はじめに
現代のグローバル経済の中で、多くの企業が新たな市場を求め、海外進出を試みています。海外市場は、新しいビジネスチャンスや成長の機会を提供する一方で、高い初期投資が求められることも多いことが知られています。そんな中、企業の海外展開を支援し、リスクを軽減するための制度として、政府や関連機関が提供する「補助金」が存在します。これらの資金援助は、事業の初期段階での企業の負担を軽くし、成功への道を確実に進める大きな後押しとなり得ます。
そこでこの記事では、海外進出を検討する企業が知っておくとよい、補助金の概要や活用のヒントについて解説していきます。
補助金のメリット
補助金を活用することには、いくつかの大きなメリットがあります。まず最も大きなメリットとして、これらの資金は原則、返済不要である点が挙げられます。これは、新しい事業の立ち上げや事業拡大を考える際、企業の財務負担を大幅に軽減する要因となります。特に初期の投資が重要となる事業や、新たな技術の研究開発など、大きなリスクを伴う取り組みにおいて、返済のプレッシャーなく必要な資金を確保できることは計り知れない価値があります。ただし、注意が必要なのは、基本的に全ての補助金は、「後払い」であるという点です。補助金の交付決定後も、その事業実施においては、まず自社で資金を用意した上で支出し、事業終了後に、補助を実施した機関が行う確定検査に合格して、初めて補助金が企業に支給されます。
また、補助金を提供する機関や組織は、単に資金を提供するだけでなく、事業の成功をサポートするためのノウハウの共有やアドバイスを行うことも多いです。例えば、特定の産業分野や市場での成功実績を持つ専門家からの指導を受けることができたり、同じ補助金を活用している他の企業とのネットワーキングの機会を持つことができたりもします。これらにより、新しい市場への進出や事業展開の際の戦略立案がより具体的かつ実践的になります。
このようなメリットを活かして、企業は安定した経営基盤を築きながら、新たな成長機会に挑戦することが可能となります。
海外進出で活用できる補助金および融資制度
- 経済産業省、中小企業庁、中小機構「事業再構築補助金(成長枠)・(産業構造転換枠)など」
中小企業等の思い切った事業再構築(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換など)を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とした補助金です。補助対象経費に含まれる「専門家経費」を活用して、越境ECに挑戦する際の契約書作成・レビューや法務アドバイス等を弁護士に依頼することも可能です。
詳細: 事業再構築補助金公式サイト
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/ - 中小企業庁、中小機構「ものづくり補助金(グローバル市場開拓枠)」
中小企業等が取り組む革新的サービスや試作品の開発、生産プロセス等の改善のための設備投資等を支援する補助金です。「グローバル市場開拓枠」には、①海外直接投資類型、②海外市場開拓(JAPANブランド)類型、③インバウンド市場開拓類型、④海外事業者との共同事業類型の4類型があります。こちらの補助金でも、補助対象経費に含まれる「専門家経費」を活用して、越境ECに挑戦する際の契約書作成・レビューや法務アドバイス等を弁護士に依頼することが可能です。
詳細: ものづくり補助金総合サイト
https://portal.monodukuri-hojo.jp/about.html - 全国商工会連合会、「小規模事業者持続化補助金」
小規模事業者等の販路開拓の取組み等の経費の一部を補助することで、小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とした補助金です。小規模事業者がECや越境ECに挑戦する際に活用が望める補助金であり、専門家への相談費用(委託費)も補助対象経費に含まれています。
詳細: 小規模事業者持続化補助金(商工会議所地区)公式サイト
https://r3.jizokukahojokin.info/
詳細: 小規模事業者持続化補助金(商工会地区)公式サイト
https://www.shokokai.or.jp/jizokuka_r1h/index.html - 特許庁、ジェトロ(JETRO)「中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業など)」
特許の海外出願や侵害対策に関する費用を補助する制度です。技術の海外展開を検討する中小企業やベンチャー企業にとって、知的財産権の保護は非常に重要です。
詳細: 特許庁公式サイト
https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_gaikokusyutugan.html
詳細:ジェトロ公式サイト
https://www.jetro.go.jp/services/ip_service_overseas_appli.html - 経済産業省「技術協力活用型・新興国市場開拓事業費補助金(社会課題解決型国際共同開発事業)」
開発途上国の社会課題を解決するとともに、日本の中小企業の海外展開を促進するための支援事業です。製品・サービス開発に関する支援が行われます。
詳細: 経済産業省公式サイト
https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2023/k230118004.html - ジェトロ「展示会・商談会への出展支援」
ジェトロは、日本の企業が海外の展示会や商談会へ出展する際の支援を行っています。ジェトロが参加する海外の展示会では、ジャパン・パビリオンとして、日本の企業を集めてブランドを強化する機会を提供しています。これにより、申し込み手続きやブースのデザインなどの負担を軽減するとともに、出展にかかるコストも削減することができます。
詳細: ジェトロ公式サイト
https://www.jetro.go.jp/services/tradefair/
また、補助金以外にも、企業の海外進出を支援するための公的機関による融資(要返済)の制度もあります。
- 日本政策金融公庫「海外展開・事業再編資金」
企業が海外に進出するとき、または海外のビジネス成果が下降し、それが国内の事業に悪影響を及ぼしているとき、日本政策金融公庫から設備や運営のための資金を融資として得ることが可能なプログラムです。利子の率は、融資の条件に応じて異なります。
詳細: 日本政策金融公庫公式サイト
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/kaigaitenkai_t.html - 国際協力銀行「中堅・中小企業向け融資」
国際協力銀行(JBIC)は、中堅・中小企業が海外展開を行う際の資金ニーズに応じて融資を行っています。加えて、海外投資環境等の各種の情報提供により、中堅・中小企業は海外のビジネスチャンスを掴むための資金を確保できるとともに、リスクを軽減するサポートを受けることができます。
詳細: 国際協力銀行公式サイト
https://www.jbic.go.jp/ja/business-areas/sectors/smes.html
これらの制度は、日本の企業がグローバルなビジネスの展開を進める上での負担を軽減し、成功に導くための大きな支援となります。適切な制度やサポートを活用して、貴社の海外市場での競争力を高めていきましょう。
補助金の申請プロセス
補助金の申請プロセスは、目的や対象者、補助対象となる事業に応じて異なります。以下に一般的な流れを示します。
STEP 1 対象確認
まず、自社や事業が該当すると考えられる補助金の募集要項や公告を確認し、対象となるかどうかを確認します。必要な要件や制約、支給上限など、詳細な条件までチェックしましょう。
STEP 2 必要書類の準備
申請書や計画書、見積書、過去の業績や予算書など、申請に必要な書類を整えます。正確かつ詳細に記入することが求められます。
STEP 3 申請
上記の書類をもとに、指定された期間内に補助金の申請を行います。申請方法は、補助を実施する機関の事務局へ郵送、直接持ち込み、または電子申請などが考えられます。
STEP 4 審査
提出された書類や計画内容を基に、審査が行われます。審査期間は制度や内容により異なり、一部の補助金では面接やプレゼンテーションが求められることもあります。
STEP 5 結果通知
審査が終了すると、採択されたかどうかの結果が通知されます。不採択となった場合でも、その理由を検討し、フィードバックであると捉えることで次回の申請に役立てることができます。
STEP 6 事業実施
補助金の交付が決定された場合、交付決定された内容・計画に沿って事業を実施します。期間中には途中報告や成果報告が求められることもあります。領収書や証拠書類はすべて保管しておく必要がありますので、注意しましょう。
STEP 7 最終報告
事業終了後、最終報告書や経費のエビデンス等を、補助を実施した機関の事務局に提出し、補助金の使途や成果について報告します。
STEP 8 確定検査及び補助金の支給
事業の実施内容や経費等についての確定検査が行われます。事業の適正な実施が確認されると、補助金の金額が確定し、事業者に支給されます。
この流れは大まかなものであり、具体的な制度や補助金の内容によって異なる点があるため、公告や募集要項の詳細を確認することが重要です。
海外進出の支援制度について専門家への相談をご検討ください
海外進出の際に補助金を効果的に活用するためには、いくつか注意すべきポイントもあります。まず、海外進出に関連する補助金の公告や情報を定期的に確認し、新たな支援制度の存在を逃さないようにすることが重要です。また、申請期間が限られている場合が多く、計画的に申請スケジュールを組む必要があります。さらに、申請内容を具体的かつ明確にまとめることで、採択される確率が上がります。一度の申請での不採択は、次回への挑戦のためのフィードバックとして捉え、継続的な取り組みを心がけることが大切でしょう。そして、補助金の申請は複雑であるため、専門家やコンサルタントの意見を取り入れることも検討する価値があります。
ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、お客様が海外展開・海外進出の目標を達成できるようなガイダンスとサポートを提供します。国際的な拡張計画に対して、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしていますので、いつでもお問合せください。
※本稿の内容は、2023年10月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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