現地法人運営

海外進出・海外展開:アメリカ会社設立(カリフォルニア州を例として)

by 弁護士 小野智博

はじめに

本稿では、一般的な日系企業がアメリカのカリフォルニア州において株式会社(CCorporation)を設立する際の一連の手続きや申請方法について説明します。
どの行政機関にどのような申請や書類を提出するのか、その連絡先やフォーム等の具体的な情報も、可能な限り記載しています。
カリフォルニア州での事業展開を計画される際、効果的に活用いただければ幸いです。

 

会社設立の手続きの流れ

会社形態の選択

今回は、日系企業の進出形態の中で最も多い「C Corporation」についてご説明します。
これは、わかりやすく言えば日本の株式会社のアメリカ版で、会社設立する地の州法に従って登録する必要があります。

 

会社設立地域の選択

今回は、一般に日系企業になじみのあるカリフォルニア州を例に、同州における会社設立のケースをご説明します
 

会社名の決定

会社を設立する州において、同じ或いは類似の会社名を登録することはできません。設立手続以前に、自らが使用を希望する会社名が利用可能であるかどうかについて、州に直接確認しておく必要があります。なお、州のWeb サイトから調査することも可能ですが、登録申請中の会社名に関しては調べることができません。

調査の結果、希望の会社名が既に使用されている場合には、異なる社名を利用するか、社名を買い取るなどの対策が必要になります。そのリスクを避けるためにも、名称を決めたら速やかに登録を行うか、費用はかかりますが、会社名の予約も可能ですので、ご検討ください。

 

定款の登録

会社名が決まりましたら、選任された発起人が基本定款を作成し、California Secretaryof State Office(以下、「SOS」といいます。) に定款を登録します。その際の必要事項は、会社名、事業目的、資本金、役員名、会社住所、訴訟書類等送達受領代理人、授権株式数となっています。特にポイントになる2 点について以下にご説明します。

① 事業目的:「Any lawful activity(法的に許容される事業全て)」と記載するのが一般的です。

② 送達代理人:正式には「訴訟書類等送達受領代理人=Agent for Service of Process)」ですが、一般に「送達代理人」と呼ばれています。送達代理人とは、会社が訴訟提起を受けた場合などに、その会社を代表して訴訟に関する書類やその他重要書類を受け取る役割を果たします。州に登録されている専門の代理人会社を指定することもできます。

現在では、インターネットで申請できる州も増えています。定款登録及び申請料を支払い、書類が認可されれば会社設立は完了したことになり会社は存在することになります。

州から証明書を受領するまでの期間は1週間ほどです。

余談ですが、初めてのアメリカ進出の場合、銀行口座開設に会社責任者の個人納税者番号(ITIN)が必要になることが多いため、こちらも会社設立後すぐに申請しておくことをお勧めします。

 

取締役の選任と取締役会の開催

会社設立後、発起人が株主総会を開催し、その株主総会で取締役を選任することになります。実務上は取締役会に代わる書面決議 (Written Consent in lieu of Board of Directors Meeting) を利用することも可能です。第一回取締役会での一般的な決決議事項は下記のとおりです。

① 定款登録の報告と承認
② 会社規則 (Bylaws) の採択
③ 株券様式の決定
④ 会社印の決定 (カリフォルニア州では不要)
⑤ 本社住所の決定
⑥ President、Secretary、Treasurer の選任(3役を1人が兼任可)
⑦ 銀行口座開設の権限がある役員の決定
⑧ 会計士の選任
⑨ 会計年度の選択
⑩ 株式発行
⑪ 設立費用負担の承認

 

Statement of Information の申請

カリフォルニア州で事業を行う会社は、年に1回会社住所、取締役・役員・送達代理人の氏名及び住所をSOS へ届け出る義務があります。定款登録した後にSOS から申請用紙が送付されますので、取締役や役員の名前、住所を記載してSOS に返送します。オンラインでの申請も可能です。カリフォルニア州の場合は、設立後90 日以内に初回の申請を行い、その後は年に1回設立した月の末日までに申請する義務があります。

 

連邦雇用者番号(EIN) (=Federal Tax ID ナンバー)の取得

これは、銀行口座の開設や官庁への手続きの際に必要となるナンバーです。連邦雇用者番号 (EIN) はFederal Tax ID ナンバーとも呼ばれており、取得するためには、フォーム「SS-4」(http://www.irs.gov/pub/irs-pdf/fss4.pdf) をIRS(アメリカ合衆国内国歳入庁:郵送の宛先はhttp://www.irs.gov/file/article/0,,id=111138,00.html を参照)に提出します。

米国内に住所を持っている事業の場合はオンライン申請も可能です(https://sa,www4irs.gov/sa_vign/newForumSS4.do)。

申請時に記入する内容は、会社名、住所、役員名とその住所、ビジネスの概要です。この際に会社責任者のSocial Security Number (以下、「SSN」といいます。)が必要です。

SSN がない場合は、SSN に代わる個人納税者番号 (ITIN: Individual Tax Identification
Number) を取得する必要があります。

 

株式の発行

手続きの流れは下記の通りです。

① 取締役会による書面決議 (Written Consent in lieu of Board of Directors Meeting)を用意し、一株の金額、売却する相手先名、株数と合計の売却金額を記載します。
一株をいくらにするかの規制はなく、現在カリフォルニア州では額面 (Par Value)、無額面 (No par value) の概念はありません。
② 株式引受契約書を用意し、株の受領者、株数、金額を記載します。この目的は、証券法上の例外にあたるかどうかの確認です。
③ 株式発行の届出( 25102(f) の申請) をカリフォルニア州のDepartment of Corporations に申請し、申請料を支払います。この申請はオンラインで行います(http://www.corp.ca.gov/pdf/25102f.pdf)。
④ 会社の銀行口座に出資金を入金します。
⑤ 株式を発行します。一般に使用されているMinutes book set (Corporate kit とも言います) には会社印と株式の様式も含まれています。発行の際には、株式数や株
主の名前の記載し、役員2名が署名します。

 

州雇用者番号の取得(State of Tax ナンバーの取得)

従業員を雇用し給与を支払う場合は、会社はその旨をカリフォルニア州のEmployment Development Department(以下、「EDD」といいます。)に報告し、雇用者用のTax ID ナンバーを取得する必要があります。また、雇用者は従業員給与から「失業保険」及び「障害年金の掛け金」を源泉徴収してEDD に払い込むことが義務づけられ、その際 State Tax ID ナンバーが必要です。オンライン申請を行うか(https://eddservices.edd.ca.gov/ezreg/iAppsShared/EZRegHomePage.aspx)、申請書DE-1 (http://www.edd.ca.gov/taxrep/de1.pdf 農業、非営利団体の場合は各々別の書類が必要) をEDD に郵送またはFAX しState Tax ID ナンバーを取得します。EDD では源泉徴収に関するセミナーを開催していますので参照ください(http://www.edd.ca.gov/taxsem/)。

 

米国商務省へBE-13 又はBE13 Exemption Claim (BE-13 書類提出免除)の提出

アメリカ法人の10%以上の議決権を持つ所有を外国人または外国の法人が取得する場合、その会社は毎年会社の財務状況を経済分析局 (Bureau of Economic Analysis) に届け出る必要があります。初回にBE13 (http://www.bea.gov/bea/surveys/be13.pdf)を提出します。アメリカで100%子会社を設立すればこの義務が課せられますが、アメリカの会社の総資産価値が300 万ドル以下で、所有する土地が200 エーカー未満の場合は、BE-13 Exemption Claim (http://www.bea.gov/nea/surveys/be13supc.pdf) を提出することができます。

 

ビジネスライセンスの取得

事業内容によっては、州・郡・市などからビジネスライセンスの取得が必要となる業種もありますので、事業を行う州(今回はカリフォルニア州)において事業ライセンスが必要かどうかを州のウエブサイトで調べたり、現地の専門家に確認することをお勧めします。事業税額は市により、またビジネスの規模により異なります。

 

Fictitious Business Name の登録

Fictitious Business Name とは、州に登録している正式な会社名以外のビジネス上で使う略称や通称のことをさします。例えば、レストラン経営をする会社が新規開店に向けて、本来の会社名の代わりに別の名前を使う時にはその略称・通称名をカウンティー(郡)に登録する必要があります。登録する際には、新聞等にFictitious Business Name を使用する旨の通知広告を出した証明書が必要です。カウンティーによっては更新手続きが義務づけられている場合もありますので注意が必要です。

 

Business Property の申請

事業目的とした全ての器材、備品、必需品などをカウンティーのASSESSOR’S OFFICE に申請します。

 

販売許可(Seller’s Permit)の取得

販売許可 (Seller’s Permit) (http://www.boe.ca.gov/pdf/boe400spa.pdf) とは、カリフォルニア州内で物品販売する事業に求められる許可です。販売許可の申請は州税務当局(Board of Equalization)に対して行います。物品販売する場合は、販売税を徴収して税務当局に支払う義務があります。販売するとき、販売税の支払を避けたいとき、仕入れ時にも販売許可は必要です。ただし、カリフォルニア州内で購入したものを、全てカリフォルニア州外で販売する場合には、必要ありません。

 

その他

連邦、州、郡、市それぞれにおいて業務上ライセンスが必要かどうかを弁護士等の専門家に確認してください。カリフォルニア州に関する情報は、www.calgold.ca.gov で確認が可能です。従業員を雇用する場合は、雇用法に従い従業員への告知や社内の掲示板等での法的義務がありますので、http://www.dir.ca.gov./wp.asp にてご確認ください。

手続きに関する一般的な質問事項

日本に住みながらアメリカで会社設立が可能か

アメリカに住んでいなくても、会社の登録住所を確保すれば、日本にいながらアメリカで会社を設立し、事業運営することが可能です。会社の取締役 (Director) 、役員 (Officer)もアメリカ国籍あるいはアメリカの住人でなくても構いません。

 

一人で会社設立が可能か

ほとんどの州(カリフォルニア州含む)で一人でも会社設立は可能です。一人で必要な要職(3役)を兼任できます。

 

会社設立に要する期間は

法的には、定款の登録を州政府へ申請し、定款が正式に認可されれば会社が設立されたことになります。カリフォルニア州では必要な情報と資料が揃っていれば、申請手続自体は最短1日で可能ですが、実際に事業活動を開始するためには、その他各種書類の申請や当局への登録、銀行口座開設、ビジネスライセンスの取得等がありますので、全ての作業を完了するには最低でも1ヶ月はみておくべきでしょう

 

会社設立に要する費用

手続きは、法律事務所や会社設立業者などへ依頼するのが一般的ですが、どの手続きまで依頼するのか、設立後のフォロー体制はどうなっているのか等によって費用は異なります。

 

他州で会社設立してカリフォルニア州で事業を行う場合の所得税

例えば、ネバダ州で会社を設立し、ネバダ州だけで事業を行うのであれば、他の州に対して州所得税を支払う必要はありません。しかし、カリフォルニア州や他州で事業を行うのであれば、事業を行う州に登録し、その州で発生した利益には州所得税が課されることになります。また、その州で登録をしていない場合はその州で銀行口座を開くこともできない場合がありますので注意が必要です。

 

日本で事業を行う場合のアメリカでの税金について

設立した会社が主に日本で事業を行う場合であっても、アメリカでの税に関する届け出が必要になる場合があります。ただし、日本で納税している場合は、アメリカで控除される場合がありますので、必ず確認するようにしましょう。

 

土地所有の可否について

外国企業(外国人)も、アメリカでの会社設立に伴って不動産の取得、賃貸を行うことができます。外国企業(外国人)の不動産取得は、米国内での営業あるいは「恒久施設」の取得とみなされる場合がありますので、課税関係の確認を必ず行いましょう。通常は米国内に事業目的に沿った現地法人を設立し、そこを通して不動産の取得、賃貸を行います。

 

資本金に関する規制について

資本金について最低額などの規制はありませんが、ビザ取得や融資、優遇措置等を受ける場合には、種々の条件を満たす必要があります。ビザ取得のためには、在留資格の種類によりますが、資本金は最低でも10 万ドル、できれば20 万ドル程度あることが望ましいとされています。

カリフォルニア州で会社設立する際のチェックリスト(まとめ)

最後に下記にチェックリストを記載しますので、参考になれば幸いです。

 

本稿が、アメリカに会社を設立し、海外の最前線でビジネスを行う企業の皆様のお役に立つことができれば幸いです。なお、本稿に記載された内容は変更される場合があり、また、多くの場合に共通する一般的な注意事項を説明したものです。個別のケースについての最新の内容や、その有効性を保証するものではありません。具体的な事案についてご質問がありましたら、下記の当事務所の連絡先までお知らせください。事案に即した効果的なアドバイスをさせていただきます。

 

※本記事の記載内容は、2020年3月現在の法令・情報等に基づいています。

 

 

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