企業法務全般

“無期転換ルール”を適用した場合、有休はリセットされる?

by 弁護士 小野智博

来年“無期転換ルール”を行使し、有期労働契約から無期労働契約になる予定の社員がいます。

その場合、新しい労働契約を締結することになると思いますが、年次有給休暇(以下、有休)の付与日数を算出する勤続年数はどのように扱うべきですか?

また仮に、関連会社に出向した際や会社が吸収合併された場合は、どのような取り扱いになるのでしょうか?

 

【結論】

臨時スタッフが同一の使用者と契約更新を繰り返している場合や、パートタイマーが正社員に切り替わる場合の有休の取り扱いについては、『実質的に労働関係が継続している限り、勤続年数を通算する』との通達があります(昭63・3・14基発150号)。

つまり、有期労働契約から無期労働契約に転換しても、同じ使用者の下で勤務している場合、勤続年数は通算して取り扱います。
また、既に付与している有休についても、消滅時効(付与日より2年)を迎えていないものは持ち越す必要があります。

 

“無期転換ルール”を適用しても、有給は継承される

有期労働契約を反復して更新し、契約期間が通算5年を超える労働者は、本人の申出により無期労働契約に転換することができます(労基法18条)。
これを“無期転換ルール”といい、今年4月から本格的な運用が始まります。

無期転換ルールを適用した場合、転換時から新たな労働契約関係がスタートします。
そのため、転換時に有休取得権利が消滅すると考え、転換して半年後に有休を付与することが可能だと思われるかもしれません。

しかし、有休は継続勤務によって判断します。
つまり労働契約の存続期間(在籍期間)であれば継続勤務に該当し、かつ実質的に労働関係が継続している限りは勤務年数を通算しなければなりません。

そのため、有休は継承されることになるのです。

 

会社が合併した場合や出向時の取扱い

関連会社等に出向した場合、“移籍出向(転籍)”であれば勤続年数は通算されません。
しかし、実務上は資本等のつながりのある関係会社であれば勤務が継続しているので、勤続年数を通算して取り扱うケースが多いようです。

また、会社が吸収合併された場合は、消滅会社の地位をそのまま存続会社が承継するので、労働契約上の権利義務関係もすべて引き継がれます(会社法750条)。

なお、事業譲渡で他社に移籍した場合でも、労働契約が承継されれば、有休権利を承継することができます。

有休の取り扱いについては、従業員にとって不利益とならないよう配慮することが大切です。
ご不明な点やお困りのことがあれば、専門家にご相談ください。

 

※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

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