2024.06.19

海外進出・海外展開：海外で飲食店を成功させるには？｜外食産業で海外進出・海外展開を行う際にチェックすべきポイントを解説

by 弁護士小野智博

1 はじめに
2 外食産業で海外進出・海外展開を行うメリット
3 海外展開のための重要なステップ
4 外食産業が海外進出・海外展開を行う際の注意点
5 事例から学ぶ！外食産業の海外展開戦略
6 海外進出を検討する日本企業は弁護士との連携をご検討ください

はじめに

外食産業における海外進出は、日本企業にとって著しい成長機会をもたらします。グローバル化が進展する現代において、国境を越えるビジネス展開は、ブランド認知度の国際的向上、未開拓市場への進出、さらには異文化交流を通じて新しいアイディアを生み出すといった多くの利点を提供します。しかし、異国でのビジネス成功は容易ではありません。言語の壁、食文化の相違、複雑な法規制といった様々な挑戦が企業を待ち構えています。

本記事では、海外での飲食店成功に必要な、戦略立案から運営管理に至るまでのプロセスについて詳しく解説します。成功への道を理解することから始め、海外展開における具体的なステップ、留意点、そして実際の成功事例を紹介します。これにより、海外進出を検討中の日本企業が、より戦略的かつ効率的に市場に参入するための貴重な情報を得られることを目指しています。

外食産業で海外進出・海外展開を行うメリット

海外での飲食店展開は、日本企業にとって大きなチャンスです。この動きは、ブランド価値の向上、新たな市場の開拓、創造的なアイディアの獲得、海外の食材や技術の導入、そして国際的なネットワークの構築といった複数のメリットをもたらします。

ブランド認知度と価値の国際的向上：海外展開は、ブランドの国際的な認知度を高め、その価値を向上させる機会を提供します。特に外食産業では、異文化間での商品やサービスの受け入れは、ブランドのユニークさを際立たせ、国際的な魅力を高めます。海外の顧客に受け入れられることは、国内市場におけるブランドの信頼性と評価をさらに高める効果もあります。
未探索市場への進出による新たな可能性の探求：世界は広く、多種多様な市場が存在します。海外に進出することで、日本国内では飽和状態となっている市場から抜け出し、新しい顧客層にアプローチすることが可能になります。新興国を始めとする未開拓の市場では、日本の飲食文化や料理が独自の魅力として受け入れられ、大きな成功を収める可能性があります。
異文化からのインスピレーションによる革新的アイディアの獲得：海外市場への進出は、新しいアイディアや発想をもたらします。現地の食文化や顧客の好みを取り入れたメニュー開発やサービスの革新などは、国内の事業にもプラスの影響を与えます。また、異文化交流を通じて見えてくる新たなビジネスチャンスも、企業成長のカギとなり得ます。
海外独特の食材と先端技術の活用によるメニューとサービスの革新：海外進出を通じて、現地の食材や調理技術に直接触れることができます。これらを日本の店舗やメニューに取り入れることで、顧客に新鮮な体験を提供し、競争力のある独自性を確立することが可能です。また、現地での生産技術や経営ノウハウを学ぶこともでき、これらの知見は事業全体の効率化や品質向上に貢献します。
グローバルネットワークを通じたビジネスチャンスの拡大：海外市場への進出は、現地のビジネスパートナーや顧客との強固な関係構築を促します。これらの関係は、さらなる事業拡大の基盤となり得ます。また、国際的な展示会やイベントへの参加を通じて、世界各地の業界関係者とのネットワークを広げることができます。このような国際的なネットワークは、新しいビジネス機会の創出や情報収集の面で非常に価値があります。

以上のように、外食産業での海外展開は、企業にとって多大なメリットをもたらします。これらのメリットを最大限に生かすためには、適切な市場調査と戦略的な計画が必要です。現地市場の特性を理解し、文化や法律に配慮しながら事業を展開することが、成功への鍵となるでしょう。

海外展開のための重要なステップ

海外での飲食店展開は、日本企業にとって大きな挑戦ですが、その成功は丁寧な準備と計画によって大きく左右されます。以下に、海外展開を行う際の重要なステップを紹介します。

市場と競合の深度調査：成功への第一歩は、対象国の市場調査から始まります。競合分析、ターゲット顧客の特定、食文化の理解、法規制の確認など、進出先の環境について徹底的に調べます。この段階で、市場のニーズや可能性を探り、リスクを評価します。
ブランドコンセプトとビジュアルアイデンティティの策定：収集した情報を基に、店舗のコンセプトを明確にします。現地の市場に適したメニューやサービスのスタイル、店舗デザインなど、ブランドの個性を活かしつつも、現地の文化や好みに合わせたコンセプトの設計が求められます。
事業戦略の立案：コンセプトをもとに、具体的な事業計画を立てます。目標設定、予算計画、売上予測、マーケティング戦略など、事業を成功に導くための詳細な計画を策定します。特に、現地での物価や人件費なども考慮に入れる必要があります。
財務計画の立案：事業計画に基づき、必要な資金の調達を計画します。自己資金のほか、銀行ローンや投資家からの資金調達など、さまざまな方法を検討し、リスクを管理しながら資金調達方法を選択します。
物件の選定：事業の成功は立地に大きく依存します。ターゲット顧客が集まるエリア、競合の少ない場所選びなど、慎重な物件選定が必要です。また、賃貸契約の条件など、法律的な側面も考慮し、リスクを最小限に抑えることが重要です。
法律遵守とリスク管理の確認：現地の法規制や商慣習を理解し、ビザ取得、事業登録、税務処理など、事業を運営するための法的要件を確実にクリアします。場合によっては、現地の専門家と協力することも有効です。
ブランドイメージを具現化する店舗デザイン：コンセプトに基づいた内装・外装の設計、キッチン設備の導入など、お店作りに着手します。この段階では、コスト管理とスケジュール管理が特に重要です。
開業に向けた行政手続きと許認可の取得：開業に必要な各種許可やライセンスの取得手続きを行います。食品衛生法など、現地の規制に適合するよう留意が必要です。
適格なスタッフの採用とチームビルディング：現地でのオペレーションを支える人材の募集・育成に取り組みます。文化や言語の違いを乗り越え、効果的なチームワークを築くための教育プログラムの導入も検討します。
グランドオープンと市場への導入：全ての準備が整ったら、いよいよ店舗オープンです。オープニングイベントの実施やプロモーション活動を通じて、地元メディアやSNSでの露出を最大化し、顧客の関心を引き付けます。

海外での飲食店展開は、一歩一歩丁寧に準備を進めることが成功の鍵です。これらのステップを踏むことで、現地市場での成功へと近づくことができるでしょう。

外食産業が海外進出・海外展開を行う際の注意点

外食産業での海外進出・展開は、企業の成長戦略において大きなポテンシャルを秘めています。しかし、成功を収めるためには、いくつかの重要な注意点を押さえる必要があります。ここでは、食材の調達、人材の確保、契約内容の確認、法規制、食文化や宗教の違いなど、特に注意を払うべきポイントについて解説します。

食材の調達：海外での事業では、高品質な食材を安定して調達することが一つの大きな課題です。現地での食材調達は、コスト削減や鮮度維持に直結するため、現地の供給網を理解し、信頼できるサプライヤーと良好な関係を築くことが重要です。また、日本特有の食材を使用する場合は、輸入規制や輸送コストも考慮に入れる必要があります。
人材の確保：現地での成功は、優秀なスタッフによって支えられます。現地の言語や文化に精通し、ブランドの理念を理解し、顧客にサービスを提供できる人材を確保することが不可欠です。現地の雇用事情を理解し、適切な待遇を設定するとともに、継続的な教育プログラムを通じてスタッフのスキルアップを図ることも重要です。
契約内容の確認：物件の賃貸契約やサプライヤーとの契約など、海外での事業運営には多くの契約が伴います。契約内容には細心の注意を払い、特に契約期間、支払い条件、解約条件などの重要事項を明確にしておくことが必要です。また、法律や商習慣の違いから生じる誤解を避けるためにも、現地の法律専門家と相談することをお勧めします。
法規制：食品安全規制、衛生基準、労働法など、事業を行う国の法規制を正確に把握し、遵守することは必須です。特に、飲食業には国ごとに異なる厳しい規制があるため、現地の法規制に詳しい専門家のアドバイスを仰ぎながら、適切な手続きを進めることが重要です。
食文化や宗教の違い：異なる文化や宗教によって、食事の選択や摂取方法に違いがあります。例えば、宗教的理由で特定の食材を避ける文化や、食事の摂り方に独自のルールがある場合など、これらの違いを理解し、尊重することが事業の成功に直結します。メニュー開発やマーケティング戦略を立案する際には、現地の食文化や宗教的な制約を踏まえたアプローチが求められます。

以上のポイントに留意しながら進めることで、海外での外食産業展開は、より成功に近づくでしょう。異文化間でのビジネスは多くの挑戦を伴いますが、それを乗り越えた時、企業にとって計り知れない価値をもたらすことになります。

事例から学ぶ！外食産業の海外展開戦略

吉野家の海外展開戦略
吉野家は、日本の牛丼文化を海外に広めた先駆者として知られています。彼らの成功の鍵は、「BEEF BOWL」というわかりやすい命名によるブランドイメージの確立にあります。
吉野家の海外での展開戦略は、現地の市場に深く根ざしたアプローチを取ることにあります。例えば、アジア市場では、現地の好みに合わせたメニューのアレンジや、イスラム教徒が口にできる生産管理を徹底するなど、地域ごとの食文化や宗教的制約に敏感に対応してきました。このグローバルな視点と地域に根ざした運営戦略が、吉野家を世界中で成功させる鍵となっています。
丸亀製麺の海外展開戦略
丸亀製麺は、讃岐うどんを提供するセルフ式のうどん店です。その海外戦略は、高品質な手打ちうどんと日本の食文化を世界に広めることに焦点を当てています。アメリカ、タイ、香港など、多国籍に展開し、各地で高い評価を得ています。特にアメリカでは、「低価格で本場のうどんを楽しめる店」としてのポジショニングで市場を拡大中です。一方で、中国やタイでは現地の味覚に合わせたメニュー開発することで、顧客体験の向上にも努めています。
大戸屋の海外展開戦略
大戸屋は、家庭的な日本食を提供する食堂チェーンです。アジアを中心に海外展開を進めており、特にシンガポールやタイでは強いブランド認知を獲得しています。大戸屋の海外戦略の鍵は「手頃な価格の定食屋」という日本での位置づけから一歩進んで、「本格的な日本の味を楽しめる店」として、独自のブランドイメージを確立したことにあります。また、現地の食材を積極的に取り入れつつも、日本の味を大切にする姿勢で、現地の消費者から支持を受けています。大戸屋は、日本の食文化を尊重しつつ、現地化戦略にも柔軟に対応することで、海外での成功を築き上げています。

これらの事例から見ると、外食産業が海外展開を成功させるためには、地域のニーズに合わせたサービス展開や、独自のブランドイメージの構築が不可欠であることがわかります。また、現地の食文化や宗教的制約に敏感に対応し、柔軟性を持った戦略を展開することが成功の鍵となります。

海外進出を検討する日本企業は弁護士との連携をご検討ください

国内市場の縮小と厳しい競争環境に直面している日本の外食産業は、新たな成長機会を海外市場で模索しています。海外進出を本格化させる日本の外食企業にとって、異文化の中での事業展開は、現地の法規制や商慣習の複雑さという大きな課題を伴います。成功の鍵は、精確な情報収集と適切な法的手続きにあり、これを実現するためには、弁護士との緊密な連携が不可欠です。

特に、契約法務、知的財産権の保護、労働法、税法、輸出入規制など、外食産業が海外で直面する法的課題は多岐にわたります。弁護士や法律事務所との協力により、これらの法的問題への予防策を講じることで、万が一の紛争が生じた際にも企業の権利を守り、ビジネスの持続可能性を確保することが可能となります。また、現地の文化や慣習への理解を深めることで、事業成功に欠かせない現地との信頼関係を築くためのサポートも提供してくれます。

海外市場への進出は、日本の外食産業にとって大きなチャンスである一方で、伴うリスクも見過ごせません。そのため、海外での成功を目指す外食企業は、法的側面でのしっかりとした準備とサポート体制を整えることが求められます。弁護士との連携は、海外での事業展開を安全かつスムーズに進めるための重要な一歩です。日本の外食産業が世界市場で競争力を発揮し、成功を収めるためには、このような法的サポートの確保が不可欠だともいえます。

ファースト＆タンデムスプリント法律事務所では、お客様が海外展開・海外進出の目標を達成できるようなガイダンスとサポートを提供します。国際的な拡張計画に対して、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしていますので、いつでもお問合せください。

※本稿の内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者：弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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