契約支援

契約審査・契約書レビュー:アメリカ企業と有効な契約を締結するポイント(カリフォルニアを中心に)

by 弁護士 小野智博

はじめに

日本企業が海外進出する際には、ビジネス文化の違いに戸惑うこともあるでしょう。現地の通例が日本での常識とは異なることを知らずに、ビジネスパートナーなどとのコミュニケーションにすれ違いが生じることもよくあるのです。このようなトラブルを回避するためにも、海外ビジネスの場面では有効な契約を交わすことには大きなメリットがあります。

企業の規模や業種に関わらず、有効な合意をし、契約を交わすことはビジネス遂行のために不可欠な要素です。特にアメリカは「契約社会」といわれるほど、契約の有無が重要視されます。

本稿では、アメリカにおける有効な契約書の基本的知識及び、アメリカで企業がビジネス契約を締結する際に気をつけておきたいことについて説明します。適切な契約はビジネスをスムーズに進めるためにも、トラブルが起こった際の解決のためにも、大きな武器となります。海外進出・海外展開を考えている日本企業においては、本稿の内容を参考にして、適切な契約に基づくビジネス遂行の手がかりにしていただけますと幸いです。

カリフォルニアの商取引に影響を与える法律

アメリカでは国全体の法律(連邦法)とは別に、州独自の法律が存在しています。例えば、特許法、破産法、独占禁止法などは連邦法の管轄ですが、契約法、民事・商事法、会社法などは州法によって規定されているのです。そのため、ビジネス取引の際には管轄する州の法律をそれぞれ確認する必要があります。

ただし、統一商事法典(Uniform Commercial Code:UCC)(以下「UCC」)というものがあり、これは、アメリカの各州の商取引法を統一することを目的に作成された統一州法案の名称です。 UCCは「アメリカの商取引のバックボーン」と呼ばれ、各州はそれを参考にしつつ、それぞれ独自の州の修正を加え、UCCを採択しているケースが多いです。カリフォルニア州の商取引に関しては、CALIFORNIA COMMERCIAL CODEで規定されています。

有効な契約となるための基本要件

有効な契約とは、裁判所による強制力を持った契約と考えることができます。有効な(強制力のある)契約において、一方の当事者が他方の当事者が契約に違反したと信じる場合、訴訟を起こすことができるのです。契約が有効となるためにはいくつかの要素があります。ここでは基本的な4項目を紹介します。

申し出、承諾、対価

契約の中では、特定のオファーに対する申し出とその承諾のセットが含まれている必要があります。 両当事者は、オファーに対して自由意志で同意していることが大切で、言い換えると、両当事者は他方の当事者に対して、契約に署名するように強制することはできません。 また、オファーの中では何らかの対価の交換が発生している必要があります。この対価はお金でもサービスでも構いません。ただし、両当事者が何らかの価値あるものを他方に与える(両者で価値あるものを交換する)必要があることには注意してください。もし無償で何かを提供する内容であれば、それは契約ではなく贈り物であり、法的な拘束力は発生しません。

相互の同意

日本では契約と合意という用語を同じような意味で使用することもありますが、アメリカでの契約においては両者をしっかりと区別する必要があります。合意とは「当事者間の相対的な権利と責任に関する相互理解」と定義でき、契約は「強制力のある義務を作成する当事者間の合意」と定義できます。そして、有効な契約となるためには両方の当事者が同じ条件に同意する必要があるのです。

判断能力

両当事者は、契約の法的拘束力とそのオファーの内容を理解するための健全な判断能力を持っている必要があります。具体的には、どちらの当事者も成年していること、契約に署名するときに冷静な(薬物やアルコールの影響下にない)精神状態であること、精神疾患を持っていないことなどが挙げられます。どちらか一方の当事者が判断能力を持っていなかった場合、契約は無効となり、判断能力がないと認められる当事者は契約を否認することができます。

合法な目的

契約は合法な目的である必要があります。麻薬の販売や売春など、違法なものであってはなりません。

以上4つの必須項目を満たしていれば、書面・口頭に関わらず契約は有効となります。ただし、以下で説明する通り、一部の種類の契約は書面で行う必要がありまので、注意してください。

書面での契約が必須となる内容とは

カリフォルニア州では、州法(Cal. Civ. Code Section 1624)の中で契約書の作成方法について記載しており、口頭では契約として執行できない、つまり書面による契約を必須とする契約タイプを定めています。これは契約の内容が詐欺的であるかどうかは関係ありません。指定された条件に当てはまる契約では、その内容に関わらず、書面による契約が必要とされるのです。具体的には、次の合意を行なう契約が含まれます。

上記で挙げた以外の合意であれば、口頭であっても有効ですが、証明が難しく、裁判所での執行は困難です。ビジネス契約であれば、法律で義務付けられていない場合でも、書面で行なうことをお勧めします。各当事者の権利と義務を明確に定めた契約書があれば、契約トラブルが発生した場合にも安心です。

アメリカ企業とビジネス契約を締結する際に注意しておくべきポイント

ここでは企業がビジネス契約を締結する際に注意しておくべきポイントについて紹介します。

書面による契約

前述の通り、口頭での契約も有効な場合もありますが、ビジネス契約については書面による契約とするほうが安心です。

理解しやすい内容とする

契約書だからといって、難解な言い回しにする必要はありません。両当事者にとって理解しやすく、誤解の発生しないような文書にすることが大切です。

権限がある人物とやり取りを行う

現場の担当者間で話をしたとしても、その人物が契約締結の権限を持っているとは限りません。交渉を行う場合には、交渉相手がビジネス契約を締結する権限を持っていることを確認することが大切です。そのため、交渉を始める前には、相手に権限があることを確認し、もし権限を保有していない場合には、権限を持った人物につなげてもらいましょう。契約書の中でも、署名者が契約締結の権限を持っていることを表明・保証することが一般です。

合意内容のすべてを記載する

契約書では、各当事者の権利と義務を詳細に説明する必要があります。合意に至った内容は、その大小に関わらず、すべてを契約書に記載するようにしましょう。契約書に書かれていない内容については、相手方に強制することはできません。もし、契約締結後に記載漏れが判明した場合には、早急に契約書の修正覚書の締結を行ないましょう。

支払い義務についての取り決めは特に細かく記載する

契約書の中でも、支払いに関する内容は特にトラブルに発展しやすいものです。そのため、特に細かく記載する必要があります。誰が誰に支払うか、いつ支払いを行う必要があるか、支払いを行うための条件は何かを具体的に指定しましょう。分割払いや、作業品質を支払い条件に含める場合には、その納期および要件を具体的にできるだけ詳しく書きます。支払い方法についても取り決めておくと良いでしょう。小切手、銀行振込、現金など、希望する支払い方法は企業によって異なります。

海外進出・海外展開への影響

企業が契約書を作成する場合、その分野のプロである弁護士に契約書を作成あるいはリーガルチェックしてもらうことをお勧めします。特に、アメリカで事業展開する場合には、州ごとにルールが異なりますので、それを管轄する州の法律に精通した弁護士に依頼するようにしましょう。弁護士に依頼することで、契約に法的な拘束力があるかどうか、契約違反があった場合にどのような権利または義務があるかについてアドバイスしてもらえます。契約の内容が自分に不利な内容となっていないか確認してもらうことも可能でしょう。

近年では「無料」の契約テンプレートが簡単に手が入り、自社で契約書の作成を行なうこともできますが、これは危険性が高いものです。なぜなら、テンプレートというのは、汎用的な内容となっており、特定の企業の状況やビジネスの内容に対応したものではないからです。汎用的なテンプレートを使用することで、大きな損害賠償義務を負ったり、知的財産権を先方に渡してしまうなど、自社にとって不利となる望ましくない契約を締結してしまうリスクもあります。

日本企業が海外進出・海外展開する際には、クライアント企業と様々な契約を結ぶことになります。この時、日本とのビジネス文化のみならず、契約に関する文化の違いにも十分注意してください。日本では当たり前だと考えていたことが現地ではイレギュラーなものである可能性は高いのです。海外進出・海外展開考えている日本企業は、本稿で紹介した内容を参考に、有効な契約書を作成し、リスク回避をしながらビジネスを遂行しましょう。

ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、弁護士によるビジネス契約に関するご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしていますので、いつでもお問合せください。

※本稿の内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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