外国の政府機関や企業または大学等に提出する文書に、「アポスティーユ」「公印」「領事認証」を取得し、その文書に添付するよう求められることがあります。
アポスティーユについて、皆さまは、下記のようなお悩みがあるのではないでしょうか。
「アポスティーユ(apostile)とは何ですか?」
「どこに行けばアポスティーユ認証は手に入りますか?」
「問い合わせ窓口や申請方法を知りたい、誰かに相談できますか?」
「外務省の証明に必要な日数はどれくらいかかりますか?」
「アポスティーユは無料と聞きましたが、実際の費用はいくらかかりますか?」
この記事では、このようなお悩みを解決できるように、アポスティーユとは何か、どのような場合に必要とされるのか、対象となる文書やその申請方法について、わかりやすく解説します。
目次
「アポスティーユ」とは
外務省が行う公印証明
アポスティーユ (apostille,apostilla:フランス語で証明文という意味) とは、ハーグ条約(正式名称「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」1961年10月5日)に基づき、公文書につける付箋(アポスティーユ)のことをさし、日本国として外務省が行う公印証明のことです。
日本の公文書とは、各省庁や自治体の発行する文書であり、たとえば戸籍謄本、住民票、婚姻要件具備証明書、登記事項証明書、納税証明書、無犯罪証明書などが該当します。
これらの公文書を外国機関に提出する場合に、先の認証不要条約により文書に国の付箋を付けることによって、国の公文書であることを証明するということです。
ただし、提出先機関より、公文書のアポスティーユを要求された場合に限り、外務省に申請し付与される証明になります。
手続きの流れ
本来の国際間の認証制度において、外国の各種機関が日本の公文書を受け入れる条件は、原則として次のとおりです。
まず、公文書に対して、日本国の公文書の証明である「公印確認証(Authentication)」を外務省に申請し取得します(「公印確認」といいます)。そのうえで、その公文書の提出先となる国の日本国内にある外国大使館(総領事館)に所属する(提出先国政府の自国の公務員である)駐日領事によって、この公文書には確かに「日本国外務省の認証がなされている」ということを証明する「領事認証」を取得するというステップが要求されています。
しかし、日本国外務省の「公印確認」を受けた後、さらに提出先国の駐日大使館の「領事認証」を取得しなければならないということは、事務手続きが非常に煩雑であるとして、ハーグ条約(認証不要条約)締約国に限っては、駐日外国領事の「領事認証」を省略し、日本国として外務省に申請し付与される「アポスティーユ」証明のみをもって公文書であることを確認することとし、外国機関に各種文書を提出することが認められているというわけです。
ただし、ハーグ条約の締約国であっても、国によっては、提出先国の自国公務員である駐日領事による「領事認証」を求められるケースもあります。そのため、実際の提出先機関に対して、日本国外務省の発行する「アポスティーユ」を受理するか事前に確認を行う必要があります。
「領事認証」の手続に必要な書類は、各国により取り扱いが異なりますので、提出先機関の国の駐日大使館・総領事館にご確認ください。
出典 申請手続きガイド 2 申請の流れ|外務省
出典 申請手続きガイド 4 申請前のチェックシート|外務省
出典 よくあるご質問 外務省
アポスティーユはどのような場合に必要とされるか
アポスティーユが必要なとき
アポスティーユは次のようなときに求められることがあります。
例
個人の場合 外国に住む、就労する、留学する、不動産を登記する、在留資格を得る
企業の場合 外国で会社を設立する、契約する、駐在員事務所や現地法人を登録する
提出先機関からは、次のような表記によってリクエストされることがあります。
Apostille Apostilled Authentication Authenticated
Legalization Legalized Notarization Notarized
アポスティーユの対象となる文書とは
提出先国の機関からリクエストされたとき
アポスティーユを取得する前提として、提出先機関からアポスティーユが求められていなければならないという点にも注意が必要です。
アポスティーユを申請する時の申請書には、アポスティーユが提出先機関からリクエストされている証明が必要です。申請しても公文書全てにアポスティーユが付与されるわけではありません。
対象となる文書の種類は、公文書のみです。たとえば次のような文書が該当します。
<公文書の例>
戸籍謄本、登記簿謄本、住民票、受理証明書、婚姻要件具備証明書
納税証明書など役所が発行する文書
公正証書(公証人が認証した文書)
他
私文書を公文書にする方法
私文書については、公証人による認証を受け公正証書とし、公文書とすることができます。
<私文書の例>
各種契約書、委任状、会社定款、譲渡証、宣言書、在職証明書、職務経歴証明書
就任承諾書、辞任届、成績証明書
他
なお、公文書の翻訳を添付することを提出先から求められている場合、公文書の翻訳文やパスポートのコピーは私文書として扱われます。そのため公証人による認証を受けて、公正証書とする必要があります。
公正証書の仕組みや手続き、公証人が行うワンストップサービスの流れは日本公証人連合会のサイトをご参照ください。
アポスティーユと公印確認
アポスティーユも公印確認も、いずれも日本国の自治体や各省庁等より発行された公文書に対して日本国として外務省が発行する証明のことをいいます。
公印確認は、公文書上の公印について証明を行います。
アポスティーユは、公文書に付箋を付けることで公印について証明を行います。
つまり、アポスティーユおよび公印確認は、公文書に押印されている公印の印影を証明するもので、その公文書の作成の真正性(権限のある公務員や公的機関が発行した文書であることの確認)であり、その文書の内容を証明するものではないという点には、注意が必要です。
アポスティーユと公印確認いずれにも共通していることは、外国での各種手続き(婚姻・離婚・出生、査証取得、会社設立、不動産購入など)のために、日本の公文書を提出する必要が生じ、その提出先機関から、アポスティーユまたは公印確認を取得するよう求められた場合に限り必要になるという点です。外国の提出先機関あるいは駐日大使館・総領事館が求めている場合のみ申請をすることができ、逆に言うと、提出先機関等から求められていない場合には、申請することはできません。また、提出先機関等からのリクエスト通数を超えて、予備や保管目的による申請は受け付けされません。
出典 公印確認・アポスティーユとは 外務省
出典 よくあるご質問 外務省
アポスティーユの申請方法を解説
項目の確認
外国の政府機関や企業または大学などから、提出先機関等に提出する書類にアポスティーユを求められたときは、次の項目を確認してください。
① 提出先の国は ハーグ条約の [締約国] [非締約国]
② 提出を求められている書類は [公文書][私文書]
③ 翻訳の添付は [不要][必要](翻訳する場合はその言語)
アポスティーユに関連して、①の非締約国(または指定のある国)の場合には「領事認証」を、②の私文書の場合には公証人認証を受ける必要があり、項目に応じてアポスティーユ以外にも必要な書類があります。
出典:「外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)」の締約国(地域) 外務省
私文書を公文書化するため公証役場を利用する場合、一部地域の公証役場では、電子申請や外務省へのワンストップサービスも行われています。
申請書
申請書の入手方法は、外務省のホームページからダウンロードできます。
または郵便により入手することも可能です。
ただし海外からの申請は不可で、日本在住の代理人を通じて、国内から申請を行う必要があります。
弁護士等代理人による申請も可能です。
代理人を立てる場合は、委任状を添付します。
申請書は、日本語または英語で記入します。
※アポスティーユは英語で発行されます。
同じ公文書にアポスティーユが必要であって、その公文書の提出国がそれぞれ異なる場合には、国毎に申請書が必要です。
開封無効と明記された文書(例えば犯罪経歴証明書への認証等)を開封した場合は、受け付け不可とされます。開封無効の公文書を申請する場合であって、申請書の公印名(アポスティーユの場合は発行者肩書・氏名)などが不明な場合には、申請書の欄は空欄のまま提出します。
アポスティーユに有効期限はありませんが、提出先機関や駐日外国大使館・総領事館等が、有効期限を設定している場合もありますので、ご注意ください。
出典 申請手続きガイド 申請書・委任状のダウンロード|外務省
アポスティーユの窓口
アポスティーユは、郵送での申請および外務省窓口で受け付けしています。
外務省の窓口は次の2か所です。
外務省 本省(東京)
所在地
〒100-8919 東京都千代田区霞が関2-2-1 外務省南庁舎1階
外務省 領事局領事サービスセンター 証明班
窓口時間
申請:14時00分から16時00分
交付(受領):9時30分から12時00分
アクセス
東京メトロ 日比谷線・丸ノ内線 霞ヶ関駅下車 A4出口
東京メトロ 千代田線 霞ヶ関駅下車 A8出口
外務省 大阪分室
所在地
〒540-0008 大阪府大阪市中央区大手前4-1-76 大阪合同庁舎第4号館4階
外務省 大阪分室証明班
窓口時間
9時00分から12時00分
13時15分から16時30分
アクセス
大阪地下鉄 谷町線・中央線 谷町四丁目駅下車 5番出口
出典 申請手続きガイド 3 申請方法・必要書類|外務省
出典 よくあるご質問 外務省
申請方法と期間の目安
[郵送による場合]
原則は、郵便申請及び郵送による交付(返却)です。
申請時に返送宛先を記載した返送用のレターパック等を同封します。
交付(返却)は、申請者本人の住所へ郵送されますが、差出人住所や申請者と異なる方への返送は不可です。例えば、自宅から送付し、会社住所へ返送してもらうことはできません。
申請書類に不備がなく、追加的な確認等がなければ、原則は申請書が到着した窓口受領日の3開庁日後に郵便で返却されます。
ただし郵便事情により到着日は変動しますので、余裕を持って申請されることをお勧めいたします。
[窓口で申請する場合]
申請書類に不備がなく、追加的な確認等がなければ、原則申請書を窓口で受け付けした日の3開庁日後に郵便で返却されます。
申請時に返送宛先を記載した返送用のレターパック等をご持参ください。
郵便返却ではなく、窓口での受け取りを希望される場合は下記「窓口での受け取りを希望する場合」をご参照ください。
弁護士等に依頼する場合は、委任状が必要です。
委任状には委任者の直筆のサインが必要です(個人印の押印は不要、写し可)。
[窓口での受け取りを希望する場合 ]
申請日から4開庁日後以降に窓口で受け取ることができます。
受領には申請の際に発行された「受領票」が必要です。「受領票」があれば、受け取る方の指定はありません。また受け取るための委任状は不要です。
受取時間 午前9時30分から正午12時まで(土日祝を除く)。
郵便で申請した場合は、窓口で受け取ることはできません。
早期対応は、原則としてできませんが、遺体の搬送や遺骨の携行など、早期対応が必要な場合には相談可能です。
出典 申請手続きガイド 3 申請方法・必要書類|外務省
出典 よくあるご質問 外務省
申請手数料
アポスティーユの申請手数料は「無料」です。
ただし、私文書を公正証書とする場合の手数料は有料です。文書に応じて公証人法および公証人手数料令により定められています。
出典 よくあるご質問|外務省
アポスティーユの準備と申請について、弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所に相談したい方はこちら
以上、アポスティーユについて説明してきましたがいかがでしたでしょうか。
アポスティーユについてまとめると、
・外国で手続き(婚姻、離婚、出生、査証取得、会社設立、不動産購入、契約等)をするため
・提出先機関(政府、企業、学校)からアポスティーユをリクエストされたときに
・日本の公文書にアポスティーユを付し
・ハーグ条約締約国に提出する
ということになります。
アポスティーユをどこの国から求められたのか、何の文書をどこの機関に提出するのかによって、準備するものと必要な申請方法が異なります。
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出典 「証明(公印確認・アポスティーユ)・在外公館における証明」[外務省]
出典:日本公証人連合会ホームページ
※本稿の内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
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