一方的な“安売り禁止命令”は違法行為!?
百貨店の化粧品売り場や有名化粧品メーカーの代理店では、顧客の肌の悩みを聞く専門の販売員が必ず存在します。
カウンセリングなどで顧客の悩みを分析した上で、最適な商品を選んで試してもらい、その効果を丁寧に説明・提案することで、商品の付加価値を顧客に認めてもらうためです。
しかし、商品が激安店などで販売されてしまうと、顧客は“自分に合わない商品”を選んでしまったり、正しい使用方法を知らないまま使ってしまうため、商品が持つ本来の効果を実感できません。
さらに「たいして効果もないのに、専門店では高額で販売している」と思われ、ブランドイメージの低下に繋がってしまいます。
そのためメーカーは、卸売業者や小売店に対して“安売り禁止”を命じたくなるでしょう。
しかし、一方的に“安売り”や“安売り店への卸売”を命令することは、“再販売価格の拘束”であり“不公正な取引方法”に該当する違法行為となってしまうのです(独占禁止法 第2条9項4号、第19条)。
合理的な理由があれば販売方法の指定が可能!?
正規店舗以外の店舗で、海外高級ブランドの商品が低価格で販売されているのを見たことがある方も多いでしょう。
これは、商品を並行輸入(ブランドの代理店などから正規に輸入したものではなく、海外の流通業者を通じて真正品を輸入)しているため、正規店より安い価格で販売できています。
そして日本では、この並行輸入が認められています。
つまり、メーカーの利益よりも“消費者が商品を安く購入できる権利”や“市場において健全な価格競争が維持されること”を優先しているのです。
今回のケースでも、販売価格の拘束はできません。
しかし、販売方法について『商品の適切な販売のための合理的な理由が認められ、かつ他の取引先小売業者に対しても同等の条件が課せられている場合』においては、違法ではないとされています(最高裁平成10年12月18日判決より)。
今回のケースでは、自社商品を販売する小売店に対して以下の制限を課しても、その内容に“合理的な理由”がある限り違法ではありません。
“合理的な理由”とは、以下のようなものです。
・顧客に対する商品の説明方法を指示する
・商品の宅配方法を指示する
・商品の品質保持のための管理条件を指示する など
“自社の取引内容が独占禁止法に違反していないか”、“違反を恐れて過度に萎縮していないか”などについては判断が難しいため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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