目次
はじめに
現代のグローバルなビジネス環境において、日本にいながら、世界中の消費者と直接接触し、新たな市場で成功を収めるチャンスが広がっています。しかし、海外展開では、異なる文化、法律、市場ニーズに対応しなければならず、注意すべき点も多くあります。
本稿では、海外進出を検討する日本企業向けに、日本製品の海外展開における効果的な方法と必要な手続きについて詳しく説明します。日本の商品を海外で販売するためのステップを理解し、成功への道筋を描いていきましょう。
3つの一般的な販売方法
ここでは、海外輸出の中でも、「日本企業が米国の顧客に対して商材を販売したい場合」の一般的な方法を3つ紹介します。
日本企業が自社サイトを運営し、米国の顧客に輸出する
この方法では、日本企業は自社ウェブサイトを立ち上げ、直接、米国の顧客に商品を輸出・販売します。このアプローチのメリットは、ブランドの一貫性を保つことや直接的な顧客関係を築くことができることです。しかし、米国市場の理解やローカルマーケティングが求められるため、適切な戦略とリソースが必要です。
現地法人がサイトを運営し、米国の顧客に販売する
こちらでは、日本企業が米国に現地法人を設立し、その法人が現地でウェブサイトを運営し販売を行います。地域に根ざした戦略やカスタマーサポートを提供できるため、顧客の信頼を得やすいといえます。ただし、現地法人設立や運営には、手続きとコストがかかるため、事前の慎重な検討が必要です。
マーケットプレイスのサイトを利用し、米国の顧客に販売する
この方法では、既存の米国のECプラットフォームであるアマゾンやeBayなどのマーケットプレイスを活用して販売を行います。これにより、既存の顧客ベースやロジスティクスインフラを利用できるため、手軽に市場に参入できる利点があります。ただし、その分、競争が激しいため、差別化戦略が求められます。
これらの方法は、それぞれに利点と課題があります。選択する際には、ターゲット市場や貴社の資源、戦略に合った方法を慎重に選定することが重要です。
海外モールの活用:有名な海外ECプラットフォームの紹介と登録手順
Amazon (https://www.amazon.com/)
世界中で圧倒的な利用者数を誇るAmazonは、日本企業が海外販売をする際には、欠かせないプラットフォームです。Amazon.comを活用することで、米国市場に直接アクセスし、多様なカテゴリの商品を販売できます。
Amazonへの登録手順は、まずセラーアカウントの作成から始まります。アカウントの設定や商品登録、価格設定、出荷方法などを選択し、Amazonのガイドラインに従いながら進めていきます。
Fulfillment by Amazon(FBA、フルフィルメント by Amazon)のサービスを利用すれば、在庫管理や出荷もAmazonにお任せできます。
eBay (https://www.ebay.com/)
eBayは世界的なオークションサイトであり、新品から中古品まで多様な商品が取引されています。
eBayでの販売を考える場合、まずアカウントの登録とセラー登録を行います。商品の出品方法や支払い方法、配送オプションを設定します。一般的なオークション(指定金額から入札を行うもの)販売だけでなく、即決購入額を設定する定価販売も選択できます。
eBayは日本でも人気があり、特に希少な商品やコレクターズアイテムの取引に向いています。
Shopify (https://www.shopify.com/)
Shopifyは、自社ECサイトを構築し運営するためのプラットフォームです。カスタマイズ性が高く、ブランドの一貫性を保ちながら海外展開を実現できます。Shopifyにはプランが複数あり、選んだプランに応じて商品登録や決済オプションを設定していきます。
Newegg (https://www.newegg.com/)
主に電子機器や家電製品を扱うNeweggは、特定のカテゴリで商品を提供する日本企業にとって魅力的なプラットフォームです。セラーアカウントの作成後、商品情報の登録や価格設定を行い、Neweggの基準に従って出品を開始します。
これらの海外ECプラットフォームは、日本の商品の海外販売を実現するための強力な手段となります。それぞれのプラットフォームには異なる特徴や利点がありますので、貴社のビジネス戦略に合わせて選択することが重要でしょう。
法人銀行口座の開設手続きとメリット
法人銀行口座の開設手続き
日本企業が海外展開をする際には、現地での法人銀行口座の開設について検討することが重要です。米国で事業展開する場合、現地の法人銀行口座を開設する手続きは、次のステップで行われます。
- ステップ1:銀行の選定
米国内の銀行を選びます。大手銀行や地域銀行、オンラインバンキングなど、様々な選択肢があるでしょう。 - ステップ2:必要書類の準備
銀行が求める書類を準備します。通常は法人設立の登記簿謄本、組織構造、事業計画、役員の情報などの提出が求められます。 - ステップ3:面談と審査
銀行との面談が行われ、事業内容や資金移動の計画について話し合います。銀行が審査を行い、口座開設の可否を判断します。 - ステップ4:口座開設
審査に合格すると、法人銀行口座が開設されます。銀行から必要な情報や口座番号などが日本企業に提供されます。
法人銀行口座のメリット
- 信頼性とビジネスイメージの向上
米国内の取引先や顧客との信頼関係を築く上で、現地の法人銀行口座を持つことは重要です。現地口座を持つことで、米国市場での信頼性が向上し、ビジネスイメージを高めることができます。 - 円滑な取引と資金管理
現地の法人銀行口座を使うことで、米国内の取引が円滑に行えます。支払いや受取り、資金の管理が効率的に行えるため、ビジネスの運営において大きな利点となります。 - ローカルサポートの利用
法人銀行口座を持つことで、現地銀行からの金融サポートやアドバイスを受けることが可能です。金融専門家とのコンサルテーションや資金管理に関するサポートが受けられます。 - 法的要件への適合
米国内でのビジネス活動には法的な要件があります。現地の法人銀行口座を持つことで、これらの要件を遵守しやすくなります。
法人銀行口座の開設は、米国での事業展開を成功させるために欠かせない要素の一つです。信頼性や効率的な取引、ビジネスの安定的な運営において、法人銀行口座のメリットを最大限に活かす戦略を立てましょう。
輸出許可の取得方法と重要ポイント
輸出許可の取得方法
日本の商品を海外に輸出する際には、輸出許可について確認することが必要です。輸出許可の必要性の確認と取得は、次のステップで行われます。
- ステップ1:対象商品についての確認
まず、輸出したい商品が輸出規制対象ではないことを確認します。安全保障やビジネス保護の観点などから、特定の技術や素材は規制対象となる場合があります。 - ステップ2:輸出先国についての確認
輸出許可の必要性は輸出先国によって異なります。対象国についての規制や関係法令を調査し、許可の必要性を確認してください。 - ステップ3:輸出許可の申請
輸出許可を取得するためには、経済産業省や関係機関への申請が必要です。申請書類の提出や審査が行われ、許可が下りるかどうかが判断されます。
輸出許可の重要ポイント
- 輸出規制の確認
輸出規制は商品の種類や輸出先国によって異なるため、正確な情報を確認することが重要です。違反すると罰則が課せられる可能性があります。 - 申請書類の正確性
輸出許可の申請書類は正確かつ詳細に記入する必要があります。不足や誤りがあると審査が遅れたり、却下されたりする可能性があります。 - 申請期間の考慮
輸出許可の取得には時間がかかる場合があります。輸出計画を立てる際に、許可の申請期間については、十分な期間を考慮しましょう。 - 国際法などの遵守
輸出許可の取得だけでなく、国際法や条約、輸出先国の法律なども遵守しなければなりません。これらに違反することは、輸出先国とも法的な問題を引き起こす可能性があります。
輸出許可は、国際取引において重要な手続きとなります。適切な申請と規制の遵守により、スムーズな輸出を実現するために、関連する法律や規制をしっかりと理解しておきましょう。
日本製品の海外輸出に関して専門家への相談をご検討ください
海外展開は新たなビジネスの機会を切り拓く一方で、国際市場における複雑な手続きや潜在するリスクも同時に伴います。新しい市場に足を踏み入れる際には、正確な知識と計画が鍵となるともいえるでしょう。
輸出許可、法的規制、海外市場のニーズ、税務、知的財産権など、海外展開に関わる多岐にわたる要素を適切に把握し、理解することが重要です。これらの要素は国ごとに異なるため、的確な情報を得ることは安定的な海外展開の基盤を築くために欠かせません。
弁護士によるリーガルチェックを通じて、ビジネス計画の法的側面を確認し、潜在的なリスクを最小限に抑えることが可能となります。適切なアドバイスを受けることで、法的問題やコンプライアンスの課題を回避し、国際展開を成功に導く道を拓くことにつながります。
ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、お客様が海外展開・海外進出の目標を達成できるようなガイダンスとサポートを提供します。国際的な拡張計画に対して、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしていますので、いつでもお問合せください。
※本稿の内容は、2023年8月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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