外国人雇用マネジメント

外国人を雇用する際の雇用保険はどうする?注意点について国際業務に詳しい法律事務所が解説

by 弁護士 小野智博

外国人雇用の際の雇用保険は?! 注意点を法律事務所が解説

少子高齢化の影響もあり外国人労働者は貴重な人材として注目を集めています。

しかし、ただでさえ複雑な保険制度の中、外国人労働者だけに必要な手続きもあります。

外国人労働者の入社時の雇用保険手続き、社会保険手続きについて、人事部・採用担当者の皆さまは、次のようなお悩みがあるのではないでしょうか。

「外国人労働者も雇用保険に加入させないといけないの?」

「外国人労働者の社会保険の手続きは日本人と同じ?」

「日本人の手続きと違いはある?」

「外国人雇用を行う際の注意点は?」

この記事では、外国人労働者を雇用した際の雇用保険・社会保険の手続きから、外国人雇用を行う際の注意点まで、分かりやすく解説します。

外国人労働者の保険加入について

外国人労働者を雇用する場合も、日本人を雇用する場合と同様に「労働者」である以上、原則として同じ保険制度の対象になります。

「外国人だから保険は任意でいい」「短期で帰国する予定だから入らなくていい」といった考え方は、法律上は通用しません。

日本で働く労働者が関係する主な保険制度は、次の4つです。

  • 労災保険
  • 雇用保険
  • 健康保険
  • 厚生年金保険

このうち、労災保険は労働者を1人でも雇った時点で自動的に適用されますので、「加入する/しない」という選択の余地はありません。

一方で、雇用保険や健康保険・厚生年金保険については、一定の条件を満たした労働者を雇用した時に加入手続きが必要になります。

特に外国人労働者の場合、

・在留資格によって就労できる範囲が異なる

・氏名表記の記載揺れが起こりやすい

・本人も日本の保険制度をよく理解していない

といった事情から、手続きミスや加入漏れ、後々のトラブルにつながることが少なくありません。

外国人労働者を雇い入れた時、退職した時に必要となる保険手続きと、実務上注意しておきたい事項を整理していきましょう。

雇用保険手続きについて

雇用保険は、失業した場合の失業給付(いわゆる「失業手当」)や育児休業給付、高年齢雇用継続給付などを支給する制度です。

外国人であっても、一定の条件を満たせば日本人と同じように被保険者となります。

雇用保険加入の要件

一般的な加入要件は、次の2つです。

①1週間の所定労働時間が20時間以上であること

②31日以上の雇用見込みがあること

ポイントは、「国籍で区別しない」ということです。

在留資格が「技術・人文知識・国際業務」「技能」「特定技能」など、就労が認められている資格であれば、上記の要件を満たす限り雇用保険に加入させる必要があります。

なお、在留資格が「家族滞在」などで、資格外活動許可を得てアルバイトをしているケースでは、1週間の労働時間が28時間の上限内であっても、20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば、原則として雇用保険の加入対象になります。(ただし、昼間学生は対象外です。雇用保険は「失業したときの生活の安定」も目的しており、学生は労働することではなく、学業が本分であるためです。)

手続きとしては、

①雇い入れた月の翌月10日までに

②「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークへ提出

という流れになります。

外国人雇用状況届出について

雇用保険とは別に、外国人労働者を雇い入れた場合には、「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています。

これは、外国人の雇用状況を国が把握するためのもので、「特別永住者」を除くほぼすべての外国人が対象となります。

通常は、雇用保険の資格取得届・喪失届に在留カード情報などを記載してハローワークに提出することで対応します。

雇用保険に加入しない短時間のアルバイトの場合は、「外国人雇用状況の届出」の届出義務がありますので注意が必要です。

記載内容としては、

・氏名

・在留カード番号

・在留資格・在留期間

・国籍・地域

・生年月日

などを在留カードに基づいて正確に記入します。

聞きなれない届出かもしれませんが、厚生労働省のホームページから様式がダウンロードできます。

ここで在留カードのコピーをとり、社内でも保管しておくと、後述する社会保険の手続きやローマ字氏名届の作成にも役立ちます。

社会保険手続きについて

ここでいう「社会保険」とは、

  • 健康保険
  • 厚生年金保険

の2つを指します。

原則として国籍による区別はなく、適用事業所で一定の要件を満たして働く人は加入させる必要があります。

社会保険加入の要件

代表的な要件は次のとおりです(一般的なケース)。

  • 法人(株式会社・合同会社など)の役員およびフルタイム正社員
  • 1週間の所定労働時間がフルタイム正社員の4分の3以上である従業員(パート・アルバイト含む)

ただし、一定規模以上の企業への短時間労働者への社会保険適用拡大も進んでいます。

厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等は以下の要件に全て当てはまった従業員は社会保険加入対象になります。

①週の所定労働時間が20時間以上

②所定内賃金が月額8.8万円以上(残業代・賞与・通勤手当・臨時的な賃金等は除く)

③2か月を超える雇用の見込みがある

④学生でない

外国人であっても、これらの要件を満たせば同様に被保険者として扱います。

また、個人事業であっても、常時5人以上の従業員を使用する一定の業種では社会保険の適用事業所となりますので、上記の要件に該当する場合は手続きが必要です。

手続きは、

「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を入社日から5日以内に年金事務所(または事務センター)に提出して行います。

ローマ字氏名届について

外国人労働者の場合、パスポートや在留カードに記載されている氏名が「ローマ字表記であり、日本の年金記録上の氏名と整合させる必要が出てきます。

マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない方、個人番号制度の対象外である方については、資格取得届等と一緒に「ローマ字氏名届」の提出も必要です。

ローマ字氏名届を提出する目的は、パスポートや在留カードなど、本人確認書類に記載されたローマ字氏名と、年金記録上の被保険者名を紐付けておくためです。

氏名の表記揺れや、結婚・離婚・国籍変更などに伴う氏名変更があった時に、ローマ字氏名やカタカナ表記をしっかり登録しておかないと、将来年金を請求する時に記録の確認に時間がかかったり、最悪の場合、記録漏れのリスクが高まります。

実務的には、

①新たに外国人従業員を厚生年金保険に加入させるタイミング

②氏名変更があったタイミング

でローマ字氏名届を提出します。

記載にあたっては、

・パスポートや在留カードに記載されているアルファベット表記をそのまま転記する

・ミドルネームの有無、姓と名の順序に注意する

など、原本の記載を忠実に写すことがポイントです。

外国人労働者の退職時の保険手続きについて

外国人労働者の退職時にも申請や届出が必要なものがあります。

雇用保険喪失の手続き

外国人労働者が退職した場合も、雇用保険の被保険者であれば、喪失の手続きが必要です。

退職日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークへ提出します。

併せて、本人から希望があれば「離職票」を交付するための手続きも行います。

離職票は、失業給付の申請に必要な書類ですので、本人が次の就職先をまだ決めていない場合や、しばらく求職活動を行う予定がある場合には発行しておくと良いでしょう。

外国人であっても、一定の要件を満たせば日本人と同じように失業給付を受けられます。

外国人雇用状出について

雇用保険に加入していない外国人労働者の退職時には、「外国人雇用状況の届出」が必要です。

・氏名

・在留カード番号

・在留資格・在留期間

・離職年月日

などを記載し、在留カードに基づいて正確に届け出ます。

社会保険喪失の手続き

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者であった外国人労働者が退職した場合には、喪失の手続きを行います。

「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を、退職日の翌日から5日以内に、年金事務所等に提出します。

退職後の医療保険については、本人が

・任意継続被保険者として従前の健康保険を2年間継続する

・住所地の市区町村で国民健康保険に加入する

・新しい勤務先で再度社会保険に加入する

など、状況に応じて手続きが変わります。

外国人労働者本人は日本の制度に不慣れなこともあるため、退職時の面談などで「このあとどんな手続きが必要になるのか」を簡単に説明してあげると親切です。

厚生年金の脱退一時金について

外国人労働者が日本で厚生年金保険に加入し、その後本国へ帰国して日本に住所を有しなくなった場合、一定の条件のもとで「脱退一時金」を請求できる制度があります。

おおまかなポイントは次のとおりです。

・日本国籍を有していないこと

・公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でないこと

・厚生年金保険等の被保険者期間が6か月以上あること

・老齢年金の受給資格期間(厚生年金保険加入期間等を合算して10年間)を満たしていないこと

・障害基礎年金などの年金を受ける権利を有したことがないこと

・日本国内に住所を有していないこと

・最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していないこと(資格喪失日に日本国内に住所を有していた場合は、同日後に初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から2年以上経過していないこと)

などが主な要件とされます。

脱退一時金は、本人が帰国後に日本年金機構宛てに直接請求するものであり、事業主が手続きを代行する義務はありません。

ただし、多くの外国人労働者にとっては「そんな制度があること自体知らなかった」ということが多いので、退職や帰国の前に案内してあげると親切です。

外国人労働者を雇用する際の注意点

必ず在留カードを確認すること

外国人を採用する時に、もっとも重要なポイントのひとつが在留カードの確認です。

・必ず「原本」を確認すること

・在留資格(就労できる資格かどうか)

・在留期間(いつまで日本にいられるか)

・就労制限の有無(「資格外活動許可」などの記載)

を、チェックします。

コピーをとって控えておくことも後々のトラブル防止に役立ちます。

特に注意すべきなのは、在留期間の更新や在留資格の変更があった時です。

在留期間の更新や在留資格の変更があった時は必ず新しいカードの提示を受けてください。

在留期間が切れている、あるいは就労が認められていない資格で働かせてしまう、在留資格で認められている業務以外の業務を行わせてしまうと、本人だけでなく事業主も入管法違反として処罰対象になりかねません。

定期的に在留カードの期限をチェックし、「更新予定者の一覧」を社内で管理しておくと安心です。

また、在留カードが本物かどうか確認できるアプリも利用すると良いでしょう。

 

日本の保険制度についてきちんと説明すること

外国人労働者にとって、日本の社会保障制度は非常に分かりにくいものです。

・給与からなぜこんなに控除されるのか

・どの控除がどんな保険に対応しているのか

・その保険に加入すると、どんなサービス(給付)が受けられるのか

といった点を、母国語で説明してくれる人が周りにいないまま、日本で働き始める外国人も多くいます。

その結果、

・「保険料が高すぎる」と不満を感じる

・加入しているメリットが分からない

・退職や帰国の際に手続きが必要なことを知らない

といったギャップが生じやすくなります。

事業主としては、採用時や入社オリエンテーションのタイミングで、次のようなポイントをシンプルに説明しておくとよいでしょう。

ここでは、第1に「なぜ保険料を支払うのか」、第2に「どのような場面で給付が受けられるのか」という2つの柱を意識して伝えると、理解してもらいやすくなります。

・健康保険に加入することで、医療費が原則3割負担になること

・厚生年金保険に加入することで、将来の老齢年金や障害年金の受給につながること

・雇用保険に加入することで、失業時や育児休業時などに給付があること

・労災保険は、仕事中や通勤中のけが・病気に対する保障であること

可能であれば、

・外国人向けに英語や中国語などの多言語パンフレットを用意する

・社内に外国語が得意な担当者がいるなら決めておく

・社会保険労務士や行政書士など外部専門家に説明を依頼する

といった工夫も有効であり、社会保険制度に関連する事項の理解度を確認しながら説明を行っていくことが大切です。

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※本稿の内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

 

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