企業法務全般

海外進出・海外展開:アメリカでオープンデータのオンライン公開が義務化|企業にとってはビジネスチャンスの期待増

by 弁護士 小野智博

近年、「オープンデータ」に関する活発な取り組みである「オープンデータ運動」が世界的に広がりを見せています。オープンデータが増えると透明性や信頼性が高まります。さらに、そのデータを分析・活用することで、効率が向上したり、新しいサービスを生み出したりできると期待されるのです。

そんな中、アメリカでは2018年12月22日、HR4174「Foundations for Evidence-Based Policymaking Act of 2017(2017年の証拠に基づく政策立案法)」が可決されました。この法律はアメリカ政府が公開している全データをオンラインに公開し、スマートフォンやPCからなど機械から判別できる形で閲覧できるように義務づけるものです。

ここでは、オープンデータに関する基礎知識と、今回の新法律の内容を説明するとともに、今回の法律成立がアメリカへの事業展開を考える企業に与える影響について考察します。

 

オープンデータとは?

オープンデータの定義は様々ありますが、ここではデータ公開イニシアティブにより約8000の開発指標を無料公開している世界銀行による定義を見ていきましょう。

Data are considered to be “open” if anyone can freely access, use, re-use and redistribute them, for any purpose, without restrictions. (The World Bank)

~どんな目的のためでも制約なしに、誰もが自由に利用、再利用、再配布できるのであれば、そのデータは「オープン」であると考えてよい~(世界銀行)

 

また、「OPEN DATA HANDBOOK」(Open Knowledge International)では、オープンデータのあるべき形として以下3点のポイントがあると提唱されています。

 

①利用可能性

データ全体を丸ごと使えななければならないし、再作成に必要以上のコストがかかってはならない。望ましいのは、インターネット経由でダウンロードできるようにすることである。また、データは使いやすく変更可能な形式で存在しなければならない。

 

②再利用と再配布ができる

データを提供するにあたって、再利用や再配布を許可しなければならない。また、他のデータセットと組み合わせて使うことも許可しなければならない。

 

③誰でも使える

  誰もが利用、再利用、再配布をできなければならない。データの使い道、人種、所属団体などによる差別をしてはならない。

 

アメリカ政府におけるオープンデータのオンライン公開義務化

「Foundations for Evidence-Based Policymaking Act of 2017(2017年の証拠に基づく政策立案法)」は元々「OPEN Government Data Act」として提案されていたものであり、2018年12月に議会で可決、2019年1月14日にはトランプ大統領による承認を受けました。この法律では、アメリカ政府に対し、機械可読な形でデータを利用できるようにすることを要求しています。法律施行後に、自由なアクセスがなされていなかった場合には、市民団体から政府機関に対して裁判に持ち込まれることも予想されます。

つまり、アメリカでは誰もが政府のデータに自由にアクセスできるようになります。その結果として透明性や信頼性が増し、証拠に基づく政策決定や証拠に基づく新たな政策の提案が期待できるでしょう。

 

オープンデータを利用したビジネス事例

ここでは、オープンデータをビジネスに利用した際の具体的な成功例を紹介します。

 

・世界最大級のローカルビジネスレビューサイトYelp

レストランガイドに保険衛生検査結果に基づくスコアを表示

病院ガイドに緊急治療室での平均待ち時間等を表示

→ユーザー増に繋げる

 

・オンライン不動産データベースZillow

固定資産税の情報と実際に支払った額、税の特例措置、租税査定人の記録などに基づき不動産価格を査定

→従来の不動産価格査定方法とは異なる、透明性と納得性の高い査定モデルを確立

 

海外進出・海外展開への影響

現在、インターネット上にはありとあらゆる情報が存在しています。しかしながら、これは誰もが情報を発信できるということの裏返しでもあり、情報の正確性には注意が必要です。

そんな中で透明性や信頼性を高めることのできるオープンデータが注目を浴びています。特に、政府組織が提供するオープンデータは信頼性や有益性が非常に高いと考えられ、政府組織自身のメリットとして、より正確で公平なサービスを提供することにつながるでしょう。

さらには、オープンデータを企業が活用することで新しいビジネスが生まれることも考えられます。アメリカへの海外進出・海外展開を考えている企業にとって、今回のオープンデータ公開義務化の法律制定は大きなチャンスとなることでしょう。上記のYelpやZillowの成功例のように、データを上手く活用して、既存サービスの価値を高めることや、これまで存在しなかった新しい価値を生み出すスタートアップ事業を興すことも可能です。

今回の法律には、ビジネスの領域から大きな期待が寄せられており、オープンデータの活用が、今後の事業展開の鍵となるといっても過言ではないと思います。

 

弁護士法人
ファースト&タンデムスプリント法律事務所

代表弁護士 小野智博(東京弁護士会所属)

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