企業法務全般

外国人労務マネジメント:在留資格拡大の背景と課題

by 弁護士 小野智博

これまでの日本の姿勢

日本は長期にわたり、外国人の受け入れには厳しい態度を取ってきました。その結果、先進国の中では最も多様性に乏しい国といってもよい現状があります、数値で具体的に見ていくと、日本では人口のわずか2%が外国人という統計値があります。お隣の韓国では、4%、積極的な移民政策を執ってきたフランスでは16%という値を示しています。

では、なぜ日本は移民の受け入れに消極的な姿勢を続けてきたのでしょうか?一つは、外国人による犯罪への懸念があります。また、日本語のみを共通語とする日本では、外国人を受け入れることにコミュニケ―ション上の高いハードルがあったことも確かでしょう。

しかし、人口減少、特に労働年齢人口不足の問題を抱えることとなった日本において、外国人は貴重な労働力となっていきます。人材不足を解消し、国際的な競争力を維持するために、企業側としては外国人を積極的に受け入れたいという思惑が出てきているのです。

 

現状

レジ係や介護の分野では既に多くの外国人労働者が活躍しています。特に、都市部においてその傾向が顕著に見られます。具体的な数値を見ていくと、日本で働く外国人労働者は2017年10月末時点で127万人となっています。5年前は68万人でしたので、5年間で倍増の勢いです。国籍別では全体の3割を占める中国が37万人と一番多くなっています。その後、実習生が多いベトナム24万人、フィリピン15万人、ブラジルと12万人と続いていきます。

現状では、外国人が日本で働くための入国許可(ビザ)は本来、高い技術や特殊な技術を持った人材に限定しています。しかし、実情としては特別な技術を持たずして、日本へやってくる人もいます。その人たちの多くは学生や研修生として入国許可を得た上で、日本国内で働いているのです。このような制度と実情のギャップを埋めるべく、政府は農業、建設、ホテル、看護、造船などの新しい分野においても「特定技能」ビザを作成すると発表しました。計画によると、2025年までに50万人の新規雇用者を雇うということです。

 

需要の高まりによる方向転換

人材を確保したい企業側からの圧力もあり、日本政府としても外国人労働者の受け入れに対して進路変更することになりました。これが、現在話題となっている「特定技能」の在留資格新設です。

30歳未満の労働者数が過去20年間で、1/4に減少しました。この高齢化社会は、介護職の需要を押し上げることにもつながっています。しかし、介護の仕事は給料に対して仕事が大変というイメージもあり、日本人だけで人材を確保することは難しくなっています。介護分野の他にも、農業や建設、看護などの分野で人材不足が顕著であり、外国人労働者に頼らざるを得ない事情があるのです。

また、これまで外国人の受け入れに難色を示していた世論も、昨今の観光ブームの中で、外国人を身近に感じることも多くなってきました。その結果、外国人へのアレルギー反応は小さくなっており、外国人労働者の受け入れにも寛容な姿勢へと変化してきています。特に若年層においてはこの傾向が顕著です。世論調査では、外国人労働者の受け入れに賛成の割合が42%でしたが、18歳から29歳の若年層に限定すると、約60%が賛成の姿勢を示しています。

 

企業の外国人労働者受け入れの課題

新しく「特定技能」の在留資格新設を行うことで、多くの外国人が日本に働きに来ることが予想されますが、そこには様々な課題が考えられます。例えば、日本になじめない外国人労働者が社会から孤立し、その結果、治安悪化につながる恐れもあります。また、子どもの教育や社会保障の在り方についても考えていく必要があるでしょう。さらに、日本人との職の奪い合いが起きる可能性や、状況が変わり外国人労働者が一斉に帰国する可能性などをあらかじめ考慮して、労働現場の混乱を招かないような対策も求められます。

実際に、2017年には7000人の外国人研修生が失踪したというデータもあります。また、外国人を受けて入れている事業所の7割で違法残業や賃金未払いなどの法令違反があったことが報告されています。企業からの需要を満たす形で進められている外国労働者の受け入れ拡大ですが、外国人従業員を受け入れる企業としては、受け入れた後のサポートや日本人従業員との共存について、一緒に考えていく必要があるでしょう。

外国人を雇用した企業では、高い確率で労務問題が発生しており、労務相談が増えています。文化や考え方の多様な多国籍の従業員に企業の文化や価値観を理解させ、安心して力を発揮してもらうためには、経営者が外国人の労務環境を整えてトラブルを未然に防ぐ対策をとることが重要です。当事務所でもご相談を受け付けています。

 

※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。

 

 

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