企業法務全般

海外進出・海外展開:全米に広がる電動スクーターのライドシェアサービス|法規制問題と今後の展望

by 弁護士 小野智博


 

はじめに

「ラスト・ワン・マイル」という言葉を聞いたことはありますか?ラスト・ワン・マイルとは、サービスが顧客に到達する最後の区間という意味で、日本では災害支援物資の滞留問題の観点から取り上げられることもあります。具体的には、災害が起きると、全国から被災地に支援物資が届けられますが、被災者が待つ避難所までモノを運ぶ最後の区間で、支援物資が滞ってしまうということです。

一方、アメリカでは公共交通の課題からラスト・ワン・マイルについて議論されることがよくあります。従来、車社会であったアメリカでは公共交通が全体をカバーできておらず、「最寄り駅から自宅まで」の移動手段の確保が問題となっているのです。そこで、近年盛り上がりを見せるライドシェアサービスが注目されています。ウーバーやリフトなどのライドサービスもその一つで、地域によってはタクシーにとってかわるような存在になっています。

2018年には電動スクーターのライドシェアサービスが急速な広がりを見せました。専用アプリ一つで、近くにあるスクーターに乗ることができ、目的地に到着後はその場に乗り捨てられるという気軽さと低料金設定がヒットしたのです。しかしながら、電動スクーターのライドシェアサービスには問題も残されており、特に法整備の観点からビジネス存続の危機ともいわれています。

本記事では、電動スクーターのライドシェアサービスの概要について紹介するとともに、問題点や今後の展望について説明していきます。

 

ビジネスモデル

電動スクーターの2大スタートアップであるLimeやBirdでは1回の乗車ごとに1ドル(固定料金)+15セント/1分という料金設定となっています。利用方法は以下の通りです。

①専用アプリをダウンロードし、周囲にあるスクーターを検索

②乗車したいスクーターを決定後、専用アプリより車体のQRコードをスキャンして乗車開始

③目的地に着いたら、任意の場所にスクーターを駐車

 

急速な広がり

Uberなどの投資家グループから3億3500万ドルの資金調達を達成した「Lime」や創業1年目で460億円の資金調達をした「BIRD」など、電動スクーターの大手2社は調達スピードと調達額で、大きな話題を集めました。

最初は、1都市の試験運用から始まりましたが、現在ではアメリカ全土30都市以上に参入、異例の早さでユニコーン企業の仲間入りを果たしました。

 

問題

・法整備

電動スクーターは法規制の対象外、言い換えると電動スクーターの広がりに法律が追い付いていない状況です。一部都市では、電動スクーターのライドシェアを提供する企業に規制や営業許可を設けていますが、多くの自治体で電動スクーターに関しては取り締まりの対象外となっているのです。

 

・安全性

専用の貸出・返却場所があるわけではなく、基本的に乗り捨てできるサービスです。安全な場所への駐車を利用者に求めてはいるものの、現実には使い終わった電動スクーターが歩道に横倒しに置かれていることも発生しています。また、電動スクーターがどこを通るべきかという問題もあります。電動スクーターが車道を走行すれば、事故の危険性や渋滞の引き金となるでしょう。一方で、歩道を走行すれば、歩行者保護の観点から危険であるといえます。

2018年9月にはテキサス州ダラスとアメリカ首都ワシントンで電動スクーターに関連した事故が発生し、死者も出ています。

 

・反発の声

高級住宅地として有名なビバリーヒルズでは興味本位で訪れる電動スクーターの利用環境客が問題となっています。実際に「プライバシーを侵害されている」という抗議行動が起き、ビバリーヒルズではBirdに対し6ヶ月間の営業停止を命じる結果となっています。

 

・愉快犯

電動スクーターは車体が小さく、路上に乗り捨てられているため盗難や破壊行為などの危険に絶えずさらされています。ユーチューブなどには電動スクーターを破壊する動画が掲載されていることもあり、愉快犯的な部分も大きいといえます。

 

今後の予測

2018年は法整備が間に合わないほどに電動スクーターが急激に広がっていきました。しかし、2019年には電動スクーターに対する規制環境は変化していくと予測されます。全米州議会議員連盟(NCSL)のダグラス・シンクル氏は、2019年3月に始まる新議会では電動スクーターに関連した法案を審議する州が多く予定されていると話しています。電動スクーター業界に対しては公共交通機関のギャップを埋めてくれ、環境にも優しい移動手段として大きな期待もあります。今後は、単に規制や圧力をかけるのではなく、安全な利用をもたらす共存のための規則の導入が待たれることでしょう。

 

※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。

 

 

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