はじめに
ドローンが認知され始めたのはわずか数年前ですが、今では世界中でドローンの存在が一般的となりました。種類も多様で趣味のものだけにとどまらず、ビジネス利用も活発となっています。
市場規模が大きくなるにつれ、関連トラブルも増えてしまいます。アメリカの場合、娯楽用の目的であっても、ドローンを飛行させる前に登録しておく必要があります。これはアメリカ在住者のみならず、アメリカを訪れている人も対象です。
このドローン関連の規制においては、アメリカ国内で様々な議論がなされていましたが、2018年10月5日、トランプ大統領がFAA(アメリカ連邦航空局)の2018年改正法(再認証法)案に署名しました。
新法案策定をビジネスチャンスだととらえ、新しい事業展開について考えてみても良いのではないでしょうか?ここでは、アメリカにおけるドローンの現状や、これまでの規制の移り変わりについてまとめています。
ドローンの現状
ドローン・マーケットについて
連邦航空局(FAA)が2018年3月に発表した報告書によると、現在アメリカでは約120万台のドローンが飛び交っているとされています。娯楽用ドローンに対しては、2017年の110万台から2022年には240万台に倍増すると予測されており、この間の平均年間成長率は16.9%の見込みとなっています。
一方、商用ドローンに関しては、報告書発行時の規制環境が続けば、2017年の110,604台から2022年には451,800台に増加(平均年間成長率32.5%)すると予測されています。今回の法案改正をきっかけに、規制緩和が進む場合には予測以上の高成長が見込まれ、2022年に717,895台(平均年間成長率45.4%)に達するとされています。
登録の義務化
アメリカでは車のナンバー・プレートのように、ドローンの機体に対して登録義務が存在しています。この登録システムは、2016年にFAAが機体登録によるホビー用ドローン規制強化を進めた結果取り決められました。登録システム導入の背景にはテロなどへの対策や飛行機との事故、プライバシー保護の観点から、飛行中に無線などで遠くから識別できるリモートIDに導入を見込んでいる政府の姿勢があります。
この登録システムを巡っては「娯楽用ドローンに適用するのは第336条に違反している」と裁判に訴えられ、2017年5月にFAAが敗訴した経緯があります。裁判に敗訴した結果、娯楽用ドローンのユーザー向け登録規制が一時停止する運びとなりました。そのため、政府は、2017年12月にNDAA(国防権限法)の一部として登録再開に持ち込むという対応を行いました。
ドローンをめぐる336条問題
336条問題とは、2012年のFAA Modernization and Reform Act第336条に関連した内容で、端的にいうとFAAは娯楽用のドローンに対する「規制権限はない」というものです。実は、この第336条では55ポンド以下のモデルに対しては規制の対象外と取り決めていたのです。しかしながら、近年、ドローンの小型化が進み、FAAが取り締まれないモデルが空港への侵入などのトラブルを多く起こすようになってきました。
また、商用利用の観点から見ても、第336条の規制によって頭上飛行や目視外飛行の解禁が進まないという厄介な問題を引き起こしていました。
つまり、商用利用による経済効果を見込んで、商用のドローンに対して頭上飛行を解禁したいが、その管理や安全性の確保のためにリモートIDの義務化が必要となっている。しかしながら、リモートID登録の義務化は第336条による制約で、娯楽用ドローンの大多数に適用できないという問題に陥っているのです。
新しい規制法案の内容
トランプ政権ではドローン関連の政策として、336条の改正に取り組んできました。そして、2018年10月5日、トランプ大統領はFAA Reauthorization Act of 2018(再認証法)に署名行い、新しい法律が策定されたのです。再認証法の成立により、第336条は廃止され、新しい規制法が適用されることになります。
新しい規正法では娯楽用のドローン(ホビードローン)について以下のような内容が述べられています。
・趣味、娯楽目的に限定
・ドローンの登録義務化
・有視界飛行に限定
・各地域の安全ガイドラインに従うこと
・55パウンド以下のドローンのみが飛行可能
(それ以上の大きさのものは地域の組織、団体から許可が別途必要)
・他のドローンや飛行物体、飛行機の近くでの飛行の禁止
・緊急時の対応を行っている場所の近くでの飛行の禁止
今後の見込み
今回の法案成立によって、娯楽用ドローンへの免許制導入が可能となり、アメリカ政府が進めたいリモートIDの義務化も可能となるでしょう。また、この法案にはドローンの用途拡大も盛り込まれており、ドローンの商用利用が促進され経済にプラスの効果を与えることが期待されています。
商用ドローンに対しては、Amazonの配達サービスに代表されるようなドローンを使って商品を配送するサービスが今後活発になると考えられます。ドローンを活用したビジネス展開は、まだまだ発展の余地を残しています。そのため、大手企業とスタートアップ企業に同じようにチャンスがあるといっても過言ではないでしょう。日本からアメリカに進出してビジネス展開をしたいという人にも、チャンスは同じように与えられています。
今回新しく法律が制定されたのをきっかけに、ドローンビジネスへの参入を考える人も増えると予想させます。その際には、法律で規制された内容に準じて、準備を進めていくことが重要です。
※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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