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仕事でアメリカに滞在する場合にビザは必要?
ビザとは、渡航先の国・地域が、外国籍の渡航者の申請に基づき発行する入国許可証のようなものです。日本国籍の方がアメリカに渡航する場合、有効期限内のパスポート、往復(または次の目的地まで)の航空券(乗船券)を所持し、比較的短期間の商用目的であれば、ビザ免除プログラム(VWP: Visa Waiver Program)の適用を受けることができ、アメリカの電子渡航認証システム(Electronic System for Travel Authorization:ESTA)で渡航認証を受けることで、ビザなしで90日以下の滞在が可能です。
一方、ビザ免除プログラムに該当せず、ビジネス目的で比較的長期間にわたりアメリカに滞在する場合には、目的や滞在期間に応じて適切な種類ビザの取得が必要です。一般的には、商用(B)ビザ、就労(H、L)ビザ、または貿易駐在員・投資駐在員(E)ビザの取得を検討することになるでしょう。
商用(B)ビザ
商用ビザの概要
商用(B-1)ビザは、商用目的で米国に短期間滞在する方が対象となります。例えば、取引先との会合、科学、教育、ビジネス等の分野の会議への参加、契約交渉等のために出張する場合等が該当します。
商用ビザの申請資格
商用(B-1)ビザの申請資格は以下のとおりです。
✔︎ 一定の、限られた期間のみビジネス目的でアメリカに滞在する計画である
✔︎ アメリカでの滞在費をまかなう資金の証明ができる
✔︎ 米国外に居住していること、および、アメリカ国外に社会的・経済的な強いつながりがあり、訪問の終了時には確実に帰国する
・海外出張でアメリカに渡航するには?ビザ申請や ESTA 利用の条件を徹底解説
就労(H、L)ビザ
就労ビザの概要
非移民として一時的に米国で就労する場合に必要となるのが就労ビザです。就労ビザには、H、L、O、P、Qなど様々なカテゴリーがありますが、本記事では多くの方が取得を検討される特殊技能職(H-1B)ビザ、及び企業内転勤者(L-1)ビザについて説明します。
これらのビザの申請者は、申請前に、将来の雇用主または代理人が請願書「I-129フォーム」を提出し、アメリカ移民局(U.S. Citizenship and Immigration Services: USCIS)の許可を得る必要があります。請願書が許可されると、雇用主または代理人は請願書の許可通知である「I-797フォーム」を受領します。面接時に、領事が国務省の請願書情報管理システム (Petition Information Management Service: PIMS) で請願の許可を確認します。
特殊技能職(H-1B)ビザの申請資格
特殊技能職(H-1B)ビザは事前に取り決められた専門職に就くために渡米する方が申請するビザです。職務が求める特定分野での学士あるいはそれ以上の資格が求められます。特殊技能職と認められるか、または申請者がその職務に適格かをアメリカ移民局(USCIS) が判断します。雇用主は、雇用契約の内容や条件等に関する労働条件申請書を労働省に提出する必要があります。
企業内転勤者(L-1)ビザの申請資格
多国籍企業の従業員が、アメリカ国内の親会社、子会社、支社、系列会社へ一時的に転勤する場合に申請するのが企業内転勤者(L-1)ビザです。企業内転勤者ビザ(L-1)の申請資格を満たすには、管理職または役員であること、あるいは専門知識を活かし、アメリカの会社で管理職または役員のレベルの役職に就く必要があります。但し、必ずしも渡米前と同じ役職である必要はありません。さらに、申請者は転勤を命じる多国籍企業において、アメリカへの入国申請前の3年間のうち1年間は、アメリカ国外で継続的に雇用されている必要があります。
・アメリカ駐在員のためのビザ取得ガイド|申請ステップとチェックポイントを解説
貿易駐在員ビザ・投資駐在員ビザ(Eビザ)
貿易駐在員ビザ・投資駐在員ビザの概要
貿易駐在員ビザ・投資駐在員ビザ(Eビザ)は、アメリカとの間で国際貿易を行う日本企業やアメリカに相当額の投資を行う投資家が、貿易や投資を目的としてアメリカに渡航する際に申請するビザです。
・アメリカ駐在員のためのビザ取得ガイド|申請ステップとチェックポイントを解説
貿易駐在員ビザ・投資駐在員ビザの申請資格
貿易駐在員(E-1)ビザの申請者は、日本とアメリカの間で継続的かつ相当な規模の取引が行われていることを証明しなければなりません。また、申請者自身が企業の管理職や専門職であることが求められます。
一方、投資駐在員(E-2)ビザは、事業を運営または管理する投資家やその従業員を対象とするビザです。申請者は、投資した事業が利益を生み出し、継続的に運営される見込みがあることを証明する必要があります。
なお、初めてEビザを申請する企業は、東京の米国大使館または大阪の総領事館にて企業登録をする必要があります。アメリカの受入企業がEビザ企業としての資格を有することを立証するためです。
アメリカビザの申請の流れと手順
アメリカビザ申請の流れ
アメリカの商用(B)ビザ、就労(H、L)ビザ、貿易駐在員・投資駐在員(E)ビザ申請の大まかな流れは以下のとおりです。
STEP1: ビザの種類を決める→STEP2: 申請書の作成→STEP3: 申請料金の支払い及び面接予約→STEP4: 必要書類の準備→STEP5: 面接に出席→STEP6: ビザの受領 |
アメリカビザ申請の手順
STEP1: ビザの種類を決める
アメリカビザ申請にあたり、まずはご自身が必要なビザの種類を把握し、当該ビザ申請に必要な書類を確認しましょう。
例えば、滞在期間が90日以内で商談や会議が目的でビザ免除プログラムが適用される場合はビザを取得する必要はありませんが、90日以上の滞在や複雑な商用活動が含まれる場合は、商用(B-1)ビザの取得を検討します。
また、駐在のためのビザを選択する際は、事業内容や派遣先での役割を基に判断します。Lビザは、企業間の転勤を前提としたビザで、特に親会社・子会社関係が明確な企業に適しています。一方、アメリカとの貿易や投資を主目的とする場合はEビザを選択することになるでしょう。
なお、ビザの申請者は渡米予定日の少なくとも3か月前には申請を行うことが推奨されています。ビザ申請が必要な方は渡航日までの日数に十分な余裕を持ってビザを申請するのがよいでしょう。
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STEP2: 申請書の作成
非移民ビザオンライン申請書(DS-160)を作成し、送信します。
DS-160申請書はこちらから。https://ceac.state.gov/GenNIV/Default.aspx
画面右上のSelect Tooltip Languageで日本語を選択することもできます。
DS-160はアメリカビザの発給資格を事前に審査する制度で、非移民ビザを申請するすべての方が対象です。DS-160申請書のオンライン提出後は訂正できないため、慎重に作成する必要があります。はじめに、お手元にパスポートとパスポートサイズの写真のデジタルファイルを準備しましょう。作成には90分ほどかかりますので、時間に余裕を持って作成するのがよいでしょう。DS-160は20分間入力を停止すると、セッションが終了するため注意が必要です。また、入力した情報を保存して、後から入力画面に戻って完了させることもできるため、入力した情報はこまめに保存しながら進めてください。
「Select a location where you will be applying for this visa」で日本の場合はJAPANを選択します。Locationを選んだら、Start an applicationをクリックして次に進み、画面右上に表示されるApplication IDを忘れずにメモしましょう。入力を途中で中断し、再開するときにこのApplication IDが必要となります。次に、Security Questionに回答した後、各項目に回答していきます。
「DS-160」の申請は以下の入力が必須です。
・姓名
ミドルネームがある方は名前の後に入力します。旧姓、芸名、日本国籍以外の方の日本名(通称名)などは「その他の姓名」に入力してください。
・性別
・生年月日
・出生地
・国籍
・ビザの種類(渡航目的に応じたビザを選択)
・直近5回の渡米歴
直近5回すべての渡米情報(到着日および滞在期間)を入力します。アメリカ本土およびハワイ、グアム、サイパンなどの米国諸島への渡航歴や、米国領内の通過または乗り継ぎなどに関する情報もすべて入力する必要があります。
母国語で姓名を記入するよう要求される箇所を除いて、全ての質問には英語で回答する必要があります。どれを選べばよいかわからない時などは、質問の右端に表示されているiのアイコンをクリックすると、詳しい説明が表示されますので参考にしてください。ご自身に該当しない箇所は「該当なし(Does Not Apply)」をチェックします。なお、日本国のパスポートはICチップ搭載のため、パスポート冊子番号はありません。フォーム上のパスポート冊子番号の選択欄は「該当なし」を選択してください。到着予定日や滞在期間の詳細が決まっていない場合は目安の記入で構いません。渡航歴情報では、アメリカに旅行や長期滞在をしたことがある方はパスポートの記録と照らし合わせて正確に入力します。
作成が完了したDS-160申請書には、英数字のバーコードの確認ページが作成されます。確認ページは、大使館(領事館)での面接の際に必要となりますので、確認ページを印刷したら、Webブラウザの「戻る」ボタンをクリックして、ご自身宛にDS-160のバックアップコピーをメールで送信するとよいでしょう。
なお、就労ビザ(H、L)申請手続きは、I-797に記載された雇用が開始される最大90日前から始めることができます。但し、渡米し入国審査を受けることができるのは、I-797に記載されている就業開始許可日の10日前からです。
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STEP3: 申請料金の支払い及び面接予約
ビザ申請料金の支払いと面接予約を行うために、こちらのウェブサイトからプロファイルを作成し、「面接予約」オプションを選択します。お手元に、パスポート及びDS-160確認ページを準備しましょう。支払い確認画面では、支払いオプションと支払い方法の詳細が表示され、Pay-easy(ペイジー)ATM、電子送金 (EFT)、クレジットカード/デビットカードから選択できます。
申請料金の支払いが完了し、プロファイル上でレシート番号が反映されたら、面接の予約に進みましょう。ご希望の面接の日にちと時間を選んだら確認ページをプリントし、面接の際に持参します。
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STEP4: 必要書類の準備
各ビザの申請に必要な書類は下記でご紹介します。
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STEP5及びSTEP6のビザ面接の詳細については下記の記事で解説していますので、ご参照ください。
・アメリカビザ面接の疑問を解決|ビジネス目的でアメリカに滞在する場合のビザ面接について法律事務所が解説
アメリカビザ申請の必要書類
各ビザの申請及び面接時に必要な書類及び申請料金は以下のとおりです。
ビザの種類 | 申請料金 | 必要書類 |
各ビザ共通 | – | ①DS-160確認ページ ②アメリカでの滞在予定期間に加えて6か月以上の残存有効期間があるパスポート ③過去10年間に発行された古いパスポート ④証明写真1枚(5cm x 5cm)6か月以内に撮影した背景が白のカラー写真。アプリ等で加工した写真は不可。DS-160確認ページ左上に留めてください。 ⑤面接予約確認書 ⑥日本国籍以外の申請者で日本居住者の方のみ 在留カードまたは特別永住者証明書の両面のコピー以上に加えて、ビザの種類により状況に応じて下記の書類を準備することが奨励されています。英語以外の書類には英訳が必要です。 |
商用ビザ(B) | 185 USD | ● 職位、給与、勤続年数、仕事上の目的を詳述した雇用主のレター ● これまでに米国に入国したことがある方:入国資格またはビザ資格を証明する書類 |
就労ビザ(H、L) | 205 USD | ● 履歴書や職務経歴書、大学の卒業証書など、職務資格を証明するもの ● 申請者の職位や関わったプロジェクト、勤務年数などを詳述した現在および過去の雇用主からのレター ● I-129 請願書受付番号およびI-797フォーム |
貿易駐在員ビザ・投資駐在員ビザ(E) | 315 USD | ● DS-156E (Nonimmigrant Treaty Trader/Treaty Investor Application) ※DS-156Eには、アメリカ受入会社の業務に関する情報、従業員に関する情報、及び申請者自身に関する情報等を記載します。 ※DS-156Eに記載した内容の裏付け資料(Supporting documents)を目次とタブを付けてバインダーに綴じた状態で提出する必要があります。 <Supporting documentsの例> ・ ビジネスの実質性や規模を証する資料(財務諸表、税務申告書等) ・ アメリカ受入会社の設立を証する資料(定款、組織図及び人員配置図、オフィスのリース契約書等) ・ 投資資金の出資者であり支配権を有することを証する書面(銀行口座記録、約束手形等) ・ アメリカへの送金を証する資料(送金小切手、送金記録、領収書等) など ● 申請企業、申請者の資格、同行家族の人数等を記載した会社からのレター ● 組織図 (申請者をマーカーで印) |
アメリカビザの申請を弁護士・行政書士に依頼するメリット
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、アメリカにビジネス目的で滞在する場合のビザについての無料相談を受け付けています。
アメリカビザは、渡航目的が「商用」なのか「就労」なのか等によって、適用されるビザの種類が異なります。また、派遣先での業務内容、企業間の関係、または貿易や投資活動の有無を明確にし、それが各ビザの要件と合致するかを確認し、事前に事業計画や派遣の目的を整理し、それに基づいてビザを選択することが必要です。
当法律事務所では、スタッフ全員が行政書士の資格を持ち、弁護士の指導のもと、ビザ申請・外国人雇用・労務・契約書など、法務の専門知識を持ったプロフェッショナルがそろっています。アメリカビザ取得に関しては、的確な要件判断や実務上の豊富な経験に基づく必要書類の準備が重要であり、審査結果に大きく影響します。アメリカビザの申請を検討されている方は、安心してご相談ください。
※本稿の内容は、2025 年2月現在の「在日米国大使館と領事館」のウェブサイト(https://jp.usembassy.gov/ja/visas-ja/)等に掲載の情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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