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契約審査・契約書レビュー:契約書はなぜ必要か?契約書の事前チェックでトラブルを回避しよう

by 弁護士 小野智博

ビジネスをする上で、契約書の作成は必要不可欠です。契約書がない、または契約書に不備があると、簡単に大きなトラブルに発展する危険性があるのです。本稿では、契約書にまつわるトラブルを回避するためのポイントについて解説します。

契約書の意味

契約と契約書の違い

契約することと、契約書を作成すことは、同じようで異なります。契約することは、一般的には、下記のような内容をいいます。

・二人以上の当事者の意思表示があること
・相対する立場でお互いの意思を表示すること
・表示したお互いの意思を一致させること
・当事者間において権利や義務を発生させる合意がされること

つまり、契約の成立は、契約書の作成の有無とは無関係なのです。契約書を作成しなくても、意思表示の合致によって、契約自体は成立するのです。例えば、メールやFAX、メモ書きなどの契約書以外の書面、口頭での合意も含まれます。

契約書の必要性

契約自体は口頭でも成立しますが、通常は、契約の際には契約書を作成します。その理由は、以下のようなものが挙げられます。

・当事者間で合意した内容等を明確にし、将来起こり得る紛争を予防する
・訴訟が起こった際に、契約内容の証拠とする
・法律と異なる事項や法律に規定されていない事項について、免責条項や信用リスクに関する条項などを定め、、当事者間におけるリスク配分について合意する

前述のとおり、原則として契約書作成の有無にかかわらず、契約の成立自体は認められます。ただし、裁判になった場合には、その証拠である契約書がない状況では契約の成立が認められる可能性は低くなります。裁判所としては、通常作成されるはずの契約書がない以上、実際には契約をしていなかったのではないかと考えるのです。このような点からすると、将来の紛争を予防するのみならず、紛争が起こった際の被害を最小限にするためにも、契約書の作成は必要なことなのです。

契約書がないと起こりうるトラブル

契約書がないと、さまざまなトラブルが起こり得ます。どのようなトラブルがあるのか挙げてみましょう。

・契約内容について言った、言わないで問題になる
・担当者が変わると相手企業の方針が変わることがある
・突然取引が中止になっても、何の保証もない
・思いがけない要求をされる
・裁判になっても、契約内容が証明できない
・曖昧なまま取引が進み、問題の原因になる
・意図していないのに、相手方に都合のいい契約をしたことになっている

契約書がないとこのような数多くの問題が起こる危険性があるのです。また、トラブルの際に話し合いで解決できない場合には、契約書が一次的な解決の基準になりますが、契約書を作成していないと、裁判等によって解決せざるを得なくなってしまいます。

契約書トラブル

前項では、契約書を作成しないことの危険性について説明しました。しかし、契約書を作成したら安心かというとそうではありません。契約書を作成しても、以下のようなトラブルが起こる可能性があるのです。

・内容を理解しないまま契約書にサインをしてしまった
・明らかに不利な条件で契約書を作成してしまった
・契約書に書かれている内容と違う取引が行われており、トラブルにならないか心配

このような契約書にまつわるトラブルを回避するためには、どのようなことに注意すればいいのか考えていきます。

契約書トラブルの原因とは

契約書とは本来、当事者間での合意内容を文字にして正確に確認し、認識や解釈の相違からトラブルが起こらないようにするために作成されるものです。

しかし、契約書を作成し契約を結んでしまうと、有利不利にかかわらず、その内容にしばられてしまうという一面もあります。そのため、契約書を作成する際には内容を隅々まで確認・把握する必要があるのです。

契約書トラブルの原因には、大きく分けて以下の2つがあります。
・契約内容をしっかりと把握していない
・条項や文章の言い回しなど、契約書の記載自体に不備がある

契約書トラブルを回避するために

では、契約書トラブルを回避するためには、どのような対策ができるのでしょうか。

まずは、契約書を作成したら、しっかりと内容を読み込み、理解することが大切です。そして、気になる部分があれば、納得できるまで当事者間で話し合いを重ね、合意の上で契約書を作成しましょう。

しかし、専門の知識のない人が契約書に書かれている全ての内容を理解するのは難しいものです。必要に応じて弁護士等の専門家に依頼することも契約書トラブルを防ぐ有効な方法です。弁護士に依頼をすることで、契約書の作成やレビュー、サポートや助言をしてもらうことができます。

また、無料のひな型を使いまわすことは思わぬ契約書トラブルの原因となります。ひな形はあくまでひな形であり、内容をしっかりと確認した上で、事案に合わせて、自社のリスクを下げるように適切に修正して利用する必要があるのです。

契約書のチェックポイント

契約書を作成する上で特に注意すべきチェックポイントについて解説します。

契約書を事前にチェックしなければならない理由

契約書は、一度作成し署名・押印してしまうと、たとえそれが自社に不利なものであっても、その内容に縛られてしまいます。また契約書の内容は、当事者間で使用するのみならず、裁判でも証拠になります。そのため、契約書にサインをする前に内容をしっかりと確認する必要があるのです。

契約締結前に必ずチェックしたいポイント

契約書を作成したら、必ずチェックしたいポイントを紹介します。どのように記載することが自社にとって有利なのかという視点で確認しましょう。

・代金はいつ支払うのか、所有権はいつ移転するのか
商品を買う側の場合には、「本商品は、本商品の引渡時に甲から乙に移転する。」
商品を売る側の場合には、「本商品は、代金完済時に甲から乙に移転する。」
と記載しておくと有利です。商品の引渡と支払に時間的なずれがあることなども踏まえ、できるだけ具体的に記載します。

・どのような権利が移転するのか
例えば、成果物を提出する請負契約であれば、請負人の側(甲)としては、下記のように記載することが考えられます。
「甲と乙は、本契約に基づく成果物に関する権利に関し、本契約成立前に甲が有していた権利については、甲に留保されることを確認する。」
移転する権利を明確にしておかないと、移転する権利の範囲が意図する以上に大きくなってしまう可能性があるため要注意です。

・どのように受注・発注を行うのか
例えば、継続的な商品売買に関する基本契約において、売主(乙)としては、下記のように記載することが考えられます。
「甲が乙に対し、本商品を発注する場合には、甲の定める注文書に商品の数量、単価を記載し、乙に書面を郵送、FAX又はEメールによって送付する方法によって行う。この場合、乙が当該個別契約を受注する旨の乙所定の書面を甲に返送(方法は前同様とする)した時に、当該個別契約は成立するものとする」
発注書を受け取った時点で受注したものと見なすといった、相手方にのみ有利な記載があれば要注意です。

・瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間・範囲などについて
商法第526条1項により、買主が売買の目的物を受領したときは、遅滞なく検査をしなければならない、また検査により瑕疵や不足があることを発見した場合は売主に対し、その旨を直ちに通知しなければならない、と定められています。
また、同条2項前段により、買主がこの検査・通知を怠ると、売主に対し、瑕疵があることを理由とした契約の解除や損害賠償請求、代金減額請求をすることができなくなる、と定められています。
直ちに発見することができない瑕疵とは、売買契約において通常用いられる合理的な方法で、かつ合理的注意を尽くしても発見できなかった瑕疵をいいます。この法律に反しない範囲で、具体的な日数を指定する・権利の範囲を記載しておくことで、トラブルを予防することにつながります。

・損害賠償額の証明について
「乙が本契約に違反した場合には、甲は乙に対し、本契約に基づき売り渡す予定の本商品の累計額の2倍相当額を損害とみなし、他に立証を要することなく損害賠償請求を行うことができるものとする。」
具体的に損害額を証明することが難しいケースでは、損害賠償請求を行うことが主に想定される当事者は、損害の額を具体的に記載しておいた方が賢明です。

・弁護士費用の負担について
主に損害賠償を請求することが想定される当事者(甲)としては、下記のような記載をすることが考えられます。
「乙が本契約に違反した場合には、乙は甲に生じた一切の損害を賠償する義務を負い、この場合、甲が当該紛争解決に要した弁護士費用その他の専門家費用については、全て乙の負担とする。」
弁護士費用に関して、当然損害を与えた側が支払うと思われがちですが、実際にはそのような義務はないため、明確に記載しておくことが重要です。

契約書の見直し・修正

契約書は一度作成したらそれで終わりではありません。継続的契約や更新が必要な契約については、契約書の見直しや修正が必要です。また契約期間中であっても、取引形態の変化などがあれば、都度見直す必要があるのです。

実際にあった契約トラブルの事例

実際にあった契約トラブルを知っておくことで、起こりうるトラブルを予測できますので、以下のような事例を参考にしていただければと思います。

・契約書作成を怠ったためにトラブルになった
契約書を作成せずに取引をすることで、大きなトラブルとなることがあります。自社より大手の企業との取引だったので信用してしまった・古くからの付き合いで安心していたなどという理由で契約書を作成しないケースがあります。

例1 取引の最中で一方が倒産してしまい、損害が生じたが何の保証もなかった
例2 取引の対象について双方の理解が異なり、結局ストップしてしまった
例3 言った・言わないでトラブルになった
例4 取引に関連する費用をどちらが負担するかが明確になっておらず、トラブルに発展した

・契約書の内容に不適切な契約条項があった
契約書を作成したからといって、全てが契約書に記載したとおり有効になるとは限りません。法律に違反した不適切な契約条項があれば、無効になってしまうこともあります。

例1 契約期間中に解約すると解約一時金を支払うとの条項が無効になってしまい、期待した利益が得られないどころか赤字になってしまった
例2 契約書に意図せず違法な内容が含まれており、契約自体が無効になってしまった

・契約書の内容が曖昧だった
契約書の記載方法が曖昧だったために、双方の理解が異なりトラブルになってしまうことがあります。

例1 支払に関する規定が曖昧で、代金の回収が引き延ばされてしまった
例2 「相当程度の」などの曖昧な表現があり都合のいいように解釈されてしまった

おわりに

このように、契約書は作成すること自体が目的なのではなく、大切なのはその内容です。契約書は細部まで確認して作成する必要があり、安易に雛形を流用したり、契約のリーガルチェックを怠ると大きなトラブルに発展する可能性があるため、注意しましょう。

本稿が、契約書を使いこなし、最前線でビジネスを行う企業の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
なお、本稿は多くの場合に共通する一般的な注意事項を説明したものであり、個別のケースについてその有効性を保証するものではありません。具体的な事案や契約書、契約審査や契約書レビューの方法について弁護士にご質問がありましたら、下記の弊所連絡先までお知らせください。事案に即した効果的なアドバイスをさせていただきます。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
※本稿の記載内容は、2020年11月現在の法令・情報等に基づいています。

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