“差別対価”と見なされ、独占禁止法違反となる!?
自由競争において、顧客に選ばれるよう有利な環境を整えたり、低い価格を設定するのは当たり前のことです。
しかし、独占禁止法により『不当に、地域または相手方より差別的な対価をもって、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること』は、“差別対価”(昭和57年公正取引員会告示第15号)であるとし、不公正な取引方法とみなされます。
たとえば、全国に支店を持つ大企業が、特定の地域において同業他社を狙い撃ちにした安売り戦略や顧客の勧誘を行った場合、どうなるでしょうか?
資金力で劣る同業他社は太刀打ちできず、その地域のシェアは大企業に奪われてしまいます。
そのような事態を避けるため、独占禁止法は以下の行為を禁止しています。
・競争相手を排除する目的で、競争相手の取引先に安価で取引を持ちかけて顧客を奪うこと
・競争相手と競合する地域に限定して、ダンピング(公正な競争を妨げるような不当に低い価格での販売行為)を行うこと
“差別対価”に該当するか否かは弁護士にご相談を!
つまり、K塾の生徒を勧誘するため、K塾の生徒に対してのみ受講料を値下げしたAさんの行為は、公正取引委員会に“不公正な取引方法”であると判断される可能性が高いのです。
そうなった場合、価格の是正のほか、その後の営業活動についても厳しい指導を受けることになるでしょう。
仮に、Aさんが経営するすべての塾で割引キャンペーンを行っていた場合は、問題にはなりません。
しかし、K塾と競合する駅前校でのみ割引を実施する行為は、“差別的な対価”であると判断される恐れがあるのです。
さらに、K塾から引き抜いた講師の人数によっては、K塾が受ける競争機能に重大な影響を及ぼすことになります。
そうなれば、悪質な排除型の私的独占と判断され、莫大な損害賠償を請求される恐れもあるのです。
独占禁止法の差別対価に該当するか否かは、事業者の意図・目的・価格・取引条件・市場における地位・公正な競争に与える悪影響の度合いなどが総合的に勘案されます。
ライバル企業を意識し、自社が有利になる戦略を構築することはビジネスの基本です。
ただし、独占禁止法に抵触しないよう、事前に弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。
※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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