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少子高齢化や労働力人口の減少に伴い、外国人労働者への関心が年々高まっています。しかし、外国人雇用の流れは日本人雇用とは異なり複雑です。外国人の採用の手続きについて、企業の人事・採用担当者の皆さまは、次のようなお悩みがあるのではないでしょうか。
「この人が持っているビザで、うちの会社の仕事をしても大丈夫なの?」
「ビザの変更が必要な場合、会社がどこまでサポートするべきなの?」
「この候補者の学生ビザを就労ビザに変更するには、どうすればいいの?」
「就労ビザが下りるまでにどれくらい時間がかかる?その間、他の準備は?」
「雇用契約書は日本人用のものとどう違うの?注意すべき点は?」
「職場のメンバーとうまくやっていける?日本に慣れるまでのフォローアップは?」
この記事では「海外にいる外国人を日本に呼び寄せて採用する場合」「日本にいる外国人を中途採用する場合」「留学中の外国人を採用する場合」に分けて、外国人の採用・雇用手続きの基本をわかりやすく解説します。
外国人が日本で働くためには就労ビザが必要
外国人が日本で働くためには適切な就労ビザを持っていることが必要です。内定の際には必ず在留カードを確認して適切な就労ビザを持っているかを確認しましょう。
もし適切な就労ビザを持っていない場合は、在留資格(就労ビザ)変更の手続きが必要です。また、海外にいる外国人をこれから呼び寄せる場合は、在留資格(就労ビザ)認定証明書交付申請を行います。
就労ビザは希望すれば誰でも取得できるわけではなく、就労ビザを取得するためには「在留資格該当性」「上陸許可基準」「相当性」の3つの要件を満たす必要があります。
在留資格該当性とは
在留資格相当性とは、日本での活動内容が申請する在留資格(就労ビザ)の活動内容とあっているかを指します。
例えば、IT企業でシステムエンジニアとして雇用されることが決まった場合は、「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当しうることをいいます。
上陸許可基準とは
上陸許可基準とは、在留資格(就労ビザ)ごとに決められている学歴や職歴などの条件を満たしているかどうかの基準をいいます。
例えば、母国の4年制大学で情報処理技術を専攻して卒業した外国人が日本のIT企業でシステムエンジニアとして雇用されることが決まり、「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請をする場合は、学歴要件を満たすので「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得しうることになります。
相当性とは
相当性とは、これまでの在留態度や法律違反の状況、人道的観点から特別の配慮が必要 など日本に滞在するのが適当な理由があることをいいます。主に既に日本に滞在している外国人の在留資格(就労ビザ)変更申請、在留期間更新許可申請の際に考慮されます。
例えば、留学ビザから就労ビザへ変更する場合に、留学ビザで滞在していたときに退学していないか(これまでの在留が適切であったか)、資格外活動許可を得ず就労していなかったか、また資格外活動許可を得ていたとしても週28時間を超えて働いていなかったかなどが判断材料になります。
相当性は総合的に判断されます。わずかな違法であっても回数を重ねれば不許可処分になってしまう可能性があります。
資格外活動許可とは
外国人が日本で働くためには原則として就労ビザを持っている必要があります。しかし、就労ビザを持っていなくても資格外活動許可申請を行い、許可されれば、週28時間以内という制限はありますが働くことができます。
この週28時間はどの曜日から起算しても週28時間以内である必要があるので、シフト管理、勤怠管理に注意が必要です。例えば、ちょうど週28時間のシフトを組んだ場合、どこかで少しでも残業が発生したら別の日にその時間分を減らして調整する必要があります。
また、留学生で学校の長期休暇中は1日8時間、週40時間までの就労も可能です。36協定を締結していたとしても1日8時間、週40時間以上働くことはできないので注意しましょう。
・資格外活動許可申請が必要な場合、不要な場合とは?就労ビザ申請に強い法律事務所が解説
海外にいる外国人を日本に呼び寄せて採用する手順
海外にいる外国人を日本に呼び寄せて採用したい場合は、採用日までに4か月ほど余裕を持って手続きします。具体的な手順を見ていきましょう。
事前調査
「会社」と「外国人労働者」双方の事前調査を行います。まず、会社側は外国人労働者に任せる職種や業務内容が申請する在留資格(就労ビザ)の要件に合致しているか確認します。就労ビザは原則として専門的な業務を行う場合に取得できるものであり、「単純労働」に対しては許可されません。ここでいう「単純労働」とはコンビニのレジ打ちや飲食店での接客、工場でのライン作業などを指します。ある程度同じ動作を繰り返す業務だと「単純労働」と捉えられる可能性があります。
また、外国人労働者の給与設定も同じ業務を行う日本人労働者と同水準か確認します。日本人労働者と同水準だったとしても世間一般的に低いとされる年収だとマイナス材料になる可能性があります。おおよそ300万円が目安と言われているのであわせて確認するようにしましょう。
入管は審査の際にハローワークや企業HP、転職サイトの求人情報もチェックしています。もし、求人の給与額と外国人労働者の給与額が違う際はその理由(求人は経験者を想定しているが、外国人労働者は未経験採用であるなど)を説明できるようにしておきましょう。
そして、外国人労働者側は学歴や大学での専攻内容など取得する在留資格(就労ビザ)の取得要件を満たしているかを、確認しておきます。
雇用契約を締結する
会社側、外国人労働者側の事前調査が終わり、就労ビザを取得し得る可能性がある場合は雇用契約を締結します。就労ビザを取得するためには、働く先と業務内容が定まっている必要があり、雇用契約書(労働条件通知書)の提出も求められるため、就労ビザ取得手続きの前に雇用契約を締結する必要があるのです。
外国人労働者としては、「雇用契約を締結したから絶対に働けるはず」と思ってしまう可能性があります。そのため、雇用契約書には「契約始期が到来しても、適切な在留資格(就労ビザ)を取得する前は、就労は認めない」ことを、記載して説明しておくと認識の違いによるトラブルになりにくく、安心です。
入国管理局に在留資格認定証明書交付申請をする
雇用契約を締結したら、次は会社が代理人となって、会社管轄の入国管理局に在留資格認定証明書交付申請をします。この手続きは、法律事務所に依頼することができます。在留資格認定証明書とは「取得希望の在留資格(就労ビザ)の上陸許可基準に適合していると認められる」証明書です。
在留資格(就労ビザ)自体は入国時に与えられますが、先に上陸許可基準を満たしているか確認することで、後の手続きがスムーズにできるよう配慮された制度です。
在留資格認定証明書が交付される
在留資格認定証明書交付申請を行い、上陸許可基準に適合していると認められた場合は入国管理局より在留資格認定証明書が交付されます。在留資格認定証明書の交付にかかる時間は入国管理局や時期により異なりますが、おおよそ1~3ヶ月です。申請したらすぐに交付してもらえるものではないので注意が必要です。
在留資格認定証明書を本人に送付する
入国管理局から在留資格認定証明書が交付されたら、外国人労働者本人に送付します。後の手続きが遅れないよう、交付されたらすぐに送付するようにしましょう。
本人が日本公館でビザ申請をする
在留資格認定証明書が外国人労働者本人に届いたら、在留資格認定証明書を持って自国の日本公館(大使館または領事館)で査証(ビザ)申請をします。
ビザが発給される
特に問題がなければ、申請から5日営業日ほどでビザが発給されます。
本人が日本に入国する
外国人労働者本人が日本に入国し、空港で上陸審査を受けます。空港でパスポート、在留資格認定証明書、ビザを提示してパスポートに上陸許可のスタンプを受け、在留カードを受け取ります。
日本に入国するのは在留資格認定許可証明書交付日から3ヶ月以内と決まっています。入国管理局は「今」の状況や条件を重要視していますので、状況や条件が変わりかねない期間を超えての入国は原則として認められていません。在留資格認定許可証明書が交付されたらスピーディーに手続きを進めましょう。
入社準備
外国人労働者本人が日本に入国したらいよいよ就労開始です。その前にマニュアルや外国人労働者に提出してもらう書類一覧を作成するなどの必要書類を準備します。
そして、初めての外国人採用であれば既存の従業員に対しての研修を行い、外国人雇用の理解を深めることも検討しましょう。研修の内容としては主に、外国人採用の主旨を伝える、価値観や文化の違いについての理解を深める、言ってはいけない言葉の例(特定の国への中傷と捉えられる可能性のある言葉など)、困ったことが起こった際の相談先(上司や人事部など)などがあげられます。
日本にいる外国人を中途採用する手順
日本にいる外国人を中途採用する場合は既に就労ビザを持っている可能性も高く、外国人採用の中ではハードルが低いと考えられます。具体的な手順を見ていきましょう。
募集
外国人雇用の目的をしっかりと定め、必要な人材をペルソナ化することがスムーズな外国人採用のポイントです。そして、ペルソナ像にあった募集方法を考えます。
募集方法はリファーラル採用、人材紹介会社の利用、大学など教育機関への求人募集、自社のホームページ、ハローワークの利用、SNSの利用など多くあります。
選考
優秀な外国人労働者を採用するには採用ステップを簡略化することも視野に入れましょう。海外で日本に比べて採用ステップが短い傾向にあります。海外では日本よりも転職が一般的であり抵抗を感じない傾向にあります。外国人労働者自身もシンプルな採用ステップの会社を優先する可能性もありますし、何度も面接をしているうちに採用ステップが短い会社が先に内定を出し、辞退されてしまう可能性もあります。
可能な限り「書類選考―一次面接―最終面接―内定」などスピード感を持った採用スケジュールにしましょう。また、選考の段階で在留カードの提示を求めることは国籍などによる差別防止の観点から適切ではないとされていますので注意が必要です。
内定
内定を出すときは、「適切な在留をしていると確認できない場合および適切な在留資格に変更を希望しない場合は内定取り消しになる」旨も伝えましょう。
内定の段階ではまだ在留カードの確認をしていません。万が一在留期間が過ぎていた、本物かどうか疑わしい在留カードを提示された場合、就労するにあたり就労ビザ(在留資格)への変更を拒否された場合、就労ビザへの変更が許可されなかった場合などには、内定の取り消しができるよう、そのような説明もきちんと伝えておくことが大切です。また、内定承諾書は書面でもらうようにしましょう。
在留カードの確認
内定承諾後に在留カードの提示を求め、在留期間内であるか、適切なビザ(在留資格)を持っているかの確認をします。
適切なビザ(在留資格)を持っていなかった場合はビザ変更の手続きが必要なことを伝えます。
また、在留カードはコピーや写真ではなく必ず原本で確認するようにしましょう。在留カードが本物かどうか確認できるアプリも利用すると安心です。
労働契約の締結
労働契約を締結する際には、誤解が生じないように、きちんと契約内容を説明することが重要です。
例えば、残業の有無、固定残業代の範囲、社会保険料や雇用保険料、源泉所得税の控除は、疑問を抱かれやすくトラブルに発展しやすいポイントです。
特に控除されるものは納得してもらえない可能性もありますので、どういう制度なのかもあわせて伝えるようにしましょう。
また、可能な限り母国語へ翻訳した雇用契約書(雇用条件通知書)も用意しましょう。
入国管理局に在留資格変更許可申請をする(必要があれば)
在留カードを確認した結果、自社の業務に適合した就労ビザを持っていなかった場合は、外国人労働者の住所地を管轄する入国管理局に在留資格変更許可申請をします。
在留資格変更許可申請には労働契約書(労働条件通知書)、直近の決算書類、直近の法定調書合計表など会社側が用意する書類もあります。
在留資格変更許可申請は結果が出るまでおおよそ1~3ヶ月かかりますので、なるべく早めに申請できるように動きましょう。
在留資格変更許可がおりる
在留資格変更許可申請をして1~3か月後に結果が出ます。無事在留資格変更許可申請が許可されたら就労できます。
入社準備
マニュアルや外国人労働者に提出してもらう書類一覧などの必要書類を準備します。そして、初めての外国人採用であれば既存の従業員に対しての研修を行い外国人雇用の理解を深めることも検討しましょう。
研修の内容としては、主に、外国人採用の主旨を伝える、価値観や文化の違いについての理解を深める、言ってはいけない言葉の例(特定の国への中傷と捉えられる可能性のある言葉など)、困ったことが起こった際の相談先(上司や人事部など)などがあげられます。
留学中の外国人を新卒採用する手順
留学中の外国人を新卒採用する場合は、元々日本が好きだったり、日本での暮らしや文化に慣れていることも多くコミュニケーションも取りやすい傾向にあり、心理的なハードルは低いと考えられます。具体的な手順を見ていきましょう。
募集
中途採用と同じく、外国人雇用の目的をしっかりと定め、必要な人材をペルソナ化することがスムーズな外国人新卒採用のポイントです。留学生の採用は主に教育機関への求人募集やSNS採用が効果的でしょう。
選考
中途採用と同じくなるべく短い採用ステップにすることを検討します。また、新卒採用 はこれから育成していくことが前提となります。ひとりひとりの考え方、価値観、立ち回りに触れられるようグループワーク方式の面接を取り入れるなど堅苦しさを感じさせない工夫も大切です。
内定
中途採用と同じく内定を出すときは、「適切な在留をしていると確認できない場合および適切な在留資格に変更を希望しない場合は内定取り消しになる」旨も伝えましょう。
内定の段階ではまだ在留カードの確認をしていません。万が一在留期間が過ぎていた、本物かどうか疑わしい在留カードを提示された場合、就労するにあたり就労ビザ(在留資格)への変更を拒否された場合、就労ビザへの変更が許可されなかった場合に内定取り消しができるよう、きちんと伝えておくことが大切です。
また、内定承諾書は書面でもらうようにしましょう。
在留カードの確認
中途採用と同じく内定承諾後に在留カードの提示を求め、在留期間内であるか、適切なビザ(在留資格)を持っているかの確認をします。適切なビザ(在留資格)を持っていなかった場合は、ビザ変更の手続きが必要なことを伝えます。
また、在留カードはコピーや写真ではなく必ず原本で確認するようにしましょう。在留カードが本物かどうか確認できるアプリも利用すると安心です。
労働契約の締結
新卒採用の場合は、そもそも働くことが初めての可能性もあります。母国ではない国で初めて就労する不安も抱えている可能性もあります。
契約内容を説明する際はなるべく時間をかけて丁寧に行いましょう。可能な限り不明点や不安な点はその場で解消することが大切です。
入国管理局に在留資格変更許可申請をする
留学生であれば就労不可である「留学」ビザを持っています。そのため就労ビザへの在留資格変更許可申請が必要です。
新卒の場合12月から申請が多くなります。申請が多いと審査にも時間がかかりますので、早めに書類を集めて申請することが重要です。
在留資格変更許可がおりる
在留資格変更許可申請が許可されたら就労できます。
入社準備
新卒採用の場合、働くこと自体が初めての可能性があり不安も抱えている可能性があります。そのため一通りの仕事をマスターするまでは、社内やチーム内で教育係を決めて手厚くサポートできる体制を整えておくとお互いに安心です。
また、教育係やチーム内でトラブルが起こった際の相談先(上司など)も決めておくと更に安心です。
留学中(在学中)の外国人をアルバイト採用する手順
留学中の外国人をアルバイト採用する場合には資格外活動許可を得ているかの確認をしましょう。得ていない場合は、資格外活動許可申請を行う必要があります。具体的な手順を見ていきましょう。
募集
外国人のアルバイト採用は求人サイトや店頭での張り紙、SNS募集が考えられます。「外国人歓迎!」などの文言があれば応募しやすいでしょう。
選考
可能な限り短いステップで採用できることが理想です。特にアルバイトの場合「すぐにでも働きたい」と考えている可能性もあります。スピーディーに選考を進めることが大切です。
また、留学ビザの場合、学業に専念することが求められます。そのため退学している、正当な理由なく休学している、正当な理由なく欠席を繰り返している場合は適法な滞在とはいえない可能性が出てきます。
適法な滞在者でない外国人を働かせたとなると会社も不法就労助長罪に問われる危険性がありますので、必ず「どこの学校に通っているのか」「きちんと通っているのか」確認するようにしましょう。
信頼関係がない状態で「きちんと通っているのか」をそのまま尋ねると不快に思われる可能性もあるので、「どんな分野を専攻しているのか」「学校での印象的なできごと」「今学校で楽しいこと」など、実際に学校に通っていないとスムーズに答えられないような質問をしていく方法が良いでしょう。
内定
新卒採用や中途採用と同じく内定を出すときは、「適切な在留をしていると確認できない場合および資格外活動許可が取れない場合は内定取り消しになる」旨も伝えましょう。
内定の段階ではまだ在留カードの確認をしていません。万が一在留期間が過ぎていた、本物かどうか疑わしい在留カードを提示された場合、資格外活動許可申請が不許可になった場合には内定取り消しができるように、きちんと伝えておくことが大切です。
また、「今後も適切な在留をしていると確認できない場合」においては退職してもらう旨も伝えるようにしましょう。実は真面目に学校に通っていなかったことが発覚した場合も退職対応ができるようにしておきます。口頭ではなく書面にして日付とサインももらっておきましょう。
在留カードの確認
新卒採用や中途採用と同じく、内定承諾後に在留カードの提示を求め、在留期間内であるか、資格外活動許可を持っているかの確認をしましょう。
資格外活動許可は在留カードの裏面に記載があります。在留カードの裏面に記載がなかった場合はパスポートに認印シールが貼付されていることもありますので、必ず確認するようにしましょう。
資格外活動許可を持っていなかった場合は手続きが必要なことを伝えます。また、在留カードはコピーや写真ではなく必ず原本で確認するようにしましょう。在留カードが本物かどうか確認できるアプリも利用すると安心です。
労働契約の締結
労働契約の締結の際は誤解が生じないように、きちんと契約内容を説明することが重要です。特に労働時間においてはトラブルが多いです。「1日3時間の契約だが、混雑状況によっては延長をお願いする場合がある」など、残業が発生する可能性がある場合はあらかじめ伝えましょう。
また、可能な限り母国語へ翻訳した雇用契約書(雇用条件通知書)も用意しましょう。
資格外活動許可申請をする
在留カードやパスポートを確認した結果資格外活動許可を持っていなかった場合は、外国人留学生の住所地を管轄する入国管理局に資格外活動許可申請をします。
入国管理局や時期にもよりますが、おおよそ2週間から2か月で結果が出ます。
入社準備
マニュアルや外国人留学生に提出してもらう書類一覧を作成するなど必要書類を準備します。可能な限り母国語や英語で記載したものも用意できると良いでしょう。
外国人を採用する際のビザ手続きの注意点
ビザの申請には思わぬところに落とし穴があります。予定通りに外国人労働者に就労してもらえるよう注意点をしっかり把握しておきましょう。
日本人と同等以上の雇用条件であること
ビザの申請が許可されるためには、適切な労働条件が必要です。適切な労働条件とは、「労働法規を守った労働条件であること」「日本人と同等以上の雇用条件であること」をいいます。
最低賃金法や労働基準法以上の条件であっても、正当な理由なく同じ業務を行う日本人労働者と比較して劣る条件だと適切な労働条件とはいないと判断される可能性があります。
入国管理局は、審査の際に求人サイトやハローワーク、会社のホームページの求人募集を見ていることがあります。もし募集している条件よりも外国人労働者の条件が低い場合は、正当な理由を説明できるようにしておきましょう。
早めに申請すること
入国管理局での処理期間には目安が設けられているものの、場所や時期、状況によっては目安期間を超えてしまうこともあります。
例えば、在留期限がギリギリの外国人の在留期間更新許可申請が多いときは、在留期間に余裕のある在留資格変更許可申請より優先される可能性が考えられます。
入国管理局での各種の申請が必要になった場合は、「このくらいに申請すれば大丈夫」と思わずに「早め早め」の申請を心掛けましょう。
入社後に必要な手続き
外国人労働者が入社した後には主に保険関係の手続きがあります。手続き漏れがないよう注意しましょう。
労災保険
労災保険は企業に雇用される労働者全員が対象になります。雇用保険や社会保険に加入しないアルバイトであっても対象になります。
副業であってもそれぞれの企業で加入しますが、特に加入にあたり手続きは必要ありません。毎年6~7月に行われる年度更新の際に、外国人労働者への賃金も含め確定保険料と概算保険料を計算して納付します。
雇用保険
雇用保険は週20時間以上働く労働者が対象になります。副業の場合は主たる勤務先で加入します。
「雇用保険被保険者資格取得届」を資格取得日の翌月10日までにハローワークに提出します。ただし、雇用の安定に資する目的の保険のため学生は対象外です。
また、週20時間未満の労働契約や学生などで雇用保険取得対象者ではない外国人労働者は「外国人雇用状況の届出」が必要ですので、注意しましょう。
社会保険
社会保険は企業で社会保険に加入している人が51人以上いる場合は、以下の条件を満たす場合に加入が必要です。
- 週20時間以上勤務
- 月額報酬が88,000円以上(通勤手当は除く)
- 学生でない
- 2か月を超える雇用の見込みがある
会社で社会保険に加入している人が50人未満の場合は正社員の4分の3以上の所定労働時間の場合は加入義務があります。この場合は学生であっても加入義務があるので注意が必要です。51人以上の会社であっても、正社員の4分の3以上の所定労働時間の場合は学生であっても加入義務があります。
また、社会保険の加入手続きの際にはマイナンバーの届出も必要ですが、マイナンバーと基礎年金番号の情報が紐づいていない場合はあわせて「ローマ字氏名届」の提出も必要です。
就労資格を有する中長期在留者等に関する届出手続
「教授」、「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」の在留資格を持つ中長期在留者(日本に3ヶ月以上滞在する在留資格を有し、かつ「短期滞在」や「外交」「公用」の在留資格を有しない外国人)を雇用する企業(外国人雇用状況の届出が義務付けられている機関は除く)は、出入国在留管理庁長官に対し、「中長期在留者の受入れに関する届出」を行います。
入社後の対応のポイント
外国人採用して終わりではなく、長く活躍してもらうためには入社後の対応も大切です。
書類の多言語化を検討する
日本語はひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字が入り混じり、同音異義語もあるなど非常に複雑な言語です。多少日本語に慣れているとしても十分に理解できる、使いこなすには相当の時間と経験が必要です。
職場には守るべきルールや手順があります。しっかりと理解してもらうためにも就業規則やマニュアルなどをできるかぎり多言語化しましょう。
特に英語バージョンがあると多くの外国人に伝わる可能性が高いです。
社会保険制度・源泉徴収制度についてはきちんと説明する
日本では当たり前のように社会保険料や所得税が給与から引かれていますが、そもそも社会保険制度や源泉徴収制度がない国もあります。
制度を知らない外国人労働者からしたら「不当に給与から引かれている」と感じられる可能性もあるので、最初の給与が支払われる際にも、あらためてきちんと説明しましょう。
雇入れ時の健康診断を実施する
入社前に海外で健康診断を受けていたとしても、言葉の壁があり、配慮すべき点について会社に伝えられていない可能性もあります。念のため入社後に日本の医療機関でも受けてもらうようにしましょう。
柔軟な休暇制度の新設を検討する
海外には日本とは違う風習があります。海外ならではの休日もありますので、なるべく自国の家族と過ごす時間を作れるよう休暇制度を整えることも検討しましょう。
例えば、中国の旧正月があげられます。しかし、外国人労働者ばかりに休暇を付与するのは日本人労働者からすると不公平を感じる可能性もあります。日本ならではのお盆休みを任意にプラスアルファで付与するなど日本人労働者とのバランスも大切にしましょう。
会社内研修を実施し従業員の理解を深める
外国人雇用は従業員の理解なしには進みません。例え経営層が外国人雇用の重要性を認識し推進したとしても、現場の従業員が面白くないと感じたり、適切な対応を取らなければ、せっかくの優秀な人材もすぐに退職してしまうでしょう。
従業員の理解を得るためには、既存の従業員向けに外国人雇用についての会社内研修を開催することが効果的です。以下の内容を盛り込むと理解が深まるでしょう。
- 外国人雇用を行う目的
- 宗教や慣習、文化の違いを踏まえた対応
- 自国(日本)の文化や習慣、価値観の確認
- 相手の文化や習慣、価値観を尊重すること
- 難解な言い回しをしない、ゆっくり話すなどの配慮
- 困ったときの相談先 など
外国人の採用・雇用の手続についてのお悩み・課題は、解決できます
この記事では、外国人の採用・雇用の手続について、企業の皆さまが直面すると思われるお悩みや課題について、解決の手助けになる基本的な知識をお伝えしました。
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※本稿の内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。
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執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
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