契約支援

契約審査・契約書レビュー:アメリカ企業との契約の注意点(解釈の不一致や曖昧な表現に注意)

by 弁護士 小野智博

はじめに

アメリカでビジネスを展開する際には、現地の企業と様々な契約を締結することになります。その際注意したいのが、日本とアメリカでは採用している法律や商慣習が異なり、その結果として契約書の解釈に不一致が生じてしまう可能性です。

世界的に採用されている法体系には、大陸法と英米法の2種類があり、アメリカは英米法に基づいています。一方、日本は大陸法系に属しつつ、米国法の影響も受けた形です。

このように背景の異なる当事者間で契約を締結する際には、お互いに解釈の齟齬を生じさせないための工夫が不可欠といえます。解釈の違いによって、ビジネスにおいて不利益を被るリスクも有るため、契約締結時には両者の意図を明確に言語化する必要があるのです。本稿では、アメリカで英文の契約書を締結する際に、当事者間で解釈に不一致を生じさせないことの重要性と、契約の曖昧さを解消するためのポイント、曖昧さが発生した際の判断基準について説明します。

契約の解釈に関する知識を持っておくことで、将来的なトラブルを回避して、ビジネスを安定して進めることができる可能性が高まります。本稿が、国際取引や海外進出・海外展開を考えている日本企業の参考になれば幸いです。

契約の解釈に曖昧さを残すことの問題点

取引先が約束どおりの納品をしてくれない、製品の代金が期日までに支払われない、ビジネスの中ではこのようなトラブルのリスクは常につきまといます。こうしたトラブルの解決には、締結した契約書の中から根拠を探し、相手に履行を求めたり、支払の交渉をしたりすることが必要となるでしょう。 また、自社が取引先に請求する場合だけでなく、取引先から不当な要求を受けた場合にも、要求に反論する根拠として契約書は重要となります。

海外の企業との契約では、日本での法体系や商慣習とは異なる相手と契約を締結することになります。日本国内で契約を締結するよりも、トラブルに発展する可能性は高くなるでしょう。だからこそ、契約締結前にあらゆるリスクを検討し、取引の手法や、スケジュール、予定外の事態が発生した際の対処法などを明確に記載することが欠かせません。必要に応じて、海外の法体系や商慣習に精通した弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼することで、取引に関わるリスクを軽減することが可能となります。

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例えば、海外の取引先にある製品の製造を委託するケースを考えてみます。このような契約では、いつまでにどのくらいの数量を製造してもらい、どのようにして納品してもらうのかを定めることになります。その中で「target delivery term(目標納品期間)」を定めることがありますが、この文言だけでは不十分である可能性が高いといえます。これだけでは、単なる目標値であり守る義務はないのか、あるいは目標とする納品期間を達成できない場合に、遅延金などのペナルティを課すのかなどがはっきりしません。つまり、目標値に対して複数の解釈が生じることになります。どの時点で納品とするか、期日を過ぎた場合の取り扱い、遅延金や違約金などについても細かく取り決め、契約書内に明文化する必要があるのです。

カリフォルニア州の契約の解釈に関する規定

カリフォルニア州民法(California Civil Code)では、 Title 3. Interpretation Of Contractsにおいて、契約の解釈に関する規則を定めています。ここでは、契約の解釈に不一致があった際にどのように解釈すべきかを規定した実際の文言を一部抜粋して紹介します。なお、この規定はカリフォルニア州にのみ有効なものであり、アメリカでは州によってルールが異なることには注意が必要です。

以下、California Civil Code – Section 1635-1663を抜粋、日本語で説明します。

1636. A contract must be so interpreted as to give effect to the mutual intention of the parties as it existed at the time of contracting, so far as the same is ascertainable and lawful.
1636. 法的に有効な契約について、契約時に当事者間で有していた意図に即して解釈されなければならない。

1637. For the purpose of ascertaining the intention of the parties to a contract, if otherwise doubtful, the rules given in this Chapter are to be applied.
1637. 契約に対する当事者の意図を確認することを目的として、あるいは意図が不明瞭な場合のために、本章に記載の規則が適用される。

1638. The language of a contract is to govern its interpretation, if the language is clear and explicit, and does not involve an absurdity.
1638. 契約の文言によって、契約は解釈されるものとする。ただし、その文言が明確かつ明示的であり、不条理を伴わない場合に限る。

1639. When a contract is reduced to writing, the intention of the parties is to be ascertained from the writing alone, if possible; subject, however, to the other provisions of this Title.
1639. 契約が書面としてある場合、当事者の意思は当該書面により確認されるものとする。ただし、本章に記載の規則に従う必要がある。

1640. When, through fraud, mistake, or accident, a written contract fails to express the real intention of the parties, such intention is to be regarded, and the erroneous parts of the writing disregarded.
1640. 詐欺、間違い、または事故により、書面による契約が当事者の真の意図を示していない場合、書面内で意図を誤って記載している部分については無視される。

1641. The whole of a contract is to be taken together, so as to give effect to every part, if reasonably practicable, each clause helping to interpret the other.
1641. 契約書は全体として解釈され、各条項に効力を持つものとする。各条項は他の条項を解釈するのに役立てられることができる。

1642. Several contracts relating to the same matters, between the same parties, and made as parts of substantially one transaction, are to be taken together.
1642. 同じ当事者間で、同一の問題に対して、実質的に1つの取引の一部として行われる契約については、一つの契約と考える。

1643. A contract must receive such an interpretation as will make it lawful, operative, definite, reasonable, and capable of being carried into effect if it can be done without violating the intention of the parties.
1643. 当事者の意図に違反することなく契約を遂行ができる場合、合法で、有効で、明確で、合理的であり、効力を発揮できるような解釈をしなければならない。

1644. The words of a contract are to be understood in their ordinary and popular sense, rather than according to their strict legal meaning; unless used by the parties in a technical sense, or unless a special meaning is given to them by usage, in which case the latter must be followed.
1644. 契約文書内で使用している文言について、厳密な法的意味ではなく、通常の一般的な意味で理解されるべきとする。ただし、技術的な文言など当事者によって特別な意味が与えられている場合にはそれに従う。

1645. Technical words are to be interpreted as usually understood by persons in the profession or business to which they relate, unless clearly used in a different sense.
1645.専門用語については、独自の意味で使用することを明確に示していない限りは、業界内の通例に基づいて理解するものとする。

1646. A contract is to be interpreted according to the law and usage of the place where it is to be performed; or, if it does not indicate a place of performance, according to the law and usage of the place where it is made.
1646. 契約は、それが実行される場所の法律および使用ルールに従って解釈されるものとする。

契約の解釈に曖昧さがあった場合どちらの主張が採用されるのか?

契約の解釈に当事者間で差異があり、前項のような規定をもっても曖昧さを解消できなかった場合には、最終的な手段として「Contra Proferentem」の原則に沿ってどちらの主張を採用するのかが判断されます。Contra Proferentemとは、曖昧な条項については、条項を起草していない当事者に最も有利な意味で解釈するということです。契約書の文言が複数の意味に解釈できる場合には、起草者に不利に解釈すると言い換えることもできます。

例えば、企業Aが代行業者Bにサービス代行を依頼し、それに対して料金を支払う契約を考えてみましょう。このような契約では、天災等の不可抗力によりサービス提供できない場合には契約不履行に対する免責の条項を設けることがよくあります。

しかし、代行業者Bが防災関連の対策を講じておらず、その結果として、サービス代行が遂行されなかったのは代行業者Bの怠慢であり、免責できないと企業Aが訴えた場合はどうなるでしょうか。

まずは、防災関連の対策について契約書に明記されているかがポイントとなります。その上で、解釈に曖昧な部分があれば、Contra Proferentemに基づき、契約の起草者である企業Aに不利な解釈として、代行業者Bの不履行は免責されることがあるのです。したがって、企業Aとしては、免責条項などを定める際に、あらかじめ条項を細かく検討しておく必要があったといえるでしょう。

まとめ(海外企業との契約を行う日本企業は要確認)

海外進出を考えている日本企業にとって、日本における法体系や商慣習との違いは、トラブル発生の大きな原因のひとつです。トラブル回避には書面で契約を締結しておくことが有効ですが、その際には契約書の内容や表現も十分精査するようにしましょう。

明文化するまでもないと考えて契約書に含めなかったばかりに、当事者間で誤解が生じたままとなり、ビジネスに大きな損害が生じる可能性もあるのです。また、日本語の表現と、英語の表現の違いから、言葉の解釈に齟齬が生じる場合もあるでしょう。アメリカでは、州によって基本とする法体系が異なるケースがあることにも注意する必要があります。

無用なトラブルを避けるためにも、締結しようとしている契約書が必要十分な内容となっており、表現に曖昧さが残っていないかなどについて、現地のビジネス文化や契約に精通した専門の弁護士にアドバイスを求めたり、リーガルチェックを受けることが大切です。

ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、弁護士による、海外との契約に関するご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしていますので、いつでもご相談ください。

※本稿の内容は、2021年5月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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