外国人雇用マネジメント

外国人雇用の第一歩|外国人の採用時に必要となる書類とは?

by 弁護士 小野智博

外国人採用の際には日本人採用時のプラスアルファの書類が必要になります。外国人採用の手続きについて企業の人事部・採用担当者の皆さまは、次のようなお悩みがあるのではないでしょうか。

「就労ビザへの変更が必要になった場合にはどんな書類が必要なの?」
「就労ビザへの変更が不許可になった場合はどうしたら良いの?」
「ビザの変更が必要ない場合は何か企業として行う手続きはあるの?」
「入社時に企業内の手続きは何があるの?」
「入社時に外国人労働者本人から提出してもらうべき書類は何?」
「外国人労働者向けに用意した方が良い書類はあるの?」

この記事では、外国人を雇用するために、採用の際に必要となる書類について、ビザ・契約・社内規則・社会保険の手続などの観点からわかりやすく解説します。

外国人を雇用する前に確認すること

外国人を採用する際には必ず確認すべき事項があります。最初の確認を怠ると不法就労助長罪に問われてしまうリスクもありますので注意が必要です。

在留カードの確認

外国人労働者の内定承諾後に必ず在留カードの提示を求め、在留期間内であるか、適切なビザ(在留資格)を持っているかを確認します。週28時間以内のアルバイト採用の場合は就労ビザを持っていなくても資格外活動許可があれば就労できます。資格外活動許可は在留カードの裏面に記載があるかパスポートに認印シールが貼付されています。週28時間は絶対的な制限ですので、もし少しでも超える見込みがあれば就労ビザの取得が必要です。また、在留カードはコピーや画像ではなく必ず原本で確認するようにしましょう。在留カードが本物かどうか確認できるアプリも利用すると安心です。効率よく採用活動を行うために選考の段階で在留カードの提示を求めたいと思うかもしれませんが、国籍などによる差別防止の観点から適切ではないとされていますので、必ず内定後に提示を求めるようにしましょう。

就労ビザへの変更手続きが必要かの確認

自社での職種にあった就労ビザ(在留資格)を持っているか確認をします。もし自社での職種にあった就労ビザを持っていなかった場合は、在留資格変更許可申請を行う必要があります。また、就労ビザを持っている場合でも、以前(就労ビザを取得したとき)とは異なる職種に就く場合は就労資格証明書交付申請をしておくと安心です。就労資格証明書とは収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を法務大臣が証明する文書です。就労ビザを持つ外国人労働者が転職をした際に新しい職場での業務内容が在留資格に適したものであるかを判断するために用いられることが多いです。ただし、就労資格証明書交付申請を行うことも交付された証明書を会社に提示することも義務ではありません。決して強制することがないようにしましょう。また、就労資格証明書は就労内容が不適正であったとしてもその旨が記載されて交付されます。提示を受けた際には必ず記載内容をしっかり確認することが重要です。

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外国人雇用で就労ビザへの変更手続きが必要な場合の必要書類

在留カードを確認した結果、適切な就労ビザを持っていなかった場合は、外国人労働者の住所地を管轄する入国管理局に在留資格変更許可申請を行う必要があります。例えば、外国人留学生が就職する場合があります。外国人労働者本人と会社それぞれに用意すべき書類があります。この記事では一般的な就労ビザへの変更手続きに必要な書類を紹介します。会社の規模や就労ビザの種類によっては追加で書類が必要になることもありますので、申請前に必ず入国管理局のホームページで確認するか専門家のサポートを受けて準備するようにしましょう。

本人が用意する書類

会社が用意する書類

必須ではないが、用意した方が良い書類もある

◆雇用理由書
必須書類ではありませんが、会社側で「雇用理由書」を作成して提出することがあります。在留資格変更許可申請を行う際にはまだ会社で働いていない状況です。雇用契約書や会社概要など提出された書類を見て許可・不許可の判断を行いますが、必須書類だけでは判断しきれないところも出てきます。この場合不許可になってしまう可能性も否定はできません。そのため、「なぜ外国人採用が必要なのか」「業務内容の専門性」などいかに外国人労働者が必要か、いかに在留資格変更が適正なものであるかを補足して述べることで許可になる可能性を広げることができます。

◆理由書
必須書類ではありませんが、外国人労働者側で「理由書」を作成して提出することがあります。雇用理由書と同じく必須書類だけでは判断しきれないポイントを補うことが狙いです。「なぜ在留資格を変更する必要があるのか」「今までの経験をもとにいかに日本企業に貢献できるのか」をアピールします。

◆嘆願書
必須書類ではありませんが、不許可になり得る心当たりがある場合に作成して提出することがあります。例えば、税金の滞納をしてしまった、何度も交通違反を起こしてしまったといった場合は在留態度の問題から不許可判断の材料になってしまいます。これまでの税金滞納や法令違反の有無を確認し、もし心当たりがあれば、「心から反省していて、今後同じ過ちを繰り返さない、心を入れ替えて今までの経験を活かし日本企業に貢献していく」旨の内容で本人が作成するパターンと、「本人も心から反省している、会社としては何としても入社し活躍してほしい人材である、今後は会社も納税や生活のサポートをしていく」などの内容で会社が作成するパターンがあります。

▶参考情報:外国人の就労ビザを取得する方法については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
外国人の就労ビザを取得する方法|ビザ申請に強い法律事務所が解説

外国人雇用で就労ビザへの変更手続きが不要な場合の必要書類

入社時に適切な就労ビザを持っている場合は、すぐに行う手続きはありません。次の在留期間更新許可申請の時に転職後の会社にかかる資料を提出します。この記事では一般的な就労ビザの更新手続きに必要な書類を紹介します。会社の規模や就労ビザの種類によっては追加で書類が必要になることもありますので、申請前に必ず入国管理局のホームページで確認するか専門家のサポートを受けて準備するようにしましょう。

本人が用意する必要書類

在留期間更新許可申請の際は適正な納税を行っているかも審査の対象になります。
適正な納税とは、滞納せず納期限を守って納税していることも重要なポイントです。
最終的に納税していれば良い、という問題ではないので、外国人労働者が入社したら住民税の納税があるかを確認して、特別徴収に切り替えておくと安心です。

▶参考情報:外国人が転職するときの就労ビザの手続きについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
外国人が転職するときの就労ビザの手続は?ビザ申請のサポートに強い法律事務所が解説

会社が用意する必要書類

在留期間更新許可申請の際は会社の財政状況(安定性や継続性が期待できるかなど)も審査の対象になります。財政状況の審査は総合的に行われます。そのため赤字であることのみをもって不許可になる可能性は低いと考えられます。例えば、同じ赤字であっても創業間もない会社とそうでない会社では審査官に与える印象が異なりますし、赤字であっても融資を受けることで継続性が認められる可能性もあると考えられます。また、外国人労働者と締結した労働契約が適切な条件であるかも審査の対象になります。適切な労働条件については厳格に審査されます。ハローワークや会社のホームページ、求人サイトの募集内容も確認されます。「最低賃金を下回っていないか」「最低賃金以上であっても日本人労働者と同等以上の条件であるか」「求人媒体に出している条件と外国人労働者の労働条件が異なる場合は合理的な理由があるか」を確認の上雇用契約を締結するようにしましょう。

▶参考情報:在留資格「技術・人文知識・国際業務」 | 出入国在留管理庁

就労ビザ取得申請が不許可になった場合の必要書類

就労ビザの審査は厳格に行われます。そのため、不許可になることも珍しくありません。たとえ不許可になったとしても在留期間内であれば再申請することができます。しかし、
不許可になった理由が解消されない限り許可される可能性はありません。不許可の理由によっては一度帰国してから新たに在留資格認定証明書(資格証明書)交付申請を行う方法をとることもあります。

再申請する場合の追加書類

不許可になった理由が「(実際には満たしていると考えられるが)上陸許可基準を満たしていない(と判断された)」「申請書類に不備や不足がある」など再申請を行うことで許可される可能性がある場合にはすぐに再申請を行う準備をします。再申請する場合の追加書類は以下の通りです。

実際には上陸許可基準を満たしていると考えられるにも関わらず、上陸許可基準を満たしていないと判断されたなど、本人・会社側と入国管理局側の認識が異なる場合は、前の申請時の書類の書き方や添付書類が不十分だった可能性があります。そのため、「大学で専攻した内容と業務内容の関連性を詳細に記載する」「単純労働ではない根拠」など前の申請内容を補完説明する書類を添付します。特にサービス業は単純労働と判断されるリスクが高い業種ですので、理論立てて詳細に記載することが重要です。

在留資格認定証明書交付申請をする場合の必要書類

不許可になった理由が「法違反を繰り返していた(在留態度に問題がある)」などすぐに解消できる可能性が低い場合は一度帰国して、在留資格認定証明書交付申請を行い再度日本に上陸する方法をとることがあります。在留資格認定証明書交付申請に必要な書類は以下の通りです。この記事では一般的な在留資格認定証明書交付申請に必要な書類を紹介します。会社の規模や就労ビザの種類によっては追加で書類が必要になることもありますので、申請前に必ず入国管理局のホームページで確認するか専門家のサポートを受けて準備するようにしましょう。

◆本人が用意する書類

◆会社が用意する書類

外国人雇用で入社前に用意しておくべき書類

外国人労働者が入社後にスムーズに教育や業務が行えるよう、必要書類は事前に準備しておきましょう。また、可能な限り外国人労働者の母国語に翻訳した書類も用意すると安心感を与えることができます。母国語が難しい場合は英語に翻訳したものを用意すると日本語よりは伝わりやすい可能性があります。

雇用契約書

就労ビザの取得をした場合は既に雇用契約を締結していますが、初出社日に確認の意味もこめて再度契約内容を説明しておくと理解を深めることに繋がります。質問があった場合は可能な限りその場で解決することが理想的なので、賃金、賃金控除(社会保険など)、休日など疑問点が出やすいポイントについて詳細に説明できるよう準備をしておきましょう。

就業規則

雇用契約書には「法定通り」や「就業規則第○条の通り」など就業規則を引用する記載をしている可能性があります。雇用契約内容の説明の際は就業規則もあわせて提示すると詳細に伝えられます。また、雇用契約書には記載がないが大事なこともありますので雇用契約内容とともに伝えるようにしましょう。特に職務規定は価値観の出るところです。海外にはない価値観も含まれている可能性もありますので、しっかりとすり合わせましょう。

外国人労働者に用意してもらうべき書類一覧表

社会保険手続きなどのために外国人労働者に用意してもらう書類があります。会社に提出してもらう書類は一覧表にまとめると簡潔です。また、外国人労働者は日本の制度に慣れていない可能性もあります。例えば、いきなり「雇用保険被保険者資格取得等通知書」「基礎年金番号通知書」と言われてもピンとこないかもしれません。一覧表にサンプル画像も載せると分かりやすいです。

業務マニュアル

早めに業務に慣れてもらうためにも業務マニュアルは用意しておきましょう。不明点は社内の誰に聞けば分かるのかもあわせて記載しておくと外国人労働者は安心できます。

外国人雇用で入社後の手続きで必要になる書類

外国人労働者が入社してからも手続きがあります。社会保険関係の適用範囲は複雑です。入社すぐに行えるようあらかじめ確認の上、必要書類を把握しておきましょう。

雇用保険加入

雇用保険は週20時間以上働く労働者が対象になります。副業の場合は主たる勤務先で加入します。「雇用保険被保険者資格取得届」を資格取得日の翌月10日までにハローワークに提出します。ただし、雇用の安定に資する目的の保険のため学生は対象外です。また、週20時間未満の労働契約や学生などで雇用保険取得対象者ではない外国人労働者は「外国人雇用状況の届出」が必要です。

◆雇用保険被保険者番号が分かるもの
前職で交付された雇用保険被保険者資格取得等通知書があげられます。雇用保険被保険者番号だけ紙やメールに記載して提出してもらうでも問題ありませんが、1つでも間違った番号で申請してしまうと返戻になってしまうので、可能な限り雇用保険被保険者資格取得等通知書も提出してもらえると安心です。

◆履歴書など前職の法人名が分かるもの
雇用保険被保険者番号が不明な場合は、雇用保険加入の際に備考欄に直近で雇用保険に加入していた法人名を記載すればハローワークで照合して雇用保険被保険者番号を調べてくれます。また、今までに一度も雇用保険に加入したことがない場合は、新規で番号を取得しますので、前職の記載は不要です。

◆在留カード
雇用保険取得時には在留資格や在留期限、在留カード番号の届出も必要です。また、雇用保険に加入しない場合であっても外国人雇用状況の届出の提出は必要ですので必ず提示してもらうようにします。

◆マイナンバーがわかるもの
マイナンバーカードや住民票があげられます。雇用保険取得時には原則としてマイナンバーの届出も義務付けられています。しかし、提出拒否の申出があった場合はその旨を資格取得届の備考欄に記載すれば受け付けてもらえます。

社会保険加入

社会保険は企業で社会保険に加入している人が51人以上いる場合は以下の条件を満たす場合に加入が必要です。

会社で社会保険に加入している人が50人未満の場合は正社員の4分の3以上の所定労働時間の場合は加入義務があります。この場合は学生であっても加入義務があるので注意が必要です。51人以上の会社であっても、正社員の4分の3以上の所定労働時間の場合は学生であっても加入義務があります。
また、社会保険の加入手続きの際にはマイナンバーの届出も必要ですが、マイナンバーと基礎年金番号の情報が紐づいていない場合はあわせて「ローマ字氏名届」の提出も必要です。

◆マイナンバーがわかるもの
マイナンバーカードや住民票があげられます。協会けんぽの場合は協会けんぽが保有する資格情報とマイナンバーを紐づけし登録する必要がありますが、提出拒否の申出があった場合は資格取得届にマイナンバーの代わりに基礎年金番号を記載することで手続きができます。資格取得届にマイナンバーを記載する場合は基礎年金番号と住所の記載は不要です。また、健康保険組合の場合は協会けんぽより厳しく、マイナンバー提出拒否の申出があった場合は、健康保険組合によっては、マイナンバー提出拒否理由の提出が必要です。

◆基礎年金番号がわかるもの
年金手帳や基礎年金番号通知書があげられます。令和4年4月に年金手帳が廃止されたため、令和4年4月以降に基礎年金番号が付与された人には基礎年金番号通知書が発行されています。資格取得届にマイナンバーを記載する場合は基礎年金番号の記載は不要です。

◆在留カード
マイナンバーの提出拒否など基礎年金番号(資格情報)とマイナンバーが紐づいていない場合はローマ字氏名届の提出が必要です。ローマ字氏名は在留カードに記載の通りに届け出ます。

住民税の特別徴収への切り替え

市区町村から送られてくる普通徴収の納付書か前職の会社が作成した特別徴収に係る給与所得者異動届出書があげられます。他社から転職してきた場合は、住民税の納税がある可能性が高いです。転職時に普通徴収の転職者については会社として住民税の特別徴収の義務はないですが、住民税の滞納履歴がないかは在留期間更新許可申請の際に審査対象になりますので、滞納のリスクを少なくするために特別徴収に切り替える方が安心です。

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※本稿の内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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