就労ビザとは
ビザ(査証)と在留資格の違い
私達が普段ビザと呼んでいるものは、実際は在留資格を指していることが多いです。
日本以外の多くの国は、「ビザ(査証)」と「在留資格」を明確に区別しておらず、ビザ(査証)の種類自体が「どんな活動目的で滞在できるか」を示しているため、日本でも在留資格のことをビザと呼ぶことが一般的になったと考えられます。
・ビザ(査証)とは
「入国を、その国の在外公館(大使館や総領事館)が事前に承認した」という公式な「許可証」のようなもので、その国の安全と入国者の適切な滞在のために、入国目的、滞在理由、身元などを事前に確認するのです。
ビザ(査証)が発給されたからと言って必ず入国が許可されるわけではありません。
最終的な入国の許可は、空港などでの対面による入国審査の時点で決定され、許可を受けた時点で、ビザ(査証)の役割は終了します。
・在留資格とは
その国で「どんな活動目的で滞在できるか」を示すものです。
在留資格は、外国人がその国に合法的に滞在する際の活動の種類や目的を示す法的な資格です。
ビザ(査証)が入国を許可する「入口」の許可証であるのに対し、在留資格は滞在先の国での具体的な活動や滞在の正当性を定める「中身」の資格と言えます。
日本で働くために必要な就労ビザ
出入国在留管理庁ホームページの在留資格一覧表をご覧いただくと、在留資格を「活動資格」とも表記しており、さらには「就労資格」、「非就労資格」、「居住資格」などに分けられていることが確認できます。
こちらの記事では、在留資格を「ビザ」、就労資格を「就労ビザ」と記載して解説していきます。
・在留資格一覧表
ビザは全部で29種類、そのうち就労ビザに当たるものは19種類となっており、日本で働きたい場合は就労ビザの取得が必要になります。
なお、居住資格にあたるビザでも就労は可能です。
詳細は、参考情報をご覧ください。
・外国人が日本で働くための就労ビザの種類とは?ビザ申請に強い法律事務所が解説
・外国人の就労ビザを取得する方法|ビザ申請に強い法律事務所が解説
・外国人を雇用する企業が覚えておくべきポイント|就労ビザ取得のポイントを解説
・外国人を雇用したい企業必見!就労ビザの取得をスムーズに進めるための方法を解説
就労ビザ全般における基本的な申請要件
有効なパスポート
十分な有効期間のあるパスポート(旅券)の原本が必要です。
申請人が外国にいる状態で行う在留資格認定証明書の交付申請(日本へ呼び寄せる申請)の場合は、顔写真のページのコピーを提出します。
もちろん偽造パスポートであってはなりません。
招へい機関・協力者
招へい機関とは、外国人を日本に呼び寄せて雇いたい会社のことを言います。
外国人を日本で雇用する場合、多くのケースでは採用する会社が招へい機関となります。
「経営・管理」ビザでも、管理職として雇用される場合は同様です。
「経営・管理」ビザは、ビザとしては一つですが、
事業の「経営」を行う経営者(社長、代表取締役など)と、
雇用され事業の「管理」に従事する管理者(取締役、部長など)で、
実際には二つの異なる活動を含んでいます。
「経営」の活動にて「経営・管理」ビザを外国にいる状態で取得したい場合、雇用関係が発生しないため招へい機関が存在しません。
この場合、事務所の賃貸借契約締結や資本金の振込手続きなどを行うために、実務上は日本に居る日本人等の協力者が必要となります。
協力者が確保できない場合は、来日後にこれらを行うことのできる4ヶ月間の「経営・管理」ビザを取得する選択肢もありますが、手続きが複雑なため専門家への相談をお勧めします。
滞在費用の確保
申請人が滞在中の生活費、住居費、帰国旅費などを安定して賄える経済的能力があることを証明する必要があります。
銀行口座の残高証明書や雇用契約書、給与明細書などの書類を求められることがあります。
健康状態
就労ビザの中の「特定技能」に関しては「健康状態が良好であること」と上陸基準省令に明示的に規定されています。
実務上は他の就労ビザでも健康に関する書類などの提出を求められる可能性はありますので、日頃からの健康維持は、充実した日本での生活と就労に欠かせない要素と言えます。
また、入国前結核スクリーニングの開始予定について公表されています。
・【重要】入国前結核スクリーニングの開始予定について(フィリピン、ネパール及びベトナムの国籍を有する方)
適法な滞在、犯罪歴の有無
申請人に不法滞在や交通違反等も含めた犯罪歴などがある場合は、正直に申請書に記載することが重要です。
審査対象となるのは、ビザの種類、罪を犯した国、犯罪からの経過年数などに関わらず、生涯にわたる全ての前科・前歴です。
犯罪歴等があってもビザの申請自体は可能ですが、審査がより厳しくなる傾向がありますので、専門家へ相談することをお勧めします。
就労ビザの具体的な申請要件
就労ビザの中でも、多くの問合せをいただく「技術・人文知識・国際業務」と「経営・管理」の具体的な申請要件を見ていきます。
「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国(ぎじんこく))とは
簡単に紹介しますと、「技術・人文知識・国際業務」は、日本の会社と外国人が雇用契約を結んで、理系の業務「技術」か、文系の業務「人文知識」か、外国人ならではの業務「国際業務」に従事するための就労ビザと言えます。
「経営・管理」(通称:社長ビザ)とは
「経営・管理」は、外国人が日本で会社を設立して経営者として活動するか、または日本の会社で取締役や部長などの管理職として事業の管理運営に従事するための就労ビザと言えます。
代表取締役など経営者として起業し運営する場合と、雇用契約に基づき管理職として働く場合の両方を含んでいます。
3「技人国」と「経営・管理」の申請要件
学歴、職歴、関連性、安定継続性、報酬などの申請要件は、概ね次の表のようにまとめることができます。
「技術・人文知識・国際業務」と「経営・管理」の申請要件の対比
技術・人文知識・国際業務 (通称:技人国(ぎじんこく)) |
経営・管理 (通称:社長ビザ) |
|
主な職種 | ・システムエンジニア ・営業職 ・通訳など |
・代表取締役社長(経営者) ・取締役・部長(管理者)など |
学歴要件 | 大学または専門学校で関連分野を専攻 | 学歴不要 |
職歴(実務)要件 | ・大卒か日本の専門卒の学歴があれば職歴は不要 ・学歴が足りない場合は職歴10年以上 など※詳しくは、下記『▶︎参考情報:「技術・人文知識・国際業務ビザ」で就労するには|業務内容と申請方法について法律事務所が解説』をご覧ください |
・事業の「経営」をおこなう経営者の場合: ⇒職歴不要・事業の「管理」に従事する管理者の場合: ⇒3年以上の経営や管理の経験 |
学歴や職歴(合わせて経歴とします) と、 業務(仕事)内容との関連性 |
・経歴と業務内容との関連性が必要 | ・経歴と業務内容との関連性不要 (関連性があると審査に有利ではある) |
事業の適正性、安定性、継続性 | ・法令違反の事業でないこと ・雇用企業が安定した経営基盤を持っていること ・雇用企業に事業継続の見込みがあること |
・法令違反の事業でないこと ・安定した経営基盤であること ・実現可能性の高い事業計画(書)に基づき、継続的な収益が見込めること |
報酬要件 | ・日本人と同等かそれ以上 | ・事業の「経営」をおこなう経営者の場合: ⇒公表されてないものの月額25万円~が理想・事業の「管理」に従事する管理者の場合: ⇒日本人と同等かそれ以上 |
主な審査ポイント | ・専門性があること ・経歴と業務内容に関連性があること |
・事業の実現可能性があること ・事業の実態があること(ビザ目的のペーパーカンパニーなどではないこと) |
・技術・人文知識・国際業務ビザとは?申請の要件やポイントを法律事務所が解説
・「技術・人文知識・国際業務ビザ」で就労するには|業務内容と申請方法について法律事務所が解説
・「経営管理ビザ」の基礎知識と留意ポイントをまとめて解説
・経営管理ビザの審査期間は?申請から取得までの流れを徹底解説
・経営管理ビザの許可率は低い? 申請の難易度が高いといわれる理由や過去の許可事例・不許可事例を紹介
「技人国」と「経営・管理」の同時申請
ここで言う「同時申請」とは
同一の申請人が、「技人国」と「経営・管理」を同時に申請できるということではありません。
例えば、申請人Aが「経営・管理」を申請する一方で、別の申請人Bが、申請人Aの立ち上げた会社にて「技人国」で就労したい時に、申請人AとBは同時期に申請できるという意味です。
「経営・管理」の許可を待たずに「技人国」の申請が可能
一見、「経営・管理」を申請中の会社を雇用元として「技人国」を申請したい場合は、雇用元の「経営・管理」の許可がおりた後に申請するものと思いがちです。
実際には、「経営・管理」の審査結果を待たずに「技人国」の申請を行うことが可能です。
これにより、手続きの時間を短縮できる場合があります。
同時申請するときの注意点
「経営・管理」、「技人国」ともに許可がおりることは、もちろんあります。
しかし、「経営・管理」が不許可になると、それに連なる「技人国」の申請も不許可になります。
また、「経営・管理」のみが許可されて、「技人国」は不許可になることもあります。
複数の「技人国」申請人がいる場合には、一部の申請人のみ許可がおり、残りの申請人は不許可となる可能性もあります。
これらの点を念頭に置いて申請を進めて行きましょう。
就労ビザの注意点
労働条件通知(明示)書または雇用契約書に記載すべき業務内容及び申請書類との整合性
就労ビザの申請において、複数の書類に記載される業務内容(活動内容)の一貫性は非常に重要です。
具体的には、以下の書類に記載される業務内容が完全に一致している必要があります。
・ビザ申請書の「活動内容詳細」欄
・労働条件通知書の「従事すべき業務の内容」欄
・「業務内容説明書」(提出義務は無いものの、実務上はほぼ必須の添付書類)
これらの書類に記載する業務内容が互いに矛盾していると、申請人の実際の職務内容に疑義が生じ、審査に影響します。
一見当然のことのように思えますが、実務上では意外にも記載内容が統一されていないケースが散見されます。
業務内容の記載にあたっては、就労ビザに適した内容を一貫して記載し、整合性がとれていることが重要です。
・ビザ申請書
・モデル労働条件通知書の様式
社会保険・労働保険への加入義務
就労ビザを持つ外国人の社会保険・労働保険については、基本的に日本人と同様、加入義務があり、「外国人だから加入不要」という判断は誤りとなります。
社会保険・労働保険を総称して「社会保険制度」と広い意味で呼ぶこともあります。
「社会保険」とは、次の保険の総称です。
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険(40歳以上65歳未満の方が対象)
「労働保険」とは、次の保険の総称です。
・雇用保険
・労災保険(労働者災害補償保険)
社会保険・労働保険への加入状況について、「日本の法令を遵守しているか」などの観点からも、就労ビザの審査に影響がありますので注意が必要です。
・外国人雇用の際の社会保険について|加入義務や手続きの流れを解説
・外国人を雇用する際の雇用保険はどうする?注意点について国際業務に詳しい法律事務所が解説
住民税の納税義務
外国人でも住民税の支払義務があります。
そして、住民税の「課税(または非課税)証明書」と「納税証明書」を、ビザの更新のときなどに提出する必要があります。
・課税証明書:年間総所得を証明
・納税証明書:税金の納付状況を証明
これらの証明書は、1月1日時点で申請人が住んでいる市区町村の役所で発行してもらえます。
役所によって証明書の様式が異なっているので、年間総所得と納税状況の両方が記載された証明書でしたら、いずれか一方でもOKです。
注意点としては、証明書は未納額がゼロ円のものを提出することです。
納期が来ていない納期未到来分に関しては、未納額があっても問題ありません。
住民税の納付方法には2種類あります。
・申請人自身が直接納める「普通徴収」
⇒未納にならないように申請人自身で注意する必要があります。
・会社の給料から天引きされる「特別徴収」
⇒会社が納付を担当している特別徴収では、会社の方で未納という場合もあります。
会社側も、未納にならないように注意する必要があります。
納税が完了しても、証明書への反映は数日かかる場合があります。
未納額がゼロ円になったことを確認して証明書を取得します。
申請には、証明書の発行日から3か月以内のものを提出します。
就労資格証明書
就労資格証明書とは、「日本で働ける外国人なのか、具体的にどんな仕事ができるのか」を分かりやすく証明する文書です。
外国人本人が申請し、出入国在留管理庁長官が証明します。
外国人を雇いたい企業側も、働きたい外国人側も、この証明書があると採用手続きがスムーズになります。
この証明書が無くても、在留カードなどで就労可能かどうか確認できます。
しかし、それだけでは具体的にどんな仕事ができるのか判然としない場合があるため、就労資格証明書の交付が可能となっています。
企業側の注意点は、証明書が無いことを理由に雇用を拒否することは法律で禁止されていることです。
・就労資格証明書交付申請
所属機関(契約機関・活動機関)に関する届出(所属機関に変更があったとき)
外国人本人が行い、事由発生日から14日以内に届け出る義務の届出です。
会社(所属機関)が行う届出とはまた別のものですので混同しないようにしましょう。
なお、「技人国」などの場合は、
「契約機関に関する届出」の様式を使います。
(技術・人文知識・国際業務、高度専門職1号イ又はロ、高度専門職2号(イ又はロ)、研究、介護、興行、技能、特定技能)
・退職・転職、勤務先の会社の消滅などにより、会社との契約が終了した場合
・新しい会社と契約した場合
・勤務先の会社が名称・所在地を変更した場合
などに届け出ます。
・所属(契約)機関に関する届出
「経営・管理」などの場合は、
「活動機関に関する届出」の様式を使います。
(経営・管理、教授、高度専門職1号ハ、高度専門職2号(ハ)、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修)
・経営していた会社の譲渡、転職、退職、卒業などにより、活動機関での活動を終え、離脱した場合
・転職・進学、経営していた会社を譲渡して新しい会社の経営を開始したなどにより、新しい活動機関に移籍した場合
・会社などが名称・所在地を変更した場合、消滅した場合
などに届け出ます。
・所属(活動)機関に関する届出
届出が出来る者として、外国人本人となっておりますので、弊所では適切に作成できるように、アドバイスや作成のご支援をさせていただくことは可能です。
こちらの届出は義務ですので注意しましょう。
失念すると、更新の審査で良くない影響が出る可能性があります。
所属機関による届出
会社(所属機関)が行う届出です。
外国人本人が行う届出とはまた別のものですので混同しないようにしましょう。
外国人の雇用開始・終了時に行う届出で、事由発生日から14日以内に届け出ます。
入社予定だった外国人が入社しなかった時も届け出るべき場合があります。
期限を過ぎた場合でも速やかに届け出て下さい。
なお、未来の日付で事前届出はできないこととなっています。
・所属機関による届出手続
・所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A
不法就労助長罪
まず、「不法就労」とは、外国人が日本の法律に違反して働くことを指します。
具体例としては、以下のケースが不法就労に該当します。
・不法滞在者が働くケース
ビザの期限が切れた後も日本に残って働いたり(オーバーステイ)、正規の手続きなしに入国した外国人(密入国者)が働いたりすることは不法就労です。
また、日本から退去するよう命じられている外国人が働くことも不法就労です。
・就労許可を得ずに働くケース
留学生や難民申請中の方でも、出入国在留管理庁から特別に許可(資格外活動許可)を得なければ働けません。
また、短期滞在ビザ(いわゆる観光ビザ)で来日した場合は、あくまで観光が目的なので原則として日本で働けません。
・資格外活動許可申請が必要な場合、不要な場合とは?就労ビザ申請に強い法律事務所が解説
・認められた範囲を超えて働くケース
例えば、レストランのシェフとしてビザを得た外国人が工場で作業をしたり、留学生がアルバイトの時間制限(原則週28時間以内)を超えて働いたりすることも不法就労となります。
そして「不法就労助長罪」とは、事業主が働く資格などがない外国人を雇用したり、誰かが不法就労を手助けしたりすることが、この罪に当たります。
罰則として、3年以下の懲役か300万円以下の罰金、あるいはその両方であったりします。
また不法就労の罰則は事業主等だけでなく外国人本人にも及び、強制送還や一定期間の入国禁止などの罰則が科されることがあります。
以上のことから不法就労に関し、事業主、外国人ともに注意が必要です。
・外国人の適正雇用について
・外国人雇用の第一歩|外国人の採用時に必要となる書類とは?
・外国人雇用に関する採用の手続きについて|国際業務に詳しい法律事務所が徹底解説
まとめ
専門家への依頼が推奨される理由
外国人の就労ビザ申請において、企業側と申請人側の双方に様々な注意点があります。
ビザの種類によって申請要件が異なり、審査のポイントも変わってきます。
さらに、業務内容と経歴との関連性の判断、業務内容と申請書類との整合性の完全一致、犯罪歴があるケースなど、専門的なノウハウが必要と言える場面が多くあります。
このような複雑な状況に陥りやすいため、専門家の適切なサポートを受けることが、申請の不備や不許可のリスクを大幅に減らし、スムーズな就労ビザの取得につながります。
・外国人雇用で失敗しないために!知っておくべき注意点を法律事務所が解説
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執筆者:弁護士小野智博
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