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海外進出・海外展開:日本企業が海外進出をするために検討できる方法|海外進出支援に精通した弁護士が解説

by 弁護士 小野智博


はじめに

日本の企業が国際的なビジネス展開を検討する際、海外進出はその成長と競争力を向上させるための重要な戦略となります。しかし、その道は困難と挑戦に満ちています。異なる法制度、言語、文化、市場環境など、海外ビジネスは多くの複雑な課題を抱えています。

それに対する有効な解決策は何でしょうか?この記事では、主に製品の製造や販売を行っている企業が海外進出する際の主要な戦略とその特徴、海外ビジネス成功のための要素、そして法的支援の重要性について、経験豊富な弁護士の視点から解説します。あなたのビジネスが新たな市場へと踏み出すための具体的なガイダンスとして、ぜひ参考にしてください。

海外進出の主要な戦略とその特徴

海外現地法人の設立

海外現地法人の設立は、企業が海外で直接ビジネスを展開する一般的な方法の一つです。このアプローチにより、企業は現地のビジネス環境に密着し、市場への入り口として機能する法的エンティティを作成します。その結果、現地の顧客、パートナー、および規制機関との直接的な関係を構築する能力が向上します。

現地法人設立の大きな利点は、現地市場のニーズを的確につかみ、その市場に最適化されたビジネスモデルを構築する機会を得られることです。しかし、それは法的規制、文化的な理解、初期投資、または継続的な管理コストなど、一定の課題を伴います。したがって、この方法を採用するには、広範な市場調査と、適切な法律および財務的なアドバイスが必要となります。

販売代理店取引

販売代理店への販売委託は、海外進出を検討している企業にとって一つの有効な戦略です。この方法は、特定の地域での販売とマーケティング活動を現地の代理店に委任するもので、初期投資を抑えつつ、代理店の既存のネットワークと業界知識を利用することができます。

販売代理店は地域市場の特性、消費者の傾向、競合他社の状況についての深い理解を持っています。そのため、その知識と経験を活用すれば、企業は商品やサービスを効率的に市場に投入し、ブランドの認知度を高めることができます。

しかし、代理店への販売委託には一定のリスクも伴います。自社の製品やサービスに対する完全なコントロールが失われ、代理店の業績に大きく依存する形となります。そのため、信頼性のある代理店を選ぶこと、また詳細な契約を締結することが重要となります。契約の内容については、専門的な法律的アドバイスを求めることが必要でしょう。

間接貿易~商社・輸出業者を介して現地顧客に製品を販売

商社や輸出業者を介した間接貿易は、海外進出を希望する企業にとって比較的リスクの低い戦略の一つと言えます。間接貿易は、自社商品を海外市場に直接販売する代わりに、商社や輸出業者に商品を提供し、それらの第三者が商品の輸出、販売を行う方法です。

この戦略の利点は、海外取引のリスクを低く抑えながら、商社や輸出業者が持つ海外市場への知識とネットワークを利用できる点です。商社や輸出業者は、商品の輸出入に関連する複雑な手続きや規制、物流などを管理し、企業は自社製品の開発や国内業務に集中することができます。

しかし、間接貿易では、商品の価格設定や販売方法、そして最終的な顧客に対する直接的な影響力が制限されます。また、商社や輸出業者との信頼関係の構築と維持、詳細な契約締結が必要となります。そのため、間接貿易を選択する場合は、専門的な法的アドバイスを得て、詳細・適切な契約を結ぶことが重要となります。

直接貿易~自社の製品を商社等を介さず現地顧客に直接販売する

自社で自ら行う直接貿易は、企業が自身で全ての輸出入手続きや販売活動を担当し、海外の顧客と直接取引を行う方法です。この戦略を採用することで、自社商品の価格設定、マーケティング戦略、顧客との関係など、全てのビジネスプロセスについて企業が完全なコントロールを持つことができます。

直接貿易の利点は、高い利益マージンと、自社のブランドや製品に対する完全なコントロールが可能であることです。さらに、直接の顧客フィードバックを通じて、市場ニーズをより深く理解することも可能になります。

一方で、直接貿易は大きなリソースと時間を必要とします。海外市場への深い理解、物流と関税、輸出入規制などの複雑な問題を自社で管理する必要があります。このため、専門的な知識や経験、強固な財務基盤が必要となります。

現地委託生産

現地委託生産は、製品の製造を海外の製造業者に委ねる海外進出の戦略です。これにより、企業は製品の生産コストを削減し、生産能力を増強することができます。また、現地の製造業者を利用することで、物流コストや輸出入の手間を大幅に節約することが可能となります。

現地委託生産の主な利点は、生産効率の向上とコスト削減です。また、地元の製造業者は現地の労働法規、製造業の規制、地域の商慣習などを熟知しているため、これらの問題に企業が直面するリスクを軽減することができます。

しかし、品質管理や知的財産権の保護など、一定の課題も存在します。そのため、現地製造業者との詳細な契約締結、定期的な監査とレビュー、そして適切な法的保護が必要となります。

フランチャイズ契約

フランチャイズ契約は、ブランド、ビジネスモデル、そして知識を現地の事業者に提供し、その事業者が一定のフランチャイズ料を支払うことでビジネスを展開するという海外進出の一手段です。フランチャイズシステムを採用することで、企業は新規市場への投資リスクを分散させ、さらにブランドの普及を効率的に進めることができます。

フランチャイズ契約により、現地フランチャイジーが提供する市場知識と財務リソースを活用でき、市場進出の際の調整が容易になることが期待されます。

しかし、フランチャイズ契約はブランド管理や品質保証において特別な注意を要します。契約の適切な作成と管理、フランチャイズパートナーの選定と評価、そして継続的なサポートと監督が必要となります。

越境EC

越境EC(電子商取引)は、企業が自社の製品やサービスをインターネットを通じて海外の顧客に直接販売する方法です。この手法により、物理的な販売店舗を必要とせず、低い初期投資で広範な市場にアクセスできるようになります。

越境ECの主な利点は、広範な地域に短期間でリーチできること、また24時間365日の販売が可能であることです。さらに、デジタルマーケティングを用いることで、顧客行動の分析やパーソナライズされたマーケティングも可能になります。

しかし、越境ECでは言語や通貨、物流、税制、規制といった様々な面において、日本とは異なるという問題に対処する必要があります。また、顧客サポートやアフターサービスの提供も重要な要素となります。さらに、消費者の信頼を獲得するために、安全な支払いシステムや個人情報保護の確保も必要となります。

クロスボーダーM&A

クロスボーダーM&A(国境を越えた企業の合併・買収)は、海外の企業を直接買収または合併することにより、その市場に進出する戦略です。この手法により、企業は新たな市場に素早く進出することができるとともに、現地企業のノウハウや顧客基盤を獲得することができます。

クロスボーダーM&Aの利点は、市場への即時アクセスと既存のビジネス構造の利用が可能であることです。また、獲得企業のブランド名や技術を活用することで、新市場での競争力を向上させることも可能です。

一方で、クロスボーダーM&Aは文化や法律、ビジネス習慣の違いなど、さまざまな課題を伴います。また、大きな初期投資を必要とするため、財務リスクも高まります。さらに、M&Aトランザクションは複雑で、適切なデューデリジェンスと契約交渉が必要となります。

各戦略における注意点と成功のための要素

法規制と準拠の必要性

海外進出を行う際には、対象となる国や地域の法規制を理解し、それに準拠することが極めて重要です。これらは貿易法、企業法、税法、労働法、環境法など、さまざまな分野に及びます。また、特に知的財産権の保護やデータ保護、プライバシー法なども重視すべき領域です。

法規制の無視や違反は、罰金や業務停止、さらには企業の評判損失につながる可能性があります。それは、事業の成功だけでなく、持続可能性にも大きな影響を及ぼします。

したがって、企業は事前に詳細な法律的調査を行い、現地の法律専門家と協力することが必要です。また、法的リスクを管理するための継続的なプロセスを構築することも重要です。

文化的差異とビジネスの理解

文化的な差異の理解とそれに対応する能力は、海外ビジネスの成功にとって不可欠です。これには、ビジネス慣習、コミュニケーションスタイル、消費者の価値観や消費行動、そして一般的な社会的価値観などが含まれます。

文化的なミスマッチは、ビジネス関係の損傷や誤解、さらにはブランドイメージの損失につながる可能性があります。また、消費者のニーズや行動を誤解すると、商品やサービスが市場に適合しない可能性もあります。

したがって、企業は海外進出前に詳細な文化的調査を行い、異文化間コミュニケーションに対する教育を実施すべきです。また、現地のエキスパートと協力することで、より深い理解と適応を促進することができます。

ローカルパートナーシップの形成

海外進出において、現地パートナーを獲得することは一つの有益な選択肢と言えるでしょう。現地のパートナーは、市場への洞察、規制への適応、文化的理解、ネットワーク形成など、多くの面で価値を提供します。

しかし、パートナーシップの形成は、適切なパートナーの選択、契約の交渉と締結、そして関係の維持と管理という複雑なプロセスを伴います。不適切なパートナー選択は、財務リスク、法的問題、品質問題、さらには企業の評判損失につながる可能性があります。

したがって、企業は現地パートナーについて事前に詳細な調査を行い、法律などの専門家からな適切なアドバイスを得ることが推奨されます。

市場調査と競争分析

海外市場への進出を考える際、市場調査と競争分析はその戦略決定における重要な要素となります。これには、市場の規模と成長率、消費者のニーズと行動、競合他社の動向、価格戦略、販売チャネルの分析などが含まれます。

これらの情報は、ビジネスモデルの適合性、価格設定、マーケティング戦略、リスク管理など、戦略的な決定全般に影響を与えます。また、競争環境の理解は、自社の競争優位性を強化し、市場での立ち位置を確立するために不可欠です。

市場調査と競争分析は、専門的な知識と手法を必要とするため、企業は専門の市場調査機関やコンサルティング企業と協力することも検討すると良いでしょう。また、これらは一度行ったら終わりではなく、定期的な更新と分析が必要となります。

海外法人におけるリスク管理は専門家への相談をご検討ください

海外進出をサポートする弁護士は、企業のビジネス成功にとって不可欠なパートナーとなります。私たちは、法規制の遵守、契約交渉、紛争解決、リスク管理など、さまざまな法的課題についてクライアント企業にアドバイスし、ナビゲートしていきます。

法的支援の重要性は計り知れません。特に海外進出においては、異なる法制度、言語、文化の違いなど、独特の法的課題が多数存在します。法的問題は、企業の財務と評判を大きく損なう可能性があるため、それを適切に管理することは事業の持続可能性にとって重要です。

弁護士との連携は、企業に多大なメリットを提供します。一つは、法律問題を事前に特定し、それを防ぐための戦略を立てることが可能になる点です。また、弁護士は、契約書の作成や交渉において、企業の利益を最大化するための専門的なアドバイスを提供します。さらに、何か問題が発生した場合でも、弁護士は企業が法的紛争を効果的に解決するための支援を提供します。

したがって、海外進出を成功させるためには、専門的な法的知識と経験を持つ弁護士と連携することが極めて重要となります。これは、ビジネスの成功と持続可能性を確保する上で、企業の重要な投資と言えるでしょう。

ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、お客様が海外展開・海外進出の目標を達成できるようなガイダンスとサポートを提供します。国際的な拡張計画に対して、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしていますので、いつでもお問合せください。

※本稿の内容は、2023年9月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

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(代表弁護士 小野智博 東京弁護士会所属)
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