外国人労務マネジメント

外国人雇用:外国人の退職・解雇の手続と注意点

by 弁護士 小野智博

はじめに

企業が雇用している外国人について、退職や解雇の手続を行う場合、外国人にも原則として日本の労働関係法令の適用がありますので、日本の法律に則った適正な手続が必要です。特に解雇の場合は、後に解雇の有効性が問題となった場合に、解雇に至るまでの手続の過程が重要視されますので、適正な過程を踏んで誠実な対応をとることが大切です。本稿では、外国人の退職と解雇について、具体的な手続や注意点をご説明いたします。

 

退職

退職の中にもいくつか種類がありますが、どのような退職理由であっても、必要な退職手続きは速やかに行い、退職に関して外国人本人が行う手続き等があれば、できる限りサポートを行うことが大切です。

 

任意退職

任意退職は、労働者側の意思に基づき労働契約を終了する場合です。外国人の場合は、転職の他、帰国の場合等が考えられます。退職理由によって退職者に確認や説明すべき事項、手続内容も変わってきます。さらに、退職者に渡すべきものもありますので、それらも考慮して、退職の申出を受けた場合は速やかに帰国の有無を確認し、帰国後の連絡先も含めて確認しておくことが大切です。

 

自然退職

自然退職は、就業規則などに休職規定を設けており休職期間を満了してもなお復職できない場合や、行方不明の状態が○○日経過したら退職との規定を設けており当該日数を経過した場合、その他従業員の死亡等が考えられます。休職期間満了による退職の場合、問題なく自然退職とするためには、規定している日数が経過するまでの対応も非常に重要です。休職期間満了の間近になって休職者と連絡をとるのではなく、休職期間中も必ず定期的に連絡をとるようにして下さい。

外国人が休職した場合、必要に応じて自宅を訪問する等、現況の確認や相談にのってあげることが大切です。休職している外国人を会社としてサポートする意味合いもありますが、外国人の現況の確認や、病気等であれば本人が述べている内容と実際に比較し確認するということも重要です。

また、休職期間中は、本人のSNSなど把握している場合には投稿内容や時間などにも注意しておくようにして下さい。本人の状況を把握するのに役立ちますし、休職が必要ないのに休職しているというような思わぬ事実が判明することもあり得ます。

 

合意退職(退職勧奨)

合意退職には、使用者側から労働者に対して退職を勧めたことによって退職に至る、退職勧奨等が考えられます。退職勧奨は、態度や業務の遂行等について、何度も注意や指導を行ったが改善がみられない労働者等に対して行う場合が多いですが、外国人の場合は注意や指導の方法、説明について工夫して意図が伝わるよう気をつけて行うことが大切です。

退職勧奨を行う場合は、その過程が非常に重要になります。外国人労働者の行動には、習慣や常識の違い、認識のズレなどが原因で、必ずしも悪気があって行った行動ではない場合があります。何か問題行動などがあった場合は、放置せず必ず外国人にわかる方法で注意することに加えて、なぜその行為が問題なのかも説明して下さい。退職勧奨に至った過程の記録を全て残しておき、その記録を退職勧奨の際に示して説明できるようにしておいて下さい。

しかし、退職勧奨を執拗に長期にわたって続けたり、脅すようなやり方で労働者を追い詰めることは当然許されるものではありませんし、仮にそのような方法で退職させても、労働者の自由意思で退職に応じたのでなければ退職の意思は取り消すことができます。さらに、使用者側としては不法行為に基づいて責任を追及される場合も考えられますので、退職勧奨を行う場合は十分な配慮と過程を経て行うことが重要です。

 

退職の基本的な手続

 外国人は、退職後に帰国して日本を離れてしまう可能性がありますので、帰国の有無や退職理由等を確認し、退職手続を速やかに行いましょう。また、会社を離れた後に外国人労働者自身が行わなければならない手続等もありますので、外国人労働者へ説明を行って下さい。

退



 届出書類

 提出先

 厚生年金・健康保険被保険者資格喪失届

 事業所管轄の年金事務所

 雇用保険被保険者資格喪失届及び離職証明書又は外国人雇用状況届出書

 事業所管轄のハローワーク

 給与所得者異動届出書(住民税)

 労働者の住所がある市区町村

基本的な届出については上記の通りですが、任意の手続や外国人労働者へ交付する書類などについては下記の通りです。

 

(1) 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届

提出書類:健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届

提出期限:事実発生から5日以内

提出先:管轄の年金事務所

添付書類:健康保険被保険者証

提出方法:電子申請、郵送、窓口

健康保険被保険者証は手続の際に添付が必要ですので必ず受領して下さい。何らかの理由で受領できなかった場合は、「健康保険 被保険者証回収不能届」を一緒に提出して下さい。

 

(2) 雇用保険被保険者資格喪失届

提出書類:雇用保険被保険者資格喪失届、離職証明書(本人が離職票不要の申出をしている場合は不要)

提出期限:被保険者でなくなった事実のあった日の翌日から起算して10日以内

提出先:管轄のハローワーク

添付書類:雇用保険被保険者資格喪失届のみを提出する場合は添付書類は求められません。離職証明書を提出する場合は賃金台帳、離職理由がわかる書類などが基本的に必要となっています。

 雇用保険被保険者喪失届の14欄から18欄(2019年10月末現在)までは、外国人の場合記入しなければならない箇所です。

ローマ字名や在留資格等、全ての項目を記載して提出して下さい。

離職証明書については、日本人と全く同じ記載方法で、外国人とうい理由で特に追加事項等はありません。使用者側と労働者側が主張する離職理由が異なる場合や離職理由によっては、ハローワークから内容の確認をされることがありますので、経緯などを正直に説明し、追加の資料などを求められた場合は提出して下さい。資格喪失の手続きが完了すればハローワークから離職票1と2を受領しますので、必ず退職する労働者に渡して下さい。この離職票は失業給付の受給手続きの時等に必要となりますので、転職先が決まっている場合は、離職証明書の発行は必要ないとする方もいると思います。ただ、外国人は離職票の内容や用途についてご存じない方も多くいると思いますので、まずは外国人に離職証明書について説明することが大切です。

なお、離職証明書にある退職者の署名、押印欄ですが、離職証明書を発行した時にはすでに離職して出社することがなく署名、押印を行ってもらうことが難しい場合もあると思います。その場合は、その旨を署名欄に記載し、事業主の押印をすることになります。

 事業主の捨印を枠外に押印しておくと、添付書類と照合して内容に間違いがある場合、ハローワークの方で修正を行ってもらうことができます。

 

(3) 外国人雇用状況届出書の提出

雇用保険被保険者ではない外国人が辞職した場合は、採用時と同様に「外国人雇用状況届出書」を退職した翌月の末日までに管轄するハローワークへ提出する必要があります。

在留資格の記載欄について、在留資格が「特定技能」または「特定活動」の場合には在留カードやパスポートの上陸許可認証に記載された通りの内容を記入して下さい。

 例:特定技能1号(介護)、特定活動(建設分野)など

この届出は短期の就労や留学生のアルバイトなどの場合でも必要ですので必ず行いましょう。

なお、届出期限内に同一の外国人の雇入れと離職が複数回あった場合等は雇入れと離職の届出を同一の用紙にて同時に行うことが可能となっています。

 

(4) 給与所得者異動届出書(住民税)

住民税は基本的には事業所にて特別徴収されることになっていますが、退職日が1月から4月の間にある場合、残額は一括徴収が原則になっており、最終給与が少ないなどの理由で一括徴収できない場合は、普通徴収への切替を選択して届出を提出する必要があります。退職日が6月から12月の間にある場合は、希望者のみ一括徴収できます。

転職等で、新しい勤務先でも特別徴収を希望する場合は、届出書の該当欄を記入の上、提出すれば引き続き新しい勤務先でも特別徴収とすることができます。

一括徴収する場合は、退職者に押印してもらう箇所がありますので、住民税の手続きについては、退職がわかってからすぐに説明、確認をしておくようにして下さい。残額を最後の給与から一括徴収する場合は、手取りの金額がかなり減ってしまうことも考えられますので、税額についても併せて説明をすることが大切です。

 

(5) 誓約書の作成

事業所の備品の持ち出しや借用物は全て返却済みであること等を確認したり、また知り得た秘密情報を他へ漏らさないこと、一定期間内、競業で就業禁止をする場合などのためにも誓約書を作成し、署名、押印してもらっておくことをお勧めします。

外国人の場合、内容を理解しているかを確認するためにも、署名、押印してもらう前に、誓約書に記載されている項目をひとつずつ確認しながら説明していくとよいと思います。

必ず署名、又は記名と押印をもらうようにしましょう。

 

(6) 退職証明書の発行

退職証明書は、必ず発行しなければならないものではありませんが、在留資格の変更の手続や、社会保険の加入手続きなど退職後の手続きの際に証明書類としても提出できますので、発行して退職する外国人に渡しておくと便利です。

退職証明書は決まったフォームはなく、一般的には使用期間、業務の種類、職位、賃金、退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)などを記載しますが、労働者の請求しない事項については記入してはならないとされています。

しかし、外国人が転職する場合や起業する場合などは、在留資格の変更の手続きを入国管理局で行う必要があり、業務の種類、入退社日等については、在留資格の更新手続などに必要な情報であり外国人労働者本人の経歴の証明ともなります。そのため記載しないで欲しいとの要望があっても記載しておく方が外国人本人のためにもなることなどを説明し、必ず了解を得て、記載するようにして下さい。外国人には用途や記載されている内容などを説明することが大切です。

各機関へ提出することが考えられますので、できる限り英語を併記しましょう。

 

(7) 源泉徴収票発行

転職する場合は、次の勤務先へ提出が必要とされていたり、国民年金の加入手続、在留資格の更新時の証明書としての提出することができます。退職日は必ず記載し、退職者本人に渡して下さい。

 

(8) 退職所得の受給に関する申告書(退職金を支給した場合)

退職金が支給される場合、退職所得控除等があり税負担が軽く抑えられていますが、「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合は、一律20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収され、確定申告をして精算することになってしまいます。しかし、提出してもらっておけば、退職者は原則として退職金について確定申告をする必要はありません。

 国内において退職手当等の支給を受ける居住者は、この申告は行わなければならないとされていますので、退職金を支給した場合は、所得税等の説明を行って提出してもらって下さい。

 

(9) 健康保険資格喪失証明書

退職後、退職者が国民年金や国民健康保険の加入手続きをする時等に提出する書類です。しかし、国民年金等への加入手続きについては、離職票、退職証明書や退職日の記載がある源泉徴収票などで代替できますので、健康保険資格喪失証明書がなくても行うことはできます。また、年金事務所にて発行を行っている証明書ですので、会社で必ずしも発行しなければならない書類ではありません。ただ、外国人が年金事務所に発行してもらいにいくのも面倒ですから、健康保険資格喪失証明書の内容や用途等について説明し、本人が希望すれば会社で発行してあげると親切です。

 

退職する外国人労働者へ伝えておくべきこと、注意点

(1) 退職願について

 退職願は必ず提出してもらうようにして下さい。退職の意思表示の方法については、法律では規定されていませんので、口頭ですることもできますが、退職願は提出するよう就業規則等で規定し書面にて残せるようにしておいて下さい。口頭だと後から確認できませんので、書面の他にメール等、使用者側に意思が伝わる方法で、内容が記録として残るものであれば大丈夫です。受領した時は、退職日、名前等、記載すべき事項が記載されているかも確認して下さい。

(2) 国民年金と国民健康保険への加入について

 退職後も日本に居住し、当分勤める予定がない、もしくは次の職場で厚生年金の適用がない場合、国民年金と国民健康保険への加入が必要になりますので、退職する外国人労働者に説明を行い、速やかに手続きを行うよう伝えて下さい。年金については、事業所が厚生年金の資格喪失届をすれば、年金事務所にて退職した外国人が新たに厚生年金か国民年金に加入する必要があることを把握できるため、ある程度期間があいても加入がされなければ加入について退職した労働者に直接問い合わせがきます。

 しかし、国民健康保険は年金事務所との連動はないため、加入しなくても何の連絡もきません。外国人の中には、病気になる心配もないし、保険料がもったいないからという理由で加入せず、病院に行く間近に加入の手続を行えばよいと考える方もいると思います。

国民健康保険は、前に加入していた保険制度の資格喪失日に加入する必要があり、保険料は資格を取得した日が属する月から徴収されます。最長で過去2年は遡って保険料を徴収するとされていますので、未加入の期間が長ければ、後からまとめて支払わなければならない金額も増えてかなりの負担になります。

そういうことが起こらないよう退職の時に、年金と健康保険の加入義務や手続について外国人に必ず説明をすることが大切です。

 なお、厚生年金から国民年金になった場合、扶養する配偶者がいれば当該配偶者の国民年金第1号の資格取得届が必要なことも説明しましょう。

(3) 失業給付(基本手当)を受給する場合

 退職する外国人が次の職場が決まっておらず、日本に残ってまだ職を探すという場合は、失業給付について説明を行いましょう。ハローワークには失業給付の手続きの冊子があり、厚生労働省のホームページでも同様の内容が掲載されていますので、外国人が退職する場合は、本人に退職前に説明できるように準備しておきましょう。

 失業給付は、離職理由によって給付の開始時期や限度日数も変わってきますし、給付するには定期的にハローワークに出向くなど決まりがありますので、いつまでに何をどこへ持っていけばよいかなど手続について、外国人にわかるように説明してサポートするようにしてあげましょう。

(4) 「契約機関に関する届出」

 所属している機関の名称が変わった場合や所属機関の所在地が変わった場合、または所属機関が消滅した場合は、事由が発生した日から14日以内に入国管理局へ「契約機関に関する届出」を外国人本人が提出する必要があります。

法務省のホームページ(下記URL)から届出用紙がダウンロードできますし、郵送による届出も可能となっています。

契約機関に関する届出(高度専門職1号イ又はロ,高度専門職2号(イ又はロ),研究,技術・人文知識・国際業務,介護,興行,技能又は特定技能の在留資格を有する中長期在留者)

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri10_00015.html

届出内容の説明をすると同時に、必ず届出を行うよう伝えて下さい。

(5) 転出届(市区町村)

 外国人が帰国のため日本に住所を有しなくなる場合、住所のある市区町村で転出届の提出が必要になります。外国人の場合は、手続時に在留カード等の提示が必要とされています。必要書類や受付期間等詳細については、届出をする市区町村によって異なる場合がありますので、必ず確認してから行うよう説明を行い、必要に応じて手続きのサポートを行うようにしましょう。

(6) 脱退一時金

 脱退一時金は、老齢年金を受ける権利がない(受給資格期間が10年に満たない)外国人に対し、保険料を納めた期間または加入期間に応じて、一定金額が支給される制度です。

解雇

解雇もいくつかの種類があり、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇等に分けることができます。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)と規定されており、解雇は厳しく制限されています。また、労働基準法第19条で「業務上負傷し又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間」、「女性が産前産後の休業する期間及びその後30日間」と解雇をしてはならない具体的な場合が規定されており、その他の法律でもいくつか規定されていますのでご注意下さい。

 解雇を通知した労働者が納得して解雇を受け入れて辞職すれば問題が発生する可能性は少ないですが、労働者が解雇の無効を訴えたならば、解雇の有効性が争われることになり、解雇が認められない場合もあります。解雇権の乱用があったか否かについては、解雇権の乱用ではないとの主張立証を使用者側に強く求められる傾向があるため、解雇する場合には十分な過程を踏んで行う必要があります。

 

普通解雇

普通解雇は、能力不足や問題行動の繰り返しあるいは休職期間満了による解雇などの場合に行われることが多くあります。外国人の場合は、下記のような場合が考えられます。

(1) 在留資格の取得や更新ができない場合

外国人は有効な在留資格を有していなければ日本で働くことはできません。在留資格の取得ができるよう万全の準備をして申請することが重要ですが、万が一、在留資格の取得や更新ができなかった場合に備えて、労働契約に「本労働契約は、日本で就労可能となる在留資格の許可を条件として効力を有する」等の内容の規定をしておくことも重要です。また、労働契約がいったん成立した後に解雇するという対応も考慮して、就業規則の解雇事由に「外国人労働者の在留資格が不許可となり就労できなくなった場合」等の内容を規定しておくことも重要です。

(2) 日本人の配偶者の在留資格で滞在している外国人が離婚した場合 

就労制限がない「日本人の配偶者」の在留資格で就労している外国人が離婚をした場合、現在従事している業務に適する就労の在留資格に変更しなければなりません。しかし、経歴などが当該在留資格取得要件に合致しないため在留資格が取得できないという可能性もあり、その場合は配置転換が必要となることもあります。それでも、新たな在留資格が取得できない場合には、労務の提供を受けることができなくなりますので、解雇せざる得ない場合も考えられます。日頃から外国人労働者とはコミュニケーションをとり、生活状況をできるだけ把握しておくと同時に、家族の状況に変化があった場合は、必ず使用者側に知らせるように周知しておき、外国人の環境の変化にすばやく対応できるようにしておくことが重要です。また、個々の外国人の能力や経歴などを踏まえて、各人が行える業務の範囲の拡大や可能性についても定期的に考えておく必要があります。

(3) 行方不明、休職期間満了による解雇の場合

行方不明や休職期間満了の場合、自然退職ではなく解雇と規定している事業所もあるかと思います。その場合は、自然退職の場合よりも手続きが多少煩雑になります。解雇の意思表示の方法は、特に法律で規定はされていませんが、労働者が了知し、または知り得る方法でなければなりません。行方不明等で本人と連絡がとれない場合には、簡易裁判所にて公示送達の手続きをとる方法が考えられます。

この場合は、官報等へ解雇の意思表示が掲載されてから2週間経過した時に解雇の意思表示が労働者へ到達したものと考えられ、その意思表示が到達されたとされる日から30日の解雇予告期間を経過した日が解雇日ということになります。そのため解雇することを決定してから実際の解雇日まで日数がかかってしまう場合もあります。

近年、外国人留学生や労働者が、突然姿を消してしまうケースが増加しています。自ら姿を消した場合もありますが、事件や事故に巻き込まれた可能性もありますので、把握している連絡先に連絡をとることはもちろん、警察及び入国管理局への連絡も行うようにしましょう。また、同僚等にも確認をするなどして、少なくとも就業規則に規定されている満了日までは必ず行方を捜す努力を行うことが重要です。

(4) 試用期間中の解雇の場合

試用期間中の労働契約は、解約留保付労働契約だと解されているので、一般的にはそれ以外の労働者の解雇よりも、解雇が認められやすいとされています。なお、試用期間中の解雇は、14日を超えて引き続き使用した場合に、解雇予告の規定が適用されます。

 

整理解雇

整理解雇は不況や経営の合理化、自然災害等による業務の縮小、人員削減等のために行われますが、その有効性は、一般的に下記の4つの要件が検討されます。

①経営上の必要性②解雇回避の努力③人選の合理性④労使間での協議

整理解雇の場合でも、外国人という理由で雇用の調整弁にすることなく、有効性の要件について、日本人と同等の基準で判断を行い、誠意のある対応を行って下さい。

 

懲戒解雇

重大な違法行為など事業所に与える影響が極めて大きい場合などに行う最も重い処分となります。窃盗、傷害等刑法犯に該当する行為など極めて悪質な規律違反等を行った場合などが考えられ、就業規則等に具体的に明示しておかなければなりません。

また、業務とは関係ない私生活上で行われた行為であっても、その行為により会社の名誉が大きく傷つけられたり、社会的評価を著しく低下させたなど客観的に認められる理由があれば、懲戒解雇の事由になり得ます。

 

期間の定めのある者(有期労働契約)の解雇(雇止め)

有期労働契約については、今まで契約の更新を何度か行っていたのに、更新することなく期間満了で突然退職させるなど、雇止めのトラブルは多く存在しています。外国人に対しても安易な雇止めを行ったり、必要以上に短い期間に区切った契約を何度も繰り返すようなことがないよう十分に配慮して下さい。

(1) 雇止めの有効性

 雇止めの有効性については、下記のような要素で判断されます

ア. 業務の客観的内容 従事している仕事の種類、内容、恒常性や臨時性についてなど

イ. 契約上の地位の正確 地位の基幹性や臨時性

ウ. 当事者の習慣的態様 継続雇用を期待させる使用者側の言動の有無や程度

エ. 更新の手続き・実態 契約更新時の手続きの厳格性の程度、方法、更新の可否の判断方法等

オ. 他の労働者の更新状況 同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無

カ. その他の要素 勤続年数や年齢等の上限の設定等

(2) 雇止めの予告

あらかじめその契約を更新しない旨が明示されている場合を除き、下記の3つの場合には、雇止めについても、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までにその予告をしなければならないとされています。

ア. 有期労働契約が3回以上更新されている場合

イ. 1年以下の契約期間の有期労働契約が更新または反復更新され、最初に有期労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合

ウ. 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

(3) 有期労働契約の契約期間中の解雇について

有期労働契約の契約期間中の解雇については、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」(労働契約法第17条第1項)と規定されています。基本的には契約期間が満了するまでの間、労働者を解雇することはできないとされ、期間の定めのない労働契約における解雇よりも厳格に判断される傾向があり、解雇が厳しく制限されています。

 

解雇の手続

前述の「第1 4退職の基本的な手続」に加えて、解雇の場合は下記の手続も必要となります。

 

(1) 解雇予告

解雇をしようとする場合、少なくとも30日前に解雇を予告しなければならないとされ、解雇予告をした次の日から起算して30日後が解雇日となるように予告をしなければなりません。日数が不足する場合、その足りない日数分の平均賃金を支払う必要があります。

解雇予告手当の平均賃金ついて、下記の通り最低保障が設定されています。

ア. <原則>

過去3カ月間の賃金の合計÷過去3カ月間の暦日数

イ. <賃金の一部又は全部が日給制、時間給制、出来高制の場合の最低保障額>

過去3カ月間の賃金の合計÷過去3カ月間の労働日数×0.6

なお、賃金には通勤手当等の諸手当も含みますのでご注意下さい。

 

(2) 解雇予告除外認定

解雇予告をすることが原則ですが、下記の2つの場合、所轄労働基準監督署長の認定を受けて解雇予告を行わずに解雇することができます。

ア. 天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合

イ. 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合

提出書類:解雇制限、解雇予告除外認定申請書(アの場合)、解雇予告除外認定申請書(イの場合)

「労働者の責に帰すべき事由」については、勤務状況、勤続年数、地位、職責等が考慮された上、労使双方から事情の聞取があり、認定するか否か決定がされます。

 

(3) 解雇の理由についての証明書発行

解雇の理由が記載された証明書の発行を請求された場合、事業所は必ず交付しなければなりません。また、労働者が請求しない事項については記入してはならないとされています。

 

解雇の注意点

(1) 解雇に至るまでの記録を残す

 就業規則等に規定している解雇事由が発生したからといって、必ずしも問題なく解雇ができるとは限りません。まずは、解雇の前段階として譴責、減給、出勤停止など何らかの処分を行うことが一般的だと思いますが、そのような処分を行った場合、処分の日付や内容など詳細な経過を時系列でまとめるなどして残しておくことが重要です。改善の余地がみられずやむを得ず解雇となった場合、その記録の内容も解雇理由の説明時に使用するようにしましょう。

(2) 注意の方法を工夫する

 外国人は、言葉の問題もあることから口頭でのあいまいな注意では、特に問題性を認識せず、同じ行動を行ったりすることもあります。何かあればその場で即座に口頭で注意するということももちろん重要ですが、問題行動の内容によっては、改めて面談をして注意したり、書面による反省文等を書いてもらうなどすると、より事の重大性を理解してもらいやすくなります。

(3) 解雇を避けるための努力をする

 外国人労働者を単なる人材不足の暫時の採用や、雇用調整のための採用などと考えず、事業所として人材育成の対象として考えることが大切です。問題のある労働者については、解雇に至るまでに、改善するべき点を具体的に示したり、目標の再設定を行った上で定期的にチェックするなどして教育、指導を行い、能力向上や職場環境になじむよう日本人と同様にチャンスを与えてあげるようにしましょう。それでも効果がでない場合は配置転換や在留資格に差し支えない程度の業務の変更など、解雇を回避するための手段を講じ、事業所として努力をすることが必要です。また、講じた策についての記録を残しておくことが大切です。

(4) 均衡のとれた処分を行う

 解雇をする時には事業所での今までの事例などと勘案して、均衡のとれた処分でなくてはなりません。同じような行動をした労働者に対し、ある者は減給、ある者は解雇など合理的な理由もなく異なる処分は労働者側からみても納得いくものではなく、また在職中の労働者にも不信感を抱かせるものとなります。

(5) 解雇後のサポートが必要な時は協力をする

 「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」にも示されている通り、外国人労働者に対して安易な解雇等を行わないようにし、やむを得ず解雇した場合は、関連企業等へのあっせん等、再就職が可能となるよう必要な援助を行うよう努めることとされていますので、できる限り再就職の支援を行いましょう。また、辞職後も事業所として必要な手続きがある場合には協力をして下さい。

外国人に長期で働いてもらうための具体的な方法

1 在留資格の取得を切り札にしない

 在留資格というのは外国人にとっては重要なものです。特に行える業務に制限がある在留資格ですと、自分が担う業務についての在留資格が取得できるのか、問題なく更新できるかというのは外国人労働者にとって心配の種でもあります。在留資格の手続きを行う立場を利用して外国人労働者に対して業務の適正な範囲を超える要求をするなどの行動をしないように十分気をつけて下さい。

 

2 外国人の相談窓口を設置する

 会社での業務や労務関係だけでなく、外国人のプライベートなこと、例えば個人的な用事で行政機関とのやり取りが必要な時のサポート、日本の生活習慣について、近所づきあいの方法などについて、相談やサポートが受けられる窓口を設置するなどして事業所にいる間だけでなく日本での生活全体をサポートできる体制を整えると、外国人がより働きやすくなり、事業所への信用も高まります。

 なお、窓口となる担当者について、外国人の対応に不慣れな方ですと、せっかく設置した窓口もうまく機能しない場合がありますので、人選には十分注意しましょう。

 

3 外国人から新しい外国人人材を紹介してもらえる可能性もあります

 長期で働いて欲しいと思うような外国人が入社し、会社との関係も良好な場合には、その外国人労働者から新しい外国人労働者を紹介してもらうという人材確保の方法も考えられます。この採用の方法だと求人の手続きなど手間が省ける上、よい人材が入ってくる可能性も高くなりますので、求人の方法として選択肢に入れることができます。

 

最後に

 現在、様々な分野で人手不足が深刻化しており、外国人労働者はなくてはならない存在となっています。国籍別では中国が多いものの、他のアジア諸国の人々の採用も増えてきています。日本人と賃金等において格差をつけず、研修等も受けてもらい、キャリアプランを描けるような労務管理を行うようにしましょう。社内では、外国人労働者へ積極的に話しかけることを心がけ、生活面でのサポートも行うことで、外国人労働者の定着を実現し、事業の成長につなげていって下さい。

 本稿が、貴社の事業を発展させるためのお役に立てますと幸いです。弊所でもご相談をお受けしておりますので、下記の連絡先まで、いつでもご相談ください。

 

※本記事の記載内容は、2020年5月現在の法令・情報等に基づいています。

 

 

当事務所が手掛けた事例

業種で探す ウェブ通販・越境EC  IT・AI  メーカー・商社  小売業 
サービスで探す 販路開拓  不動産  契約支援  現地法人運営  海外コンプライアンス 

ご相談のご予約はこちら

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 ロゴ

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
 03-4405-4611
*受付時間 9:00~18:00