海外進出する際は定年の設定に気を付けよう
日本の企業が海外進出する際、気を付けるべきことに、定年の設定の問題があります。日本では定年制度があり一定の年齢に達した際、年齢を理由に退職となりますが、アメリカでは個人でリタイア年齢を決定しますので年齢を理由に退職を促すことは原則としてできません。
日本企業の定年制度
ご存知のように、日本では企業側に65歳まで雇用機会の確保を実施する必要があります。現在、60歳を定年とする企業では、1年ごとの有期雇用契約によって65歳まで雇用を延長しているところも多いと思われます。
アメリカには定年制度はあるのか?
日本の定年制度に対し、アメリカには定年制度がありません。ただし、安全性を重視する公共交通機関(飛行機、バス運転手など)の業務などについては例外となります。
アメリカでは、雇用における年齢制限を禁止しているため、個人の意思でリタイアをするのが一般的です。世界最大の投資家、ウォーレン・バフェットを見ても、85歳でも現役で、その手腕は世界から注目を浴びています。
重要な「退職年齢」がある
アメリカでは、社会保障制度を受け取るタイミングなどで仕事から離れる方が多いようです。日本の年金受給と同じように、アメリカでも満額受給できる年齢が徐々に高くなる傾向にあり、それに影響されリタイアのタイミングを後ろ倒しにする方もいらっしゃいます。
下記がアメリカにおいて一般的となっている「退職年齢」となります。
・59歳6カ月: 401k(確定拠出年金)やIRA(個人退職口座)などの退職貯蓄からの資金の引き出しが可能となります。
・62歳: 社会保障制度の退職給付を受給開始できる年齢です。ただし、62歳で申請した場合、満額受給年齢に比べて減額されます。
・65~67歳 :現在の社会保障制度で退職給付を満額受給できる年齢です(生まれた年により適用年齢が前後しています)。
定年制度がないにしても、日本でもアメリカでも一般的なリタイアをする年齢はだいたい同じですね。アメリカでも、社会保障制度で満額受給を引き上げることで、高齢者に労働を続けるインセンティブを与えており、実際高齢者の労働参加率は上昇傾向にあるようです。
ただし、大きく異なるのは、退職年齢の基本的な決定権が、日本では企業側にあり、アメリカでは働く側にあるということです。
まとめ
上記のように、日本の企業は定年制度を設けていることが一般的です。
一方、アメリカでは企業側が定年を設けるのではなく、個人で退職年齢を設定することが一般的です。そのため、定年後の就業という考え方は浸透しておらず、働きたい人はいつまでも働き続けることが可能と言えます。
このように、定年の有無は国によってことなりますので、海外進出の際は注意しましょう。
当事務所でもご相談を受け付けています。
※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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