外国人雇用マネジメント

外国人雇用でドライバー不足を解決|運送業において外国人を雇用する際に知っておくべきポイント

by 弁護士 小野智博

少子高齢化や労働力人口の減少に伴い、特に運送業などの人手不足が深刻な業界では外国人労働者への関心が年々高まっています。運送業界の皆さまは、次のようなお悩みがあるのではないでしょうか。

「運送業界で外国人雇用をするメリットは?」
「運送業界で働ける在留資格は?」
「特定技能ビザを得るための要件とは?」
「運送業界で外国人雇用をする際に注意すべきことは?」

この記事では運送業界で外国人労働者を雇用できる在留資格や注意点を分かりやすく解説します。

外国人労働者と運送業界

厚生労働省が公表している統計によると、2024年11月の運送業における有効求人倍率は3.59倍でした。産業全体での有効求人倍率は半分以下の1.18倍です。運送業は平均の倍以上採用に苦戦していることが読み取れます。
深刻な人手不足を受けて、政府は2019年に特定技能制度を新設するなど外国人労働者の受け入れを拡大する政策を進めています。
今後は、技能実習を修了した外国人が「特定技能1号」へ移行するケースが増加し、より即戦力として期待されます。また、特定技能2号の導入により、熟練技能を持つ外国人の長期的な雇用が可能になり、人手不足解消への期待が高まります。

運送業界で外国人労働者を雇用するメリット

運送業界で外国人雇用をするメリットは次の通りです。

人手不足の解消になる

少子高齢化の影響を強く受けている運送業界では、労働力の確保が大きな課題となっています。
そして追い打ちをかけるように、2024年4月1日に運送業界における「働き方改革関連法」が施行され、トラックドライバーの年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されました。トラックドライバーの労働環境を整えることが法律の趣旨ですが、これにより更に人手不足が問題化していることも事実です。
こうした状況で、外国人労働者は不足する人材を補い、業界全体の持続可能性を高める救世主となる可能性があります。

若い労働力を確保できる可能性がある

運送業界においては特定技能ビザで働くことができます。
運送業界では、高齢化が顕著であり、若い労働力の不足が顕在化しています。一方で、特定技能ビザを持つ外国人労働者は、年齢層が若いことが多い点が特徴です。若い労働力は、体力を要する長時間の運転や荷物の積み下ろし作業に適しているだけでなく、新しい技術やシステムの習得にも柔軟に対応できるため、運送業界にとっては歓迎される人材です。

計画的に即戦力を確保できる

技能実習生などの制度を活用することで、必要なスキルを持つ労働者を計画的に確保できる可能性があります。特定技能1号は試験で基礎的な運送業務に必要な技能が確認されるため、即戦力となる可能性が高いです。さらに、技能実習生の場合、受け入れ前にトレーニングや日本語教育が行われるため、現場での適応力にも期待ができます。

業務の効率化促進が期待できる

異文化や異なる働き方を持つ外国人労働者が加わることで、業務プロセスや解決策にも多様性が生まれ、効率的な働き方の促進が期待されます。また、多様な背景を持つ労働者がいることで、職場のコミュニケーションが活性化することも期待できます。

企業内の多様性の促進が期待できる

外国人労働者を雇うことによって、企業内に多様性が生まれ、異なる価値観を持つ人々が共に働く環境が作られます。これにより、職場の柔軟性や適応力が高まり、企業の社会的なイメージ向上にもつながります。また、外国人労働者を雇うことは、社会的な責任を果たす一環として評価されることがあります。労働市場の多様性を促進し、企業の社会的な信頼を高めることができます。

運送業界で働ける在留資格(就労ビザ)とは

運送業界で働ける在留資格は次の通りです。

特定技能(特定技能1号・2号)

特定技能は生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築するために創設された在留資格です。
運送業では、トラックの運転や自動車を用いた荷物配送、バス運転手などに従事できます。
日本語能力が求められ、また技能試験にも合格する必要があります。特定技能1号での滞在期間は最長5年ですが、特定技能2号に進むことができれば、滞在期間の制限はなくなります。

▶参考情報:外国人の就労ビザを取得する方法については下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。
特定技能ビザの申請について|取得の要件とポイントを法律事務所が解説

身分系の在留資格

「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」が該当します。
身分系の在留資格の場合は日本人と同じように違法ではない限りどのような仕事にも就くことができます。日本語や日本での生活にも慣れているので、コミュニケーションもスムーズに取れる可能性が高いです。

資格外活動許可

留学生や家族滞在など就労できない在留資格の場合に、資格外活動許可を得ると原則として週28時間以内で建設業の仕事に従事することができます。この週28時間以内とはどの曜日から起算しても週28時間以内であることが求められるので、きちんと管理することが大事です。留学生などが資格外活動許可を得てが建設業で行う仕事は、主に補助的な業務や簡単な作業であり、専門的な業務を行う場合は、他の適切なビザに変更する必要があります。

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特定技能ビザを得るための要件とは

特定技能ビザを得るための要件は次の通りです。
◆特定技能1号
1.技能実習から移行する
次の2つの要件を満たせば「特定技能1号」への移行が認められる可能性があります。
①「技能実習2号」を良好に修了すること(3年間の技能実習を経験)
②技能実習で修得した技能が「特定技能」での業務と一致する、または関連すること
2.試験合格により取得する
①技能試験に合格していること
②日本語試験(N4レベル以上)に合格していること
特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動を行うことも要件です。
◆特定技能2号
特定技能1号より高度な技能試験に合格している必要があります。
また、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動を行うことも要件です。
なお、特定技能2号に移行できる業種は、建設分野と造船・舶用工業分野の2分野に限定されている点に注意が必要です。

特定技能外国人を受け入れる事業者の要件とは

特定技能外国人を受け入れる事業者の主な要件は次の通りです。

特定技能と技能実習の違いとは

特定技能と技能実習の主な違いは次の通りです。

  特定技能 技能実習
制度の目的 本国内で人手不足の分野に外国人労働者を受け入れるために設けられた制度 外国人労働者が日本で技能を習得し、自国に帰国後にその技能を活かしてもらうために設けられた制度
在留期間 1号:通算5年(1年毎の更新)
2号:上限なし
1号:1年以内
2号:2年以内
3号:2年以内
(最長5年)
求められるスキル 一定の技能や知識が求められる 特定の業務に必要な技能や知識があることは求められない
家族の帯同の可否 1号:原則不可
2号:可能
原則不可
転職の可否 可能 原則不可
関与する団体 登録支援機関 監理団体
採用方法 自社で採用する 監理団体が送出機関を通して採用する

運送業界で外国人雇用する際の注意点とは

運送業界で外国人雇用をする際にはいくつかの注意点があります。

在留カードを確認すること

必ず内定承諾後に在留カードの提示を求め、在留期間内であるか、適切な在留資格を持っているかの確認をします。適切な在留資格を持っていなかった場合は在留資格変更の手続きが必要なことを伝えます。また、在留カードはコピーや写真ではなく必ず原本で確認するようにしましょう。在留カードが本物かどうか確認できるアプリも利用すると安心です。
もし、適切な在留資格を持っていなかったり、在留期間を過ぎていたりしたら不法就労
助長罪に問われてしまう可能性がありますのでその後の在留期間の管理なども重要です。

労働条件や就業規則についてはきちんと説明すること

労働条件は誤解が生じないように、丁寧に契約内容を説明することが重要です。
特に早出や残業などの労働時間においてはトラブルが多いです。
「1日8時間の契約だが、業務状況によっては延長をお願いする場合がある」など残業が発生する可能性がある場合はあらかじめ伝えます。
また、可能な限り母国語へ翻訳した雇用契約書(雇用条件通知書)や就業規則も用意しましょう。
給与について、外国人労働者は提示された金額がそのまま振り込まれると思っていた事例があります。給与計算方法や控除するもの(社会保険や所得税、その他労使協定で定められた積立金など)とおおよその手取り額も資料を用いて伝えておくと安心です。

原則として日本人と同待遇にすること

外国人という理由で日本人と待遇に差をつけることは認められていません。
在留資格の変更や更新時においても日本人と同待遇かは確認されます。
同待遇とは、給与額だけでなく福利厚生なども含まれます。
日本人労働者は福利厚生を利用できるが、外国人労働者は利用できない、ということは認められません。
しかし、正当な理由がある場合は差があっても問題ありません。
例えば、「外国人労働者は未経験募集だが、日本人労働者は経験者募集である」場合は、賃金に差があっても正当な理由があるといえます。
入国管理局は在留資格変更や期間更新の審査の際には求人サイトやハローワーク、会社のホームページの求人募集を見ていることがあります。
もし、募集している条件よりも外国人労働者の条件が劣る場合は正当な理由をきちんと説明できるようにしておきましょう。
グローバルな人材競争が激化している中、優秀な外国人労働者を確保するためにも、公正で魅力的な労働条件にしていくことが求められます。

マナーについての事前研修を行うこと

来日してから日が浅い外国人労働者は日本の文化やビジネスマナーに不慣れな場合が多く、職場内や顧客とのトラブルや誤解が生じやすいことがあります。
例えば、日本ではチームワークや礼儀、挨拶が非常に重要視され、報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)といったコミュニケーションの仕方も重視されますが、外国の中には個人能力主義で業務最中のコミュニケーションを重視しないところもあります。
マナー研修を受けることによって、外国人労働者は職場で期待される行動や、適切なコミュニケーション方法を学ぶことができ、価値観や文化の違いを乗り越えた円滑なチームワークが築かれることが期待されます。
また、研修資料を作成し、見直しができるように研修後に配布することも大切です。
◆マナー研修の進め方の例
1.視覚的教材を活用する
スライド、動画、イラストなどを使い、視覚的にわかりやすく説明する。
例:お辞儀の正しい姿勢を動画で示す
2.ロールプレイ方式
実際のシチュエーションを設定し、練習を行う。
例:上司への報告や同僚への相談のシミュレーションする
3.クイズ形式で理解度をチェックする
職場マナーに関するクイズを取り入れ、楽しく学べる雰囲気を作る。
4.多言語対応の資料を配布する
研修内容をまとめた資料を母国語や簡単な日本語で配布し、後から見直せるようにする。

文化や習慣の違いへの配慮をする

宗教行事への配慮など外国人労働者の文化や宗教、生活習慣に対する理解を深めることが重要です。多文化共生を促進するための社内の意識改革が必要になります。
相手の文化や習慣への配慮を行うためには、まず自国の文化や習慣を理解するところから始めます。相手の言動に違和感や嫌悪感を抱いてしまうのは、自国の文化や習慣と異なることも一つの要因です。自国の文化や習慣を認識すると、相手に違和感や嫌悪感を覚えても「文化・習慣が合わないから違和感を覚えるのね」と冷静に受け止めることが出来ます。もし、日本の文化・価値観を認識できていない状態だったら「あの人は空気が読めない人だ」など矛先が人に向いてしまい、外国人労働者と働くことにストレスを感じてしまう可能性があります。
価値観や文化には「正しい」や「間違い」という考えは存在しません。
そのため、日本も含め、一つの文化・価値観を冷静に受け止める必要があるといえます。

労災防止により力を入れること

外国人労働者は言葉の壁もあり、コミュニケーションが難しいことがあります。そのため、安全管理にはより一層の注意が必要です。可能な限り多言語したマニュアルを用意することが望ましいです。また、絵や写真など可視化された注意喚起を行うことも効果的です。

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※本稿の内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。
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執筆者:弁護士小野智博
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