コンプライアンス

海外進出:『飲むだけで10kg痩せる!』はNG! 法律に違反する広告表現とは

by 弁護士 小野智博

海外進出する際は現地の広告規制に注意

日本の企業が海外進出する際、気を付けなければならないことに、広告規制の問題があります。

広告の規制はそれぞれの国の法律によって定められています。

そのため、日本での広告をそのまま現地の言葉に翻訳しただけでは、現地の法律に違反している可能性があるので注意が必要です。

 

 

日本での広告規制

まず日本の広告規制についてみていくことにしましょう。

広告表現が法律違反とならないよう、広告を作成する際には以下の景品表示法や健康増進法を改めて確認しておくようにしましょう。

 

<景品表示法による広告規制>

広告一般を規制する法律として『不当景品類及び不当表示法(以下、景品表示法)』があります。

景品表示法は、優良誤認(※1)や有利誤認(※2)など、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害する恐れのある広告を禁止しています。

※1 優良誤認:一般の消費者に対して商品の品質等の内容が実際よりも著しく優良であると誤解させる表示

※2 有利誤認:取引条件が実際よりも取引の相手方に著しく有利であると誤認させる表示

 

<健康増進法による広告規制>

景品表示法のほかにも、食品販売に関する広告については『健康増進法』で広告の規制がされています。

具体的には、健康の保持増進の効果等について、「著しく事実に相違する表示」と「著しく人を誤認させるような表示」を禁止しています。

たとえば、『飲むだけで誰でも必ず10kg痩せます!』といった表示は、事実と相違することが明らかです。
このような表示は、痩せたくて切羽詰まっている消費者の合理的な選択を阻害する恐れがあるため、景品表示法や健康増進法に違反していることになります。

 

 

アメリカでの広告規制

では、アメリカではどのような広告規制が行われているのでしょうか?

 

アメリカの食品業界における広告規制

アメリカにおいても、広告は、食品メーカーが製品を販売するためのとても重要なツールです。多様化する消費者の需要と流通経路に対応するために、広告はこれまで以上に不可欠な存在になりつつあります。

広告があってはじめて、消費者は製品の存在を知り理解することができます。いくら良い商品でも広告戦略が上手くいかないと売れない時代なのです。

広告は消費者に効果的に商品の魅力を伝えるだけではなく、合法でなければなりません。広告とは、TVや雑誌などの媒体に加えて料理学校のスポンサーや映画などでの使用、配布されるサンプルやプレスリリース、製品ラベルの内容など、製品に関しての全ての表現を含んでいます。

広告表現については法律で定められていますが、中でも食品は、安全性の観点から他の製品よりも厳しく規制されています。虚偽の内容は違法となるだけでなく、誤解を招く表現や、国民からの訴えが認められた場合、政府によって制限・禁止されることもあります。

ここでは、アメリカの食品業界における広告規制の概要を説明します。

 

<FTC(連邦取引委員会)による規制>

連邦取引委員会法(FTC法)は、広告の虚偽や不正に関して定めた法律です。

FTC法第5条では、「商取引におけるまたはそれに影響を及ぼす不公正または欺瞞的な行為または実務」が禁止されています。

FTC法第12条では、「食品、薬物、器具、化粧品の虚偽広告を具体的に扱い、購入を直接的または間接的に誘導する目的の、または誘導する可能性のある虚偽の広告の配布」を禁止しています。

連邦取引委員会(FTC)は、広告が誤解を招くかどうかを判断する際に、広告の過大表現だけでなく、製品の内容を隠蔽している場合も対象として判断します。

ただしFTCの広告規制は、商品ラベルに関しては対象としていません。

 

<FDA(食品医薬品局)による規制>

食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)は、食品のラベルの表記を規制しています。肉製品および家禽製品に関しては、農務省の規制対象にもなります。

食品、医薬品および化粧品法(FD&C法)第201条は、ラベルの意義について、「あらゆる物品またはその容器または包装材に貼付するか、またはそのような物品に添付された、すべてのラベルおよびその他の書類、印刷物または図物」と定義しています。

ここでいうラベルとは製品パッケージだけでなく、ディスプレイや、POP、サンプル品なども含んでいます。また現時点ではFDAはウェブサイト上の表現にも適用されています。

ただしFDAはFTCの主張を尊重する傾向にあり、従来の食品に対するクレームについては合理的な消費者基準に基づいて判断されます。

 

<FD&C法による規制>

FD&C法の第403条及び第301条では誤解をまねく広告表現を規制しています。これらの規制は、「重大な点で」誤解を招く広告表現のみを禁止しているFTC法よりも、はるかに厳格な基準です。

 

<広告主の主張はどのように判断されるのか>

広告が真実であるか、または虚偽・誤解を招くかどうかを決定する際には、まず何を主張しているかという点が問題となります。広告の主張が正しいものであっても全体イメージとして虚偽・誤解を招く表現であれば規制の対象となります。そのため広告主は広告表現がどのように理解されるかを考慮し、虚偽・誤解を招く表現ではないことを実証できなければなりません。

広告はあえて必要な情報を表記しないことで暗黙の主張をすることもできます。広告の全体的な印象が誤解を招く場合は、ラベルに脚注が記載されていても認められません。ラベル表記は複数の意味に理解されてしまう文言や、追加情報の提供などに利用されるべきだと考えられています。

ただし1983年のFTC方針声明によると、広告主は消費者の製品・サービスの選択または使用に影響を与える可能性が高い重要な主張についての重大な虚偽の申し立てに対してのみ責任を負うとされています。そのため、特定の主張が間違っていたとしても、それが重要でない場合つまり消費者の購入決定に影響を与えない場合は規制対象となりません。

クレームにはクレームとして認められない内容のものもあります。それをパッフィングと呼び、具体的には明らかに主観的意見であること、一般的な基準で検証できないこと、または消費者が説明書を読まなかった場合などが含まれます。パッフィングかクレームかの判断基準は常に変化していますが規制当局や裁判官の判断基準として、以下のような傾向があります。

・一般的な主張は特定の主張よりも認められやすい

・分かりやすい広告表現は安全とされる

・一般的な表現だとしても、健康・安全・栄養に関する主張は客観的と判断されにくい

 

<まとめ>

上記のように、食品広告の規制は複数の落とし穴がある複雑な領域です。

万が一、クレームが認められ製品ラベルを訂正する必要が出てきた場合は、大変なコストがかかります。したがって、できるだけクレームが生じないように、広告を行う前に慎重に内容を検討するようにしましょう。

 

ダイエット製品の広告に関する注意点

ダイエット製品に関する広告表現にも、特別なルールがあります。

ダイエット製品に関して、過去10年間連邦取引委員会(FTC)は多くの実績を作り、虚偽のダイエット広告を採用するメディアに対して起訴する可能性を発表しました。さらに近年、州知事および郡法執行当局(弁護士一般および地方弁護士を含む)は、ダイエット製品のオンライン広告に関する調査を行っています。またKronenberger Rosenfeld社はFTC法を含む州および連邦規制に準拠していることを確実にするために、ダイエット製品に関するウェブサイトおよび広告のチェックを定期的に実施しています。

ダイエット製品の広告には、以下のポイントに注意する必要があります。

 

・「10日間で5ポンド痩せる」などの特定のダイエット効果を約束していませんか?このような主張は提訴される可能性があります。1人ひとりの状況が異なるため、このような効果を約束することは不可能です。このような効果は実際に使用した消費者の体験談としてのみ表現することができます。

 

・ダイエットには運動が必要な要素であると明らかにしていますか?

FTC(連邦取引委員会)は、運動をせずに痩せられるという広告に対して、消費者の減量努力を損なうものとして警告しています。

 

・製品はモデルを使用して宣伝していませんか? FTCおよび法執行機関は、実際に製品を使用したユーザー以外のモデルの画像を使用して広告することは誤解を招く表現だとしています。

 

・製品は実際に使用した消費者の正しい体験談を開示していますか?消費者の体験談の使用は、実際のお客様の声や文書を提供していれば問題ありません。写真の使用も含みます。ただし、体験談を提供した消費者に報酬を支払った場合にはその旨が広告に開示される必要があります。何ポンド痩せたなどの実際のダイエット効果を表記する場合には、違う消費者の写真を使用すると違反になります。

 

・製品の効果について証明する科学的研究のファイルを保持していますか? FTCの見解から、WebMDまたはCNN.comなどニュース記事だけでは不十分です。その記事の元となる特定の科学的研究結果の全文のコピーが必要です(要約では不十分)。または過去の研究が不明確である場合には、専門家に書面による意見求めることをお勧めします。

 

 

まとめ

アメリカと日本の例を比べてもわかるように、広告規制の問題は進出する先の国によって大きく変わります。後々大きな問題に発展させないためにも、必ず事前に確認しましょう。当事務所でもご相談を受け付けています。

 

※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。

 

 

 

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