ビザ申請

経営管理ビザの審査期間は?申請から取得までの流れを徹底解説

by 弁護士 小野智博

経営管理ビザの審査期間と申請から取得までの流れ

経営・管理ビザとは

現在日本には全部で29種類のビザがあり、その中で就労ビザが19種類あります。

「経営・管理」ビザは、その就労ビザの中の1種であり、通称で社長ビザとも呼ばれています。

ビザとしては「経営・管理」で1つですが、

・「経営」に該当する、外国人が日本で会社を設立し、代表取締役などの経営者として起業し運営する場合
・「管理」に該当する、外国人が日本の会社で契約に基づき、取締役・支店長・支社長・部長などの管理職として事業の管理運営に従事する場合

の両方が含まれており、どちらかに該当すれば「経営・管理」ビザを取得し得ます。

なお、海外にある本社から日本にある支社へ赴任する場合などは、その業務内容や権限によって、「企業内転勤」ビザに該当する場合もあれば、「企業内転勤」ビザと「経営・管理」ビザのどちらにも該当し、選択が可能な場合もあります。

その場合、個々の状況に応じて適切なビザを選択する必要があります。

取得要件や認められる活動範囲が異なるため、どちらが最適か判断に迷う場合は、専門家に相談することをお勧めします。

▶参考情報:出入国在留管理庁ホームページ – 法務省
在留資格「企業内転勤」
▶︎参考情報:企業内転勤ビザについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
企業内転勤の就労ビザについて|必要書類やポイントを法律事務所が解説

経営・管理ビザの在留審査処理期間

ビザの審査期間は、「在留審査処理期間」として公表されており、下記のサイトから確認できます。

▶参考情報:出入国在留管理庁ホームページ – 法務省
在留審査処理期間

執筆時点での最新のPDFデータ「令和7年4月(PDF : 99KB)」の
「在留審査処理期間(日数)令和7年4月許可分」における「経営・管理」の欄については、

・認定(来日のため新たにビザを取得する申請) 96.3日
・変更(今のビザと違うビザに変更する申請) 47.0日
・更新(今のビザを継続する申請) 37.8日

と公表されていて、

・認定(在留資格認定証明書 交付) 約3か月
・変更(在留資格変更) 約1.5か月
・更新(在留期間更新) 約1か月

概ねこのような処理期間で許可されている傾向が把握できます。

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経営・管理ビザの申請をする前に必要な工程と期間の目安

ビザの審査だけでも数か月を要するところ、審査を受けるための書類準備などでさらに数か月が必要になってきます。

「経営・管理」ビザにおいて「管理」よりも圧倒的にお問合せの多い、「経営」に該当する、外国人が日本で会社を設立し、代表取締役などの経営者として起業し運営する場合における、代表的な工程と概ねの期間を見ていきます。

工程1:会社を設立する(1~3か月)

内容 順調に進んだ場合
会社の基本計画決定
(会社名、事業目的、資本金額、役員構成など)
1〜数週間
代表者印の作成 1〜3日
定款の作成と認証
(会社のルールなどを文書化し、公証役場にて認証)
1〜2週間
資本金の払い込み
(発起人名義の銀行口座に振込・払込証明書の取得)
1日
会社設立登記申請
(法務局に必要書類を提出し、会社を法的に成立させる手続き)
審査:約1週間
法人印鑑登録
(法務局で代表者印を登録し、会社の実印とする手続き)
1〜数日

工程2:事業計画書を作成する(1週間〜1か月)

日本の銀行で法人口座を開設する際に、事業計画書の提出を求められることが非常に多いです。

「経営・管理」ビザの申請時にも必要になり、詳細かつ具体的に作成する必要があります。

工程3:法人の銀行口座を開設する(1~3か月)

日本の銀行は、マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策を強化しており、特に外国人経営者による法人口座開設には慎重な審査を行うため、ある程度の時間を要します。

次の工程の事業所の確保において、法人名義で契約することなどを考えると、このタイミングで法人の銀行口座を開設することが望ましいです。

工程4:事業所を確保する(1~3か月以上)

事業所の種類 事業所として
認められるか
要件
一般賃貸物件 ・契約書に「事業用」明記
・法人名義での契約 など
住居兼事業所
(条件付)
・貸主の許可
・事業専用スペース
・看板設置
・公共料金の取り決め など
インキュベーションオフィス
(起業支援を目的とした施設)

(特例で)
・複雑なため専門家への相談を推奨
・短期レンタルスペース
・バーチャルオフィス
・移動可能施設 (屋台等)
×
(固定性・継続性が低い、
実体を伴わない など)
 

補足事項:
物件探し、契約、内装工事などが必要になるため、概ね1~3か月以上の期間を見込んでおくと良いです。

事業所とは、実体があり継続的にビジネスが行われる場所で、人や設備が整っていることが条件です。

賃貸の場合、契約書に「事業用」と明記され、法人名義で借りる必要があります。

事業が継続的に運営されることが求められるため、撤退が簡単な短期間のレンタルスペースや屋台等の利用は認められないことになっています。

住居を事業所として使う場合は、貸主の許可が必要で、事業専用の部屋や看板設置が求められます。

しかし、インキュベーションオフィス(起業支援施設)を利用する場合は、承諾書の提出で認められることがあります。

▶︎参考情報:インキュベーションオフィスを利用できるケースなどについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
外国人留学生が日本で起業するためには?特定活動44号の制度概要と活用できる在留資格のポイント
▶参考情報:出入国在留管理庁ホームページ – 法務省
スタートアップ関連施策

工程5:税務署、都道府県税事務所、年金事務所、ハローワーク、労働基準監督署への届出の書類準備から届出完了まで(不備が無く、同時進行で行って1~2か月)

主な提出先と
手続きの種類
提出書類の例と提出期限の目安 書類準備と届出完了までの目安
・税務署
(法人税や消費税などの国税関係)
・法人設立届出書(最も重要)⇒会社設立の日から2か月以内
・青色申告承認申請書⇒設立の日から3か月以内
・給与支払事務所等の開設届出書⇒開設の日から1か月以内
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(該当する場合) など
1~2週間
・都道府県税事務所
(法人住民税や法人事業税などの地方税関係)
・法人設立・設置届出書⇒会社設立の日から15日以内(自治体による)など 1日
・年金事務所
(社会保険(健康保険・厚生年金保険)関係)
・健康保険・厚生年金保険新規適用届⇒会社設立の日から5日以内
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届⇒代表取締役を含め、従業員が入社した日から5日以内 など
1~3週間
・ハローワーク
(労働保険(労災保険・雇用保険)関係)
・雇用保険適用事業所設置届⇒雇用保険の適用事業所になった日から10日以内
・雇用保険被保険者資格取得届⇒入社日の属する月の翌月10日まで など
1~2週間
・労働基準監督署
(労働保険(労災保険・雇用保険)関係)
・労働保険関係成立届⇒労働保険の適用事業所になった日から10日以内 など 1~3週間

注意点:
一人社長の会社であっても、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入が必要です。

会社の「使用される立場」の役員とみなされ、一人社長(代表取締役)も「従業員」の扱いになるためです。

ただし、労働保険(労災保険・雇用保険)は、原則として労働者には該当しないため、代表取締役自身は加入が必要ではありませんが、労災保険については中小事業主の特別加入制度などを利用して加入することもできます。

▶︎参考情報:社会保険については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
・外国人雇用の際の社会保険について|加入義務や手続きの流れを解説
▶︎参考情報:雇用保険については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
・外国人を雇用する際の雇用保険はどうする?注意点について国際業務に詳しい法律事務所が解説

工程6:許認可が必要な事業の場合には、事前に許認可を取得する(書類準備期間と審査期間を合わせ、1~9か月)

消費者や社会全体を保護するため、行政から許認可を取得しなければ行えない事業があります。

事業の種類により書類準備期間と審査期間に大きな幅があります。

外国人経営者に人気が高い許認可が必要な事業の例を表で見ていきます。

上段の準備期間には、申請に必要な情報収集、書類作成、および要件を満たすための事前準備(例:店舗の内装工事、資格者の確保など)にかかる概ねの期間を含みます。

許認可名と事業の例 主な要件(2つまで記載)

上段:準備期間

下段:審査期間

・飲食店営業許可
(レストラン、居酒屋など飲食提供)
・食品衛生責任者の設置
・店舗の構造・設備が食品衛生法の基準を満たしているかなど、事前に保健所への相談が必須
準備:1~3か月

審査:0.5~1か月

・古物商許可
(中古車販売、リサイクルショップ(オンライン含む)など)
・欠格事由に該当しないこと
・ 営業の実態がある店舗(独立した場所)があること
準備:1~2か月

審査:1.5~2か月

・宅地建物取引業免許
(賃貸の仲介、不動産売買・管理など)
・専任の宅地建物取引士の設置
・営業開始前に、営業保証金(本店1000万円、支店500万円)を供託するか、宅地建物取引業保証協会に加入し弁済業務保証金分担金(本店60万円、支店30万円)を納付
準備:2~6か月

審査:1~3か月

工程7:「経営・管理」ビザを入管へ申請するための書類準備から提出まで(1~3か月)

これまでの工程で得た書類などを準備します。

事業計画書は、この段階でビザ申請用に最終調整・ブラッシュアップします。

申請理由書を作成します。

(必須の提出書類ではありませんが、申請に至る経緯、事業の適法性・実現可能性、申請人の適格性などを詳細に説明する理由書を作成することが強く推奨されます。
これは審査官が申請内容を正しく理解し、適切な判断を下すための重要な資料となります。
専門家に依頼して作成することで申請の許可率が大幅に向上するため、実務において必須の提出書類と言えます。)

その他、必須の提出書類の詳細は以下のリンクより確認できます。

▶参考情報:出入国在留管理庁ホームページ – 法務省
在留資格「経営・管理」

工程8:「経営・管理」ビザの審査期間(1~3か月)

「2 経営・管理ビザの在留審査処理期間」のところで記載しました通り、約1~3か月の審査期間を経て、許可・不許可の決定を受けることとなります。

経営・管理ビザの申請準備から取得までの流れ

経営・管理ビザの申請準備から取得までの一覧表

ご紹介したこれまでの工程を大きく以下にまとめました。

許認可が必要な事業の場合、全体で8か月~2年以上の期間が必要になることがあります。

しかし、同時進行で進められる工程もあるため、大幅な時間短縮が可能です。

また、お考えの事業が許認可を必要とするかどうか分からない場合も含めて、ぜひ専門家にご相談ください。

▶︎参考情報:申請要件を含めた経営・管理ビザの基礎知識などについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
「経営管理ビザ」の基礎知識と留意ポイントをまとめて解説
▶︎参考情報:経営・管理ビザ含め就労ビザの申請要件を含めた取り方については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
就労ビザとは?申請要件を含めた取り方について、ビザ申請に詳しい法律事務所が解説
▶︎参考情報:経営管理ビザの必要書類と手続きの流れについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
経営管理ビザの必要書類と手続きの流れをまとめて解説

「資料提出通知書」が届くことがある

在留資格の申請が無事に受理されたとしても、審査の過程で、入国管理局から「資料提出通知書」が届くことがあります。

「資料提出通知書」とは、審査を進める上で生じた疑問点や、不足している情報について、申請人に追加資料の提出を促す書面です。

この通知書は「資料の提出を促す」性質のものと言え、提出しなくても審査自体は進行します。

しかし、追加資料が提出されない場合、「審査に必要な情報が不足している」「提出できない正当な理由がない」と判断され、審査結果に不利に働くケースがほとんどです。

一方で、資料を提出したからといって必ずしも有利になるとも限りません。

提出する資料の内容や説明方法によっては、かえって審査官の疑念を深めてしまう可能性もあります。

このような判断が難しい状況では、ビザ申請に精通した専門家に相談することで、審査を有利に進めるための適切なアドバイスを受けることができます。

審査期間を長引かせないコツ

前述した「資料提出通知書」が届いてしまうと、求められた資料の収集・準備に相当な時間を要します。

通知書には提出期限が設定されており、入管はその期限まで申請人からの資料提出を待つことになるため、その分だけ全体の審査期間が延びてしまいます。

このような事態を避けるためには、必要な情報を漏れなく記載し、不備のない書類を初めから提出します。

さらに重要なのは、申請理由書を最初から添付することです。

申請理由書により申請に至る経緯や事業内容を詳細に説明することで、審査官が申請人の状況を正確に早く理解でき、不要な疑念を抱かれるリスクを大幅に減らすことができます。

審査官にとって分かりやすく、疑問の余地のない申請書類を提出することが、審査期間を長引かせない効果的なコツと言えます。

まとめ

専門家への依頼が推奨される理由

「経営・管理」ビザの取得は、複雑なプロセスを踏み、準備段階から審査結果が分かるまでスムーズに進んだとしても相当な時間を要します。

しかし無事に「経営・管理」ビザを取得し順調に更新を重ねていけば、「永住者」ビザを取得できる可能性も出てきます。

「永住者」ビザの申請も非常に複雑で、個々の状況によって提出書類や注意点が異なります。

日本のビザの中でも特に要件が厳しく、総合的な判断がされるため、慎重な準備が必要です。

専門家は効率的なスケジュール管理と確実な書類作成が可能で、最新の法改正や審査傾向を把握しており、最適な申請タイミングや準備についてアドバイスができます。

そのため専門家によるサポートを受けることで、目の前のビザ取得だけでなく、長期的なキャリアプランや生活設計も考慮した戦略的なビザ申請を行うことができます。

無駄のないプロセスでのビザ取得のため、専門家に依頼することが強く推奨されます。

▶︎参考情報:永住者ビザについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
永住者ビザを申請するには|必要書類やサポートなど、永住許可に強い法律事務所が解説
▶︎参考情報:経営管理ビザの許可率については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
経営管理ビザの許可率は低い? 申請の難易度が高いといわれる理由や過去の許可事例・不許可事例を紹介
▶︎参考情報:経営管理ビザの「更新」については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
経営管理ビザの「更新」に必要なことは? 要件、必要書類、おさえておくべきポイントを解説

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※本稿の内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
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