コンプライアンス

海外進出・海外展開:サンフランシスコで完全キャッシュレス化禁止の条例が提案|Amazon Goのような無人店舗は可能なのか?

by 弁護士 小野智博

はじめに

近年、無人店舗ビジネスが国内外で盛んになっています。特に、アメリカでは「Amazon Go」というレジ無しシステムを導入した小売りビジネスが実用化されており、その他の企業もこの流れに遅れまいと追随しています。このビジネスモデルでは、レジのような手間がかかる作業に対して、人間によるオペレーション無しで買い物を可能とし、人件費削減や人員の適材配置を可能にしています。

一方で、無人店舗ビジネスの支払いシステムに対しては、公平さに欠けるとして、事業拡大へ待ったをかける動きもあります。実は、無人店舗ビジネスでは、クレジットカードやデビットカードの保有を大前提とした支払いシステムとなっており、現金のみを保有している人にとっては利用不可能となっているのです。

今この度、サンフランシスコ市議会でキャッシュレス店舗の禁止が検討されていると報じられました※1。この提案の根本には、クレジットカードやデビットカードがなくても、誰しもに公平なアクセスを確保すべきだという考え方があります。

本記事では、キャッシュレス店舗の第一人者「Amazon Go」について説明するとともに、キャッシュレスビジネスに対する規制の可能性について見ていきます。

 

Amazon Goとは?

「Amazon Go」のコンセプトが初めて発表されたのは2016年のことでした。その後、テスト店舗の試験運用を経て、2018年1月にシアトルで1号店がオープンしました。現在は数店舗が展開されているのみですが、2021年までには3000店舗の出店を計画していると言われています。

今「Amazon Go」ではスマートフォンでダウンロードした専用アプリを通じて入店時のチェックイン後、店内で通常通り買い物を行います。この時、店内のカメラやセンサーなどによって、お客さんがどの商品を手に取っているのか自動認識される仕組みとなっています。その後、店内から退出する際に、持っていた商品が自動的にアプリ内で決済されます。

このレジの無人化によって、接客人件費の削減が実現されます。その分、システムの強化や商品の充実など、別の分野に資金を投じることができると期待されています。

 

キャッシュレス化規制の動き

キャッシュレスビジネスが活発になっている一方で、公平なアクセス確保の観点から支払い方式が問題視されることもでてきました。消費者の中にはクレジットカードを作成できない人や銀行口座を取得できない人もいます。特に、貧しい層には現金のみしか利用できない人が多く、このような人はキャッシュレス店舗での買い物ができないことになります。一方で、現金払いが可能な店舗は誰もがアクセスできるため、公平性の点でキャッシュレス店舗より優れているというわけなのです。

実際に今回の提案をあげたVallie Brown議員は次のように、キャッシュレスビジネスには潜在的な問題があると述べています。

“For many City residents (for example, those who are denied access to credit, or who are unable to obtain bank accounts), the ability to purchase goods and services depends on the ability to pay for those goods and services in cash,” Brown explained in a memo. “This is especially true of the very poor.”
「多くの住民(例えば、クレジットへのアクセスを拒否された人、銀行口座を取得できない人)にとって、商品やサービスを購入する能力は、それらの商品やサービスの代金を現金で支払うことが可能かどうかにかかっています。非常に貧しい人々に特に当てはまります。」

今回、新しくキャッシュレス小売業の規制が提案されているサンフランシスコ以外にも、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、およびフィラデルフィアで、既にキャッシュレス方式のみの小売業に対して禁止措置がとられています。また、ニューヨークにおいても、キャッシュレスの小売業やレストランの禁止が検討されています。

 

海外進出・海外展開への影響

現在さまざまな業種で、レジ対応の無人化が普及しています。一方で、完全無人化(キャッシュレス化)することには懸念もあり、自治体からは新しい規制が提案されることも多くなってきています。したがって、完全無人化(キャッシュレス化)の検討については慎重な判断が求められることになります。当初は2021年までには3000店舗と計画していた「Amazon Go」ですが、規制によって勢いを落とすのか、それとも解決策を講じて普及を進めていくのか、その動向からは目が離せないでしょう。

今回の事例のように、新しいビジネスを始める際には、それに対する法規制について常に注意する必要があります。特に、日本からアメリカへ海外進出・海外展開する場合には、国内との規制の違いも考慮しなければなりません。国内需要に行き詰まり感もあるコンビニ業界や小売業界にとって、海外進出は事業拡大の糸口にもなるでしょう。大きなチャンスをつかむためにも、海外で事業展開する上で必要な情報を十分に収集し、日々更新されるルールに気を配ることが大切です。
企業側の技術革新や新サービス展開と政府・自治体側の規制との間で、キャッシュレス化社会がどのように進んでいくのか、今後も注目です。

 

※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。

 

 

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