企業法務全般

外国人労務マネジメント:新しい在留資格とは?これまでの経緯と具体的な内容を紹介

by 弁護士 小野智博

外国人労働者の受入れに係る近年の主な取組み

日本に在留する外国人は近年増加(約256万人)しており、日本国内で働く外国人も急増(約128万人)しています。この背景には中小企業や特定分野の人手不足を解消しようと試みる様々な政策が関与していると考えられます。ここでは、近年の外国人労働者受け入れ拡大の具体的な政策事例を紹介します。

 

・2012年5月

経済成長等への貢献が期待される高度な能力を持つ外国人について、出入国管理上の優遇措置を実施してその受入れを促進するための「高度人材ポイント制」を導入

・2013年11月

地域活性化総合特区において、日本の伝統的な料理(京料理)の調理に係る業務に従事する活動を行う外国人労働者の入国・在留を認める特例措置

・2015年4月(2020年度まで)

復興事業の加速化と東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連の建設需要に対応するため、建設分野と造船分野の外国人労働者の入国・在留を認める

・2015年9月

国家戦略特区において、家事支援活動を行う外国人労働者の入国・在留を認める

・2017年9月

介護の業務に従事する外国人の受入れを図るため、介護福祉士の国家資格を有する者を対象とする新たな在留資格を創設

・2017年9月

国家戦略特区において、農業支援活動を行う外国人労働者の入国・在留を認める

・2017年9月

国家戦略特区において、「技術・人文知識・国際業務」「技能」の在留資格に該当するクールジャパン・インバウンド分野の活動を行う外国人について、上陸許可基準を緩和して、就労を促進

 

外国人材の受入れ分野・範囲

今回の「特定技能」では、これまで外国人が就労できなかった分野での就労が可能になります。対象分野の説明としては、生産性の向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお、当該分野の存続のために外国人材が必要と認められる分野とされています。具体的には、下記5職種での外国人労働者の受け入れが開始されます。

・農業

・介護

・建設

・造船

・観光

ただし、今後対象職種が拡大される可能性もあります。

 

技能実習との違い

新設予定の「特定技能」については、既にある「技能実習」と混同されがちですが、実際には下記のような違いがあります。

 

・技能実習

開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としています。つまり、実習後は帰国し、学んだ技術を母国に伝えることが前提となっており、日本への長期滞在や家族呼び寄せは想定していません。

 

・特定技能

特定分野に関わる深刻な人手不足の解消、生産性向上を実現することを目的としています。こちらも在留期間の上限を設定し、家族の帯同は基本的に認めないこととされていますが、実際にはスキルに応じて他の在留資格への変更が可能です。家族の呼び寄せや、長期的な滞在への道も用意されています。

 

外国人材への政府の支援策の概要

外国人労働者受け入れ拡大に伴い、いかに円滑に受入れるのかという課題とともに、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備が必要とされます。政府による総合的対応策の概要では、下記のように指針が定められています。

 

①円滑なコミュニケーションを実現させること

日本語教育の充実

行政・生活情報の多言語化、相談体制の整備

 

②暮らしやすい地域社会を形作ること

地域における多文化共生の取組みを促進・支援

医療・保健・福祉サービスの提供支援

公営住宅・民間賃貸住宅等への入居支援、

防災対策等の充実

防犯・交通安全対策の充実

 

③子供の教育の充実

外国人児童生徒の教育の充実

就学の促進

 

④労働環境の改善、社会保険の加入促進

適正な労働条件と雇用管理の確保・労働安全衛生の確保

雇用の安定を図るため、多言語による相談体制の整備

社会保険の加入促進

 

外国人労働者を受け入れる日本企業の課題

人手不足に悩む日本にとって海外からの労働力は大きな希望です。一方で、外国人労働者の受け入れ体制の整備が早急の課題となっています。言葉の問題や、文化の違いなど、受け入れ側と労働者側との両者で様々な戸惑いが発生することが予想されます。外国人労働者を受け入れる企業としては、働き手の拡大という利点にのみ目を奪われることなく、外国人労働者を受け入れるための労働環境整備も伴う必要があることに注意する必要があります。日本企業が外国人を従業員として迎え、新たな戦力を味方につけるためには、安心して力を発揮できる体制を整えなければなりません。具体的には、雇用契約を外国人に対応させ、就業規則その他のルールを整え、外国人従業員・日本人従業員双方に十分な研修を行う必要があります。当事務所でも労務相談を受け付けています。

 

※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。

 

 

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