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契約審査・契約書レビュー:システム開発契約書の基本を解説!民法改正で変わった点は?

by 弁護士 小野智博

システム開発を社外に発注する際には、システム開発契約書を作成し締結する必要があります。本稿では、システム開発契約書の重要性と、記載すべき内容について解説します。また、システム開発契約書に関する民法改正に伴う注意点と修正のポイントについても紹介します。

システム開発契約書とは

システム開発契約の基本

システム開発契約とは、システム開発を開発会社などに委託する際に締結する契約です。簡単なプログラムの開発もあれば、会社の根幹を左右する大きなシステム開発まで、さまざまなケースがあります。システム開発契約は業務委託契約の一種ですが、業務委託契約は委託する業務内容や委託方法によって、請負契約と準委任契約があります。

システム開発契約書作成の重要性

簡単なシステム開発であれば、わざわざ契約書を作成するのではなく、簡単な発注書で済ましても問題ないのではないかと思われるかもしれません。しかし、ビジネス上の取引においては、契約書を作成する方が安全です。特にシステム開発は、一般の売買契約等と比較しても、契約書を作成する必要性は高いといえます。

その理由は、以下のようなシステム開発の特徴にあります。

●納品物が見えない
システム開発で制作する納品物は、物理的に見えるものではありません。そのため、発注者側と制作側の認識を一致させることが難しいといえます。認識のずれを防ぐために、開発の対象範囲・機能・仕様などに関して、できるだけ詳しく定めることが望ましいのです。

●開発期間が長期
システム開発では、一年以上という長期に及ぶケースもたくさんあります。また、要件定義・基本設計・詳細設計・プログラミング・テストなどのさまざまな工程があります。これらの全ての工程に関して、認識を一致させることは難しく、契約書に定めていなければ、当事者間の認識の相違によるトラブルにつながりやすくなってしまうのです。

●金額が大きくなるケースが多い
システム開発では、何千万円、何億円単位の契約になるケースもあります。また、内容によっては会社の経営自体に影響を及ぼすことさえあります。

このような特徴により、事前にしっかりと詳細まで契約書に定めておかないと、トラブルに発展する可能性が高く、万が一トラブルに発展した場合に大きな損害を被ってしまうリスクがあります。

システム開発契約書の内容

次にシステム開発契約書の具体的な内容を見ていきます。

タイトルはどのようなものにすべきか

システム開発契約書のタイトルには、下記のようにさまざまなものがあります。

・開発契約書
・開発委託契約書
・業務委託契約書

タイトルは契約書の内容を簡潔に表したものであれば、特に決まりはありませんが、契約の性質を当事者間において明確にする効果がありますので、実態に即したタイトルとすることをお勧めします。

契約書に含めるべき内容

システム開発契約において、特に注意すべきポイントについて解説します。

●納品物を明確にする
システム開発契約書では、開発対象を特定し納品物を明確にする必要があります。具体的にどのような機能が必要なのか、詳しく記載します。
また、開発に付随する各種ドキュメントも納品物となることが一般的であるため、納品すべきドキュメントに関しても明記します。納品するドキュメントには、例えば以下のようなものがあります。

・基本設計書
・詳細設計書
・テスト仕様書
・テスト結果報告書
・ソースプログラム
・実行ファイル
・運用手順書 など

●報酬支払いの時期について
システム開発委託契約では、報酬の支払いは納品後になることが一般的です。しかし、システム開発は長期にわたることが多いため、納品後の一括支払いでは開発側の負担が大きくなってしまいます。その負担を軽減するために、工程ごとに報酬・支払いを定めるケースもあります。

●契約不適合責任(瑕疵担保責任)について
契約にて契約不適合責任(瑕疵担保責任)を定めていれば、開発されたシステムに不具合があった場合に、発注側は開発側に対して、不具合の修正を求めることができます。ただし、瑕疵担保責任が発生するのは契約で定めた期間内のみであり、一般的には納品完了から6か月や1年が定められます。瑕疵については、改正民法もふまえて、検討する必要があります。
この点は専門的な内容になる場合がありますので、心配な点があれば弁護士などの専門家に相談することも重要です。

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●仕様確定と変更の期限について
システム開発では、設計を進めるうちに変更を重ねていったり、発注者側の要望が変化したりするケースが多く発生します。発注側が仕様変更を繰り返すことで、開発側には負担がかかってしまうことになりかねません。そのため、仕様変更可能な範囲や期限を詳しく定めておくことが重要です。

●納品物の検査方法・期間・処理について
納品に関する部分も、しっかりと契約書に定めておかなければトラブルに発展しやすいので注意が必要です。
下記のように、それぞれ詳しく定めるようにしましょう。

・提出期限
・納品方法(DVDなどのメディア媒体で納品するのかサーバにアップロードするのかなど)
・検査する際の仕様や基準
・検査の期間

●著作権その他の知的財産権
著作権は、原則としては創作者に帰属します。そのため、開発したシステムに関して発生する著作権は定めがなければ開発側に帰属します。しかし、契約書に定めがなければ、トラブルにつながるリスクがあるので、契約書でしっかり明記することをお勧めします。
納品物に対する著作権や知的財産権は、納品物の検収完了時や納品時、または報酬支払時に開発側から発注側に移転し、開発側は発注側に対して著作権を行使しないと定めるのが一般的です。それ以外にも、部分的に帰属を分け、納品物に対する著作権および知的財産権は開発側に帰属し、発注側は契約の目的の範囲内で利用権を有する、と定めることもあります。
開発されたシステムの知的財産権について、自社がどのような権利を持つことができるかは、将来的に、そのシステムを用いたビジネスを展開する上で決定的に重要になりえる問題です。契約交渉時の会社間のパワーバランスにも影響を受ける問題ですが、自社に必要な知的財産権を契約書上も確保できるように、よく検討することが必要です。この点についても、専門的なアドバイスが必要な場合には、弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

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●損害賠償について
システム開発契約では開発側の意向で損害賠償額の上限が定められることが一般的です。開発料金と同額を条件とするケースがありますが、発注側はシステムの開発が完了しなかった場合のリスクなどを考慮して、それを補填できる上限額であるかを判断することが重要です。

民法改正のシステム開発契約書への影響と修正ポイント

民法改正に伴い、システム開発契約書においても、内容を検討しなければならないことがあります。改正前民法以上に、より具体的に定める必要がある項目が出てきたため、注意が必要です。

請負契約に関する民法改正のポイント

報酬の一部支払の新設

改正前民法では、目的物を完成させない限り開発側は発注側に対して、請負契約に基づく報酬を請求できませんでした。一方、改正民法では、未完成部分のみで発注側にとって価値があると認められる場合には、開発側は報酬を請求できます(改正民法第634条)。また、改正民法では、「注文者が受ける利益の割合に応じて、報酬を請求することができる」とされているため、トラブルにならないためには「注文者が受ける利益の割合」を契約段階でより具体的に決めておくことが望ましいでしょう。

バグがあった場合の対応について

システムにバグが生じた場合、プログラムに瑕疵があるものと認められますが、改正前民法では明文上代金の減額請求は認められておらず、判例上認められていただけでした。改正民法では、瑕疵修補請求・解除・損害賠償請求に加え、発注側が開発側に代金の減額を請求できることが明文化されました(改正民法第636条、第563条、第562条、第559条)。

代金減額請求権については、「その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる」と改正民法で規定されているため、「不適合の程度」をどのように数値化するかについて、契約段階で明確にしておくこと望ましいといえます。

また瑕疵が認められる期間に関して、改正前民法では完了から1年以内でした(改正前民法第637条)。一方改正民法では、契約不適合を知ったときから1年以内となったため(改正民法第637条)、納品から瑕疵が見つかるまでは、期間制限がスタートしないことになります。この点に関しても、契約書をよく確認する必要があります。

改正民法の準委任契約への影響と修正ポイント

システム開発契約では、準委任契約の契約方式が採用されることもあります。その場合、システム完成ではなく、依頼された仕事の遂行が契約上の義務となります。

成果完成型が新設された

改正民法では、成果完成型が新設されました(改正民法第648条の2)。この契約では、開発側は、発注側に対して、請負契約と同様に仕事の完成に対する報酬を請求できますが、この契約類型を採用するには、契約上でその旨を定める必要があります。

また、改正民法では、成果完成型準委任契約の報酬は、引き渡しと同時とされています。そのため、報酬の支払日を契約上で定めなかった場合には、引き渡しと同日に報酬を支払わない場合、債務不履行になってしまいます。それを避けるためにも、契約書に実際に支払うことが可能な日付を記載しておくのが賢明です。

一部報酬請求に関する改正の影響

システム開発の途中で委任が終了した場合、改正前民法では、開発側に帰責事由がない場合に限り、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することが可能となっていました(改正前民法第648条第3項)。改正民法では、開発側に帰責事由がある場合でも、一定の場合に、履行した部分の報酬を請求できることになります(改正民法第648条第3項)。そのため、トラブルを避けるためには「既にした履行の割合」をどのように判断するのかを、契約上明確にしておくと良いでしょう。

おわりに

システム開発契約に関しては、簡単なシステム開発であれば、発注書で済ませているケースも見られます。しかし、前述のとおり、会社としてトラブルやリスクを避けるためには、システム開発契約書は必ず作成しておくべきものといえます。また、古い契約書を使いまわしている場合には、民法改正にも注意して契約書の内容を最新の法令に対応できるように、アップデートしましょう。

本稿が、契約書を使いこなし、最前線でビジネスを行う企業の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
なお、本稿は多くの場合に共通する一般的な注意事項を説明したものであり、個別のケースについてその有効性を保証するものではありません。具体的な事案や契約書、契約審査や契約書レビューの方法について弁護士にご質問がありましたら、下記の弊所連絡先までお知らせください。事案に即した効果的なアドバイスをさせていただきます。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
※本稿の内容は、2020年12月現在の法令・情報等に基づいています。

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