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海外進出・海外展開:ECビジネスにおける知的財産権~とりわけデジタル著作権について

by 弁護士 小野智博


はじめに

現代のビジネス環境は、IT技術の急速な発展に伴い、ますますデジタル化が進んでいます。このデジタル転換において、知的財産権は極めて重要な要素となっています。デジタルコンテンツ、オンラインプラットフォーム、電子商取引など、デジタルビジネスの成長は、知的財産権の適切な管理と保護の上に成り立つためです。

この記事では、知的財産権、なかでもデジタル著作権に焦点を当て、ECビジネスにおいて日本の企業が海外進出や海外事業展開を成功させるための情報を提供します。デジタルビジネスの世界で、知的財産権の価値を最大限に引き出し、法的リスクを最小限に抑える方法についてみていきましょう。

知的財産権とビジネス戦略

知的財産権は、ビジネス戦略において不可欠な要素として位置づけられています。なぜなら、特許権、商標権、著作権などの知的財産権を保護し、活用することが、企業が競争力を高め、市場での成功を確保するための鍵となるためです。

ビジネス戦略における知的財産権の重要性は多岐にわたります。まず第一に、知的財産権は独自の製品やサービスを識別し、競合他社から差別化を図る手段として機能します。また、知的財産権は収益の源ともなります。特許や著作権により、他社へのライセンス提供や販売が可能となり、新たな収益源を開拓できます。さらに、知的財産権は投資家やパートナーに対して企業価値を証明する手段としても機能し、資金調達や提携の際に有力な交渉材料となります。

しかし、競争の激化やデジタル化の進展に伴い、知的財産権侵害や盗用のリスクが高まっています。従って、戦略的な知的財産権のポートフォリオの構築と、法的措置を含む適切な対策を実施し、知的財産権を適切に管理・保護することがより一層重要となっています。企業としては知的財産権の重要性を認識し、それをビジネス戦略の一部として統合することが成功への鍵となるでしょう。

ECビジネスとデジタル著作権

まず、自社が第三者の知的財産権を侵害するリスクを抑える方策についてご説明していきます。自社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、企業のブランド価値を落とし、訴訟問題を引き起こす可能性も生じます。

ECビジネスで米国へ進出する日本企業にとって、米国の知的財産権に関する法律、なかでもデジタルミレニアム著作権法を理解し、遵守することが重要です。

デジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act :DMCA)は、1998年に成立し、2000年に施行された米国の改正著作権法で、インターネット上での著作権侵害を規制し、知的財産権の保護を確保するための法令です。コンテンツをサイトに表示しているオンライン・サービス・プロバイダーが、著作権保有者またはその指定代理人から侵害の申し立て通知を受け取った際に当該コンテンツを迅速に削除した場合、著作権侵害の責任が免除されることを規定しているのが特徴です。日本企業が米国でデジタルコンテンツを提供したり、オンラインプラットフォームを運営したりする場合には特に注意が必要となります。

デジタルコンテンツのライセンスと契約

次に、デジタルコンテンツのライセンスと契約について見ていきます。音楽、映像、アプリケーション、ゲーム、電子書籍など、さまざまな形態のデジタルコンテンツを扱う場合が考えられますが、ライセンス契約はその使用や配信に関する法的な枠組みを提供する非常に重要なものです。

まず、ライセンス契約は正確かつ明確に文書化する必要があります。契約の対象となるコンテンツ、使用条件、利用期間、地域制約、ロイヤルティ、契約終了条件などを詳細かつ明確な表現で規定することが重要です。文言の曖昧さは避け、英語と日本語の間の解釈の不一致を生じさせないように十分注意しましょう。

また、契約条件には著作権や知的財産の所有権についても明記します。ライセンサー(コンテンツ提供者)とライセンシー(コンテンツ利用者)の権利と義務が明確に定義されることで、紛争を防ぐ基盤となります。

さらに、契約の遵守や違反時の対応策もあらかじめ取り決めておきましょう。上述のとおり、米国ではデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく違反通知の受け取りと対応が必要となってくるため、先回りして対応策を制定しておくことで、万が一の場合にも慌てずに済みます。適切な対策を講じることで法的リスクを軽減し、信頼性を高めることにもつながります。

デジタルコンテンツのライセンスと契約は、ビジネス展開における重要な基盤となり、成功の鍵となります。法的専門家のアドバイスを受けつつ、契約の明確性、適合性、遵守、そして違反時の対策を確実に行うことで、米国市場において安定的かつ成果を上げるための基盤を構築できるでしょう。

デジタル著作権をめぐる実務的考慮事項

ここでは日本企業が海外でのECビジネスを展開する際、海外でのデジタルコンテンツ提供やオンラインプラットフォーム運営において留意すべきポイントをまとめます。

上記への適切な対応は、米国をはじめ海外でのECビジネス展開において法的リスクを軽減し、信頼性を高める重要な要素となります。日本企業は適切な法的アドバイスを受けつつ、関係法令に準拠することで、現地市場での成功を追求できるでしょう。

知的財産権の保護と違反への対策

最後に、自社の知的財産権の保護についてまとめます。自社の知的財産権の保護と違反への対策は、海外でのビジネス展開において不可欠です。著作権、商標、特許などの知的財産権を守ることは、競争優位性を維持し、ビジネスの成功を確保する手段となります。以下に、対応すべきポイントを整理します。

海外進出について専門家への相談をご検討ください

現代の電子商取引において、知的財産は非常に重要な役割を果たしています。米国のデジタルミレニアム著作権法をはじめ、知的財産法は企業や個人のビジネス上の利益を守り、不正競争から保護します。デジタル経済や電子商取引において、知的財産法が存在しない場合、音楽、ソフトウェア、デザインなどが無許可で模倣され、複製され、広まる可能性が高まります。

ほとんどのECビジネス企業は、製品開発に特許やライセンス契約を活用しています。必要な技術やコンポーネントは、ライセンス契約に基づいて提供され、ビジネス推進に貢献しています。
ECビジネスを中心に展開する企業は、知的財産を最も価値ある資産と考え、特許ポートフォリオや商標を所有しています。これにより、オンラインビジネスの価値を向上させ、競争力を維持し、市場で成功を確立しています。

海外でのビジネス展開は素晴らしい機会ですが、同時に複雑な法的、戦略的課題を伴います。知的財産権の保護、契約の適切な管理、地域ごとの法的規制への適合など、多くの要因が成功を左右します。

ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、お客様が海外展開・海外進出の目標を達成できるようなガイダンスとサポートを提供します。国際的な拡張計画に対して、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしていますので、いつでもお問合せください。

※本稿の内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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