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駐在員ビザの主な種類と選択のポイント
駐在員ビザは、海外で活動する日本の企業の社員やその家族が安心して生活し、働けるために必要な制度です。主な種類としてLビザとEビザがあります。
Lビザ 企業内転勤者向けのビザ
Lビザ(企業内転勤ビザ)は、企業内の異動により、アメリカ国内の親会社・子会社・関連会社・支社へ一時的に派遣される駐在員向けのビザです。Lビザには、L-1AとL-1Bの2種類があります。
L-1Aビザは、米国の関連会社で役員や管理職として勤務する従業員向けで、経営や組織全体の管理を行う立場の人が対象です。このビザは、初回の3年間の有効期限後、2年ごとの延長が可能で、最長7年間の滞在が認められます。
一方、L-1Bビザは、特定分野の専門知識を有する従業員向けのもので、企業の製品やサービス、技術、または業務プロセスに関する高度な知識と経験を持つ人が対象です。こちらのビザは、初回の3年間の有効期限後、1回のみの延長が許可され、最長5年間の滞在が可能です。
Lビザは、特に国際的なビジネス展開を行う企業にとって重要な役割を果たします。申請手続きが比較的簡単で、家族の同行も認められるため、多くの駐在員に利用されています。
Eビザ 投資や貿易関連のビジネス活動専用のビザ
Eビザには、貿易駐在員向けのE-1ビザと、投資家向けのE-2ビザがあります。
E-1ビザ(貿易駐在員ビザ)は、米国との間で貿易を行う企業にふさわしいビザです。例えば、製品の輸出入を行う会社が頻繁に米国と取引を行っている場合、このビザを利用することで、貿易活動を円滑に進めるために必要な従業員を米国に派遣することができます。特に、米国市場への参入や拡大を目指す企業にとって、E-1ビザは非常に有益です。
E-2ビザ(投資駐在員ビザ)は、米国内で事業に投資を行う個人や企業に適しています。例えば、米国内に新しいレストランを開業する予定がある投資家や、すでに運営している事業を拡大するために追加投資を行う企業が、このビザを利用することで、事業運営に携わる必要な従業員を米国に駐在させることが可能です。米国内で事業を展開し、成長させたいと考えている投資家や企業にとって、E-2ビザは重要な手段となります。
E-1/E-2ともに、家族の同行が認められるており、ビザ保持者は安心してアメリカでの就労や事業運営に専念できるようになっています。
ビザ選択のポイント
アメリカ駐在員のビザを選択する際は、事業内容や派遣先での役割を基に判断します。Lビザは、企業間の転勤を前提としたビザで、特に親会社・子会社関係が明確な企業に適しています。管理職や専門知識を持つ社員が対象であり、過去に一定期間、関連会社で勤務した実績が必要です。
一方、Eビザは、アメリカとの貿易や投資を主目的とする場合に選ばれます。条約国である日本の企業の従業員が対象となり、貿易量や投資額が審査の重要なポイントです。
LビザやEビザは、他の就労ビザと比較しても、取得要件が企業の事業活動に直結している点が特徴です。企業の経営や専門知識に基づく業務全般をカバーできるため、企業規模や活動内容に応じて柔軟に選択可能です。
ビザ選択を迷った際は、派遣先での業務内容、企業間の関係、または貿易や投資活動の有無を明確にし、それが各ビザの要件と合致するか確認することが最も重要です。事前に事業計画や派遣の目的を整理し、それに基づいて選ぶことで、適切なビザ取得につながります。
・海外進出・海外展開:米国でビジネスを行う際のビザの種類と取得方法|ビジネスビザに精通した弁護士が解説
駐在員ビザ申請の条件
L-1ビザ取得の条件
L-1ビザを取得するためには、管理職または経営幹部の役職に就いていること、または専門的な知識を有していること。そして、米国企業内でこれらのいずれかの職務に従事する予定であることが求められます。また、申請前の3年間に、米国外の国際企業で1年間連続して勤務している必要があります。
Eビザ取得の条件
E-1(貿易駐在員)ビザ
・条約締結国の国籍を有していること。 |
・渡米予定の米国企業(貿易会社)が条約国の国籍を有していること ※条約締結国の国籍を有するためには、企業や法人の少なくとも50%以上が条約締結国の国民によって所有されている必要がある |
・米国企業または本人が「実質的な国際貿易」を行うこと ※継続的かつ相当な規模の貿易を指し、貿易の50%以上が米国と条約締結国間で行われる必要がある |
・貿易とは、商品、サービス、技術の国際的な取引を指す |
・条約締結国の貿易業者でない場合、監督職、管理職、または米国企業の効率的な運営に不可欠な専門技能を持つ必要がある |
E-2(投資駐在員)ビザ
・条約国の国民であること |
・米国での投資企業が条約国の国籍を有していること ※企業の50%以上が条約国の国民により所有されている必要あり |
・投資が実質的であり、企業運営を成功させるのに十分な資金であること ※単なる銀行預金などは投資と見なされない |
・実際に営業・運営される商業企業であること |
・申請者および家族の生計を維持する以上の利益を生む企業であるか、米国経済に重要な影響を与えること |
・主要投資家として渡航する場合は企業の開発や運営に積極的に関与し、主要投資家でない場合は監督職・経営職、または企業運営に不可欠な専門的技能を持つ従業員として勤務すること |
駐在員ビザ申請の流れ
申請手続きは、ビザを申請する米国大使館または領事館ごとに異なるため、事前に確認が必要です。各大使館・領事館のウェブサイトを参照してください。
L-1ビザ申請の最初のステップ
L-1ビザの申請者は、米国市民権・移民局(USCIS)による事前の請願承認が必要です。請願(フォームI-129)は、米国大使館または領事館で就労ビザを申請する前に承認されなければなりません。請願が承認されると、雇用主または代理人が「通知書(Form I-797)」を受け取ります。
面接の際には、I-129請願の受付番号およびI-797のコピーを持参し、請願の承認を証明する必要があります。ただし、請願の承認はビザ発給を保証するものではなく、米国の移民法に基づき不適格と判断された場合はビザが発給されません。
L-1ビザ申請の流れ
- 申請のタイミング
米国大使館または領事館では、I-797に記載された雇用開始日の90日前までL-1ビザの申請を受け付けます。ただし、渡航計画を立てる際には、連邦規則により、承認されたステータス期間(I-797またはI-129Sに記載)の開始日の10日前からしかビザを使用して米国に入国できない点に注意してください。 - 申請書類
L-1ビザを申請する場合、申請料を支払い、以下の書類を提出する必要があります。・非移民ビザ電子申請書(DS-160) ・パスポート
米国渡航に有効なパスポート
(滞在予定期間+6か月以上の有効期限が必要。ただし、一部の国は例外あり)。・過去10年以内に発行された期限切れのパスポート ・写真(5cm×5cm)
過去6か月以内に撮影された、白背景のカラー写真1枚。
デジタル加工や修正不可。申請者は眼鏡を着用できません。 - 面接時の持参書類
・面接予約確認書 ・必要に応じて、追加の補足書類(領事官に提供する情報を裏付けるもの) 初めて就労ビザを申請する場合、以下の書類を持参するとよい(英語翻訳を添付)。
・職務資格を証明する書類(履歴書、大学の卒業証明書など) ・雇用証明書(現職・前職の雇用主からの推薦状、職務内容、勤務期間を記載)
Eビザ申請の最初のステップ
Eビザを申請するための最初のステップは、米国での事業または会社の適格性を確立することです。Eビザを申請するすべての企業は、在東京米国大使館または在大阪米国総領事館に登録する必要があります。
Eビザ申請の流れ
- 1オンライン申請書(DS-160)を提出
DS-160フォームをオンラインで記入し、確認ページを印刷して面接時に持参します。規定の写真をアップロード(写真要件に準拠)します。 - 面接の予約
14~79歳の申請者は原則として面接が必要(例外あり)です。原則として、居住国の米国大使館または領事館で面接予約を行います。他国で申請する場合、ビザ取得資格を証明するのが難しくなる可能性があります。
面接予約の待ち時間は申請場所・時期・ビザの種類によって異なるため、早めの申請を推奨します。 - 面接準備
①手数料 ビザ申請料(返金不可)の支払い(事前支払いが必要な場合あり)
②必要書類の準備・渡航有効なパスポート(滞在期間+6カ月以上有効) ・DS-160 確認ページ ・申請手数料支払い証明書(必要な場合) ・写真(オンラインアップロード失敗時は紙の写真を持参) ・DS-156E フォーム - 追加書類の提出
E-1/E-2 ビザ申請者は、貿易または投資企業が基準を満たしていることを証明する必要があります。所定のもの以外にも領事官が追加書類を求める場合があるため、必要に応じて準備してください。 - ビザ面接
ビザの適格性の判断は領事官によって行われ、申請者の渡航目的に最も適したビザカテゴリーが決定されます。
面接時の指紋スキャンが必須となり、追加審査が必要な場合は面接後に通知されることがあります。ビザが承認された後は、パスポートの受け取り方法について案内があります。なお、ビザ発給までの所要時間については、申請先の大使館や領事館のウェブサイトで確認することができます。
駐在員ビザ取得後の義務と注意点
駐在中のルールと就労制限
駐在中は、ビザで許可された業務範囲内で活動を行うことが求められます。許可されていない職務に従事することは禁じられており、現地の法律や規則を守ることが駐在員としての基本的な責任です。これらのルールを守ることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
アメリカビザの有効期限と滞在期間の違い
まず、ビザの「有効期限」と「滞在期間」は異なる概念であることを理解しておく必要があります。
ビザの有効期限 |
ビザが使用可能な期間を指します。この間に入国審査を受けることでアメリカに入国できます。 |
滞在期間(入国審査官が許可した滞在期限) |
アメリカに入国した際に、入国審査官(CBP)が決定する滞在可能な期間のことを指します。これはI-94(出入国記録)に記載され、ビザの有効期限とは無関係に決まる場合があります。 |
アメリカでは、パスポートの有効期限が本来認められる滞在期間より短い場合、滞在はパスポートの有効期限までに制限されるため注意が必要です。
Lビザの場合、ビザの有効期限と実際の就労可能期間は異なる概念です。就労可能期間はI-129Sの申請内容に基づいて決定され、ビザにもその情報が記載されます。特に、ビザ面に記載されるPED(Petition Expiration Date)が、就労が許可される最終日となるため、滞在計画を立てる際にはこの日付を確認することが重要です。
PED |
申請者が米国で合法的に就労できる期限を示す日付 |
Eビザ・Lビザ保持者の家族の滞在に関する規定
Lビザ(L-1)の家族滞在
L-1ビザ保持者の配偶者および21歳未満の未婚の子どもは、L-2ビザを取得して同行できます。L-2ビザの配偶者は、Eビザと同様に就労許可を取得することでアメリカで働くことができます。なお、近年の法改正により、L-2ビザの配偶者は、就労許可を申請することなく働くことが可能になりました。一方、子どもはアメリカでの就学は認められますが教育を受けることは可能ですが、就労は認められていません。
Eビザ(E-1・E-2)の家族滞在
Eビザ保持者の配偶者および21歳未満の未婚の子どもは、Eビザの派生ビザ(E-1またはE-2の家族用ビザ)を取得して同行することが可能です。配偶者は、アメリカ入国後に就労許可(Employment Authorization Document: EAD)を申請することで、制限なく就労できます。一方、L-2ビザと同様に子どもはアメリカで教育を受けることは可能ですが、就労は認められていません。
Eビザ・Lビザ保持者の永住権取得方法
EB-1-3(EB-1 Multinational Manager or Executive)は、約1年で永住権を取得できるカテゴリーで、特にEビザやLビザを持つ人に人気があります。
過去3年のうち1年以上、米国外の関連企業で経営者または上級管理職として勤務し、米国内の親会社・子会社・系列会社で同様の職務に就く予定がある場合、申請の可能性があります。ただし、米国企業には1年以上の運営実績が必要です。
E・Lビザ保持者はすでに管理職以上のポジションにあることが多いため、EB-1-3の条件を満たしやすく、働きながら永住権申請ができる点が魅力です。
まとめ 駐在員ビザの申請を弁護士・行政書士に依頼するメリット
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、「アメリカ駐在員ビザ」についての無料相談を受け付けています。
「どのビザに該当するのか」「出発予定に間に合わせたい」など、「アメリカビザ」の申請では、的確な要件判断や実務上の豊富な経験に基づく必要書類の準備が重要であり、審査結果に大きく影響します。
当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。ご安心してご相談ください。
※本稿の内容は、2025 年 2 月現在の法令・情報等に基づいています。
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執筆者:弁護士小野智博
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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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