていたという事実が求められ、タイ料理に関する資格を有している必要があるといった諸条件あり)。
また、これらの実務経験期間については当然のことながら、ただ経歴書や申請書で「〇年の経験あり」と申告すればよいというものではなく、過去の勤務先からの在職証明書や専門学校の卒業証明書などで具体的に立証する必要があります。
給与(報酬)額は日本人の場合と同等額以上でなければならない
料理人として日本で就労する場合、公私の機関(企業など)と雇用契約や請負契約を結ぶことが前提となりますが、その際に料理人として受け取る給与(報酬)の額については、日本人の場合と同等額以上でなければいけません。
コックなら同機関内での日本人のコックと同じ賃金設定で、給与や賃金の支払いを受けることが条件になるということです。
技能ビザの申請をする外国人が受け取る予定となっている給与額が不当に低い場合には、ビザが不許可になる可能性があります。この点は、申請者本人にとってだけでなく、外国人労働者を採用したいと考えている企業・団体にとっても、直接的に関係する重要なポイントです。
就労する店舗の規模や人員構成も審査上の評価対象に
申請者本人の経歴や資質といった点以外で、就労先となる日本の企業や店舗についても、その種類や提供料理の内容、規模といった点が審査対象となります。
例えば当該料理の専門店であったとしても、利用客向けの座席数が著しく少ないなど小規模すぎる店舗であった場合には、技能ビザが不許可となる可能性があります。
料理人の技能ビザ申請はどうやっておこなう?
技能ビザを申請するための基本条件を満たしている場合で、実際に申請する際にはどのような点がポイントとなるのかをチェックしておきましょう。
技能ビザを申請する際の大まかな流れとしては、まず雇用契約を締結し、従事する業務内容や賃金などといった諸条件を明確化しておきます。
次に、技能ビザを申請するための在留資格認定証明書交付申請書や、申請時に必要となる外国人本人に関する資料、就労先となる企業に関する資料といった各種必要書類の準備をします。
必要な書類の準備が終わったら、外国人の国内居住予定地や就労先機関の所在地を管轄する、地方出入国在留管理官署へ申請を行います。
※申請書の郵送は不可であり、地方出入国在留管理官署または外国人在留総合インフォメーションセンターへあらかじめ問い合わせをする必要があります
必要書類は状況と就労先の規模(カテゴリー)に応じて異なる
料理人の技能ビザ申請の際に必要となる書類の種類については、就労先となる機関(企業など)の規模、および当該外国人本人が申請時に海外にいるか、すでに日本国内にいるかによって異なってきます。
まず、就労先の規模については以下のように、カテゴリー1〜4の4つのカテゴリーに区分されます。
・カテゴリー1……日本の証券取引所に上場済の企業、保険業を営んでいる相互会社、国・地方公共団体、独立行政法人、特定の公共法人 など
・カテゴリー2……前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表において、源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人 など
・カテゴリー3……カテゴリー2を除いた、前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できる団体・個人
・カテゴリー4……カテゴリ1~3のいずれにも該当しない団体・個人
※カテゴリーの区分について詳しくは、後述する出入国在留管理庁の公式ページもご覧ください
以上のカテゴリー区別を踏まえたうえで、原則の必要書類は以下となっています。
(状況の違いや審査の過程により、別途異なる書類が必要となることもあります)
・海外にいる外国人を料理人として日本へ呼び寄せる場合(全カテゴリー共通)
「在留資格認定証明書交付申請書」一式、外国人の証明写真、返信用封筒(返信先明記済、簡易書留用切手貼付済のもの)
・すでに日本国内にいる外国人料理人を雇い入れる場合 ※転職や勤務先変更など(全カテゴリー共通)
「在留資格変更許可申請書」一式、外国人の証明写真
・就労先がカテゴリー3あるいは4に該当する機関の場合
外国人本人の職歴を証明する書類、日本で就労する際の活動の内容や労働条件を明示する資料、就労先機関の事業内容を明示する資料および直近年度の決算文書の写し など
・就労先がカテゴリー4に該当する機関の場合
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出することができない理由を明らかにするいずれかの資料(源泉徴収の免除証明書、納期の特例を受けている場合の証明書、給与支払事務所等の開設届出書の写し など)
※参考:出入国在留管理庁『在留資格「技能」調理師としての活動(熟練した技能を要する業務に従事する活動)を行おうとする場合』
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/skilledlabor01.html
「過去の実務経験」を示す在職証明書や職業資格証明書は重要
技能ビザの大前提として「外国文化に根付いた技能を日本で提供してもらう」という意義があるため、その実務経験申告が、嘘偽りのないものであることを証明することは重要となり、入国管理局にとっても重要な審査ポイントのひとつとなります。
料理人の場合、当該料理について実務をおこなっていた過去の勤務先からの在職証明書や、教育期間の卒業証明書などを正しく準備しておく必要がありますが、例えば過去の勤務先企業が現存していない場合や、なんらかの理由で関係が悪化していて必要な書類を求められないといった状況にある場合、技能ビザの申請が難しくなるためあらかじめ諸状況を確認しておきましょう。
料理人の技能ビザ申請にかかる期間は?
申請後、審査を経て技能ビザの在留資格が認定されると、「在留資格認定証明書」が交付されることとなります。
申請から資格認定までに要する期間は、申請者の状況や就労先の規模、そのほか審査状況によって異なりますが、一般的に概ね30日~90日程度はかかると見ておいたほうがよいでしょう。
技能ビザを取得した外国人の扶養家族は「家族滞在ビザ」で日本在留可能
技能ビザで在留資格を得た外国人の扶養家族については、別途「家族滞在ビザ」を取得することによって、在留資格を得ることができます。
そのため、料理人本人だけでなく扶養家族も日本に在留する予定の場合には、家族滞在ビザについてもあわせて確認・準備をすすめておきましょう。
料理人の技能ビザ申請では実務経験の証明が重要! 間違いのない手続きのためにプロへご相談を
外国人の料理人が日本国内で料理人として就労するためには技能ビザが必要となり、技能ビザの取得にあたっては当該料理についての規定年数以上の実務経験や、就労先の規模といった様々な要件があります。
日本で料理人として働きたい外国人の方や、外国人の料理人を受け入れたいと考えている企業のご担当者は、あらかじめ必要書類や手続きにかかる期間、要件などを余裕をもって確認しておきましょう。
受け入れ制度についての全容の理解や、手続きの理解が難しく感じられた場合には、弁護士や行政書士などの、法律のプロ・手続きのプロに一度相談されることをおすすめします。
入念な確認・準備を行ったうえで、外国人料理人が日本で活躍するための間違いのない手続きを進めましょう。
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、外国人が日本で料理人として就労するために必要な技能ビザについての無料相談を受け付けています。技能ビザの申請では、的確な要件判断や実務上の豊富な経験に基づく必要書類の準備が重要であり、審査結果に大きく影響します。
当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。ご安心してご相談ください。
※本稿の内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。
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執筆者:弁護士小野智博
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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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