海外進出販路開拓

海外進出・海外展開:中小の製造業でも実現可能!近年の動向と製造業が海外進出を検討すべき理由とは?

by 弁護士 小野智博

はじめに

日本の製造業が直面している国内市場の縮小と国際競争の激化は、多くの企業にとって新たな試練となっています。このような状況の中、持続可能な成長と新たなビジネスチャンスを追求するためには、海外市場への進出の検討は不可欠です。中小規模の製造業でも、戦略的なアプローチと適切な準備を行うことで、国際舞台での成功が可能となります。

本記事では、近年の日本の製造業の海外進出の動向、海外進出を検討するべき理由と必要な考慮事項について詳しく解説します。

日本の製造業における海外進出・海外展開の動向

日本は伝統的に製造業が強い国であり、GDPに占める製造業の割合は主要国の中でトップクラスです。日本の製造業企業、特に大企業は、生産コストの削減や我が国への逆輸入を主な目的とした海外進出を通じ、成長につなげてきました。さらに近年では、中小の製造業企業の中にも海外進出する企業が増加しています。海外進出の目的も変化してきており、生産コスト削減に加え、進出先の国やその近隣諸国での需要を取り込むことを企図する海外進出が増えてきていることが確認されています。

経済産業省の「第53回 海外事業活動基本調査概要」によると、2022年度末時点の日本企業の海外拠点は全体で24,415社に上り、そのうち製造業は10,433社(42.7%)となっています。

地域別に見ると、日本企業の海外進出先としてはアジアが最も多く、全体の約67.8%を占めています。これに対して北米は12.6%、ヨーロッパは11.1%となっており、特にアジア地域が海外進出先として好まれていることがうかがえます。アジア地域の中では、中国の割合が縮小傾向にあるのに対し、ASEAN10ヵ国の割合が12年連続で増加しており、海外進出先をASEAN10か国へとシフトする流れが見られます。

また海外生産比率(企業が海外での生産に依拠する割合)の推移をみると、概ね上昇傾向が続いており、2022年度の製造業現地法人の海外生産比率は27.1%、前年度と比べ1.3%ポイントの上昇となっています。さらに、製造業現地法人の研究開発費は2022年度1兆1,657億円と、実に前年度比+28.4%の伸びを見せています。

大企業が牽引してきた海外進出の流れですが、近年では中小の製造業企業の中にも海外進出の動向が見られます。現在国内に留まっている日本の中小製造業も、国内市場縮小による販売の低迷に直面する事態に備え、積極的に海外市場への進出を模索すべきケースが多いでしょう。中小企業であっても、地理的・経済的条件、市場の潜在力、労働力資源などを考慮に入れた戦略的なアプローチによって、更なる成長機会を捉えることが可能です。特にASEAN諸国など新興市場への進出は、今後の成長戦略において重要な位置を占めることでしょう。
※参照資料:経済産業省「第53回 海外事業活動基本調査概要」

日本の中小の製造業が海外進出・海外展開をすべき4つの理由

日本の多くの製造業企業にとって、海外進出は重要な戦略のひとつとなっています。その要因としては、①国内市場の縮小と②新興国市場の急成長、③日本企業固有の技術力、そして④生産コスト削減の可能性 の4つが挙げられます。

①日本市場の縮小:
日本経済は長期にわたる低成長が続いており、GDP成長率は他の先進国と比較しても低水準に留まっています。人口減少により日本国内市場の規模は縮小傾向にあり、一方で、少子高齢化による働き手不足に悩まされる企業が増加していくことが予想されます。このような環境下では、国内市場での売り上げ拡大が難しく、国内だけに依存するビジネスモデルでは持続可能な成長が見込めないため、国内外の市場動向を敏感に捉え、柔軟にビジネス戦略を調整することが求められます。海外進出により、国内市場に加えて、海外市場の新規顧客を増やすことができます。アジアをはじめとする新興国市場の急成長を考慮すると、販路は今後も大きくなると予想されます。そこで、海外市場への進出が企業成長の鍵となります。

②新興国の急成長:
世界経済において、経済力が現在の先進国からアジアをはじめとする新興国へと徐々に移行する流れが続いています。これらの国々では経済成長が顕著であり、巨大な市場ポテンシャルを秘めています。特に、中間所得層の拡大は消費市場を広げ、日本企業の高品質な製品や技術に対する需要が増加しています。海外進出を通じて、これらの新興市場に積極的に参入することで、新たな収益源を確保し、グローバルなシェアを拡大するチャンスがあります。

③日本企業の技術力:
日本の製造業は、品質と技術の高さで世界的に評価されています。精密機械、自動車、電子機器など、数多くの分野で先進的な技術を有しており、これらを武器に海外市場で競争することができます。日本市場の厳しい競争で生き残っている日本企業は、世界に通用する競争力を持っているといえます。また、日本企業の緻密な品質管理や持続可能な製造プロセスは、環境意識が高まる中でさらに価値を増しています。さらに、一般的に市場の規模と専門性をもったサービスの需要は比例すると言われています。つまり、日本国内では専門的すぎるため需要が少なかった製品・技術も、海外進出をすることで十分な需要が見込める可能性があります。日本の製造業の専門性の高い技術力は、世界市場の中でこそ真価を発揮するとも考えられます。

④生産コスト削減の可能性:
現地での生産活動を通じてコスト削減を図ることができるという面も、依然として大きなメリットのひとつと考える企業も多いでしょう。労働コストが低い国々では、生産効率を高めつつ製品のコストパフォーマンスを向上させることができるため、グローバルな価格競争力を確保することが可能ですが、特に熾烈なコスト競争にさらされている中小企業にとっては、コスト削減は大きな魅力となり得ます。

海外進出・海外展開を企図する製造業企業が検討すべき事項

日本の製造業が海外進出を検討する際には、多くの挑戦と課題が存在します。ここでは、海外進出で検討すべき主な事項を紹介します。

総じて、日本の製造業が海外進出を検討する際には、戦略的な計画に基づいて行動を起こすことが成功の鍵を握ります。新たな市場に適応し、地域ごとの特性を把握することで、長期的に安定した成長を実現することが期待されます。

海外進出・海外展開を検討する際は信頼できる専門家にご相談ください

海外市場への進出は、多大な機会を提供する一方で、多くのリスクや法的な課題を伴います。そのため、専門的な知識と経験を持つ専門家のサポートを受けることが不可欠です。製造業が海外展開を成功させるためには、法律、税務、労働、環境規制など、様々な分野での専門的な助言が必要となります。

特に、法律面では、異なる国の法制度やビジネス慣行の違いに適応することが求められます。例えば、直接投資、合弁事業、M&Aなど、進出形態に応じた契約書の準備や交渉においては、現地の法規制を正確に理解し、適切な法的枠組みを構築する必要があります。また、知的財産の保護、労働問題、環境規制への対応など、事業運営に必須の領域でのリーガルサポートも重要です。

税務に関しては、二重課税を避けるための税務戦略や、適切な税務構造の設計が求められます。また、異文化間のコミュニケーションやビジネス慣行の違いを理解し、現地企業や政府との関係構築においても専門家の支援は心強いものとなります。

このように、海外進出を成功させるには、多岐にわたる専門知識が必要となるため、経験豊富な専門家に相談することが最良のアプローチです。信頼できる法律事務所に相談し、戦略的な視点からのアドバイスを受け、計画的かつ効果的な海外展開を始めましょう。

ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしていますので、いつでもお問合せください。

※本稿の内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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