目次
アメリカへの出張に必要な申請
ESTAとビザの違いについて:短期出張での渡航方法
アメリカへの短期出張を計画している場合、ESTA(電子渡航認証システム)を利用するケースが多いです。ESTAは、ビザ免除プログラム(VWP: Visa Waiver Program)に基づくもので、日本をはじめとする特定の国の国民が、観光や商用目的で90日以内の滞在を行う際に申請可能です。
ESTAを利用することで、事前にビザを取得する必要がなく、オンラインで簡単に申請できるため、アメリカへの短期渡航に便利です。とはいえ、ESTAを取得していても、アメリカへの入国が必ず許可されるわけではありません。最終的な判断は、渡米後の入国審査官が行うため、場合によっては入国を拒否される可能性があることを理解しておく必要があります。
ESTAの有効期限は2年間で、この期間内であれば基本的に何度でも渡航が可能です。ただし、半年以上の滞在を複数回予定している場合は、ESTAではなくビザの取得を検討することを推奨します。
・米国でビジネスを行う際のビザの種類と取得方法|ビジネスビザに精通した弁護士が解説
商用目的の出張にはB-1ビザ
B-1ビザは短期商用ビザで、米国内での商談や会議、契約締結、展示会への参加など、一時的なビジネス活動を目的とする渡航者向けに発給されます。長期的な雇用活動や労働行為を行なうことはできません。また、観光や友人・親族への訪問を行う際にも必要です。
B-1ビザを取得する場合はESTAとは異なり、事前に米国大使館や領事館での面接を受ける必要があります。そのため、渡航スケジュールに余裕を持って申請を進めることが重要です。
ESTA(エスタ)の対象者と申請方法
ESTAの対象となる渡航者
ESTAは、以下の条件を満たす渡航者が利用できます。
・日本を含むビザ免除プログラム参加国の国籍を持つ者 |
・90日以内の観光または商用目的の滞在 |
・航空または船舶での入国(陸路での入国は対象外) |
・有効なパスポートを所持していること |
ESTAが認証されていない場合、渡航ができないため、必ず渡航前に申請し、承認を得ておく必要があります。
ESTAの申請の流れと注意事項
ESTAの申請はオンラインで行い、通常は数分から72時間以内に結果が通知されます。申請の流れは以下の通りです。
1.公式サイト(米国国土安全保障省のESTA申請ページ)にアクセス |
2.必要情報(パスポート情報、滞在先情報など)を入力 |
3.申請料の支払い(クレジットカードまたはPayPal) |
4.承認結果を確認し、印刷して携行 |
注意点として、ESTAの有効期限は2年間またはパスポートの有効期限までのどちらか短い方となります。申請が却下された場合、B-1ビザの取得が必要となります。
ESTAが利用できない場合
以下の場合は、ESTAではなくB-1ビザの取得が必要です。
90日を超える滞在予定 |
労働報酬を受ける活動 |
過去に米国での入国拒否歴やオーバーステイがある |
特定の渡航歴(イラン、イラク、北朝鮮など)がある |
事前に自身の状況を確認し、適切な申請を行うことが重要です。
短期商用B-1ビザの対象者と申請方法
商用と就労の違いについて
アメリカへの渡航目的が「商用」なのか「就労」なのかによって、適用されるビザの種類が異なります。B-1ビザは、商談や会議への参加、契約の締結、展示会への出席など、一時的なビジネス活動を目的とするものです。これらの活動は、米国企業との関係を築くためのものであり、報酬を受け取ることは認められていません。一方、「就労」ビザは、米国の企業に雇用され、給与を受け取る形での業務を行う場合に必要になります。そのため、渡航前に自身の活動が「商用」に該当するのか、「就労」に該当するのかを正確に把握し、適切なビザを申請することが重要です。
商用ビザの取得手続きと提出書類
B-1ビザを取得するための手続きは以下の通りです。
1.オンライン申請(DS-160フォーム) 必要事項を入力し、申請料を支払う |
2.面接予約 米国大使館または領事館で面接を受ける日程を確保 |
3.必要書類の準備 ・パスポート(6カ月以上の有効期限) ・申請書(DS-160)の確認ページ ・面接予約確認書 ・渡航目的を示す書類(企業からの招聘状、商談の証明など) ・財政証明(滞在費用を賄えることを示す書類) |
4.面接の実施:領事官による審査を受け、ビザ発給の可否が決定 |
B-1ビザの取得には申請から1~2か月程度と時間がかかるため、出張予定が決まり次第、早めに申請を進めることをおすすめします。
アメリカ出張で利用される主な就労ビザ
H-1Bビザ 特殊技能職ビザ
H-1Bビザは、アメリカで高度な専門知識を要する職業に従事する外国人労働者向けのビザです。主に、IT、エンジニアリング、医療、金融、教育、建築などの分野で働く専門職が対象となります。このビザを取得するためには、通常、申請者が大学の学士号以上の学歴を持ち、雇用主がその職種に対して専門的な知識を必要とすることを証明する必要があります。
H-1Bビザには年間の発給数に上限があり、抽選制度が適用されるため、全ての申請者が取得できるわけではありません。
E-1、E-2ビザ 貿易駐在員・条約投資家ビザ
E-1ビザおよびE-2ビザは、アメリカと特定の条約を結んでいる国の国民が貿易や投資を目的として渡航するためのビザです。日本はこの条約国に含まれており、日本企業や投資家がアメリカで事業を展開する際に利用できるビザの一つとなっています。
E-1ビザ(貿易駐在員ビザ)は、アメリカとの間で「国際貿易」を行う企業の社員が取得できるビザです。貿易には、物品の輸出入だけでなく、金融、通信、物流、サービスの取引なども含まれます。申請者は、日本とアメリカの間で継続的かつ相当な規模の取引が行われていることを証明しなければなりません。また、申請者自身が企業の管理職や専門職であることが求められます。
一方、E-2ビザ(条約投資家ビザ)は、アメリカに相当額の投資を行い、事業を運営または管理する投資家やその従業員を対象とするビザです。申請者は、投資した事業が利益を生み出し、継続的に運営される見込みがあることを証明する必要があります。
L-1ビザ 企業内転勤ビザ
L-1ビザは、同一企業内でアメリカへ転勤する社員を対象としたビザであり、特に国際企業の従業員が頻繁に利用するビザの一つです。このビザは、大きく分けて2種類に分類されます。L-1Aビザは、管理職や経営幹部がアメリカの支社や関連会社に転勤する場合に適用され、L-1Bビザは、専門的な知識を持つ従業員がアメリカで業務を行う場合に利用されます。
L-1ビザの取得には、申請者が転勤前に1年以上、同じ企業で継続して勤務している必要があります。また、転勤先となるアメリカの企業が、親会社、子会社、支店、関連会社などの関係性を持つことが条件となります。企業がL-1ビザの申請を行う際には、転勤の正当性や、申請者が管理職または専門職として適切な職務を行うことを示す証拠書類を提出する必要があります。
L-1Aビザは最大7年、L-1Bビザは最大5年の滞在が可能で、それぞれ一定の条件を満たせば延長申請も認められています。
入国拒否された場合の対応策
アメリカへの入国を試みた際に、ESTAまたはビザを使用しても入国を拒否されるケースがあります。事前に十分な準備をしていたとしても、米国税関・国境警備局(CBP)によりビザの適用範囲が厳しく確認されることもあるため、事前に公式サイトで最新情報を確認することも必要です。
ESTAでの入国が拒否された場合
ESTAを利用してアメリカに入国しようとした際、入国審査官の判断によって拒否されることがあります。ESTAによる入国拒否の主な理由としては、過去のオーバーステイ(滞在期間超過)、犯罪歴、不適切な渡航目的、または入国審査官が渡航目的に疑念を抱いた場合などが挙げられます。
一度ESTAでの入国が拒否されると、再度ESTAを利用することは難しくなり、以後のアメリカ渡航にはビザの取得が必要になります。その場での異議申し立てはほぼ不可能であり、通常は即時帰国となります。帰国後にビザが取得できれば、アメリカへの入国の可能性が開けます。
ビザでの入国が拒否された場合
ビザを取得していたにもかかわらず、入国審査で拒否されるケースもあります。ビザを持っていることは、アメリカへの入国を保証するものではなく、最終的な判断は空港や港での入国審査官が行います。ビザでの入国拒否の理由としては、申請時の情報と実際の渡航目的に齟齬がある、過去にアメリカの法律を違反した履歴がある、または審査官が渡航の正当性に疑問を持った場合などが考えられます。
ビザでの入国が拒否された場合、その場での異議申し立てはほぼ不可能であり、通常は即時帰国となります。ただし、入国拒否の理由によっては、今後の対応次第でビザの再申請が可能な場合もあります。
過去にオーバーステイをしていた場合や犯罪歴がある場合は、渡航許可を得るために追加の証明書類が必要となる可能性があるため、事前に専門家に相談することを推奨します。
アメリカ出張を成功させるためのポイント
アメリカへの出張は、ビジネスの発展や国際的な取引を進める上で重要な機会となります。しかし、滞在中に予期せぬトラブルに直面すると、業務に支障をきたし、出張の成果が損なわれる可能性があります。そのため、事前の準備や滞在中の注意点を十分に把握し、スムーズな出張を実現することが求められます。ここでは、アメリカ滞在中に気をつけるべきポイントと、ビザの有効期限の確認および更新の可能性について詳しく解説します。
アメリカ滞在中に気をつけること
アメリカ滞在中は、ビジネスの円滑な進行を確保するために、法律や文化の違いを理解し、現地のルールに従うことが不可欠です。
まず、入国時に申告した渡航目的に沿った行動を心掛けることが重要です。B-1ビザやESTAで入国した場合、就労行為は禁止されており、現地での業務はあくまで商談や会議、視察などに限定されます。アメリカ国内での報酬を伴う業務を行うと、違法就労と見なされ、強制送還や今後の入国禁止措置が取られる可能性があります。滞在目的が変更になった場合は、適切な手続きを行ないましょう。
また、アメリカの医療費は非常に高額です。短期間の出張であっても、海外旅行保険に加入しておくことが望ましいでしょう。特に、持病がある場合は、必要な薬の持ち込みに関する規制を事前に確認し、必要に応じて英語で記載された医師の診断書を準備しておくと安心です。
滞在可能期間の確認
アメリカ出張の際には、ビザの有効期限を事前に確認し、滞在中に期限切れとならないよう注意する必要があります。ビザの有効期限と実際の滞在可能期間は異なるため、混同しないように注意が必要です。たとえば、B-1ビザの有効期限が10年であっても、一度の入国で許可される滞在期間は通常6か月以内と制限されており、I-94(入国記録)に記載された期限を超えないようにしなければなりません。
よくある質問
Q1. ESTAとビザの違いは何ですか? |
A1. ESTAは、ビザ免除プログラム(VWP)の対象国の国民が90日以内の観光または商用目的でアメリカに滞在する場合に利用できる電子渡航認証システムです。 ビザは、90日以上の滞在や就労を伴う活動がある場合、またはESTAが利用できない場合に必要です。 |
Q2. ESTAとB-1ビザのどちらを選べば良いですか? |
A2. 滞在期間が90日以内で商談や会議が目的の場合は、ESTAが利用可能です。それ以上の滞在や複雑な商用活動が含まれる場合は、B-1ビザの取得が必要です。 |
Q3. ESTA申請はどのくらい前に行えばいいですか? |
A3. 渡航の少なくとも72時間前までに申請することが推奨されていますが、予定が確定した時点で早めに申請するのがベストです。 |
Q4. ESTA申請が却下された場合はどうすればいいですか? |
A4. ESTA申請が却下された場合、米国大使館で適切なビザを申請する必要があります。理由を確認し、必要な書類を準備してください。 |
まとめ アメリカ出張ビザの申請を弁護士・行政書士に依頼するメリット
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、「アメリカ海外出張ビザ」についての無料相談を受け付けています。
「どのビザに該当するのか」「出発予定に間に合わせたい」など、「アメリカビザ」の申請では、的確な要件判断や実務上の豊富な経験に基づく必要書類の準備が重要であり、審査結果に大きく影響します。
当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。ご安心してご相談ください。
※本稿の内容は、2025 年 2 月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努
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執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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