ビザ申請

帰化申請の条件とは|必要な要件について法律事務所が解説

by 弁護士 小野智博


帰化申請とは何か

「帰化申請」とは、外国籍の方が日本国籍を取得するための手続きのことです。日本に長く住んで、日本の社会に適応し、安定した生活を送っていると認められる場合、日本の国籍を取得することができます。帰化が許可されると、日本国民としての権利や義務が発生し、ビザの更新などは不要になります。帰化には「普通帰化」と「簡易帰化」があります。

普通帰化とは

普通帰化とは、基本的な帰化手続きで、一般的な外国籍の人が日本国籍を取得する際に行う手続きです。日本での生活を長期間にわたって続け、社会に適応し、安定した生活を送っていることが求められます。普通帰化を申請するためには、後述いたします、基本的な条件を満たす必要があります。

簡易帰化とは

簡易帰化は、特定の条件を満たす場合に、通常の普通帰化よりも簡易な手続きで帰化申請ができる方法です。日本に特別なつながりがある外国人や、日本人との結びつきが強い外国人が対象となります。簡易帰化では、普通帰化に比べて住居条件、能力条件、生計条件が免除・緩和されています。

簡易帰化の対象者は主に9パターンあります。

1.日本国民であった者の子(養子を除く)で、引き続き3年以上日本に住所または居所を有する者
2.日本で生まれ、引き続き3年以上日本に住所もしくは居所を有している者、またはその父もしくは母(養父母を除く)が日本で生まれた者
3.引き続き10年以上日本に居所を有する者
4.日本国民の配偶者で、引き続き3年以上日本に住所または居所を有し、現に日本に住所を有する者
5.日本国民の配偶者で、婚姻の日から3年を経過し、引き続き1年以上日本に住所を有する者
6.日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有する者
7.日本国民の養子で、引き続き1年以上日本に住所を有し、縁組の時に本国法により未成年であった者
8.かつて日本国籍を有していた者で日本に住所を有する者(日本に帰化後、日本国籍を失った者を除く)
9.日本で生まれ、出生時から国籍を有しない者で、出生時から引き続き3年以上日本に住所を有する者

普通帰化の条件

日本での帰化申請には、法務省が定めた条件を満たす必要があります。これらの条件は、日本社会にうまく適応し、日本国民としての責任を果たす準備が整っているかどうかを判断するためのものです。ここでは、帰化申請に必要な主な7つの条件について、Q&A形式でわかりやすく解説していきます。

Q1: 帰化申請するには、日本にどれくらい住んでいる必要がありますか?
A1: 日本に5年以上、引き続き住んでいることが必要です。この「引き続き」というのは、長期間日本を離れていないことを意味します。この期間中、仕事や留学のために日本を出たとしても、短期間であれば問題ありませんが、長期間日本を離れるとこの条件に当てはまらなくなる場合があります。

Q2: 帰化申請は年齢に制限がありますか?
A2: はい。帰化申請をするためには、本人が18歳以上である必要があります。日本の法律で定められた成人年齢が18歳であるため、この基準に基づいています。国籍国の法制でも成人に達している必要があります。
ただし、親と一緒に申請する場合や、日本人との間に親子関係や婚姻関係がある場合は、18歳未満での申請が認められる場合があります。

Q3: 素行が良いことって、どういう意味ですか?
A3: 素行が良好であることは、法令を守り、社会的に問題のない生活を送っていることを意味します。過去に犯罪歴があったり、納税を怠ったりしていると、素行が良好とはみなされません。軽微な違反でも、繰り返し違反している場合は注意が必要です。

Q4: 自立した生活を営んでいることが必要ですか?
A4: はい。申請者が自分自身で生活費を稼ぎ、安定した収入を得ていることが求められます。これは、経済的に日本で自立して生活していけるかどうかを判断するためです。扶養されている場合でも、扶養者の収入が十分であることが必要です。たとえば、家族全体の収入で生活が成り立っている場合には、この条件を満たしていると判断されることもあります。

Q5: 帰化するためには今の国籍を捨てる必要がありますか?
A5: はい。日本の帰化申請では、原則として現在の国籍を放棄することが求められます。これは、日本が二重国籍を基本的に認めていないためです。そのため、帰化が許可されると、母国の国籍を放棄する手続きを行う必要があります。ただし、特別な事情がある場合には、例外的に二重国籍が許されることもあります。

Q6: 帰化するには日本の憲法を守らなければならないですか?
A6: はい。帰化するためには、日本国憲法を遵守し、日本の法律を守る意思があることが重要です。国家や社会秩序を破壊するような行為に関与していないことも審査の対象です。日本国憲法を守るということは、法に基づいて生活を送るということを意味します。

Q7: 日本語はどのくらい話せれば帰化できますか?
A7: 日本での生活をスムーズに送るためには、日本語の基本的な会話ができることが求められます。特に、日常生活で必要なレベルの日本語能力が必要です。具体的には、買い物や役所での手続きができる程度の会話力があることが望まれます。帰化申請時には、面談や書類の記入があるため、この際に日本語能力が確認されることがあります。

帰化申請のながれ

帰化申請は、日本国籍を取得するために複数のステップを経て行われます。このプロセスは、日本の法律に基づいて厳格に進められ、申請者が日本社会に適応できるか、法的・経済的に問題がないかを審査されます。ここでは、帰化申請の流れについて詳しく説明します。

事前相談

まずは管轄の法務局に相談をしましょう。帰化申請を始める前に、居住地を管轄する法務局に連絡し、相談の予約を取ります。この相談の目的は、申請者が帰化の条件を満たしているかを確認し、申請手続きに関する説明を受けることです。申請には、各自の状況に応じた書類が必要で。相談の際に具体的な書類や必要な準備について、詳しく案内されます。

法務局の事前相談では、以下のような点を確認します。
・日本に居住している期間や在留資格の状況
・収入や職業、経済的な自立状況
・現在の素行や、税金・保険料の納付状況

この段階で、帰化申請が可能かどうかを確認できるため、帰化申請を検討している方は、まず相談しましょう。

受付

帰化申請の受付は、管轄の法務局で行われます。相談の後、必要書類を揃えたら、法務局に申請書類を提出します。このとき、全ての書類が揃っていることが非常に重要です。書類に不備があると、受付が保留されるか、再度の提出が求められることがあります。
書類の内容は、申請者の状況によって異なることがありますので、相談での法務局の指示に従った準備をしましょう。申請書類一式を提出し、法務局での受付が完了します。

面談

申請後、法務局での面談が行われます。面談は、帰化申請の審査の一環で、申請者の状況や意向を確認するために行われます。

面談では、以下のような質問がなされることが一般的です。
・なぜ帰化を希望するのか
・日本での生活や仕事の状況
・日本語の能力や日常会話の理解度
・日本国憲法や法制度についての基本的な理解

面談は、日本語で行なわれますが、日常生活で使う程度の日本語が理解できれば問題ありません。日本での生活に適応していること、法律や社会的ルールを守っていることが確認されれば、面談は順調に進むでしょう。
また、面談では申請者の家族構成や経済状況、仕事の内容についても詳しく聞かれることがあるため、情報を正確に伝えることが大切です。

許可・不許可の決定

帰化申請の許可・不許可の決定は、法務大臣が行います。面談や書類審査を経て、最終的に帰化が許可されるかどうかが決まります。審査の結果が出るまでには、申請から通常6か月から1年ほどの期間がかかります。この期間中に追加の書類提出を求められた場合は、迅速に対応しましょう。
帰化が許可された場合は、法務局から連絡があり、正式な帰化許可書が発行されます。許可後は市役所などで日本国籍を取得するための手続きが進められ、戸籍に記載されることになります。
一方で、帰化が不許可となった場合は、その理由について説明を受けることができます。不許可の理由は様々ですが、経済的自立や素行の問題、必要書類の不足などが考えられます。不許可となった場合でも、再申請することが可能ですが、次の申請は、不許可となった理由をしっかりと改善してからにすべきです。

帰化申請の必要書類

帰化申請には、多くの書類が必要となります。帰化申請で提出する書類は、法務局指定のフォーマットによる書類、役所から取得する公的書類、さらに勤務先から準備してもらう書類に分かれます。配偶者ビザや就労ビザの申請とは異なり、法務局のホームページで必要書類一覧は公開されていません。そのため、法務局での事前相談後に渡される書類一覧に従って、必要な書類を準備することが重要です。

1.法務局指定のフォーマットによる書類(作成する書類)
※法務局での事前相談時に貰うことができます。

・帰化申請書
・親族の概要(国内)
・親族の概要(国外)
・履歴書(その1)
・履歴書(その2)
・生計の概要(その1)
・生計の概要(その2)
・在勤及び給与証明書
・事業の概要
・居宅附近の略図等
・勤務先附近の略図等
・申述書
・帰化申請の動機書
・宣誓書(法務局で記入)

2.身分関係の書類
帰化申請では、申請者の身分関係を証明するための書類が必要です。具体的には、国籍や婚姻状況、家族関係を確認できる証明書や、最終学歴の卒業証明書などが含まれます。日本の役所で取得できる書類だけでなく、母国の役所で取得しなければならないものもあります。これらの書類を通じて、法務局は申請者が善良な社会的背景を有しているかを判断します。

3.生計要件に関する書類
生計要件を満たすためには、申請者が安定した収入源を有していることを証明する書類が必要です。勤務先から発行される業務内容や収入に関する証明書、給与明細などが代表的です。また、個人事業主の場合は、各種納税証明書や確定申告書等のコピーを準備し、収入が申請時点で一定期間以上継続していることを証明する必要があります。申請者が一定の資産を有していることも評価されます。この要件は、日本での生活基盤がしっかりしていることを示すための重要なポイントです。

4.税金関係の書類
税金の適切な納付状況も、帰化申請において確認される重要な項目です。申請者は、所得税や住民税の納付証明書を準備し、過去数年分の税金を正しく納めていることを証明する必要があります。法務局はこれを通じて、申請者が防止すべき脱税や違法行為に関与していないかを確認し、社会の一員としての責任を果たしているかを評価します。

5.社会保険の書類
帰化申請には、申請者が社会保険に適切に加入しているかどうかも審査対象となります。健康保険や年金保険に関する書類を提出し、長期的に保険料を支払っていることを証明します。これは、申請者が時間をかけて日本の社会的な制度や団体に貢献してきたことを示すものであり、帰化が認められるための重要な条件の一つです。

必要書類は多岐にわたりますが、法務局での相談時にどの書類が必要かを詳しく教えてもらえますので、指示に従ってしっかり準備しましょう。

帰化のメリット・デメリット

帰化申請によって日本国籍を取得することは、外国籍の方にとって大きな決断です。この決断には、メリットとデメリットの両方が伴います。ここでは、帰化によって得られるメリットと、同時に考慮すべきデメリットについて詳しく解説します。

日本国籍の取得 メリット

帰化によって最も大きなメリットは、日本国籍を取得できることです。これにより、日本国民としての権利を得ることができます。たとえば、以下のような権利や利便性があります。

選挙権と被選挙権の取得
帰化した後は、日本の選挙に参加する権利(選挙権)を持つことになります。さらに、国や地方自治体の選挙に立候補する権利(被選挙権)も得られるため、政治に参加する道も開けます。

パスポートの取得
日本のパスポートは、世界的に信頼されており、ビザなしで渡航できる国が多い点も大きなメリットです。これにより、海外旅行や出張がしやすくなります。

就職や住宅ローンの審査がスムーズになる
日本国籍を持つことで、日本国内での就職や住宅ローンの審査がスムーズになる場合があります。企業や金融機関によっては、国籍を問わない場合もありますが、日本国籍を持つことは審査の際の一つの強みになります。

安定した生活基盤 メリット

日本国籍を取得することで、日本での生活がより安定し、安心感が得られます。以下のような点が挙げられます。

在留資格の更新が不要
外国人として日本に在留する場合、ビザや在留カードの更新手続きが必要ですが、日本国籍を取得することで、これらの手続きが不要になります。これは特に、長期的に日本に住みたいと考えている人にとっては大きなメリットです。

公務員としてのキャリアも可能に
外国籍の場合、公務員になれる職種には一部制限があります。しかし、帰化するとこの制限が解除され、公務員やその他の公的機関での職務に就くことが可能になります。これにより、国や地方自治体の業務に携わり、さらなるキャリアの道が広がります。

長期的な生活計画が立てやすい
永住権とは異なり、帰化して日本国籍を取得することで、日本からの退去命令の心配もなくなり、より長期的な生活の計画が立てやすくなります。

社会的信頼の向上 メリット

日本国籍を取得することで、社会的な信頼度が向上するケースもあります。たとえば、次のような利点があります。

ビジネスにおける信頼
日本国籍を持っていることで、取引先や顧客からの信頼が増すことがあります。特に日本国内でビジネスを展開する場合、日本国籍を持つことで契約の際の信頼性が向上することがあります。

社会的な一体感
日本国籍を取得することで、地元のコミュニティや学校、職場での一体感が生まれやすくなります。日本社会の一員として迎え入れられることで、社会参加の機会が増え、より深い人間関係を築くことができるでしょう。

母国の国籍を失う デメリット

帰化の大きなデメリットとして挙げられるのが、母国の国籍を放棄する必要がある点です。日本の法律では二重国籍を原則として認めていないため、帰化申請が許可されると、母国の国籍を失うことになります。

母国との関係が変わる
帰化によって日本国籍を取得した場合、母国の国籍は原則として失うため、母国との法的な関係が変わることがあります。たとえば、母国での選挙権を失ったり、母国での公的な権利を行使できなくなったりする場合があります。

家族や友人との関係に影響が出ることも
帰化によって母国との関係が変わることで、家族や友人との関係に影響を及ぼすこともあります。特に、母国の国籍を持つ家族や親族と法的な立場が異なることで、何かしらの問題が生じる可能性があります。本国の相続権がなくなることもあります。

まとめ

帰化は、日本での生活をより安定させ、さまざまなメリットを享受できる一方で、母国との関係や国籍の喪失というデメリットも考慮する必要があります。帰化を検討する際には、自分にとって何が最も重要なのかをよく考え、慎重に判断することが大切です。

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、帰化許可申請を含む外国人の日本滞在に関する無料相談を受け付けており、各種ビザ申請に関する支援も行っています。当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。ご安心してご相談ください。


※本稿の内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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