目次
外国料理の料理人や外国特有の建築技術者など、特定の技能を有する外国人を日本国内で雇用したい企業や、自分がもつ技能を日本で活かしたいと考えている外国人就労者にとっては、技能ビザ申請という手段があります。
しかし技能ビザ申請は対象技能の種類が多く、状況によって申請内容も異なるため手続きのどの部分から把握すべきかと悩んでしまうかもしれません。
本記事では技能ビザ申請について基本的なポイントをわかりやすくまとめて解説しています。
▼技能ビザについての総合的な解説はこちらの記事でもおこなっています。
https://pm-lawyer.com/240830/
技能ビザの「申請」は大きくわけて3種類
技能ビザについて、どのような種類の申請をするのかという点で考えると、大きく3つの申請に分けることができます。
※ここでは、単に在留資格の期間が満了して同じ内容で期間を「更新する」ケースは除いています
新規に技能ビザを申請する
海外にいる外国料理の料理人や特定建築の技術者など、技能ビザの資格対象となっている技能をもっている外国人を、日本の企業で就労者として受け入れる場合には新規に技能ビザを申請する必要があります。
この場合、該当する手続きは「在留資格取得許可申請」、および「在留資格認定証明書交付申請」となります。
勤務先変更(在留資格には変更なし)を申請する
既に技能ビザを取得していて、許可がおりている職種につきながら日本国内で働いている外国人の方が、その職種はそのまま変わらない状態で勤務先が変更となるケースです。
この場合、該当する手続きは「所属機関等に関する届出」となります。「所属機関等に関する届出」は、転職後14日以内に申請しておかなければなりません。
在留資格の変更を申請する
既に技能ビザを取得していて、認可がおりている職種につきながら日本国内で働いている外国人の方が、その職種自体を変える場合です。
このケースでは、現在の在留資格そのものが不適合になる状況となりますので、「在留資格変更許可申請」が必要となります。
以上、3つの申請パターンをご紹介しましたが、本記事では主にひとつめの「新規に技能ビザを申請する」場合について詳しく解説していきます。
技能ビザの申請は誰がおこなう?
技能ビザの申請は出入国在留管理庁に対しておこなう必要がありますが、申請を実際に提出したり手続きをすすめたりする人物(あるいは団体)としては、以下の3通りがあります。
申請者(日本で就労する外国人)本人
原則としては、技能ビザの申請は日本での滞在を希望している外国人本人がおこなうこととなります。
ただし技能ビザの申請にあたっては経歴を証明するための文書を状況ごとに正しく取り揃える必要があることや、就労先となる企業の規模によって企業側の様々な証明をおこなう必要があり、申請の難易度は決して低くはありません。
また申請者本人が日本語の理解力について不安がある場合や、申請者本人が日本国内にいない状態で申請を進めなければならないケース(主に新規の技能ビザ申請)もあることから、以下で解説する「代理人」や「取次者」でも申請をおこなうことが可能となっています。
法定代理人
法定代理人とは、代理権を有することを法律によって認められている人のことです。
申請者が18歳未満の場合には、その親権者が法定代理人として技能ビザを申請できます。もし親権者がいない場合には未成年後見人が法定代理人として認められます。
また成年である場合でも、知的障害や認知症などなんらかの理由によって様々な法的手続きや契約を1人ですすめることに不安がある方のための制度として成年後見人があり、この成年後見人として認められている人も法定代理人にあたります。
取次者
「申請人から依頼を受けた者」であることをあらかじめ出入国在留管理局へ申請し、承認を受けておくことによって、以下のような方々・団体が取次者として技能ビザの申請を本人に代わって行うことができます。
・申請人が雇用されている機関の職員
・申請人が経営者の場合、経営している機関の職員
・申請人が研修や教育を受けている機関の職員
・外国人が有している特殊技能や技術、知識などについて、修得するための活動を監督・管理している団体
・外国人の円滑な受入れを図るための公益法人の職員
・申請人から依頼を受けた弁護士、行政書士
・その他、申請者本人の疾病やその他の事由があると出入国在留管理局に認められている場合で、申請の代理人として認められている方
申請者本人が日本国内にいない場合や、日本語理解力の問題で本人に手続きを正しく進める自信がなく、雇用する企業がサポートしてあげる場合などはこの「取次者」としてフォローしてあげるとよいでしょう。
技能ビザ申請時の必要書類は「料理人」としての資格取得か、「料理人以外」かで異なる
技能ビザ申請時には、在留資格取得許可申請書や履歴書といった基本的な書類とあわせて、申請者の職歴(申請する技能に係る実務経験)を証明する書類を提出する必要があります。
この実務経験の証明として提出できる書類は職種や状況ごとに様々となりますが、特に職種が「料理人であるか」「料理人以外であるか」という点が、まず大きく分かれるポイントとなります。
出入国在留管理庁の公式サイトでも料理人の場合とそれ以外の職種である場合で詳細ページが分けられていますので、そちらにあわせて概要をそれぞれご紹介します。
料理人の場合
申請に係る技能が料理人の場合には、料理の種類が「タイ料理」であるか、それ以外の国籍の料理(中華料理やフランス料理、イタリア料理など)であるかでも異なります。
タイ料理の場合には、タイ料理の実務経験を「5年以上」有し、なおかつ直近1年の間にタイ本国でタイ料理人として就労していたことを証明するために、以下のような書類を提出します。
・在職証明書
・タイ労働省によって公的に発行される「タイ料理人としての技能水準に関する証明書」を取得するために教育機関で学んでいた場合は、学習期間の証明書(学習期間も実務経験に含められる)
・タイ料理人としての技能水準に関する証明書
・申請日の直近1年の間に、タイ本国でタイ料理人としての報酬を得ていた期間があることを証明する文書
申請に係る技能がタイ料理以外の料理であれば、当該料理の実務経験を「10年以上」有していることを証明するために、以下のような書類を提出します。
・在職証明書
・本国の教育機関で当該料理の技能を学ぶための必要科目を専攻していた場合は、学習期間の証明書(学習期間も実務経験に含められる)
・必要に応じて、公的機関による証明書の写し(中華料理人の場合、戸口簿や職業資格証明書など)
※参考:出入国在留管理庁『在留資格「技能」調理師としての活動(熟練した技能を要する業務に従事する活動)を行おうとする場合』
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/skilledlabor01.html
料理人以外の場合
技能ビザ申請の対象となる、料理人以外の職業としては外国特有の建築・土木技術(中国式、ゴシック方式やロマネスク方式など)に係る技術者、外国特有の製品(ペルシアじゅうたんやヨーロッパガラス製品など)に係る製造技術者のほか、パイロットや動物の調教者、スポーツの指導者などの特殊技能を要する職業が含まれます。
これらの技能を有する外国人が技能ビザを申請する場合には、その職種ごとに定められた必要実務経験年数を満たしていることや必要資格を有することを証明するために、以下のような書類を提出します。
(詳しくは、後述の出入国在留管理庁公式サイトもご確認ください)
・在職証明書
・本国の教育機関で当該技能を学ぶための必要科目を専攻していた場合は、学習期間の証明書
※学習期間も実務経験に含められるのは、以下の職種のみ
建築・土木、製品の製造・修理、宝石・貴金属・毛皮の加工、動物の調教、石油探査・海底地質調査、ワインの鑑定・評価
・パイロットの場合には、250時間以上の飛行経歴を証明する所属機関発行の文書
・スポーツ指導者の場合には、オリンピック大会や世界選手権大会、国際的な競技会などに選出として出場した経歴があることを証明する文書
・ワイン鑑定士(ソムリエ)の場合には、ぶどう酒の鑑定に関する国際的規模の協議会で、優秀な成績をおさめた経歴、あるいは国際ソムリエコンクールで1国につき1名の「国の代表」となった経歴があることを証明する文書
※参考:出入国在留管理庁『在留資格「技能」調理師以外の活動(産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動)を行おうとする場合』
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/skilledlabor02.html
技能ビザ申請の流れ
最後に、記事の冒頭でご紹介した3つの申請パターンにおける、それぞれの申請手続きの大まかな流れをご紹介します。
いずれも詳しくは、管轄の出入国在留管理局や外国人在留総合インフォメーションセンター、あるいは弁護士や行政書士といった手続きの専門家にご確認・ご相談ください。
新規に技能ビザを申請する場合
技能ビザを新規に申請する場合には、まず在留資格認定証明書交付申請(日本へ入国する際に、速やかに査証発給や上陸許可を受けられるようにするための申請)をおこなっておきます。
在留資格認定証明書が交付されたら、受け入れ企業などの取次者から外国人本人へ当該証明書を送付します。
その後、外国人本人が受け取った在留資格認定証明書を在外日本公館で提示し、そのまま在外日本公館にてビザ発給、という流れになることが一般的です。
勤務先の変更を申請する場合
既に技能ビザを取得している外国人の勤務先が変更となった場合には、「所属機関等に関する届出」をおこなう必要があります。
原則、転職後14日以内に出入国在留管理庁へインターネット上の「電子届出システム」、あるいは郵送で届出をおこないます。
在留資格の変更を申請する場合
既に技能ビザを取得している外国人の方が、日本国内で就労する職種や業務内容を変える場合には、「在留資格変更許可申請」が必要です。
新たに就労することになる職業についての実務経験証明になる文書や、新たな就労先となる機関についての資料など必要書類を揃えたうえで、出入国在留管理庁へ申請をおこないます。
技能ビザ申請は状況や職種によって手続き内容が異なる
特殊技能を持つ外国人の方が日本国内で就労するために必要となる技能ビザの申請は、職種や状況によって手続きの内容が多岐にわたり、特に日本語の理解に自信がない外国人の方にとっては難しいと感じる面があるかもしれません。
必要に応じて、受け入れ先となる企業の法務ご担当者・人事ご担当者によるサポートも必要となるでしょう。
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、技能ビザについての無料相談を受け付けています。
「この場合は技能ビザの要件に該当するのか」「どのような追加書類を準備するのが適当か」など、技能ビザの申請では、的確な要件判断や実務上の豊富な経験に基づく必要書類の準備が重要であり、審査結果に大きく影響します。
当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。ご安心してご相談ください。
※本稿の内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
ご相談のご予約はこちら
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
03-4405-4611
*受付時間 9:00~18:00