契約支援

契約審査・契約書レビュー:不動産売買契約書の基本的な項目と注意点について

by 弁護士 小野智博

不動産の売買を行う際には、不動産売買契約書を作成して締結するのが一般的です。不動産売買は大きな金額が動く契約だからこそ、事前に細部まで契約書で確認することはとても重要です。ここでは、不動産売買契約書の項目と注意点について解説します。

不動産売買契約書とは

不動産売買契約書の特徴

不動産売買を行う際に作成する不動産売買契約書には、下記のような特徴があります。

・契約締結から決済までの期間が比較的長期である
・取引金額が高額である
・担保権の設定を伴うことが多い
・買主がローンを利用することも多い

よって、このような特徴を考慮し、必要な条項を網羅した契約書を作成する必要があります。

不動産売買の流れ

不動産売買契約を行うことが決まれば、事前に契約書その他の書類等の必要な準備を行います。そして契約当日は、売主と買主双方が立会い、契約手続を行うことが一般的です。

不動産売買契約書の内容について読み上げて改めて確認し、売主と買主双方が共に納得できたら、契約する本人がそれぞれ署名・押印を行います。署名・押印が完了したら、買主が売主に手付金の支払を行い、契約成立となります。手付金は、現金・指定口座への振込・預金小切手などの方法で支払われます。

不動産売買契約書の内容

不動産売買契約書にはどのような内容を記載するのか、各項目について解説します。

●売買の目的物および売買代金
売主が所有している売買対象の不動産を特定できる情報を記載し、その不動産を買主が買い受けること、そしてその金額を規定します。

●手付金等
不動産売買契約を締結する際に、買主が売主に支払う手付金等の金額を規定します。

●売買代金の支払の時期・方法等
売買代金の支払方法について規定します。内金および残代金等、それぞれの金額の詳細だけでなく、支払日まで記載します。

●所有権の移転とその時期
所有権の移転について規定します。一般的には、買主が売主に売買代金全額を支払った時点で、売主から買主に所有権が移転することが多いです。

●売買対象面積・測量・代金清算
売買対象となる土地・建物などの面積に関する内容を規定します。売買対象となる土地は、登記事項証明書記載の土地面積を取引対象とする方法と、実測面積を取引対象とする方法があるため、どちらの方法で行うかを記載します。さらに、登記事項証明書と実測面積に差異が生じた場合の対応方法等も規定します。

●境界の明示
売主は、買主に隣地との土地の境界標の明示を行うことを規定します。境界標がない場合には、新たに境界標を設置して境界を確定させる必要があります。

●引渡時期
売買対象の不動産の引渡日について規定します。一般的には、所有権の移転と同日とすることが多いですが、別途規定することもあります。

●所有権移転登記等
売主は、売買代金の受領と同時に買主への所有権移転の登記申請をすること、申請に要する費用の負担に関して規定します。

●抵当権等の抹消
売主が、売買の対象となる不動産に設定されている抵当権その他の権利等に関する、一切の負担について、除去・抹消などの義務を規定します。

●引渡完了前の滅失・毀損
売買対象となる不動産の引渡完了前に、売主・買主どちらにも帰責性のない事由で不動産の滅失・毀損が発生し修復が困難な場合について、不動産売買契約の解除などの処理を規定します。

●物件状況等報告書
売主が不動産の状況について、物件状況等報告書を作成して買主に説明することを規定します。

●公租公課等の分担
売買対象となる不動産により発生する収益や、賦課される公租公課等の諸負担について規定します。

●瑕疵の責任
不動産の引渡し後一定期間に不動産に瑕疵が見つかった場合について、売主責任について規定します。

●設備の引渡し・修復
売主は、不動産に付帯する主要設備の引渡しの有無を設備表へ記載し、その記載内容で各設備を引渡すことを規定します。故障や不具合があった場合の売主が修復する責任や条件についても規定します。

●手付解除
手付解除について規定します。手付解除は、一定の期日までは、買主が手付金を放棄し、売主は手付金の倍の金額を買主に支払うことにより、不動産売買契約を解除できるというものです。

●契約違反による解除・違約金
売主または買主が、不動産売買契約の債務の履行を怠った場合、不動産売買契約を解除して違約金の支払いを請求できること等を規定します。

●融資利用の特約
買主が住宅ローンを利用して代金の支払いを計画している場合、買主が融資を得られない際には、一定の期日までは契約を解除できることを特約として定めます。その場合には、融資利用の申込先・融資承認の取得期日・融資金額・融資利用の特約に基づく契約解除期日など、細かく記載する必要があります。

●敷地権が賃借権の場合の特約
売買契約の対象となる土地の権利が賃借権であった場合、土地所有者から賃借権譲渡承諾書を取得し買主に差し入れること等を規定します。

上記の各項目は、不動産売買契約書の基本的な内容です。不動産売買契約書は、個別の契約毎にそれぞれ取り決める内容が異なり、その他の規定が加わることも多々あります。そのため、確認すべきポイントは売買する物件の内容や条件等に応じて異なりますが、大切なことは、気になる点や不明点がある場合には、納得できるまで確認をすることです。

不動産売買契約のチェックポイント

不動産売買契約書のチェックすべきポイントについて、特に重要な項目は下記のとおりです。

・売却物件の表示に誤りはないか
・売買代金、手付金等の額に誤りはないか
・代金の支払日はいつか、支払はどのような方法か
・所有権の移転、引渡しの時期に問題はないか(抵当権や賃借権などがある場合は特に注意)
・手付解除は可能か、いつまで手付解除が可能か
・契約違反による解除について、違約金や損害賠償の予定額は適切か
・公租公課等の精算について明確か
・買主、売主のどちらかに極端に有利(または不利)な内容はないか
・その他、取引の実情に照らして特に定めておく事項はないか

おわりに

このように、不動産売買契約は金額が大きいだけでなく、他の契約類型にはない特殊な項目等が含まれていることもあります。そのため、契約書の作成をチェックは必要不可欠です。契約締結後にトラブルになることがないよう、細心の注意を払いましょう。契約に関して何らかの懸念や不明点がある場合は、弁護士による契約レビューを依頼することをおすすめします。

本稿が、契約書を使いこなし、最前線でビジネスを行う企業の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
なお、本稿は多くの場合に共通する一般的な注意事項を説明したものであり、個別のケースについてその有効性を保証するものではありません。具体的な事案や契約書、契約審査や契約書レビューの方法について弁護士にご質問がありましたら、下記の弊所連絡先までお知らせください。事案に即した効果的なアドバイスをさせていただきます。

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※本稿の内容は、2021年1月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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