コンプライアンス

海外進出・海外展開:アメリカ版ウェブサイト作成の注意事項 Webアクセシビリティ問題

by 弁護士 小野智博

はじめに

日本企業が海外で事業展開する際には、現地向けのWebサイトを開設するのが一般的でしょう。近年では、その際にWebアクセシビリティについて十分留意する必要があります。実は日本のWebアクセシビリティにおける法規制は、アメリカなど他の先進国に比較すると緩いものになっています。そのため、日本企業が海外進出に合わせてWebサイトを作成する際には現地の基準を満たしているか注意が必要です。

本記事ではWebアクセシビリティに関連する法律について説明していくとともに、Webアクセシビリティ訴訟の事例を紹介しています。大手企業を中心にWebアクセシビリティ訴訟のターゲットになっており、今後も提訴事案は増えていくことが予測されます。中には莫大な損害賠償を支払わなければならなくなったケースもあり、企業側にはその流れに合わせたWebサイトの構築が求められてくるでしょう。

 

法律の概要

Webアクセシビリティとは?

Webアクセシビリティとは、高齢者や障害の有無にかかわらず、また異なる情報端末やソフトウェア、言語、ブラウザなどにおいても、ウェブで提供される情報にアクセスし利用できることを意味します。Webアクセシビリティには標準的な規格があり、A(最低レベル)、AA(中レベル)、AAA(最高レベル)の三つの水準が用意されています。アメリカではAAの基準が求められています。

 

アメリカの法律とWebアクセシビリティの関係

アメリカではリハビリテーション法508、障害を持つアメリカ人法(ADA)、航空アクセス法においてWebアクセシビリティへの対応を法規制で定めています。

 

リハビリテーション法 508条:
政府機関のウェブサイトを対象にアクセシビリティ確保を義務化した法律です。

 

航空アクセス法:
航空会社のウェブサイトに、2016年12月までにレベルAA準拠を求めています。対象は、アメリカ国内の空港に乗り入れる定員60名以上の路線がある航空会を対象としており、 日本の航空会社も対象となります。2013年12月に施行されました。

 

障害を持つアメリカ人法The Americans with Disabilities Act(ADA):
この法律は障害による差別を禁止する適用範囲の広い法律であり、1990年に制定されました。さらに、障害者の範囲を拡大した改正法が2009年から施行されています。本記事ではこのADA関連の事例を取り上げています。

 

世界的な動向

2016年10月、EUの議会で、公共のWebサイトやモバイルアプリのアクセシビリティを確保するための指令が承認されました。この指令により、EU加盟国は自国の国内法にその内容を反映することが求められます。

 

アメリカで増加する訴訟

これまでの訴訟件数の増加

アメリカにおいて、企業サイトがWebアクセシビリティの基準を満たしていないという理由で訴訟を起こされる事例が年々増加しています。具体的な数値を見てみると、2015年には57件、2016年には262件、2017年は8月15日までに432件の訴訟件数が報告されています。

これまでの訴訟事例

Webアクセシビリティに関連して、全米ろう協会National Association of the Deaf(NAD)あるいは個人が大手企業を提訴する事案が頻発しています。ここでは日本にもなじみのある企業の例を紹介します。

 

Netflix:
2010年、Netflixはストリーミングビデオに字幕が付いていないものがあるとしてNADから提訴されました。ADAがオンラインでのみ事業展開しているビデオコンテンツに適用されると解釈されたのはこれが初めての事例です。2012年に法的拘束力のある同意判決を受けいれ、過去の動画にも遡及して100%字幕を付与することになりました。

 

Amazon:
2015年10月、Amazon は190,000を超えるテレビ番組や映画に字幕を付けることをNADと約束しました。Amazonプライムビデオはすでに完全字幕化されていましたが、新たにAmazonのインスタントビデオのアーカイブにも対応することになりました。

 

ウォルトディズニー:
ディズニーリゾートのWebサイトがADAに反しているという理由で民事訴訟を提起されました。2012年に和解が成立しています。

 

マクドナルド:
2017年4月、視覚障碍者の男性が、スマートフォンのアプリやホームページのWebアクセシビリティが不十分であり、ADAに反しているとして、マクドナルドを訴えました。具体的にはスクリーンリーダーと呼ばれる読み上げ機器の使用が困難な形でWeb設計されているとの主張です。

 

今後の見込み

視聴覚障害者や高齢者、モバイル機器からの利用など、どのような環境からもすべての人が同様にアクセスできるようなWebサイト作りが現在、強く求められています。公共性の高いWebサイトはもちろんのこと、企業が展開する商業サイトにおいても、アクセシビリティ対応が求められることが多くなっています。

特にアメリカでは民事訴訟が盛んであるため、法規制の基準を把握して、それに準拠するための準備を進めていくことが重要でしょう。特に、新規でWebサイトを作成・公開する場合や既存のサイトをリニューアルする際にはWebアクセシビリティの意識を忘れずに対策することが重要です。

 

※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。

 

 

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